二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

友と絆と這いよる絶望(後編)

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ライダー対アーチャーの戦いは佳境に入ろうとしていた。
スタンドとの同時攻撃を繰り出すアーチャーに対し、ライダーはトラクローソリッドとメダジャリバーを使い分け捌いていく。
高いステータスとスタンドによる数の有利をもつアーチャーだが、全てのステータスを底上げし傷を癒したライダー相手に決定打を与えられずにいた。
ライダーは決して自分からは踏み込まず防戦に徹している。
捌き、逸らし、時に大きく跳躍して距離をとるライダー。猛攻を仕掛けるアーチャーは次第に焦りが生まれた。

「どうしたライダー、逃げてばかりでは勝てんぞっ!」
「そういうあなたは…っ、余裕がなさそうです…ねっ!」

お互い一旦距離をおこうと思い跳躍し離れる両者。

「いいのかライダーよ。お前たちのマスターが危険だぞ?」
「皆のこと信じてるんで…それに危ないのは切嗣さんの方じゃないんですか?」

痛いところを突かれたと顔を僅かに顰めるアーチャー。

そう、実際のところはランサー達対アサシンとマスターではこちらが圧倒的に不利なのだ。
唯でさえ高いステータスを誇るランサーに加え、様々な援護が出来るランサーのマスター。
さらには足手まといと思いきやカンドロイドの力をうまく使いこなし、牽制と援護を行うライダーのマスター。
隙が少ない向こうに対し、こちらは本来のスタイルが暗殺なサーヴァントとマスターの即席のコンビ。
アサシンではランサーを足止めすらギリギリで、マスターの方は相性が悪いのか幾つもチャンスがあったのにも関わらず全てその機会を逃していた。
このままでは遠くないうちに討ち取られると危惧したアーチャーは早急にライダーを仕留めようと攻撃するが、それを分かっているのか防御に徹している。

(とはいえこのままでは本格的にまずいっ!こうなれば…)

アーチャーは大きく跳躍し丁度ライダーの真上の位置になった所でナイフを取り出し…。

「喰らえいライダー!全弾放射だっ!」

キャスターお手製の爆弾ナイフをスタンドと共に次々と投擲して行く。
直撃するものをメダジャリバーで弾くが、雨あられと次々に爆発するナイフにさすがにダメージが蓄積していく。
降り立ったアーチャーは一気に肉縛し―――

「気化冷気法っ!」

下半身を氷付けにしライダーの動きを封じる。


「取ったぞライダーっ!URYYYYYYYYY!!!!」


スタンドとの同時攻撃でライダーを一気に追い詰めるアーチャー。このまま消滅させようと心臓と頭部に向けて拳を振りかざしたその時!
ライダーの危機を見た陽介が、イザナギの持っていたアロンダイトをアーチャー目掛けて投擲する。

猛スピードで迫る宝具に咄嗟に迎撃を選択するアーチャー。
ほんの僅かに出来たチャンスを、ライダーは手繰り寄せる。素早くスーパータトバコンボを解除し、ラトラータコンボに切り替える。

「ここだっ!」

そしてライオンヘッドから放たれた強力な熱線がアーチャーを焼き尽くす。

「GIYAAAAAAAAッ!!!」

半径数キロメートルを瞬く間に溶かし蒸発させる高熱放射は、アーチャーの身体を焼き尽くし深手を負わせる。
足の氷を溶かしたライダーは再びスーパータトバコンボに変身した。


全身のダメージがかなり響いている。しかし、ここで膝をつく訳にはいかない。
守れずに死んでいった仲間のため。自分を信じて戦っているパートナーのためにも諦めるわけにはいかない!
辛うじて立ち上がったアーチャーに、今度はライダーが攻撃を仕掛ける。


「うぉおおおおおお!!」
「ぬぅうううう!!」

『スーパータトバラッシュ』

両腕のトラクローソリッドを振り回しアーチャーを引き裂き、バッタレッグを変形させ跳躍する。
そして背中に赤い翼を出現させとび蹴りを急降下に放つ。
必殺技を繋げて放たれる連続攻撃に、度重なるダメージを受け再生が碌に間に合わないアーチャーの身体に直撃した。


「どうだっ!」

大きく呼吸を乱すライダー。対するアーチャーは立ってはいるが肉体の再生が追いついていない。

(いかん……さっきの様な大技をまた喰らえば再生する間もなく消滅してしまう…っ!)

限界近くまで消費した魔力は枯渇寸前まできている。
切嗣の供給量は決して少なくないにも関わらず消耗が激しすぎるため追いつかないのだ。

(また先ほどと同じ調子で攻められてきたら…)

アーチャーは生き残る道を模索する。





場面は巻き戻る。


ランサー対アサシン。花村陽介対衛宮切嗣の戦いは、ランサーたちに分があった。
もともとの能力差に加え戦闘スタイルの差、さらにお互いの能力に対する情報差。これら三つの要素がアサシン達を追い詰めて行った。
そもそも花村陽介はまともに戦ったのは初戦のキャスター・アーチャー陣営の戦闘と、ゼフィールとのタイマンのみ。
あとは常に後方で補助や回復などに徹して進んで攻撃は行わなかった。(普通のマスターは戦うことはしないのだが)

ゆえに彼の情報はかなり限定され、サブラクが目視した範囲。
すなわち、心象世界の具現化が出来る事。敏捷値を上げ回復魔法を使えること。この二点だけである。
対して切嗣の情報はかなりの範囲で知れ渡っていた。切嗣の手札も手段も解っている。
解っているのなら対策が取れる。

その圧倒的なまでの情報差は、誰とも組む事をよしとしなかった切嗣には取りようが無いものだった。
その結果訪れるもの。単純明快な心理。すなわち―――


「おらぁっ!」
「ぐぅ…」
「むんっ!」
「ガハッ!!」

陽介の手にした干将・莫邪が切嗣の身体を次々に切り裂いていく。
ランサーのARM化した両腕がアサシンの分身体を次々に屠っていく。
隙を見てこなたに近づこうとしたアサシンに向かって投げられた干将・莫邪がアサシンに突き刺さり絶命させる。
それを好機とみて鋼鉄の腕から弾丸を放とうとした切嗣に向かってランサーのブリューナグの槍が放たれる。

「Time alter――double accel!」

固有時制御で大きく移動し距離をとる切嗣。その隙にタカカンドロイドに運ばれた干将・莫邪を再び手に持つ陽介。
その間にも次々とアサシンの数は減らされて行く。

「このまま一気に倒す!」

ペルソナを前面に出して突っ込ませその影にかくれて接近する。
切嗣から放たれた弾丸はイザナギに決定打を与えられずに地に落ちて行く。
そのまま一気に押そうとしたところで、アーチャーに追いつめられて行くライダーを視界に映す。

「させるかぁ!」

イザナギに持たせたアロンダイトをアーチャー目掛けて投擲する。
それをチャンスと捉えたか、銃を乱射しながら接近する切嗣に陽介は回避行動をとる。
至近距離に接近され振り下ろされる鉈。ペルソナの防御は間に合わない。
咄嗟に干将・莫邪で防御した瞬間。



ズドン!


「がっ…ゴフ……」


鈍い音が響き渡った。
コートの内側という死角になった所から撃たれた弾丸は、陽介の胴体を貫通し真っ赤に染め上げた。

吐血し膝をつく陽介。ランサーたちはこのタイミングでは間に合わない。
切嗣は止めを刺すべく再び鉈を振り下ろして―――

「まだだっ!」

干将・莫邪を交差させ鉈を受け止める。
そのまま立ち上がる勢いを利用し鉈を弾きとばす。

「おらぁあああああ!!」

振り上げられた干将・莫邪を咄嗟に鋼鉄の腕で防ごうと試みるが―――


「……コフっ……ガハっ…」

振り下ろされた一撃に鋼鉄の腕ごと切られ深手を負う切嗣。

「イザナギっ!」

顕現したイザナギの矛が振るわれる。
反射的に発動した固有時制御の回避も間に合わずアーチャーのいるところまで吹き飛ばされた。

「マスターっ!?」

自分と同じく重症を負ったマスターに舌打ちするアーチャー。
これでこちらの敗北は濃厚になった。さらにそこへアサシンも飛ばされてくる。
最後の一体となりランサーによってぼろぼろにされたその様子はとても戦闘を続行できるとは思えなかった。



「追い詰めたぞアーチャー」

余力を残したランサーがこなたを庇うように近づいて来る。
ペルソナで傷を癒したライダーと陽介はなにがあっても対応できる間合いで立ち止まった。

「貴様らっ…」
「終わりだアーチャー。もうお前たちに逃げ場は無い。そして見逃すつもりも無い」

ブリューナグの槍を右手に集中させいつでも発射できるよう構える。
そして全員消し飛ばそうとしたところで―――

「お前たちは自分が何をしているのかわかっているのか?」
「命乞いかアサシン?聞く道理はないな」
「お前たちは聖杯を破壊しようとしているのだろう?それはなぜだ?殺し合いを起こすからか?」

自分の命が今にも消えそうだというのにも関わらずアサシンは言葉を重ねる。

「お前たちには私が自分の目的の為に聖杯を欲していると思っているかもしれない……だが私は決して聖杯を私欲の為に手にするわけではない!
すべては我が祖国、アメリカ合衆国の国民の為!守るべき民の幸福のために必要なのだ!」

少しずつ熱を上げるアサシンにランサーも陽介もこなたも、切嗣やアーチャーでさえなにも言葉を挟めなかった。

「わたしの行動は「私利私欲」でやった事ではない。「力(パワー)」が欲しいだとか 誰かを「支配」するために聖杯を手に入れたいのではない。
わたしには「愛国心」がある。 全ては祖国のために「絶対」と判断したから行動した事・・・」
「そ……それで他の人が傷ついたり死んじゃったりしてもいいっていうのっ!?」
「お前たちも体験したことがあるはずだ!「陽(ひ)」のあたる所必ず「陰」があり・・・幸福のある所必ず反対側に不幸な者がいる・・・・・・・
「幸せ」と「不幸」は神の視点で見ればプラスマイナス『ゼロ』!
それが人間世界の現実であって あらゆる人間が「幸せ」になる事などありえない。
「美しさ」の陰には「ひどさ」がある
いつも「プラス」と「マイナス」は均衡しているのだ
聖杯がッ!仮に地球の裏側のどこかのルール無用の『ゲス野郎ども』の手に渡ってみろ!
自分の欲望でしか考えないゲスどもの事だ・・・
国の将来にどれだけ残酷な出来事が集まってきて起こる事になるのだろう・・・・・・
それだけは阻止しなくてはならないッ!わたしの大統領としての絶対的『使命』は!
この世界のこの我が国民の『安全を保障する』という事!
それひとつに尽きるからだ! 」


なおも反論しようと試みたこなたは、けれどなにも言い返すことができず口を閉ざした。
無論彼らのした事が許されることではないが、このアサシンの言い分は一面では正しいと認めている自分がいるからだ。
少なくとも寝落ちで戦争に参加した挙句、願いも無くただ生きて家に帰りたい自分よりはよっぽど正しい事をしている。
けれどアサシンの言い分を肯定してしまえば、自分たちのしてきた事が誤りだったと認めてしまうことになる。
それは決して認めてはならない事だが、けれど今の自分にはアサシンを間違っていると断じる言葉が見つからなかった。


「誰が正しくて、誰が間違ってるってとっても難しいことだと思います」
「映司さん……?」

そんな時真っ向からアサシンを見据えたライダーの声にこなたは目を向ける。
いつもと変わらない口調の中に、どこか悲しさを含ませながらも彼は言葉を続けた。

「自分が正しいと思うと周りが見えなくなって、正義のためなら何をしても良いって思ったり、きっと戦争もそうやって起こっていくんです。
昔、世界中を旅してたとき色んな国を見ました。
あなたのいうように、自分の国を守るために平気で他の国の人を傷つける所もありました。
生きるために盗みをする子供を見ました。
守るために悪事を働く人を見ました。
信じる正義のために人を殺すことがあることも知ってます。
無浅慮な善意がより人を不幸にしてしまう事だってあります。
貧しい国に募金してたつもりが悪い人に使われちゃってたり。ひどいときは、内戦の資金になってたり。
それで思ったんですよね。人が人を助けていいのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないかって」

だから……

「人を助ける為に聖杯を使ってはいけないと思います。平和や幸せは誰かに押し付けられるものじゃない……。ましてや奇跡に頼って叶えていい事じゃないっ!」
「……決別ということか…」

立ち上がり構えるアサシン。

「我が心と行動に一点の曇りなし・・・・・・・・・・! 全てが『正義』だ」


スタンドを構え脱出のタイミングを計り―――――




背後から手刀で貫かれた。



目を見開き後ろを振り向いた先にいたのは―――






目を見開き後ろを振り向いた先にいたのは―――


「貴様……アーチャーっ…」
「お前が散々喋ってくれたおかげで時が稼げた。お陰で動けるくらいには回復したぞ、礼を言おうアサシンよ」

焼け焦げた皮膚は元の色に戻り激しい出血も収まっていた。
アサシンが話術でチャンスを掴もうとしている間アーチャーも何もしなかったわけではない。
残る魔力を全て再生にまわし動く機会を窺っていた。

「フンっ、愛国心だと。くだらんなぁ…そんな便所の紙にも劣る感傷など持ち合わせておらん。このDIOにとってもっとも重要なのは勝利し支配するということ!それだけだっ!!」


指先から血液を吸い取り回復して行くアーチャー。
このままでは平行世界に逃げる間もなく死んでしまうと絶望したとき―――


『令呪をもって命ずるっ!そこから脱出しろアサシンっ!!』

ジョン・バックスからの令呪により空間転移を起こし姿を消した。
残されたアーチャーは指先の血液を2度3度舐め取ると、何かに確信したように高らかに笑った。

「フハハハハハっ!素晴らしいぞ……出会いとは引力っ!やはりアサシンと私は出会うべくして出会っていたっ!取り込んだぞ…聖人の遺体をっ!!」

血液に宿った記憶の残滓からみつけた聖人の遺体の情報。
そしてファニー・ヴァレンタインの心臓部に融合していた『遺体の心臓部』
その力の欠片を取り込んだアーチャーはスタンド“世界”を顕現する。

「欠片とはいえこの「力(パワー)があれば……いけるぞ…やはり世界はこのDIOを選んだのだっ!生まれ変われ…“世界”よっ!!」


瞬間、“世界”から眩い閃光があふれ地下大空洞を光に包む。
なにが起こっているのかランサーもライダーも、陽介にもこなたにも、切嗣にさえ解らなかった。
ただ1人、DIOは生まれ変わる“世界”に祝福を与えていた。


「これはもはや“世界(ザ・ワールド)”にあらずっ!名づけよう……“天国(メイドインヘブン)”とっ!!」




そうして生まれ出たもの
後ろ半分が無いケンタウロスのような下半身に上半身が人形のヴィジョン
顔には目の変わりに時計のような計器
新たなスタンド“天国”は産声を上げるように嘶いた。

「アーチャーのスタンドが……進化した!?」
「ちょっおい!なんかわかんねえけど不味くねえかっ!?」

誰もが混乱する中、ランサーの判断は素早かった。
一気にアーチャーに接近し、ARM化した両腕を振るう。
だがそれはアーチャーに届くことなく空を切る結果に終わる。

「無駄だランサーよ。取り込んだ『遺体』が欠片のため不十分な進化だが……『時は加速する』。もはや誰にも私は止められない」

素早く声の方向にブリューナグの槍を放つが、既にアーチャーの姿は消えていた。
次の瞬間ARM化した腕が断ち切られる。

「グゥッ!?」
「ランサーさんっ!」

突然の攻撃に同様する一同に今度はライダーに通り過ぎざま攻撃を仕掛けるアーチャー。
反応し切れなかったライダーの胴体に深く切り傷が刻まれる。

「全員集まれっ!バラバラになるとマズイっ!」

素早くマスター達を回収するランサー。ライダーも怪我を庇いながらマスターの護衛につく。

「不味い。なんて速さだ……。反応が追いつかない」
「あのスピードが上乗せされた攻撃は厄介ですね…。救いなのは“世界”に比べてパワーが無いことでしょうか」
「今はまだ能力のテスト動作みたいだが…何とかして動きを止めないと全滅するな…」

起死回生の一手を模索するが妙案は浮かばない。
いつの間にか衛宮切嗣もどこかに隠れてしまっているが探している暇は無い。

「とりあえずペルソナ!マハラクカジャ。チェンジして…マハスカクジャ!」

ペルソナの補助魔法のかけ直しで耐久値と敏捷値を上昇させる。
どれほど効果があるかわからないが無駄ではないと信じたい。

なにがあっても動けるよう警戒する中、再び上空から爆発が起こった。
次の瞬間猛スピードで落下する岩石。先ほどと同じ光景だが、加速した世界では物質の動くスピードも加速する。
先ほどまで余裕をもって迎撃できた落石はいまや巨大な銃弾のように降り注ぐ。

咄嗟にマスターを庇った次の瞬間、再び深く切り刻まれるライダー。
突然の深手に反応が一歩遅れ今度は右腕を切られた。
それでもアーチャーを探すが、辺り一面に降り注いだ落石の陰から陰に移動し視認できない。
ライダーの傷を治そうとした陽介を庇い今度はランサーがダメージを受ける。

「いかん……っ。このままではっ!」



手当たり次第ブリューナグの槍を放つが“天国”を捉える事は出来ない。

「ふんっ。なかなか楽しめたがそろそろ終わりにしようか…。この能力は天国に到達するための能力なのでな、お前たちごときに使う力では無い」


尊大な態度をとるアーチャーだが実際はそこまで余裕があるわけではない。
アサシンから魔力を奪ったとはいえ元々枯渇寸前だった状態。さらにマスターである衛宮切嗣も度重なる戦闘と宝具の連続使用によって大きく疲弊していた。
事実、外の様子が分からない大空洞だったゆえにランサーたちは知らなかったが、常に時を加速させ動いていたわけではない。
必要な所でのみ加速させ攻撃し隠れ、あたかも常に加速状態であるかのように見せかけていたハッタリだった。

(だが大体の能力は把握した。あとはこいつらを始末するのみ……)

再び時を加速させ動き出すアーチャー。

(まずはお前からだライダー。この俺をさんざんコケにした事を地獄で詫びるがいいっ!)


そしてライダーの心臓目掛け刺突を繰り出す刹那―――――





ランサーがライダーの間に割り込み庇い、心臓を破壊された……。


「捕まえたぞっ……アーチャー……」
「貴様ランサーっ!」


心臓を貫いたアーチャーの腕をしっかりと握り、僅かに吐血しながらもニヤリと笑うランサー。

「プライドの高いお前なら必ず、真っ先にライダーを狙うと確信していたぞアーチャーよ」

そうして再生する肉体を利用しアーチャーの腕を固定する。

「こうしてしまえば…いくら時を加速させても関係ないっ!終わりだアーチャー!」
「舐めるなランサーっ!!」

ブリューナグの槍が直撃する刹那、“天国”を使いランサーの腕を殴り軌道を僅かに逸らす。
身体の一部は消えたが危機を乗り切ったアーチャーは自らの腕を切飛ばし脱出する。

「ちょっぴり焦ったぞランサーよ。だが唯一のチャンスを逃したなっ!」

再び加速状態になったアーチャー。ランサーは素早く第二波を放つがかわされる。

「『時は加速する』。これで終わりだっ!」

そのままバラバラに切り刻もうとして――――突然加速状態が維持できなくなる。
いや、よく見たら魔力の供給が途切れかけていた。
マスターの細いパスの先を辿れば、そこは先ほどランサーの攻撃の延長線上。

「貴様っ……まさか……初めからマスター狙いで!?」
「悪いが俺はマスターたちやライダーと違って善人では無いのでな。使える手は使わせてもらう」

足元にはライダーのバッタの使い魔。あれで恐らくマスターの位置を特定したのだろう。

「畳み掛けろライダーっ!」
「ハイッ!」

メダジャリバーがアーチャーの両足を切断する。
片腕と両足を失ったアーチャーは地べたに這い蹲る。そこへイザナギと共にランサーのマスターが突撃してきた。


まずい……逃げなくてはっ…
衛宮切嗣はもうだめだ、そう遠くないうちに死ぬ。
契約を破棄して隠れるのだ。枢木スザクでもルルーシュでも誰でもいい…
新たなマスターを手に入れなければ消えてしまうっ!

片腕だけで跳躍し出口へと向かうアーチャー。
だがそれよりも速くブリューナグの槍が出口を破壊、ライダーの渾身の蹴りがアーチャーを吹き飛ばす。

「悪いが…今さら逃げるのは無しだ」
「俺たちも命削って戦ってるんだから、最後まで付き合ってもらいます」


もうイザナギは目前まで迫っている。
近づいてくる死の影・・・

「調子にのるなっ!」

空裂眼刺驚(スペース・リバー・スティンギー・アイズ)をイザナギ目掛け発射しようとしたその時…

「おねがいタコさん!」

こなたが放ったタコカンドロイドがアーチャーの視界を塞ぐ。
視界を塞がれたアーチャーは目標を誤りイザナギの肩を貫通するだけに終わる。


「この……カス共がぁあああああ!!!」
「最後は……お前自身の手で決めろマスター…」

ランサーの声に呼応するように力を高めるイザナギ。

全ての力を……この一撃に込めて!



「馬鹿なっ!このDIOが……このDIOがぁああああ!!?」



「貫け!……仲間の敵だっ!!」



限界を超え放たれた渾身の一撃はアーチャーの頭部を粉砕し、続けざまに干将・莫邪がDIOの胴体を切断、DIOの身体を消滅させた。



【アーチャー(DIO)@JOJOの奇妙な冒険   消滅】







消えて行く……消えて逝く……。
身体が少しずつ分解されて行く。
胴体に大穴が開き傷口から止めどなく出血していく。

だがそんな状態でも、驚くほど冷静な自分がいた。
思ったよりもあっさりと死の覚悟が決まっていたのだろうか…

おそらく違うと考える。
これは虚無感だ。あの時、ライダーの言葉がずっと耳を離れなかった。
信じたくないが認めざるえないだろう。
僕は……どうしようも無く間違っていたのだと…
いつからこうなってしまったのだろう…
僕はただ、平和な世界が見たかっただけなのに……

アイリ…あの時君を連れて逃げていたら、違う未来があったのかな?
僕と、君とイリヤと三人で幸せに暮らす。
そんな『全て遠き理想郷』の未来があったなら…次こそ…必ず……


「ああ…アイリ……イリヤ…」



視界が霞んでいく僕が最後に見たものは……
最愛の妻と娘。そして………




「ごめんね…………士郎………」




僕の心を救った息子だった。




【衛宮切嗣@fate/zero 死亡】






「終わったな……」
「ああ……そうだな……」

静寂に包まれた空間。
アーチャーの消滅を見届けた陽介の顔はどこか重い。

「後悔しているか?」
「…いや。アーチャーを倒した事は後悔なんかしねえし、俺の手でケリをつけたかった事だ」

でも…

「あいつ…衛宮切嗣は…そりゃやった事は許されないし理解も納得も出来ないけどよ。あいつにも譲れないものがあったんだろうな…」

そしてそれを承知で戦ったのは俺だ。
相手の願いも理想も踏みにじって生き残り、敵を討つことを優先した。

「やっぱ慣れねえな…人を死なせるなんてよ…」
「その気持ちを忘れるなよマスター。お前は…俺のようにはなるな…」
「アレックス?」


ピキッ……ピキピキッ……


「ねぇ…なんか変な音がしてない?」
「ちょっと危ないかな…こなたちゃん、側に…」

異変は上から聞こえてくる。その音は徐々に大きさを増し地響きのような振動が発生する。
アーチャーの二度に亘る天井の爆破、ブリューナグの槍、そして複数回の暴風。
それらの要素で脆くなった岩盤が、“天国”の影響で急速に崩壊速度が加速していた。
それによって訪れる結果は……

「脱出するぞマスター。ここはもう崩れる!」
「えちょっおま…」
「ランサーさん。これをっ!」

ライドベンダーを出すライダー。本人はタジャドルコンボに変身している。

「おれがこなたちゃんを抱えて空を飛びます。ランサーさんと陽介くんはそれに乗ってください!」
「バイクって道なんかねえじゃん!」
「大丈夫。これを…」

タコカンドロイドを大量につなげ螺旋階段のように道を作るライダー。

「破片は俺が対処します。ランサーさんは操作に集中してください」
「騎乗スキルが無いといってられんか…マスター、しっかり掴まっておけ!」
「こなたちゃんも掴まって。絶対守るから」

ライドベンダーを発進させタコカンドロイドの道を進むランサー。
こなたを抱え飛翔するライダー。


激戦を繰り広げた大空洞は、完全に崩壊した。






「死ぬかと思った…」
「私も…」

地面に突っ伏す陽介とこなた。
ランサーとライダーは変身をといている。

「調子はどうだマスター?」
「あー……結構しんどい。ていうか眠い…」

新しいペルソナの覚醒。大量の出血による貧血。大幅な魔力消費と精神力の消耗。
限界ギリギリの状態に体が休息を欲していた。

「行くのか…?」
「はい。ランサーさん、二人を頼みます」

まだルルーシュは戦っている。
そしてアサシンはまだ健在なのだ。急いで救援に向かわなければならないがマスター達は体力の限界だ。
この中で一番速く余力を残している自分が単独で向かうことが適任なのだ。
しかしそれはこなたの側を離れる事。
不安もある。だが……

「映司さん…」

立ち上がり真っ直ぐ見つめるこなた。

「行ってらっしゃい。がんばって…信じて待ってる」
「こなたちゃん……うん、行ってくる」

お互いに強い信頼を。
約束する…必ずルルーシュを連れて戻ってくると。


ライドベンダーを走らせ仲間の元へ向かうライダー。
ランサーはマスター達をつれて寺の中に入って行く。
口には出さずとも皆心は一つ。



「絶対にまた会おう」






【深山町・柳洞寺/早朝】


【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、精神力消費(大)、貧血、強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight
“無毀なる湖光”@Fate/zero
[道具]:ミネラルウォーター、カロリーメイト、医薬品一式、大学ノート、筆記用具、電池式充電器、電池、予備の服、食料@現実
     契約者の鍵@ペルソナ4
※携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました(意図的に隠された情報があるかもしれません)。
※ジライヤがスサノオに転生しました。
※イザナギを覚醒しました。他のペルソナを使えるかは他の書き手にお任せします。

【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)
[装備]:携帯電話 カンドロイド複数

【ランサー(アレックス)@ARMS】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、ARMSの進化(進行度・中)
 ※対ARMSウイルスプログラムへの耐性を獲得。



【深山町/早朝】


【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)
[装備]:スーパータカメダル、スーパートラメダル、スーパーバッタメダル
 ※ディケイドのファイナルフォームライドにより、スーパータトバコンボ解放。







柳洞寺の山の中に動く人影。
アサシンのサーヴァント、ファニー・ヴァレンタインである。
胸元は応急処置したとはいえ傷が深く、魔力の消耗も激しかった。

「だが…幸運な方か…。市長が令呪を使ってくれなければ終わりだった。市長…?くそ、意識を失っている」

携帯に電話をかけてもつながれず仕方なく諦める。
だがそれもしょうがないかと納得する。
なにせこの戦いで合計10体近くの分身を生み出したのだ。
無論ほとんどが囮や牽制用のほとんど魔力が無い存在だったとはいえ、魔力枯渇の危険性は十分にあった。
生きているだけで御の字というものだろう。

「とはいえ…これ以上私を連れてくれば本当に市長が死んでしまう。…やむ終えまい、作戦は失敗だ…」

アーチャーがランサーを抑えていたからこそ援護に踏み切ったわけで、本当ならライダーにやられた時点で撤退するべきだった。
しかし完全にタイミングを逃してしまいこうして敗残兵のような有様だ。

「ここで少しでも回復せねば……しかしまだ、私たちは負けてはいないっ」


全てはナプキンを手に取るため…
暗殺者は動かない…


【深山町・柳洞寺山中/早朝】

【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](8人目)・魔力消費(大)、 ダメージ(大)、疲労(極大)、気配遮断 
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話


【新都・双子館/早朝】


【ジョン・バックス@未来日記】
[令呪]:1画
[状態]:疲労(極大)、魔力消費(極大)、気絶、冬木市市長
[装備]:「The watcher」
[道具]:栄養ドリンク(箱)










【月の裏側】



「DIOも落ちたか……」

旧校舎の一室に備え付けられたモニター。
そこに先ほどまでの戦闘を眺める二つの影。

魔王ゼロ
英雄王ギルガメッシュ

方や淡々と…片や愉快そうに眺めていた。

「フン、王を自称する死体が消えたか。あれは我が相手に取るのもおぞましい汚物よ」
「これで残るマスターは5人…あの衛宮切嗣もここで脱落か…」
「なんだ雑種よ。あれがお前の一押しだったのか?確かにあれもなかなか愉快な道化であった」

クックックッと笑う金ぴか。

「あの者の魂は確かに興味深かったが…願いを叶えることなどできぬと初めから分かっていた」

あくまで淡々と話すゼロ。
そこに新たな人物がやってくる。


「興味深い話だね。ぜひ私にも聞かせて欲しい」

黒いカソックを着た大柄な神父―――進行役の言峰綺礼だった。

「進行役のNPCか…教会はどうした」
「もはやあそこにはほとんど意味が無くなったからね。代理のNPCを置いてきたのだよ。それよりも先の話だが、どういう事なのだ?」
「そのままの意味だ。衛宮切嗣はたとえ勝ち残り優勝したとしても、願いを叶える事が出来ない」
「それは…ムーンセルが叶えられる願いを超えているという事か?」
「違う…たとえば他の参加者が同じ事を願えば、内容は変わるがそのものにとって『恒久の世界平和』は叶えられていただろう。
衛宮切嗣だからこそ叶えられんのだ……あのマスターの魂は汚染されていたからな」

決して無視してはいい内容では無いにも関わらず、ギルガメッシュも言峰綺礼も驚いていなかった。
寧ろ納得した表情で話を聞いている。
そして単なる気まぐれか、詳細を語るゼロ…。

「マスターたちのムーンセルでの体…その体は魂をアバター化させたものだ。だが…その魂が汚染されていたとき…どうなると思う?」
「まさか…汚染されたのか?ムーンセルにとって有害なウイルスが入ったデーターみたいなものなのだろう?」
「アンリマユの汚染を受けた魂…その魂に接触したムーンセルは緊急手段として衛宮切嗣の魂を改竄した…」

すなわち、汚染が進行していない状態までの肉体年齢まで戻し…矛盾が出ぬよう記憶を改竄する。
しかし一度感染されたコンピューターが正常に作動しないように…月の聖杯もまた汚染されることになった。

「事実、私が参加者に手を加えたのはアルトリア・ペンドラゴンただ1人だけだ。にも関わらず他の参加者や会場にも影響が広がった」

例えば、唯の弱い少女でしかないのにも関わらず精神異常者のサーヴァント、ゾルフ・J・キンブリーを召還した羽瀬川小鳩
例えば、殷を滅ぼした仙女、蘇妲己のサーヴァントを引いてしまった遠坂凛
例えば、クラス制限を超えた制限を課せられたセイバー、セリス・シェール
例えば、聖杯から与えられたにも関わらず碌に現代知識を咀嚼できなかったセイバー、テレサ
例えば、一参加者の悪性情報の解体に2時間以上もかかった会場の霊脈

「ふむ、そういわれれば思いあたる節があるな。衛宮切嗣は私の存在に何の違和感も持っていなかった…拠点にしていた衛宮邸の変わりようにも違和感をもっていない」
「彼が本来来た時間軸は第四次聖杯戦争が終了して数年たっている。彼は死ぬ直前未練を抱いた。だから私の問いかけに手を取った」
「本当なら衛宮士郎のことも知っているはずだった…しかし汚染された魂ゆえに改竄され彼の情報を失ったと…」

さらに皮肉なのは、汚染が完全に除去できなかったことだ。
アンリマユというウイルスに犯された彼はたとえ優勝したとしても、ムーンセルの有害なデータとして消去されてしまう。

「彼が生き残る道は魔王の引継ぎを受け入れるしかなかった…」
「だが衛宮切嗣はそれを断るだろうね…新たな混沌を引き起こす事は衛宮切嗣の理想と真っ向から反する」
「つまりあの雑種は、どうあがいても無駄だったと…。ふん、道化極まりだな」
「いってしまえば彼は…参加した時点で敗北していたものだ…」


だとすれば酷い皮肉だ。
彼は聖杯戦争で多くの犠牲者を出し、唯一助けた義子も死なせてしまったという事なのだから…


身に余る理想を追いかけ続けた果ての結末がそれとは本当に…本当に…




「なんて………愉悦……っ!!」




口を三日月のように笑う神父。




「ほう…なかなか愉悦たるものが解っておるではないか雑種よ…」
「ふふふ…もしかしたら私の元となった人物の影響かもしれないな。彼の苦悩はとても心揺さぶる」
「ハハハっ!!気に入ったぞ雑種!」

彼の気に召したのか愉快気に笑うギルガメッシュ。

「ところで魔王よ、折り入って頼みがあるのだが」
「頼み…?」
「ああ。この戦い、私の参加を許されたい」

このときゼロは、この神父の真意を測りかねていた。

「私は見たいのだよ。聖杯を求める者…聖杯を破壊する者…どちらが勝つのか。そして彼らが…どんな結末を迎えるのか…
観客席で見るのは飽きてきたところでね。幸いこの通り―――」

手袋をはずす神父。そこに現れたモノは―――――


「令呪…なるほど、マスターの資格を持つNPC。過去にもそんな事例があったらしいな」
「我は構わぬぞ。こやつの在り方もまた興味深い…暇つぶし代わりになってやってもな」
「……いいだろう、好きにするがいい。それもまた一つの手段か…」

そういってこちらに背を向けるゼロ。
モニターになにやら操作すると、教会の地下にここへとつながる道を作った。
もし聖杯を砕こうとする集団が勝てばここに案内しろということだろう。

「必要なときに呼べ。我はここでしばらく観戦している」

ギルガメッシュもまた再びモニターに視線を戻した。

「では教会に戻るとしよう。また後でだ英雄王よ…」

そういって部屋から出る神父を、ゼロはいつまでも見ていた…






教会へと戻る神父の頭にあったのは、教会を訪れた参加者の中で唯一生き残っているマスター。
花村陽介の事だった。

叶えたい願いを持ちながらも奇跡を否定し、殺し合いの現実に苦悩していた少年。
彼を救い上げた名無鉄之介も、彼の親友だった鳴上悠も死んだ。
それでも希望を胸に抱き前を向く彼の言葉…

「絶望には負けたくない…か。しかし少年、君の認識はまだ甘い。



全ての絶望は……始まったばかりだ……っ!」



《言峰綺礼  参戦》



※言峰綺礼とギルガメッシュが契約を結びました。
これによりギルガメッシュは安定した魔力供給先を手に入れましたがどちらか片方が死亡した場合同じく消滅します。
※冬木教会の地下に月の裏側へ通じる道が出来ました。最奥に言峰綺礼とギルガメッシュが待ち構えています。

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