No.4


霧の中。
思考、記憶、絆。
全てがあの霧に飲まれた。
俺はきっと選択を間違えた。

今はもう戻れない。

だが、もしも、
戻れるというのならば、
あの日、
あの時に、
皆との輝かしい日々に、
あの娘の笑顔の元へ。

「まぁ~だ、悩んでんのかよ?」

男が声をかける。
朱槍を肩に担ぎ、
気だるそうに座り込んだ姿勢で
男は何処を見るともなく
視線を宙に彷徨わせている。

「…ランサー、だったよな?」

サーヴァントと呼ばれるこの男は
この手に刻まれた令呪と呼ばれるものがある限りは
どうやら俺に無条件で手を貸してくれるらしい。

「おぉよ、つか考えは決まったのか?
 やるのか? やらねぇのか?」

一切の躊躇い無く、この男は話の本題に切り込んでくる。
この男の言いたい事は
つまり俺に、

『他の者を殺す覚悟は出来たのか』

という事だ。

だが、それならば俺は既に…

「分かってる、願う以上は覚悟も決める」

助けを求める声を否定し、
感情のままに、
一人の人間を断罪した。
それが罪だったのかも分からずに。
俺は既に殺人者だ。
皆と傷を舐め合おうと
忘れ去ろうとした所で
現実が残酷に突き刺さる。

「お前さんは複雑に考え過ぎなんだよ。
 殺すときゃ殺すし、生き残ったんならそれで終わりだ。
 気に入った奴だろうと何だろうと
 戦なんてもんはそんなもんだ」

物凄くさっぱりとしたの物言いだが
つまりこの男には敵味方の概念は無く、
戦場で向かい合ったら戦うだけと
この男はそう言っているのだ。
それはそれで凄い考えだと思う。

だが、戦場と考えるのなら、
それで正しいのだと思う。
これは願望を賭けた戦争だ。
ならば俺もこの男の流儀に乗っ取るべきなのだろうか?
とは言え、答えはまだ決まらない。
だが、止まる事は許されない。
贖罪の為でもなく、
正義でもない。
これは俺の私欲の為の戦場だ。
全てはあの日に戻る為の。

絆(ワイルド)は失われた。
残された力は『愚者』。
まさに今の俺を表すアルカナ。

「…ペルソナ!」

意識を集中させ、意識の中の仮面(ペルソナ)を具現化する。
始まりのペルソナ「イザナギ」。

「ほぉ~、大したもんじゃねぇか!
 心象具現化か? 使える奴なんてそうそういねぇな!」

浮かび上がった像を男は物珍しそうに囃し立てる。

「なかなかマスターには恵まれてなかったんでな。
 久々に面白い戦が出来そうだぜ!」

気だるげにしていた男に覇気が点る。
空気を伝わってくるその圧力は
はっきり言って俺のペルソナの比ではない。
この男が本気になれば
俺なんて赤子の手を捻る程度のものだと
嫌というほど分からせてくれる。

「あんたも大したもんだと思う」

皮肉ではなく本気でそう感じる。
少なくとも今から俺はこの男と
同等の力を持つ者と渡り合わないといけない訳だ。

「何だ、怖気づいたのかよ?」

男が口元を皮肉気に歪めて笑う。

「いいや、燃えてきた」

俺の返答が意外だったのか、
男は最初唖然としていたが
すぐに愉快そうに大笑いしたあと、
口元を引き締めた。

「そいつは結構、そんじゃおっぱじめるとしますかねぇ!」

【参加者No.4鳴上悠@P4】
【サーヴァント:ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】




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