『最悪の状況』とは、どういうことを言うのだろうか。
人によってそれは様々だろうが、少なくともランサーのサーヴァント——クー・フーリンにとって、
己は傷つきマスターを敵サーヴァントに支配されたいまの状況は。

(まだ、巻き返す目がないわけじゃねえ)

最悪、と呼ぶほどのものでは無かった。
なにせ、生きている、己も、マスターである鳴上悠も。生きているのなら——まだ戦いは終わっていない。




いま、悠とランサーは早朝から営業していたファーストフード店に入り、食事を摂っていた。
ナイフ使いのアーチャーとの交戦からさほど時間は経っていない。
何をするにしろ荒れに荒れた地下街からは早めに離れるべきだと判断しそそくさと移動した。
目についた店に入り、カウンターでホットドッグとコーヒーを注文し、二階席の奥の方へ座り、現在。
ずっと動き回っていたため悠はひどく空腹だった。瞬く間に二つ、三つとホットドッグを平らげ、まだ足りないと追加の注文をしている始末。
ランサーも食べるか、と聞いてきた悠の曇りない目を直視できず、ランサーは食欲がないと断った。あっても食べなかっただろうが。

(いまの自分にこれっぽっちも疑いを持ってねえ……アーチャーの宝具はそれほど強力なのか)

声に出さず毒づく。いまの悠の前でアーチャーを少しでも悪く言うと、どう反応するかわかったものではない。
アーチャー——真名をDIO。鳴上悠の額に宝具を埋め込み支配した怨敵。いまの悠は、その敵を崇拝している。
己のマスターを信用しきれない状況だが、それでもやはり最悪には程遠い。
最悪と言うならそれはやはり、自分か悠かどちらかが殺された場合だ。この聖杯戦争は主従一蓮托生であり、どちらかが死ねばもう片方も消える。
先ほど消滅させられた悠のペルソナ——イザナギは、一度だけ死の淵から這い上がるスキルを有していたが、今はもうない。
単独行動スキルを持つアーチャーのような例外はいるものの、基本的には死んだらそこで終わりだ。
キャスターとアーチャー、バーサーカー、ランサー、セイバー二騎とライダー、ライダー、そしてアーチャー。
短時間でこれだけ連戦を重ねても生き延びたということは、ある意味凄まじい強運であるとも言える。

(たとえ悠がアーチャーによって支配された状態であっても、まだ何とかする可能性は残っている)

ランサーは思い返す。四戦目、セイバー二騎そしてライダーと対峙したときのことを。
原初のルーンとイザナギの魔法による自己強化を経て、ランサーはかの騎士王を圧倒し、
遅れてやってきた男のセイバーともども、“突き穿つ死翔の槍”で戦闘不能に追い込んだ。
男のセイバーのマスターと思しき少年から受けた魔眼を弾き返し、いざ首を獲ってやろうとした所で——あのライダーが現れた。
ライダーが“太極図”と呼んだ宝具が発動すると、セイバーたちに与えた傷が回復し、
それどころか宝具解放の余波で破壊された道路や家々までも修復された。
そしてライダーはこうも言った——宝具は一時的に死んでいる、と。
総合して考えるに、あのライダーの宝具の効果は“宝具によってもたらされたあらゆる効果のキャンセル”と見てほぼ間違いない。

(あの宝具の力ならば、悠に埋め込まれたアーチャーの“肉の芽”とやらも無効化できる……そう考えていいはずだ)

“肉の芽”の宝具としてのランクはわからないが、精神操作系の宝具をキャスターではなくアーチャーが使うのだから、
クラス特性に合致しているとは言い難い。
少なくともクー・フーリンが誇る最大宝具、“突き穿つ死翔の槍”のB+より上ということはないだろう。
“突き穿つ死翔の槍”を打ち消せるのだから、それより下位のものをやれない道理はない。
あるいは、男のセイバーのマスターが使った魔眼。
あの魔眼はサーヴァントであるランサーには通じなかったが、人間が扱うものとしては極めて強力なものだった。
アーチャーの“肉の芽”の支配から、さらに魔眼の支配を上書きする——方法の一つではある。
だが、これは確実性に欠ける。仮にもサーヴァントの宝具を人間の魔術で打ち消すのは困難であり、
よしんば悠が自我を取り戻した所で“肉の芽”そのものを排除できるわけでもない。
あくまでも次善の策——ライダーの宝具を利用できなかった場合の、保険程度に考えておくべきだろう。
ちなみにアーチャーを撃破する案は早々に却下した。
自分が死ねば“肉の芽”は暴走するとアーチャーは言った。
ブラフの可能性が大きいのだが、100%そうだと断定できない限り賭けには出られない。
なにせ仕損じれば悠は再起不能になるのだから。

(まあ、そもそも……奴らにどうやって宝具なり魔眼なりを使わせるか、って問題もあるしな)

悠はホットドッグを食べながらも、常にテーブル上の携帯電話から手を離さない。
その携帯電話に登録された人物は、いまのところ枢木スザクのみ。だが悠が連絡を待っているのは、決して枢木スザクではないだろう。
アーチャーは別れ際に自分も携帯電話を買うと言っていた。離れていても悠にはアーチャーの首輪がつけられている。
霊体化し、特に食事を摂る気にもならないランサーは徒然と考える。どこで手を指し損なったのか。

(アーチャーか、その前のライダーか……どっちでもねえな。そう、あのバーサーカーと戦ったときか)

漆黒の鎧を纏う騎士——しかしセイバーではなく、バーサーカー。
あのサーヴァントは戦闘に直接関わる三つのステータスがすべてAランク以上、宝具の解放でさらに全ランクが上昇した。
放てば必ず心臓を貫く必殺の宝具、“刺し穿つ死棘の槍”さえも凌ぐ、まさに化け物のような相手だった。

だが、悠とランサーは勝利した——否、勝利『できてしまった』。

強大な敵を、さほどの犠牲も払わず、どころか英霊の代名詞たる宝具を奪うという大金星を挙げてしまったのだ。
この勝利がそれからの舵取りを誤らせた。多少の無茶でも押し通せる、そんな風に考えてしまった。
もし仮にバーサーカーに敗走していたなら、悠たちはもっと慎重に動いていたはずだ。
目についた鎧武者のランサーにも、アインツベルンを相手取る危険性をもっと重く見て軽々に仕掛けはしなかった。
ランサーを倒さねばセイバー二騎にライダーと敵対することも、宝具を晒しあまつさえ無効化されることもなかった。
その後のライダーとは遠からず戦うことになったかもしれないが、
その場合でもランサーは決して悠を単独で敵マスターに当たらせることはしなかっただろう。
悠が、あまりにも戦えてしまうものだから——ペルソナ、そして悠本人の資質、度胸が、ランサーをして、
『こいつなら任せても大丈夫だ』と、過信させてしまったのだ。
二人目のライダーの戦い方は、マスター同士で一騎打ちをさせるためにランサーを引き付けておくためのものだった。
敵の魂胆をわかっていて尚、ランサーは誘いに乗ったのだ。悠ならランサーの援護なしでも敵マスターを倒し得るだろうと。
その結果が、ライダーのマスターによるペルソナの破壊だ。
実際、途中まで悠は戦況を有利に進めていた。敵マスターは重機で武装していたものの、悠のペルソナを打ち崩せるものではなかった。
敵は敏捷性を上げる魔術も使えたようだが、焼け石に水。イザナギの雷で勝負はつく——そのはずだった。
全て、敵の掌の上だった。奴の狙いは初めから、悠のペルソナを砕くことにあったのだ。


イザナギの矛から無様に逃げ回ることも、効きもしない銃弾を何度となく打ち込んだことも、全て仕込み。
雷を放つ力を溜めるため悠とイザナギが動きを止め、回避という選択肢を脳裏から消し去る。そこに、狙い澄ました一撃。
おそらくこれまでの戦いをどこかから見られたのだろう。敵は明確に悠のペルソナに対して対策を立てていた。
どんな強力な能力だろうと、正体を知られれば突破されるのは自明の理。
かつてランサー自身、言峰綺礼の令呪によって諜報活動に従事させられたように、情報は戦の勝敗を決するほどに重要なもの。
悠とのコンビがうまく噛み合い過ぎたあまり、足元を見ず初歩的なミスを犯してしまった。

(イザナギを失くした後のこいつは、見ちゃいられなかったな)

ペルソナとは、元々悠が彼の仲間との交流の中で得た力であったらしい。
本来悠はイザナギだけでなく、数十種類のペルソナを自由に付け替えて戦っていた。ランサーの知識からすればそれはまさに規格外の力だ。
この場ではイザナギしか使えなくなっていたそうだが、それは悠が経験したある出来事に起因するらしい。
選択を間違えた——悠は顔を歪めてそう呟いた。時が過ぎても癒されない心の傷を抱えていた。
その傷こそが悠の本来持っている力を封じ、イザナギという『最初の一つ』のみを残してペルソナを全て失わせた。
イザナギは鳴上悠に取って過去と繋がるたった一つのよすがであり、もう一人の自分と言えるものでもあった。
それが砕かれたとき、悠は身体ではなく精神に甚大なダメージを負ってしまった。自己の否定——
奇しくもあのライダーのマスターが言った『空っぽ』という言葉通りの状態になったのだ。
あのときもしバーサーカーが乱入して来なければ、茫然自失の悠ではとてもライダーたちには対抗できず討ち取られていただろう。
その後の枢木スザクとの交渉でも一方的に主導権を握られたのは、著しく判断力が落ちていたせいだ。
枢木スザクから解放され、ランサーが合流した後も、悠に覇気が戻ることはなかった。
同盟を組んだとはいえ、あのような状態では一方的に利用されて捨てられるだけ。
そう判断したランサーは東の新都へと落ち延びてきたのだが、待っていたのはさらなる絶望だけだった。

アーチャーとの戦いは、もう思い返すのも嫌になる。
弓兵の広い視界から逃れるのは至難の業であるし、先手を打たれたこと自体は当然のことだ。
遠距離攻撃を封じるために地下に入り、のこのこやってきたアーチャーを返り討ちにしようとした。問題はそこからだ。
ペルソナと似た、しかし遥かに力強い心象具現化魔術。投擲用のナイフを爪のように用いた凄まじい拳のラッシュ。
アーチャーは遠間から仕掛けてくるものという思い込みを根本から否定する、接近戦志向のサーヴァント。
そしていまもって謎なのが、奴が“ザ・ワールド”と呼んだ心象具現化魔術とアーチャーに挟まれた瞬間だ。
ランサーの槍を凌がれたといっても、アーチャー本体に反撃をするだけの余裕は与えなかった。
前後から迫る敵から距離を取るため、横方向へと跳躍しようと脚を撓めた、その瞬間——その瞬間にはもう、ランサーは倒れ伏していたのだ。
全身至る所に打撃による鈍い痛みと鋭いナイフが突き立ち、ただの一瞬で戦闘不能へと追い込まれて。

ランサーはアーチャーから片時も目を離してはいなかった。
背後から迫る“ザ・ワールド”が何をするにも、指令を送るのはアーチャー本体である。
アーチャーが行動する瞬間を見極めれば、対処は可能なはず——だった。だが結果はランサーの敗北だ。まさに『何もできなかった』。
それは速いとか遅いとかいうものではない。敏捷性に秀でたランサーが、連続した意識の中に何一つ兆候を感じ取れず結果だけを押し付けられたのだから。
精神を支配された? これも違う。ランサーにはCランクの対魔力スキルがある。アーチャーごときの魔術で干渉されることはない。
速さでも、精神干渉でもない——ならば答えは一つだ。

(催眠術だとか超スピードだとかチャチなもんじゃあ断じてねえ……あれは……そう、あれはおそらく……時間を止める固有結界)

空想具現化の亜種。自身の心象で現実世界を塗り潰し、望む結果を導き出す大魔術。
ただ一つの結果しか生み出すことができないが、故に結界内ではその結果は絶対である。
対魔力スキルなど関係ない。停止した時間を認識し干渉する能力がなければ、気がついた時にはもうアーチャーの攻撃は終わっているのだ。
敵の情報を知れば、とは言ったものの、時間を支配する魔術が相手では知った所で対策の打ちようがない。
せいぜい、アーチャーに固有結界を発動させる隙を与えないこと——やれることは本当にその程度である。
男のセイバーはランサーの“突き穿つ死翔の槍”に対して自身の宝具をぶつけ相殺したが、直接的に攻撃するタイプの宝具ではないのでそれは不可能。
宝具を無効化するライダーにしても同様だ。後から宝具を展開するのではもう遅い。
勝機があるとするならば、出会い頭に“刺し穿つ死棘の槍”などで先手必勝を期すしかない。
はたしてもう一度アーチャーと戦える機会があるかはわからないが——

(もしライダーの宝具が展開後も効果が持続するものであったなら……奴の固有結界、それ自体の展開を防ぐこともできる、か?)

ライダーが宝具を解放してしばらく、手の中の愛槍は手応えこそ普段通りだが魔力が通らなくなっていた。
あれがもし、ライダーの宝具によりもたらされたものであるなら——
“太極旗”とやらの効果は“宝具によってもたらされたあらゆる効果のキャンセル”に加え、もう一つ。
“場にあるすべての宝具の強制無力化”。発動すら許さない、強力な宝具殺しの宝具だ。
もしランサーの想像通りであるなら、あのライダーの宝具は悠とアーチャー、双方に対してのジョーカーと成り得る。
アーチャーが固有結界を使用する前、あるいはアーチャーの初撃を何とかして凌いだ後、
ライダーに“太極旗”を使わせれば全てをひっくり返すことができる。
肉の芽は解除され悠は自我を取り戻し、切り札を封じられたアーチャーはセイバー二騎に、
あるいはランサー自身に、いずれにしろ容易く討ち取れるだろう。
状況を打開するには未だ見ぬ敵の宝具に望みを賭けるより、あのライダーを利用するのが一番確実な方策だ。

(だが、この情報は悠を通じてアーチャーにも伝わっている。なぜ奴はあっさり退いた?)

問題はここなのだ。
アーチャー自身、“肉の芽”より高ランクの対魔力宝具なら解呪は可能とほのめかしていた。
実際にそんな都合のいい宝具を持ったサーヴァントがそうそういるわけはないと高をくくっていたのかもしれないが、
悠からライダーの宝具を聞いてもなお、問題なしと思っているのか。
アーチャーに支配された悠はともかく、ランサーは確実に“肉の芽”の解除に動くとわかっているはずなのに。


(俺が奴だったなら、決して放置はしねえ……少しでも叛意があるなら徹底的に叩き潰しておくな)

そう、たとえば——令呪を使えば、確実だ。
マスターを宝具で支配し、マスターに令呪を使わせてサーヴァントをも隷属させる。それだけで綻びはなくなる。
そうしなかった理由はなにか。嫌な予感がする。


悠の携帯電話が鳴った。


止める間もなく悠が携帯を取る。
もし先ほどの地下街でアーチャーが悠に令呪を使わせようとしていたなら、ランサーはなりふり構わずアーチャーを仕留めにかかっていただろう。
戦闘続行のスキルを持つランサーは負傷していても動きが鈍ることはない。さらにランサーは宝具を解放してもいなかった。
窮地に追い込まれたサーヴァントがマスターの生死を無視して反撃に出る——アーチャーがそれを恐れたのだとすれば。

(一度間を置いて、安全な距離まで離れてから……)

「ランサー。DIO様が代わってくれって」 

悠が携帯を差し出してきた。
ランサーは霊体化を解き、悠から携帯を受け取る。
予感はもう確信に変わっていた。

「……アーチャー」
「やあ、ランサー。いや、ここは“光の御子”クー・フーリン殿とお呼びすべきかな?」

真名を知られた。どのみち悠を隷下に置くこのサーヴァントに隠し通せるものではなかったが、不快感は抑えられない。

「何を隠そう、私は英国出身でね……凡百のサーヴァントならともかく、かのケルトの大英雄と接するとあっては自然と襟も正そうというものだ」
「おためごかしはいらん。本題に入りな、アーチャー。俺に言いたいことがあるんだろう?」
「ふむ、せっかちだな。私としてはあなたともじっくり語り合いたかったところだが、
 その様子では私が何を考えているか、すでに理解しているようだな」
「ハッ、わかるさ。お前が俺を恐れて逃げを打ったってこともな」

どうにもならないことはわかっていた。アーチャーはこの場にはおらず、槍を届かせることは叶わない。
詰みだ。
もう、ここからランサーに打てる手はない。
せっかく掴んだアーチャーの真名も宝具の正体も、誰にも伝えられない。
悠をアーチャーから解放する可能性も——潰えてしまった。

「フフ、まあその通りだ。追い詰められたネズミはネコさえも食い殺す……私は何度もそれで失敗したのでな。念には念を入れたというわけさ」
「腑抜けが。貴様は刃を交える価値もない、ただの三下だ。誇りを持たぬ俗物め」
「手厳しいな。どうやらあなたと友人になることはできないようだ」

アーチャーの溜息。
聞き分けのない子供に接する大人のような、上位者の物言い。
アーチャーが上で、ランサーが下——絶対の事実。

「戦上手なあなたのことだ。もう私の“ザ・ワールド”の力もおおよそ把握しているのだろう。
 そして私の真名も知っている……放置しておくはずはないな」

 顔を上げれば、悠が右手をこちらへと向けている。
 その表情には一片の躊躇いもない。そうすることが正しいことだと確信している、疑っていない——
 アーチャーへの崇拝が、ランサーへの信頼に勝っていることの証明。
 止めるのは容易いことだ。朱槍で一突きすれば、眼前の人間は造作もなく死に至る。

「悠……」
「ごめん、ランサー。でも心配しないでくれ。DIO様の言う通りにすればまた後で会えるから……“天国”で」

 だが——できない。
 いまは操られていても、一度は槍を捧げた主なのだ。マスターを弑逆することは、騎士たるランサーの誇りが決して許さない。

「謝んなよ。代わりに……死ぬなよ。どんだけ汚い手を使おうが、誰かに憎まれようが、生きてりゃ勝ちなんだ。死ぬんじゃねえぞ、悠」
「わかった。ありがとう、ランサー」

 悠が笑う。ランサーが見慣れた、だが決定的に異質な歪な笑み。

「今回は当たりを引いたと思ったんだが……ま、運がなかったな。いつものことだが、よ」

 自嘲する。
 携帯電話からアーチャーの——DIOの哄笑が響いている。
 ランサーは固く、目を閉じた。



「さらばだ、ランサー。頂点にいるのはこのDIOただ一人でいいのだッ!」
「令呪を以って命じる。ランサー、“狂化せよ”」



        ◆



「終わりました、DIO様」
「ご苦労、悠。ランサーの自我を奪うのは私も心苦しいのだが、すまない。確実を期するためには他に方法がなかった」
「いえ、ランサーは死んだわけじゃありません。いまも俺と一緒にいます。何も変わらない……DIO様が謝ることはありません」

黙念と佇むランサーを見る。
令呪で擬似的に狂化の属性を付与されたランサーは、自立的に話すことはもうないだろう。
自我を失ったサーヴァント——壊れた刃。
あるいは、狂化し恐るべき力を得たサーヴァント——破壊を象徴する刃。
それでも、悠は後悔していない。
この戦いに勝ち残れば、疎遠になった特別捜査隊の面々や、従姉妹、叔父、そしてランサーも。
みなDIOが救済してくれると確信しているから。

「そう言ってくれると救われるよ。いまの君なら狂化した分の魔力負担も賄えるだろう。働きに期待している」
「全力を尽くします、DIO様」
「ああ、もう敬語はいい。私と君は対等の親友だ。親友に上下関係はない。そうだろう?」
「わかりました……いや、わかった。じゃあこれからDIOさんって呼ぶ」
「フフフ……DIOさん、か。くすぐったいじゃあないか。だが悪くないな」
「それで、DIOさん。これから俺はどうすればいい?」
「今後は君の好きに動きたまえ。そうだな……日が落ちたら一度合流しようか。
 ただし、あまり離れると何かあったとき対処し辛い。西の深山町には行かないでくれ」
「わかった」

元より西に行く気はなかった。西にはあの男がいる——ただ一発の銃弾でイザナギを消滅させた、ライダーのマスターが。
いま悠が宿している伊邪那岐禍津大神はイザナギとは段違いのスペックを誇るが、だからと言ってあの弾丸を無効化できる確信はなかった。
それに、相性が最悪の相手にわざわざぶつかりに行くこともない。
放っておけば誰かが倒すかもしれないし、最悪の場合DIOに任せればそれで済む話だ。
スザクとの同盟に関してももう考える必要はない。ペルソナが戻ってきて、DIOという新たな同盟者もいる。
食事も摂り、ペルソナのスキルにより体調も整ってきた。これならすぐにでも戦える。
ランサーは元々魔力消費がさほど多くない。DIOの言葉通り、伊邪那岐禍津大神が生成する魔力なら狂化で増加した分も軽くカバーできるだろう。

「じゃあ、DIOさん。また後で」
「ああ。気をつけてな、悠。再会を楽しみにしている」

DIOとの通話が切れた。
悠は店を出て、目覚め始めた街へと一歩を踏み出していく。

「さあ行こう、ランサー!」

付き従うサーヴァントはもう、何も喋らない。


【新都/朝】

【鳴上悠@ペルソナ4】 (残令呪使用回数:1)
 [状態]:肉の芽、疲労(小)、精神力消耗(小)
 [持ち物]:大鹿のルーン石@Fate/stay night、携帯電話
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
 [伊邪那岐禍津大神]保有スキル:メギドラ、勝利の息吹、コンセントレイト、大天使の加護、アギラオ、ブフーラ、ジオンガ、ガルーラ
  ※DIOとのコミュニティ“世界”のレベルがMAXになり、ペルソナ“伊邪那岐禍津大神”が覚醒しました(絆アイテム:肉の芽)。
  ※伊邪那岐禍津大神の外見はコートの黒くなった伊邪那岐大神です。ただし肉の芽に支配された状態からの覚醒であるため、能力は弱体化しています。
  ※肉の芽はDIOが死ぬと暴走します。解除するには精密な動作で頭蓋から引き抜くか、Aランク以上の魔力を打ち消す宝具を使用するしかありません。肉の芽が解除されると“伊邪那岐禍津大神”も消 滅します。
  ※スキル:勝利の息吹により、時間経過で体力・魔力が回復します。

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
 [状態]:魔力消費(中)、ダメージ(中)、令呪により狂化:Cを付与
  ※狂化時のステータスは以下の通りです。 (狂化:C 理性を失う代わりに魔力と幸運以外のステータスが1ランク上昇)
    筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力C 幸運E 宝具B
  ※参戦時期はセイバールート、ギルガメッシュに倒された後です(記憶は継続しています) 。
  ※令呪の力により、四十八時間後まで枢木スザクとバーサーカーには攻撃できない。ただし、『先に攻撃されて反撃する場合』においてはこの限りではない。
  ※令呪の力により狂化しています。時間経過で解除されることはありません。



【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:負傷(軽微)、魔力消費(大)
  ※宝具“ロードローラー”は破壊されました。再召喚は不可能です。
  ※鳴上悠より、彼が交戦した全てのマスター・サーヴァントの情報を得ました。
  ※携帯電話を入手しました。鳴上悠の携帯電話のナンバーを記憶しています。

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