騎士王と光の御子。
いつかと同じ二人の激突は、しかし以前とは全く違う様相を呈していた。

「ぐっ……!」

セイバーから苦悶の声が漏れる。だが、手を止めることは許されない。
そんなことをすれば、たちまちのうちにランサーの朱槍の餌食になるだけだ。
ランサーの槍さばきは、前回対峙した時とは別人ではないかとさえ思えるほど強壮にして苛烈だった。
以前は容易く捌き、反撃に転じる余裕さえあった攻撃が、今は防ぐだけで精一杯。
以前は容易に相手の守りを突き崩したこちらの攻撃を今はあっさりと防がれる。
以前は追いつけた敵のスピードに、今は追いすがることすらできない。

「その見えない剣はもう通用せんぞ、セイバー!」

そして、今のランサーには何故か“風王結界(インビジブルエア)”による剣の隠蔽が通じていない。
刀身の長さを正確に把握しているとしか考えられない的確な攻めに困惑する暇すらも与えられない。
実は、セイバーとランサーはそれぞれ異なる可能性世界からこのムーンセルに招かれていた。
セイバーは士郎と同じ、間桐桜の影に飲まれ黒化した果てに士郎に討たれた世界から、ランサーはイリヤスフィールと同じく士郎とセイバーの契約が最後まで続き、ランサーが黄金の英雄王に倒された世界からサーヴァントとして選定されていたのだ。
そして、ランサーは自身が経験した聖杯戦争において、二度セイバーと戦っている。
その中で、セイバーの聖剣のおおよその長さを既に把握していたのだ。
如何に間合いを隠蔽する宝具でも、何度も同じ相手と戦えばその効果が薄れるのは道理といえた。

(ならばっ……!)

そんな事情をセイバーは当然知る由もないが、その判断は迅速だった。
“風王結界(インビジブルエア)”が通じないと見るや、剣の隠蔽に使用していた魔力を魔力放出のスキルに回し、更に強力な剛剣を叩きつける。
基礎ステータスこそ低下したままだが、前回と違い今回はマスターである士郎から正常に魔力が供給されている。
そのため、以前に比べれば存分に魔力放出のスキルを活用することが可能になっていた。
それに加え、未来予知に近い直感のスキル、そして何より戦乱の時代を切り開いた最優のサーヴァントに相応しい剣技を以ってステータスにおいて自身を圧倒するランサーとどうにか対等に渡りあっていた。
百を越える打ち合いの末、距離を取った両者はお互いに惜しみない賞賛を送る。

「いいぞセイバー。やはり戦う相手は最優のクラスに限る。
さっきの奴は確かに宝具は強かったし心意気は認めるが、いかんせん技や動きが未熟だったからな」

「こちらもだランサー。アイルランドの大英雄の真価、しかと見させてもらった。
だがイリヤスフィールの仇である貴方をここで逃すわけにはいかない。貴方を討つ事はシロウの願いでもある」

「珍しく気が合ったな、セイバー。
召喚されてからこっち、マスターにいいところを持っていかれっぱなしでな。
貴様を討ち取るぐらいの事はしてみせないとサーヴァントとしちゃあ立つ瀬がないってわけだ」

それに、と付け加えてからランサーはニヤリと笑った。

「今回のうちのマスターはやる気みたいでな。
そら、早く俺を倒さないと坊主が死ぬぞ?」

二人のサーヴァントの頭上を飛び越えた黒い戦士が士郎に襲いかかっていた。







「イザナギ!」

悠の声とともにイザナギが士郎へ突進する。
その手には神造兵装である“無毀なる湖光(アロンダイト)”が握られていた。(悠自身は自衛のためにイザナギの太刀、アマノヌボコを持っている)

「投影、開始(トレースオン)」

士郎もまた双剣干将・莫耶を投影してイザナギを迎え撃つ。
だが、大上段に振りかぶったイザナギの一撃を受け止めた瞬間、頑強さに定評のある筈の双剣がガラス細工のように砕け散った。

「ぐっ、このぉ……!」

すぐさま次の双剣を投影するが、またも一撃の下に砕かれる。
この圧倒的な武器の性能差から、近接戦闘の技量では優越している士郎が防戦を強いられていた。
だが、士郎とて黙ってやられているわけではない。
イザナギに双剣を投げつけるとすかさず壊れた幻想(ブロークンファンタズム)でそれらを爆破した。

「ぐっ!?」

イザナギが爆発で仰け反り、イザナギとダメージを共有している悠も一瞬苦しむ様子を見せた。
その隙を逃さず、士郎は大きくステップして後退すると、弓と弾丸となる剣を投影する。

「I am the born of my sword(我が骨子は捻れ狂う)―――偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

放たれたのは先ほどの干将・莫耶を上回る神秘を持つ宝具、それも真名解放による一撃は投影によりランクが低下しているとはいえ英霊にも劣らぬ破壊力を備えている。
それを聖剣で受け止めたイザナギだが、先ほどと同じくまたも壊れた幻想(ブロークンファンタズム)による大爆発の直撃を受けることになった。

「…っ、ぐ、や、やったか…?」

大量の魔力を消費し、肩で息をしながら煙を見つめる。
だが現実は非情である。
煙が晴れた先にいたのは、ダメージを受けて身体にノイズのようなものを走らせながらも未だ健在のイザナギと、苦しそうな様子ではあるがまだ十分動けそうな悠の姿だった。

「な…嘘だろ、効いてないっていうのかよ……!?」

「いいや、泣けてきた」

ガードしたとはいえ宝具の直撃を受けてなお悠が健在な理由は二つある。
ひとつはイザナギの補助スキル、“マハラクカジャ”。
味方全体に防御力向上の効果を齎すその魔法は、当然悠自身とイザナギにも及ぶ。
そしてもうひとつは現在悠の学生服のポケットに入っている石、守りを司る大鹿のルーン石だった。
学園でのバーサーカーとの戦いの後、万一の備えとしてランサーが用意したものだった。
即席で用意したものではあるが、そこは神代の魔術師でもあるクー・フーリンが作ったもの、効果は折り紙つきだった。
彼の英霊はキャスターとしても召喚できるほどの魔術の腕前を誇るのだ。
そして、今度は悠が士郎の動揺の隙を突く形となった。

「“マハジオ”」

イザナギが士郎に掌を向けると同時に彼の頭上から雷撃が降りそそぐ。
咄嗟に回避を試みるが、広範囲をカバーする雷撃から逃れることはできず、まともに喰らってしまう。

「があああっ!!」

感電し、思わず膝をつく。
根性で立ち上がろうとするが、そんな隙だらけな状態を見逃すほど悠はお人好しではない。
再度の“マハジオ”が士郎に直撃し、倒れ伏した士郎は感電により身動きひとつ取れない。

(何て、間抜け……!)

心中で遠距離攻撃はないものとタカをくくっていた自分を罵る。
悠は敢えて攻撃魔法を使わず、宝具である聖剣の脅威を見せつけ遮二無二イザナギを突撃させることによって“マハジオ”を当てる好機を探っていたのだ。

「シロウ!!」

「余所見はさせんぞ、セイバー!」

マスターである士郎の窮地に駆けつけようとするセイバーだが、それがいけなかった。
ほんの一瞬の隙から、左腕と脇腹にランサーの突きを受けてしまう。
そのままとどめを刺せる状況ではあったが、何故かランサーは後退し、距離を取った。

「援軍ってわけか。
まあこれだけサーヴァントがいるんだ、卑怯とは言わんが…ならば、これも卑怯とは言ってくれるなよ、セイバー」

「っ!?」

不可解なランサーの言葉の直後に、セイバーも漸く気付いた。
この場所に近づいてくるサーヴァントの気配、それも方向と魔力の質からしてその正体はガウェインとしか考えられなかった。
セイバーよりも索敵範囲の広いランサーは一瞬早くそれに気付いていた。
実際にはセイバーらの援軍ではなかろうと彼にはどうでもいい事だ。この機を活かし、まとめて葬り去るだけのこと。

「いくぞ。クー・フーリンの最強の一撃、その魂に刻むがいい―――!」









「ええい、くそっ!もう始まっている!あの馬鹿共め…!」

獣道を抜けるのに手間取り、結局ガウェインにおぶさる事になったルルーシュがなおも悪態をつく。

「しかし、あのカバの言っていた銀髪の少女と巨大なサーヴァントなど見えないぞ。殺されたか、あるいは逃走したのか?」

「恐らくは敗北したのでしょう。先ほどサーヴァントの気配が消えたのを感じましたから。…!?ルルーシュ、下りてください」

怪訝そうな様子のルルーシュだったがすぐにそれの意味するところを悟った。
遠くに見える蒼いサーヴァントから大気が凍りついたのではないかとさえ思えるほどの圧力を感じた。

「不味い…!対軍宝具を使う気だ、ルルーシュ、迎撃の許可を!このままでは全滅も有りうる……!」

ガウェインからはもう一人のセイバー、アルトリアが左腕を負傷しているのが見えていた。
あの状態では“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”は使えまい。

「よし、行け、ガウェイン!お前の力を俺に示せ!」

「はっ!」

ルルーシュの許可を得たガウェインは疾走し、アルトリアとランサーの間に割り込む。そして同時に、魔力の充填を終えた槍兵は空高く跳躍した。

「“突き穿つ(ゲイ―――)

それはランサーの魔槍のもうひとつの能力にして本来の使用法。
炸裂弾の如き破壊力を持つ一撃は命中するまで地の果てまでも対象を追い続ける。
ただでさえ原典である“大神宣言(グングニル)”を超える威力を持っているそれは、ルーンの付与によるランクアップ、さらに原初のルーンと“マハタルカジャ”で魔力値が上昇したことによる単純な出力の向上によって、今や令呪の存在を除けば極限まで威力がブーストされている。
錬鉄の英雄が投影した“熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)”でさえ紙くずのように一瞬で粉砕し尽くすだろう。
相対するガウェインはその手に持つ聖剣の真価を解放する。それは“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”、“無毀なる湖光(アロンダイト)”に並ぶ星が鍛えた神造兵装。
戦場に散った兵達のもうひとつの祈りの証。
数多の戦場を駆け抜けた太陽の騎士が最も頼みとする最強の聖剣。今ここに、神話が再現されようとしていた。

「―――死翔の槍(ボルク)”!!!」

「“転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)”!!)

閃光。そして轟音。
聖剣と魔槍の衝突は大気を裂き、地を砕き、周囲のあらゆるものを蹂躙し尽くしていく。
ランサーが人避けの結界を張っていなければ数多のNPCが衝突の余波によって犠牲になっていただろう。
そのあまりに現実離れした光景に、離れた場所にいたルルーシュは思わず腰が抜けてしまった。
例え眼前に砲戦用KMFであるモルドレッドの砲口を突きつけられたとしてもこんな醜態は晒さないだろう。
永遠とも一瞬ともとれる時間の後、ルルーシュの眼前に広がっていたのは絶望そのものだった。

「今ので仕留められんとはな。流石に神造兵装の名は伊達じゃねえって事か」

勝利したのはランサーだった。ガウェインと士郎、アルトリアは相殺しきれなかった分の“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”の攻撃を受け、全身を穿たれた状態で倒れ伏していた。

「ば、馬鹿な……」

唯一無傷だったルルーシュが信じがたいといった様子で呻いた。
ランクの上昇した“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”のランクがA+に対して、“転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)”はA++。
まともに競り合ったならば結果は逆でなければおかしい。
だがそれはあくまでもお互いが最高のコンディションでぶつかった場合の話し。
そもそも“転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)”ほどの宝具を完全な状態で使用するとなれば、相応の魔力を込めるだけの時間が必要になる。姉妹剣である“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”を持つアルトリアでさえ約一秒程度の溜めが必要になる。
それでさえ刹那の反応が勝敗を分ける英霊同士の戦いでは致命的な隙になり得るのだ。
ましてアルトリアのような魔術炉心を持たないガウェインが聖剣の全力を解放するにはその倍の溜め時間が必要不可欠だ。
そして今回の場合、ランサーが既に宝具を発動する直前だったために魔力を溜める時間が足りず、結果として競り負けてしまったのだ。

「さて、残るはお前さんだけなわけだが…まあ無駄な抵抗はやめとけ。
もう逃げられないってのはお前自身が一番よくわかってんだろ?
別段恥じ入ることじゃない、やられる側ってのは得てしてそういうもんだ」

「あ…う…」

ゆっくりと歩み寄ってくるランサーを前に、腰が抜けたルルーシュは身じろぎひとつできない。
自己防衛本能から思わず切り札、ギアスを使ってしまう。

「や、やめろ!」

しかし現実はどこまでも非情であった。
一瞬訝しげに歩みを止めたランサーだったが、ギアスが通じている様子は全くなかった。

「ん?坊主、そりゃ魔眼の類か?
その歳で大した威力だが…俺らサーヴァントには対魔力があるんでな、効きはしねえよ」

「な……」

これまで、常に絶大な効果を発揮してきた最後の切り札でさえ英霊には通用しない。
今さらながらに人間とサーヴァントの間に横たわる絶対的な力の差を痛感する。

(終わるのか、俺は…?勝手に未練を利用された挙句、何ひとつ為せずに……)

近づいてくるランサーを前に、ルルーシュの心が絶望に染まる。
強靭な意思と反骨心を持つ彼でさえ、サーヴァントに抗うなど無駄だと本能で理解できてしまう。

「…っ、まだ…終わりではありませんよ、ランサー」

「ガウェイン……?」

苦しみながらも剣を杖にして立ち上がった従者を見て、思わず真名で呼んでしまう。
純白の鎧は己の血で汚れており、その姿は誰が見ても満身創痍であり、戦える状態にあるとは思えなかった。

「槍兵よ、我が主君を手にかけるならば、まずは私の屍を越えて行かれよ」

荒く息をつきながらもルルーシュとランサーの間に立ち、聖剣を構える。
それは明らかに無謀としか思えない愚行だった。
立ち上がるのがやっとのガウェインに対して、ランサーは大量の魔力を消耗しているとはいえダメージらしいダメージは受けていない。
どころか、あと二回程度なら対人用の“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を使用できるだけの力を残している。
全サーヴァントの中でも頭抜けた燃費の良さを誇るのがクー・フーリンなのだ。このまま二人が戦えば、間違いなくガウェインは敗北する。
ルルーシュがそう思った時、どこからか飛んできた風の刃がランサーを襲った。

「やれやれ、ギリギリで間に合ったようだのう」

現れたのは、四不象に乗ったライダーと金田一だった。
約束の二十分はまだ経過していなかったが、宝具同士のぶつかり合いを柳洞寺から見て、ここまで急行したのである。

「衛宮さん!セイバーさん!」

金田一が倒れたままの二人に声を掛けると、気がついたのか、セイバーが傷だらけの身体を押して立ち上がった。

「援軍ご苦労さまだな、ライダー。
だが一足遅かったな。如何に三対一とはいえ、瀕死のセイバー二人と貴様相手ならやってやれなくはないぜ?」

挑発的なランサーに、ライダーはわざとらしく頷いた。

「うむ、確かに最優のサーヴァント二騎をここまで追い込んだおぬしと戦うには少々心許ない。
では、先にセイバーらの傷を治させてもらうかのう」

そう言うと、ライダーは“打神鞭(だしんべん)”を掲げると、自身の最大の切り札の名を呼んだ。

「“太極図”よ!支配を解き放て!」

真名解放と同時に無数の文字のようなものがライダーの周囲に浮かぶと、空気に溶け込んでいく。
すると、セイバー二人と士郎の負った傷が時を巻き戻すかのように回復し、破壊された周辺の家屋や道路もみるみるうちに元通りになった。

「これは…!?」

ガウェインがそれとは別の異変に気付く。
擬似太陽が埋め込まれた自身の聖剣が力を完全に失っているのだ。それは、この場に集う他のサーヴァントたちの宝具も同様だった。
これがこの聖杯戦争でも数少ないランクEX宝具、“太極図”。
この宝具の前ではあらゆる宝具の神秘が貶められ、ただの丈夫な武具と化す。
さらに、無効化した宝具によって発生したダメージや破壊を無差別にキャンセルする文字通りの評価規格外の宝具である。

「貴様……何をした」

そこまでの事情を知らないランサーは忌々しげにライダーを睨む。
誇り高いケルトの騎士である彼からすれば自身の半身たる宝具を貶めるこの行為は侮辱どころの話ではない。
アルトリアとガウェインも立場や状況が違えばランサーと同じ反応を返しただろう。

「さあのう。ひとつだけ教えられるのは、おぬしの宝具は一時的に死んでおるという事だけだ。
さて、セイバーらが回復した今でもさっきと同じ事が言えるかのう?けけけけ」

「…チッ、狸が」

とぼけた様子のライダーにランサーの怒りは増すばかりだが、今が不利な状況であることを理解しないわけではなかった。
それを察した悠がランサーを宥める。

「ここは退こう、ランサー。
流石にこれじゃ戦いようがない」

悠の言葉に舌打ちしながらも後ろを向き、悠を抱えると目にも止まらぬスピードでその場を立ち去った。
屋根伝いに跳躍しながら移動している最中、ランサーは悠に気付かれないように遠見と探索のルーンを使用し、広範囲に渡る索敵を行なっていた。
記憶にある前回の聖杯戦争での苦い経験と、マスターが謀略などの面に関しては未熟である事から同じ失敗を繰り返さないことを内心で誓っているのだ。
あまり性に合っているとはいえないルーン魔術を多用しているのもそれが理由だ。

「ランサー」

と、背中に背負っている悠が話しかけてきた。

「さっきの三組のマスターとサーヴァント、どう思う?」

「そりゃまあ、同盟でもしてるんだろうよ。何が目的かは知らんがな」

「…そうか。ランサー、ここからは俺達も協力者を探そう。
少し消耗しすぎたし、何よりあのライダーの宝具を何とかしないとまともに戦うこともできない」

「そうかい。それは構わんが、どういう風の吹き回しだ、悠?
はっきり言うがお前さん、他のマスターと向かい合おうとしてなかったろ」

ランサーの指摘に、悠はしばし言葉に詰まる。
聖杯戦争が始まってから、悠は努めて他のマスターを血肉の通った人間だと認識しないようにしてきた。
如何にペルソナ使いとして優れた実力を持っていても、悠は平和な日本で生まれ育った若者だ。
人間を殺す事に抵抗感がない筈がない。だからこそ、他のマスターの事は人型のシャドウのようなものだと自身に言い聞かせてきた。
もしも戦う相手に感情移入してしまえば殺す事を躊躇ってしまう、立ち行かなくなる。
その自己欺瞞を、このサーヴァントはとうに見抜いていたらしい。

「…さっき殺したマスター、最後にあの赤髪の男の名前を呼んでた。
どんなに忘れようとしても、耳に焼き付いて離れないんだ」

だが、それも先ほどの戦闘で簡単に崩れ去った。
あの白い少女の最期と赤髪の青年の怒りに染まった表情を見て、人の命を奪う事の重みを改めて思い知らされた。
そして、これ以上そこから目を背けることはできないのだということも。

「だから、どんなに苦しくても、今からは同じように戦ってる他のマスターとちゃんと向き合った上で戦おうと思う。
付き合ってくれるか、ランサー?」

改めて大真面目に問う悠を、ランサーは笑い飛ばしながら答えた。

「最初に言ったろ?お前さんは難しく考えすぎだってな。
深く付き合おうが付き合うまいが、最終的にはどいつとも殺し合うんだ。
だがまあ、覚悟が決まったってんなら良いさ。
最後まで付き合うぜ、マスター」

相も変わらずさっぱりとした物言いのランサーに少しだけ励まされた。
気のせいかもしれないが、また少し、このサーヴァントとの絆が深まったように思えた。


【深山町・北部住宅街/黎明】
【鳴上悠@ペルソナ4】
[状態]:疲労(中)・精神力消耗(中)・残令呪使用回数3回
[持ち物]:無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate Zero・大鹿のルーン石@Fate/stay night

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)・遠見と探索のルーンを使用中
※マハタルカジャ、マハラクカジャの効果中かつ原初のルーン発動時のステータスは以下の通りです。
【筋力】A+ 【耐久】A+ 【敏捷】A 【魔力】A+ 【幸運】E 【宝具】A
※参戦時期はセイバールート、ギルガメッシュに倒された後です。(記憶は継続しています)









ランサーを退けた後、ルルーシュらは柳洞寺に帰還し、今後の対策を話し合っていた。
電撃を受けた士郎はまだ気絶しているため、アルトリアが客間に運び込んで士郎の傍についている。

「その…さっき言ってた女の子、殺されたのか?」

「ああ、そうらしい。…正直色々と甘く見ていたな、この聖杯戦争も、敵のサーヴァントも」

ルルーシュの言葉に全員が重く頷く。

「ケルトの大英雄、クー・フーリンか。当面、わしらにとって最大の難敵になるのはあのランサーであろうな」

「けど、ライダー。さっきの宝具があればまた相手の宝具を無効化できるんだろ?だったら……」

金田一の希望的観測に、ライダーは首を横に振った。

「無理だ。太極図は真名解放から発動までタイムラグがある。一度見られた以上、次からは間違いなくその隙を突いてくるはずだ」

「正直に言えば、使わないでもらえると助かります。自分の宝具が貶められるのは、気分の良いものではありませんからね」

柔和な表情を崩さぬままハッキリと告げるガウェインに、ライダーはいい加減な風船のような顔になり、口笛を吹き始めた。

「何にせよ、今回の敗因は個別に敵のサーヴァントと戦ったことにある。次からは、必ず数的優位をもってあたるべきだ」

ルルーシュの主張に頷いたライダーが元の顔に戻って真面目に告げる。

「他の協力者の勧誘に地下大空洞の要塞化、食糧を始めとした物資の確保。わしらがやるべきことは山積みだ。それらを適切に為すためには…」

「組織的な行動が必要不可欠、か?」

ライダーの言わんとしている事を察したルルーシュの言葉に静かに頷く。

「とはいえ今は全員疲れきっておる。何よりわしが疲れた!というわけで休憩、休憩~」

と言ってあくびをしながら本堂を出ていってしまった。
だが本音は、初めてのサーヴァント戦を経験した金田一らの緊張を少しでも和らげるためなのだろう、とルルーシュは考えていた。

(あの男のような部下がいれば、俺の人生も違ったものになっていたのかもしれないな…いや、これも未練だな)

かぶりを振って頭の中の迷いを振り払う。全てはもう終わったこと、過去だ。
今は、自分自身を終わらせる戦いに集中するのみだ。


【深山町・柳洞寺/黎明】
【衛宮士郎@Fate/ stay night】
[状態]:魔力消費(中)・ダメージ(中)・気絶中・残令呪使用回数3回
※参戦時期は桜ルート終了から半年後です。
※勝利すべき黄金の剣(カリバーン)、全て遠き理想郷(アヴァロン)、赤原猟犬(フルンディング)、宝石剣ゼルレッチの投影が可能かどうかは後の書き手さんにお任せします。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/ stay night】
[状態]:魔力消費(微)
※参戦時期は桜ルートで士郎に倒された後です(記憶は継続しています)

【金田一一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康・残令呪使用回数3回

【ライダー(太公望)@藤崎竜版封神演義】
[状態]:魔力消費(小)
※杏黄旗により、どこにいても円蔵山から魔力供給が受けられます。
ただし、短時間の内にあまりにも大量の魔力を吸い出した場合、霊脈に異常をきたす可能性があります。

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[状態]:健康・残令呪使用回数3回

【セイバー(ガウェイン)@Fate/EXTRA】
[状態]:魔力消費(中)

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