Red Dead Redemption

 
そこは木々の間から僅かな月の光が指す原生林の内部。
『魔法の森』。化物キノコの放つ胞子が宙を舞い、瘴気による悪環境を生み出している深い森。
「普通の人間ならば呼吸をするだけで体調を崩す」と称されるレベルだ。
しかし、主催者の何らかの力によるものか…その瘴気は普段と比べれば遥かにマシな程度にまで抑えられていた。
通常の人間でも森の内部における活動が可能になっているのだ。
とはいえ、流石に長時間の滞在となれば多少なりとも体調に悪影響を及ぼす可能性が出てくるが。
 
「メンドーなことに巻き込まれちまったぜ…」
 
大きな樹木の傍に立つ一人の男が、現実を改めて認識しつつ気怠げに呟く。
その男の名はグイード・ミスタ。ギャング組織「パッショーネ」の一員にしてスタンド使い。
ジョルノ・ジョバァーナが組織のボスになって以降、事実上のNo.2として見られている。
 
さっきまで自分が何をしていたかを思い出せない。
軽く痛む頭を片手で抱えるように触りながら、彼は軽く舌打ちする。
ワケもわからずに殺し合いの場に巻き込まれてしまった。職業柄、殺人そのものに抵抗はないが…こんな催しに付き合うほど悪趣味でもない。
総勢90名もの参加者によるルール無用の殺し合い?馬鹿言え。ふざけやがって。
ギャングの抗争でも何でもない、享楽の為の殺し合いにわざわざ乗れってか?
即座に「NO」って言ってやりてー所だぜ。第一、あの場には女子供もわんさかいた。
つまり、此処は俺みたいなギャングだろうと女子供だろうと『参加者』として駆り出されてるってワケらしい…。
悪趣味にも程があるぜ、クソッタレ。
荒木飛呂彦に、太田順也…とか言ったっけな?アイツらには絶対に『オトシマエ』を付けてもらわなくっちゃあな…
 
だが、どうする?
反抗した所であの場の女のコみてーに頭をフッ飛ばされちゃあ敵わないからな…
どうにかしてアイツらを攻略する方法を捜さなくっちゃあならねえ。その為には仲間が必要だ。
名簿を見る限りではジョルノの名は見受けられた。…アイツは頼りになるだろう。
だけど、それよりも気になることは――――
 
「『ブチャラティ』『プロシュート』『ディアボロ』…何であいつらの名が記載されてたんだ…?」
 
そう、死んだはずの人間の名前が記載されているのだ。
 
 

 
ブローノ・ブチャラティ。俺の所属していた護衛チームの頼れるリーダー。
だが、ボスとの抗争の末に死亡した。ジョルノがその意志を受け継いだんだ。
 
プロシュート。かつて俺たち護衛チームが戦った『暗殺チーム』の一員。
奴はブチャラティと戦った末に死亡した、とスデに聞いている。
 
ディアボロ。俺たちが裏切ったギャング組織「パッショーネ」のボス。
レクイエムに目覚めたジョルノに倒され…死んだはずの男。
 
みんな死んだはずの人間だ。いるはずがない。
だが、この名簿には確かに載っている。こいつは一体どうゆうことなんだ?
まさか、連中には死者を生き返らせる能力でもあるっていうのか?
それとも何らかの意図によるウソの記載?
…どちらにせよ今はまだ何も解らねえ。情報が足りなすぎるんだからな。そのことは保留だ。
 
「とりあえず…拳銃があっただけマシか?」
 
そうぼやくミスタの右手に握り締められているのは小型の拳銃。
まるで玩具のように小柄であるその拳銃は『ダブルデリンジャー』。
ミスタに支給されたランダムアイテムの一つ、上下2連の中折れ式シングルアクション拳銃だ。
単純な機構故に故障しづらく、小型で隠し持つことが容易であるという「護身」や「暗殺」向けの拳銃だ。
とはいえ構造上装弾数は2発のみ。極端に銃身が短く、銃弾の飛距離も長いとは言い難い。
拳銃を手に入れられただけマシだが、この小さな銃でどこまで戦闘を乗り切れるか…
出来れば手慣れてる奴…そう、リボルバーが欲しかったんだけどな。
だが、この手の銃は威力も十分にあると聞く。それに、俺の「ピストルズ」で飛距離とかはある程度ならカバーは出来るだろう。
…ともかく、今回も何とかなるといいんだけどな。
 
銃を試しに真っ直ぐ構えてみる。…やっぱりっつうか何つうか、手には馴染まねーな。
ここまで小振りのサイズの銃を手にした経験は殆ど無いだけに「手慣れない」というのがまず第一の感想。
構えづらいし、小さいせいで照準も妙に合わせづらい。
こうゆう、デリンジャーとかはは西部劇でもよく出てきた銃らしいが…
 
「…やっぱ『護身用』だな…」
 
俺は少しばかり文句を垂れるようにぼやく。
欲を言えばリボルバーが欲しかった。こうゆう護身用のデリンジャーとかよりな。
だが、不満を抱いていた所で何も始まらない。
ともかく、今の俺に必要なのは「仲間」と「情報」だ。あの主催者をブチのめす為に必要だ。
そうゆうわけで…そろそろ動くとするか。
 
 
 
 
(あ、そういやもう一つ支給品あったな。新聞紙だったけどよ。
 確か…カカシネンポー?とかそんな名前の。妙に固っくるしい文章で読んでて退屈だったけどな)
 

◆◆◆◆◆◆
 
 
 
 
 
彼女は呆然と膝をついていた。
 
その瞳は虚ろであり、宙を眺めているかのようだ。
 
顔に張り付けられているのは唖然とした絶望の表情。
 
さっき起こった現実を、現実だと認識したくなかった。
 
でも、頭は既にその事実を理解している。本物だと解っている。
 
もはや膝に感じる数多の雑草の気持ち悪い触感すら気にならない。
 
そんなことを気にしている余裕なんて、彼女にはなかったのだから。
 
何故なら、彼女は――――
 
 
 
 
 
「………穣子…………」
 
 
 
ぽつりと口から漏れた名前。
それは主催者の手により、見せしめにされた哀れな少女の名。
少女の名は「秋静葉」。
秋の神様の一人。寂しさと終焉の象徴。秋の『衰退』を司る少女。
―――そして、この催しの見せしめとなった「秋穣子」の姉だ。
 
ルール説明の後、気がつけば彼女は深い森――魔法の森の中に送り込まれていた。
先程起こったばかりの妹の死という事実を受け入れ切れられないままに。
 
 
「どうして…、…どうして…」
 
うわ言のように少女の口からぽつぽつと言葉が漏れ出てくる。
 
どうして、どうしてこんなことに?
あの場に拉致され、二人の主催者を目の当たりにした時から…私は恐怖していた。
いや、正確にはあの「太田順也」という男に恐怖していた。
何故かは解らない。だけど、本能が理解してるような、脳髄に染み付いてるような…そんな恐怖心を、あの男に抱いていた。
そして…太田順也から感じる、言いようのない既視感に…更なる畏れを感じた。
何で私はあの男を『懐かしい』と感じているんだろうか?何で私は…あの男を、こんなにも畏れているんだろうか?
これでは、まるで―――『神』を恐れる『人間』みたいじゃないか。
神である私が、こんなにもあの人間に恐怖している。
 

 
得体の知れぬ恐怖が晴れぬまま、男達から「殺し合いの開催」を宣言された時だった。
そう、隣にいた私の妹「穣子」があの男達に臆することもなく食って掛かったのだ。
殺し合いなんて冗談じゃない、って。――当然だ。あの娘は昔から、納得出来ないことには真っ向から立ち向かう。
そうやって、今回もああやって恐れることもなく立ち向かったんだろう。
行っちゃ駄目だ。あの男は絶対にマズい。そう言おうとした。でも、出来なかった。
怖かったから。妹のことよりも、得体の知れない恐怖が勝ってしまった。
声を出そうとしても、怖くて出すことが出来なかった。
 
 
 
 
 
そうして、気がついた時には。
二人に食って掛かった穣子の頭が なくなっていた。
 
 
 
紅葉なんかよりも、ずっと濃い『紅色』が散らばっていた。
そこから、私は呆然とするしかなかった。
目の前で―――穣子が殺されたという事実に気付いてしまったから。
止められるはずだったかもしれないのに止められなくて、あの子を死なせてしまったから。
そこから男達が何かルールを説明していたらしいが、私の頭には殆ど入ることはなかった。
あの瞬間、私の頭の中が真っ白になってしまったから。
 
 
ゲームが始まり、こうして会場の森の中に送り込まれても…彼女は動くことが出来なかった。
ただただ、うわ言のような言葉を漏らしながら呆然としていた。
今もこうして何も考えられなかった。
 
 
―――それから、目の前より「銃を携えた男」が近づいて来ていることに気がついたのは少し時間が経った後。
 

◆◆◆◆◆◆
 
 
「…子供か」
 
木々の間から僅かに差す月明かりを浴びる男が、拳銃を片手に低い声で短く言葉を紡ぐ。
少女はゆっくりと目の前に立ちはだかる拳銃の男を見た。
月光で服装などの出で立ちの部分のみ少しだけ姿が見えるが、薄暗く顔がよく見えない。
少々古びた、小汚い服を身に纏っているのが解る。僅かに見える口元には髭が生えている。
声から察するに中年前後の男性に思える。声色はどこか冷たく、素っ気ないように感じる。
そして―――説明のし難い、でも確かに存在する『殺意』が男から感じられた。
 
「お前も、この殺し合いにおける参加者だろう」
 
「………………………。」
 
私は何も答えない。
何も答える気になれない。元より殺し合い自体がどうでもよかった。
私の力で生き残れる気なんてしないし、穣子が死んでるんだからどうでもいい。
…あぁ、そういえば皆死ねば一つだけ願いが叶うんだっけ?
でも、無理だろう。私たちはただの秋の妖怪。戦闘能力なんて、他の大妖怪と比べればずっと低い。
勝てるわけがないし、生き残れる気もしない。
ならいっそ、もう殺されても良かった。穣子の後を追うのもいいかな、って。
そう思っていた。
 
「……殺してよ」
 
「何?」
 
「貴方は…生きたいんでしょう?この殺し合いで…生き延びたいんでしょう?
 なら…もう、私は…死んでもいいから… あの会場で…私はスデに、妹も殺されてる。
 この闘いで勝ち残れるワケもない、…だから。 私を、殺してよ」
 
私は、自分の思いを吐き出した。
お願い、その銃で私の頭を貫いて。
別に此処で死んだって構わない。
衰退の象徴のような、惨めな最期を迎えさせてよ。
これから襲いかかってくる恐怖に逃げ惑って殺されるくらいなら、妹と一緒に――――
 
 
 
 
 
「―――お前は、俺を侮辱しているのか?」
 
 
予想もしない返答が返ってきた。
男はそう吐き捨ててきた。
心底忌々しげに、私の言葉に対して苛立っているかのように。
私は、ぽかんと男を見上げていた…
 

 
「え…?」
「何の抵抗もせず、絶望に飲まれ、ただ呆然と殺されるのを待つだけか?」
「私は…、もう…」
「それ以上お前の言葉を聞くつもりはない」
 
目の前の男は私に失望したように言葉を吐き出す。
いや、そもそも元から期待すらされていなかったのかもしれない。
ただ単に予想通りに結果を前に改めて苛立ったのかもしれない。
――どちらにせよ、目の前の男は私を『見下している』のが解った。
 
「俺が『生き延びるために戦う』とでも…思っていたのか?」
 
「………………。」
 
「俺の望みは、『公正なる果たし合い』…それだけだ」
 
公正なる…果たし合い?
 
「お前のような小娘に、俺の世界は永遠に理解できないだろうな…
 いや…生長することも出来ず、前に進む意志をも放棄した『死にたがり』に理解させるつもりもない」
 
生長?前に進む…意志?
 
 
 
「―――そこで永遠に立ち止まっているのがお似合いだ、小娘」
 
 
 
目の前の男はそうやって私を見捨てるように言い放った。
私は何も言い返す事も出来ず、ただ唖然と男を見ていた。
そうして目の前の男は歩き出し、私の傍を通り過ぎようとする。
私の言葉を一蹴して、その場から離れようとしてる。
一瞬引き止めてみようか、という思考も浮かんだ。だけどそんな考えはすぐに吹き飛んだ。
止めた所で、どうにもならない。この男は…私を楽にしてくれないから。
私は、男が雑草を踏みながら歩く音をただ黙って聞くことしかできなかった―――
 

 
だけど、唐突にその音が鳴り止んだ。
膝をついている私の少し後ろの方で、男は立ち止まっていた。
ふと振り返って見た。――男は、私の方なんて見向きもしていない。
でも、何故か立ち止まっていた。
私は少し不思議そうに男を見てから、ようやく現状を理解することが出来た。
 
 
「…『参加者』だな?アンタら…」
 
もう一人、『銃を片手に持った男』が木々の奥底から姿を現したのだ。
新たに現れた男は、怪訝そうな表情で私たちを見ていた。
 
◆◆◆◆◆◆
 
 
「…………。」
 
「…オイ、アンタら。聞いてんのか?」
 
この俺、『グイード・ミスタ』はあれからダブルデリンジャーを片手に森を少しばかり進んでいた。
そうしたら、こんな風に二人の参加者らしき奴らを発見したってワケだ。
支給品に照明器具はあったが、そんなもの点けて歩いてれば遠距離から攻撃される危険性だって増すだろうから使ってない。
だから薄暗くてよく見えねーんだが…どうやら、一人は女のコ。もう一人は体格のいい男だ。
女のコらしき影はさっきから膝をついたままぽかんとこっちを見ている。
さっきの様子を見る限り、男はこの場を去ろうとしてたみたいだが…どうにも状況がよく解らない。
それに、男の方も女のコも方も何も答えてくれないって始末だ。
男の方は銃を片手に握り締めているし油断も出来ない。…にしても、返事が帰ってこない。
全く、何か一言くらい――――
 
「成る程、お前はいい目をしている」
 
「…は?」
 
目の前の男から唐突にそう言われた。
いきなりすぎる一言に、俺はうっかりぽかんとしてしまった。
 
「その様子を見る限りでは、銃を使うのにも慣れているらしいな」
「…何が言いてーんだ、アンタはよ?」
 
俺が銃の扱いに慣れていることをすぐに見抜いた辺り、シロートってワケじゃないらしい。
こいつも片手に銃を持っている…というより、よく見たらアレは俺の銃じゃないのか?
それに、鋭く真っ直ぐにこちらを見据える眼差しからもただ者じゃないことは理解出来る。
…そもそも、こいつの意図が少しばかり読めない。一体何が目的だ…?
そう思っていた矢先だった。
 
 
 
「――お前との果たし合いを、申し込みたい」
「……何?」
 

 
―――男の発言に対し、俺は少し呆気にとられたように言葉を漏らしてしまった。
果たし合い。つまり、決闘。
出会ってからものの数分も経っていない男からの、いきなりの申し込み。
こいつ…いきなり何なんだ…?イカレてんのか?この状況で…?
 
「自己紹介させてもらおう。俺の名は、『リンゴォ・ロードアゲイン』」
「おい、アンタ…」
「そして聞こう。お前は、『これ』が見えるか?」
「―――!!」
 
リンゴォと名乗った男がそう言った直後のことだった。
―――男の右肩に、突如『何か』が出現しやがった。
それは触手の生えたタコみてーな…何とも形容し難い見た目をした何か。男の右肩に纏わりつくように存在している。
その時俺は目を丸くして、身構えた。…そうだ。この感覚は、間違いなかった。
アレは、『スタンド』だ。
 
「テメェ…スタンド使いか」
「その通り…。俺のスタンドは―――『マンダム』。
 能力は、時間をきっかり6秒だけ巻き戻すこと。ほんの6秒…それだけが俺の能力
 そして獲物はこの回転式拳銃一丁、装弾数は6発。…『ミスタの拳銃』、と書いてあった」
 
野郎…、やっぱりアレは俺の拳銃だったらしい。…いや、それよりも…だ。
―――この野郎、自分で自分の能力をバラしやがったのか?
いや、そもそもコイツの言っていることは真実なのか?敵にスタンド能力が知られることは死活問題だ。
ブラフの可能性だってあるかもしれねーんだ。
一先ず、俺は怪訝な表情を浮かべながら男に問いかける。
 
「テメー、何故能力を明かした?」
「俺の求めているものは公正なる果たし合い。正々堂々とした決闘。
 それは俺の精神を生長させるモノ。故に手札は全て開示した。」
「成る程、マカロニ・ウェスタン気取りってワケかよ」
「……………。」
 
暗闇に少しばかり慣れて、男の瞳を見た時に…俺は気付いた。
こいつは、正真正銘の『狂人』だと。時代遅れの『刹那主義者』だってことを。
正々堂々とした決闘に身を任せ、命を賭ける…『死にたがり』の狂った野郎ってワケだ。
だが、決して卑劣な奴じゃあないらしい。
こうして自分の能力まで明かすくらいの奴だ。―――本物だ、こいつは。
ある意味で、本物の『荒野のガンマン』。…おもしれーヤツだ。
こんなヤツ、今まで見たこともない。ギャングにも存在していなかったタイプの人間。
精神の生長の為に公正なる果たし合いを挑む。成る程、そんな奴が俺との闘いを望んでいるっつうなら…
―――少しだけ、付き合ってやるぜ。リンゴォ・ロードアゲイン。
 

 
「俺は…『グイード・ミスタ』だ。…そしてスタンドは『セックス・ピストルズ』」
「……。」
「能力は…銃弾に取り憑き、その軌道を自在に操作すること。
 ちっとばっかし特殊でな。6体で一つの、それも意思を持ったスタンドってワケだ」
 
 
『――――ヤッハァーー!!!』
『ミスタァー!アイツが『敵』ナノカァー!?』
『アノオッサン、銃構えてガンマン気取リカヨォー!俺タチ相手ニ度胸あるゼーッ!』
『つかコノ拳銃セメーヨッ!何デ弾丸2発シカ装填サレテネーンダ!?』
 
そう言って、俺の構えてる拳銃に6体のスタンド…『セックス・ピストルズ』が出現する。
口々に色々と喋ってやがるがまぁいつものことだ。気にすんな。
意思を持ったスタンドなんだから、賑やかなのはご愛嬌ってワケさ。
 
 
「成る程…やはりお前は俺の望んだタイプの人間らしい。
 目的の為に、他者を殺すことをも厭わない…気高き殺意を持つタイプの人間」
「ご期待に添えてどうも、とでも言っとくぜ」
 
 
静寂が周囲を支配し、互いに銃を片手に向かい合う。
 
鋭い眼光が交差するかのように、相手を真っ直ぐに見据える。
 
この相対は、二人のガンマンの『決闘』の始まりを意味していた。
 
互いに睨み合うように立ち尽くす二人。
 
―――そして、リンゴォが一礼をしつつ…言った。
 
 
 
 
 
「それでは―――よろしくお願いします。」
 
「……、…よろしくお願いします」
 

◆◆◆◆◆◆
 
 
二人の男が、決闘を始めていた。
ただぽかんとそれを眺めることしか出来なかった私がいた。
この男達は、危険だと思った。
どちらも幻想郷では全く見かけなかった種類の人間。
多分…『目的の為に相手を殺すこと』を平然と出来る人間だって。
こうして何の躊躇いもなく、互いに銃を向けているんだ。
―――それも、あんなに冷たい瞳で。
暗がりに目が慣れ、ようやく気付けた。あの二人の瞳の冷たさに。
引き金を引くことに躊躇いを持たず、戦えるということを。
 
どうして、貴方達はそんなに『強い』の?
どうして、貴方達は…こうも平然と恐れることなく『戦える』の?
どうして、貴方達は『恐れない』の?
 
私は、あの主催者に畏れたまま動くことが出来ない。
リンゴォという男からも罵られ、見下された。
何も出来ずに、絶望して死にたがっていた私がいた。
 
…悔しい。
少しでもそう思ってる自分がいることに、気付いた。
 
 
◆◆◆◆◆◆
 

 
 
先に動いたのはリンゴォだった。
 
瞬時に向けられた拳銃。
そして―――パァン、と乾いた銃声が森に響き渡った。
互いの一礼の直後、リンゴォが構えていた拳銃から素早く弾丸が放たれたのだ。
ミスタは咄嗟に右に跳んで樹木の後ろに隠れるように回避する。
 
「っ、」
 
ミスタは木の後方に隠れて壁にしながら咄嗟に銃を構えた。
――やはりこの暗がりの中だ、距離を取り過ぎれば視認が難しくなる。
だが、まだ距離は近い。それに、奴が移動する気配も見せていない。
ならばまだ、『コイツら』で撃ち抜ける―――!
 
「――『セックス・ピストルズ』ッ!!」
 
『イィィィィーーーヤッハァァァァーーーーー!!!』
 
引き金を引いた瞬間、ピストルズの取り憑いた弾丸が勢いよく放たれる!
普通の銃では有り得ない『軌道の曲がる銃弾』が、暗がりの中のリンゴォ目掛けて飛んでいく。
まるで相手を追尾するかのような軌道を見せるその弾丸は、確実にリンゴォを捉えるだろう。
 
―――捉える、はずだった。
 
 
「『マンダム』」
 
リンゴォが、右腕の手首に触れているのが一瞬だけ見えた。
その直後のこと。
 
 
 
 
 
―――――――――――――
 
 
 
 
「――――!?」
 
ミスタは、驚愕で目を見開いていた。
そう。――ミスタは『木の後ろに隠れて銃を構えようとしていたのだ』。
銃弾を避けた直後に取ったはずの行動だ。
無論、デリンジャーから銃弾は「一発も放たれてない」!
これが、あのリンゴォの「時を巻き戻す能力」―――!
そう思っていた矢先のことだった。
 

 
 
撃鉄が叩かれ、破裂音が響き渡る。
それと同時に放たれたのは――――
 
 
「ぐ、あ―――っ!!?」
 
ミスタの左肩に鋭い痛みが走る。
それと同時に感じたのは、生暖かい液体の感覚。紛れもない、己の血液だ。
リンゴォの放った弾丸がミスタの左肩に着弾したのだ。
―――それはミスタに避ける隙をも与えない、一瞬の攻撃。
突然時間を巻き戻され、現状を把握していたミスタの一瞬の隙を狙った射撃だった――!
 
「『一手』見誤ったな、グイード・ミスタ」
 
そして暗闇の中でも臆することなく、リンゴォは大胆とも取れるような動きでミスタの方へと接近していく!
先程の着弾で完全に位置を把握したのか。
その動きは鋭く、素早く、そして微塵の迷いもない
リンゴォは、至近距離からの射撃でミスタにトドメを刺そうとしていたのだ!
 
カチャリと、再び撃鉄が下ろされる。
木の裏に隠れるミスタに接近しつつ、リンゴォは引き金を引こうとする―――!
 
 
 
「う、おおおおおおーーーーーッ!!!!」
 
「―――!」
 
 
しかし、リンゴォが引き金を引く前に――彼は動いていた。
雄叫びのような咆哮と共に、樹木の後ろに隠れていたミスタが飛び出す。
飛び出して、すぐさま―――あろうことか、リンゴォへと向かい強引に突撃をしたのだ!
そして、ミスタが手元のデリンジャーを片手で構えた!
 
「―――ブチ込んでやるッ!!」
 
リンゴォの方へと突撃しながら、ミスタのデリンジャーより弾丸が放たれる!
これに対処するように、リンゴォも咄嗟に銃弾を放つ!
 
――リンゴォの銃から放たれた弾丸は、ミスタの右腕へ先に着弾。
対してミスタの放った銃弾は、リンゴォの身体を掠めるだけで着弾することはなかった―――
着弾することはなかった、はずだった。
しかしミスタのスタンドは、スデに『放たれた銃弾』に取り憑いていたのだ…!
 
 
『『『『『『タップリと!受ケ取リヤガレェェェェーーーーーッ!!!!!!』』』』』』
 
 
6体のセックス・ピストルズが――リンゴォの胴体を掠って通り過ぎたはずのデリンジャーの銃弾を『蹴り飛ばす』ッ!
蹴り飛ばされた弾丸は、そのまま軌道を強引に変えられ別方向へと飛んでいく!
そう、軌道を変えられた弾丸が飛んでいく方向は――――
 

 
 
「――くッ…!?」
 
リンゴォの左の二の腕を、銃弾が勢いよく貫いた!
そう、ミスタはあることに気付いていたのだ。リンゴォがマンダムを使う直前に「左腕で右手首に触れていたこと」を。
一瞬の光景であるが故に、腕時計の存在には気付かなかった。
だが、『右手首に触れる』という行為に意味があるということをミスタは瞬時に推測し、理解したのだ!
それ故に、彼はあの行動を『スタンド発動の為のスイッチ』と理解したのだ。
そして彼は、強引に突撃しリンゴォの不意を突き左腕を攻撃したのである。
右手首に触れさせない為、相手の片手を撃ち抜いたのだ!
弾丸による銃創でリンゴォは左腕から出血し、怯むように仰け反る。
その隙を逃さず、ミスタは至近距離に接近して銃を構えていたのだ――!
 
「これが『トドメの一発』だぜ、リンゴォ」
 
デリンジャーの短い銃身を、リンゴォの頭部に向けていた。
完全な、零距離。引き金を引けば、まず当たる。
左腕を貫かれたリンゴォは、恐らく時間を巻き戻す余裕もない。
そんなことをした瞬間、まず銃弾で穿たれるのだから。
だが、リンゴォは一切怯むこともなく。臆することもなく。
―――すかさず、堂々と右腕の銃をミスタに向けたのである。
ミスタもこれには、僅かながら驚愕をする。
 
「……面白い、面白いぞ…グイード・ミスタ」
「そいつはどうも」
 
互いに銃口を向けあい、再び睨み合いのような状態となる。
ほぼ真正面とも取れるような至近距離で、彼らは銃を構え合う。
 
 
「ミスタ…。俺の銃と、お前の銃」
「…………」
「――果たして、『どちらが早いか』?」
「さしずめ、早撃ち対決…ってワケか」
 
フッと口元に笑みを浮かべながら、ミスタが呟く。
こうして拳銃使いと一騎打ちをすることなど、滅多にない機会だった。
果たして自分がこの男との決闘を楽しんでいるのか。
それとも、この場の流れに乗せられているだけなのか。
どちらかは解らない。だが―――――一つだけ確かなことは。
 
 
『目の前の、この男と』―――『決着を着けたい』ということだ。
 
 
「上等だぜ、リンゴォ」
「ああ、こちらこそ…。決着と行こう、ミスタ」
 

 
 
いつの間にか、二人は数歩だけ距離を取っていた。
銃を片手に握りながら、再び鋭いまなざしで睨み合う。
銃を構えながら、一歩一歩…二人は円を描くように向かい合いながら動いていた。
さながら獣が互いを威嚇するかのように。
そしてミスタが静葉のいる位置を背にした所で、互いに動きを止める。
再び静寂が、周囲を包む。刹那の緊張感が、二人の間に流れる。
正々堂々、決着をつける。――次の一撃で。
それはさしずめ、西部劇のガンマンの決闘が始まる瞬間のようだった。
―――『男の世界』。二人のスタンド使いは、瞳に『漆黒の殺意』を宿す。
それは「対応者」としての態度ではない、「決闘者」として戦いと向き合う姿勢。
決して油断もなく、手を抜くこともなく。
 
 
 
目の前の『敵』と、果たし合う。
 
 
 
 
 
 
 
 
―――そして、二人が瞬時に銃を構えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
乾いた銃声が静かな森の中に響き渡る。
 
 
 
 
 
 
 
 
次の瞬間に、崩れ落ちたのは――――
 
 
 
 
 
 
 
 
「――――………な、に…………?」
 
 
 
『ニャァ…』
 
 
 
先程響いた銃声は 
 
一発だけ。
 
グイード・ミスタが驚愕の声と共に、ゆっくりと崩れ落ちる。
 
唐突に、脈絡もなく猫の鳴き声が聞こえてきた。
 

◆◆◆◆◆◆
 
 
決闘は熾烈なものだった。
まるで死を恐れないような、むしろ死に真っ向から立ち向かうような。
そんな、苛烈な争い。
幻想郷には殆ど存在しなかった、全身全霊を賭けた命の奪い合い。
 
私は恐怖に負けて、殺し合いという恐怖に挑むことが出来なかった。
 
でも、目の前の二人の男は―――全く畏れてなんかない。
 
それどころか、こうして全力で戦い合っている。
 
自分の命を、とにかく燃やしている。
 
悔しかった。
何も出来ない自分が、悔しかった。
目の前の男達のように、燃え上がることが出来なかった。
自らの目的の為に、此処まで熱することが出来なかった。
 
―――いや、違う。
私は、そうしようともしなかったんだ。
ようやく、気付くことが出来た。
あのリンゴォという男の言葉の意味を、ようやく理解出来た。
 
私は、主催者への恐怖に屈して…『諦めていた』。
そう。――穣子のことでさえ。
何の抵抗もせず、何の行動も起こさず。
 
私は、何もかも放り出していたんだ。
 
本当に…私は馬鹿だ。
何も出来なくて、何もしなくて…馬鹿。神の名が廃るって物だ。
恐怖を物に出来なくて、何が神だ。
あの男達のような、『漆黒の意思』が―――欲しい。
目的の為に命を燃やせる精神を、私も掴み取りたい。
 
でも、どうやって?
私は幻想郷でも力の弱い存在。
 
私如きなんか、すぐにやられて――――
 
 
 
『ニャア』
 
 
デイパックから鳴き声が聞こえることに気付いたのは、その直後。
 
え、と目を丸くして静葉はデイパックの中を開いていた。
 
戦いを続けるリンゴォとミスタは、その行動に気付いていない。
 
―――秋の神は、その時一つの『力』を手にした。
 
 
 
その手に抱え込まれたのは、植物のような何か。
 
 
しかしそれは、気まぐれな動きで顔をぽりぽりと掻き…
 
そして、猫のような鳴き声を発していた。
 
 
それは秋静葉の支給品。
 
 
猫草―――『ストレイ・キャット』。
 
 
 
◆◆◆◆◆◆
 

 
 
 
ミスタが両膝を突き、拳銃を右手から落とす。
 
銃弾は既に左胸を貫かれていた。
 
対するリンゴォは、先程の左腕の傷以外に特に負傷はない。
 
そう、ミスタは『弾丸』を放っていなかった。
 
いや―――違う。
 
ミスタは、『弾丸を放つことが出来なかった』。
 
 
「ち、く…しょう……………―――――――――」
 
歯軋りと共に、ミスタがか細い声で言葉を漏らす。
 
―――そのままゆっくりと、正面に崩れ落ちた。
 
瞼が閉ざされ、荒い呼吸音が途絶えたのもそのすぐ後のこと。
 
同時に、ミスタの傍で6体のスタンド――『セックス・ピストルズ』の身体が次々と崩壊し、消滅する。
 
それは―――『グイード・ミスタ』の死を意味していた。
 
 
 
 
「―――――。」
 
リンゴォは、ただ唖然としたようにミスタの亡骸を見下ろしていた。
彼は既に、違和感に気付いた。
目の前の男が、引き金を引かずおめおめとこちらの銃弾を喰らったことを。
ミスタ程の拳銃使いならば、こちらの弾丸と同時に発砲することなど容易いはずだ。
こうも素直に銃弾を喰らうわけがない。
一体、何故――――
 

 
 
 
 
「はぁっ…はぁーっ…」
 
リンゴォはハッとした様子で、ミスタの斜め後ろの方向を見た。
そう。秋静葉が荒い息を整えていたのだ。
目を凝らして見た瞬間に、リンゴォは気付いた。
―――静葉の両腕に抱え込まれるように、『それ』が存在していたことを。
 
 
『ニャー…』
 
静葉の両腕に抱え込まれていたのは、まるで観葉植物のような。
それでいてどこか気味の悪い、奇妙な生物。
猫のような鳴き声を発しながら、ボリボリと身体を掻いている。
まさか、あの小娘――――リンゴォが目を見開いた。
 
 
ミスタが銃弾を放つことの出来なかった理由。
それは、引き金を引く前に『猫草“ストレイ・キャット”』の空気弾を片足に叩き込まれたからだった。
空気弾による衝撃で怯んだことで生まれた大きな隙。
それは、リンゴォの銃撃がミスタの心臓を貫くには十分な程の物だった。
この会場において支給品として用意された猫草は、『自身を手にした人物を主人として認識する』。
それ故に猫草は最初に自分を手にした静葉を主人とし、彼女の意思に従いミスタへ攻撃を行ったのだ。
 
「――…私は…勝ち残る…絶対に」
 
「…小娘…お前…」
 
息を何度も吸っては吐きながら、彼女は言葉を紡ぎ出す。
その手に猫草を抱えながら、ゆっくりと立ち上がる。
―――瞳には、恐怖と覚悟の入り交じった感情がこもっていた。
 
「この戦いで絶対に勝つ!!
 私以外の、89人の参加者全員を乗り越えて…!
 穣子を、生き返らせる!荒木と太田に…復讐する!!
 八百万の神の名において、宣言するわ!私は、この殺し合いを征する!
 ――――絶対に、絶対に…勝ち残ってやるっ!!」
 
秋の神―――「秋静葉」は、高らかにそう言い放った。
精一杯の声を、感情を、覚悟を吐き出した。
先程までの絶望に飲まれていた少女の姿とは、まるで違う。
それは願いの為に戦う決意をした、一人の神の姿だった。
 

 
 
リンゴォは、その時確信した。
果たし合いに水を差したのが、目の前の少女であるということに。
 
 
「―――殺してやる」
 
リンゴォの口から零れ落ちたのは、怒りで震えた声。
 
「―――絶対に殺してやるぞ、小娘……!!
 俺とミスタの公正なる果たし合いを、お前は侮辱したッ!!」
 
果たし合いを侮辱された。グイード・ミスタという気高き男を、横槍を入れて攻撃した。
その事実を前に、リンゴォは冷静さを大きく失っていた。
怒りに身を任せ、拳銃を静葉に即座に向ける。
その腕の苦痛も何もかも忘れ、ただ目の前の少女を殺害することのみを考えていたのだ。
 
 
―――だが、リンゴォもまた。握り締めた拳銃で攻撃することは出来なかった。
 
 
ボンッ、とリンゴォの身に鈍痛が走る。
 
まるで何か鉄槌による衝撃を直接叩き込んだような。
 
そんな苦痛が、突如彼の身を襲ったのだ。
 
「―――ご、ふっ………」
 
リンゴォの屈強な身体が、勢いよく樹木に叩き付けられる。
猫草の空気弾が、リンゴォにも襲いかかったのである。
その攻撃を防ぐ術もなく、彼は吹き飛ばされたのだ。
 
空気弾により吹き飛ばされたリンゴォを尻目に、静葉は背を向ける…。
 
「…いつか必ず、貴方も仕留めてやるから。覚えていなさいよ」
 
そうして、静葉はその場から足早に去っていく。
それはリンゴォとの戦いを避ける為の判断だったのか、初対面の際の意趣返しだけで留めたのか。
解らないが、彼女はとにかくリンゴォから離れて行ったのは事実だった―――
 

◆◆◆◆◆◆
 
 
「……………。」
 
時間を巻き戻し、彼女を逃がすまいとしていた。
だが、左腕の負傷と樹木に叩き付けられた衝撃により…それを行うことが出来なかった。
結果的に、彼は静葉を逃がしてしまったのだ。
――ギリ、と歯軋りをしながら…リンゴォはゆっくりとその両足で立つ。
 
あの小娘は、俺とミスタの決闘を侮辱した。
 
公正なる果たし合いを、穢した。
 
絶対に、許すものか。
 
俺は、必ず奴を殺してやる。男の世界を侮辱した、穢らわしき小娘を…絶対に!
 
その右手には拳銃をしっかりと握り締める。
屈辱と憎悪の籠められた指が、拳銃をがっしりと掴んでいる。
彼の怒りは収まらない。あの小娘を仕留めぬ限り、絶対に。
気高き世界を穢した者を許してたまるものか。
―――奴を、あの小娘を…この手で仕留める。
 
よろよろとした足取りで、リンゴォはその場から歩き出す。
向かう先は、あの少女が去っていった方向。
彼の瞳に宿るのは、焔のように燃え盛る『怒り』だった。
 
 
 
その場から去ろうとしたリンゴォ。
だが、彼はそうしようとした直前に行動を止める。
 
 
 
「………………。」
 
 
リンゴォは立ち止まり。足下に転がるミスタの死体を見下ろしていた。
何も言わず、無表情のまま彼の死体を眺める。
だが先程まで怒りを浮かべていた瞳に、僅かながらも…ある種の嘆きのような。
そんな感情を宿しているのが、少しでも見られたのだ。
 

 
 
「…グイード・ミスタ」
 
彼はゆっくりと片膝を突き、目の前のミスタの死体を見る。
 
「お前は、見事な『決闘者』だった」
 
静かに語りかけるように、リンゴォは言葉を紡ぎ出す。
そして、軽く一礼するように頭を下げ。
 
「お前の名は決して忘れないだろう。…安らかに眠れ、ミスタ」
 
―――そう言って、リンゴォは再び立ち上がる。
少しだけ、冷静さを取り戻したのか。その表情は精悍だ。
だが、内なる怒りは収まらない。この決闘者を侮辱したあの少女を許すつもりはない。
 
だからこそ、俺はあの少女に『決闘』を申し込む。
正々堂々とした果たし合いの上で、奴を殺す。
果たし合いを侮辱した者には、果たし合いで決着を付けなければならない。
それは自分の生長の為でもあり、そして目の前のミスタの名誉の為でもある。
 
必ず、あの小娘と決闘をし…殺す。
 
『漆黒の殺意』を胸に、決闘者リンゴォは森の中を進んで行った。
―――向かうは、あの少女が去っていった方向だ。
 
 
 
【グイード・ミスタ@第5部 黄金の風】死亡
【残り 89/90】
 
 
【B-4 魔法の森/深夜】
 
【秋静葉@東方風神録】
[状態]:覚悟、主催者への恐怖(現在は抑え込んでいる)
[装備]:猫草(ストレイ・キャット)@ジョジョ第4部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:穣子を生き返らせる為に戦う。
1:恐怖を乗り越えてこの闘いに勝ち残る。
2:とりあえず、これからどこへ向かおうか…。
3:二人の主催者、特に太田順也に恐怖。だけど、あの二人には必ず復讐する。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※一先ず南へと進んでいます。
 
【リンゴォ・ロードアゲイン@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:怒り、疲労(中)、左腕に銃創(出血中)、胴体に打撲(中)
[装備]:ミスタの拳銃(3/6)@ジョジョ第5部
[道具]:予備弾薬18発、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:公正なる果たし合いをする。
1:男の世界を侮辱した秋静葉と決闘する。
2:ジャイロ・ツェペリとは決着を付ける。
※参戦時期はジャイロの鉄球を防御し「2発目」でトドメを刺そうとした直後です。
鉄球や木片による負傷は主催者の力により完治しています。
※静葉を追って南下中です。
 
 
※ミスタの参戦時期は第5部終了後(ジョルノがパッショーネのボスになって以降)でした。
※ミスタのランダムアイテム「花果子念報@ダブルスポイラー」「ダブルデリンジャー(1/2)@現実」「予備弾薬×8」はB-4の魔法の森の中に放置されています。
 

 
<花果子念報>
グイード・ミスタに支給。
射命丸文をライバル視しているブン屋の鴉天狗、姫海堂はたてが発行する新聞。
念写によって得られた写真しか載せない為記事が新鮮味に欠ける、紙面が生真面目で面白味が薄いなどの理由で人気は低い。
新聞紙なのでよく燃える。窓拭きにも便利だ。
 
<ダブルデリンジャー>
グイード・ミスタに支給。
41口径の小型拳銃。非常にシンプルな機構故に故障が極端に少なく、サイズも小さく持ち運びしやすい。
銃身が極端に短いので、相手に押し付けるように射撃することが多いとされる暗殺向きの銃だ。
 
<猫草(ストレイ・キャット)>
秋静葉に支給。
元はブリティッシュ・ブルー種の猫だったが事故で死亡し、埋葬された際に植物と融合を果たした不思議な生き物。
周囲の空気を自在に操るスタンド能力「ストレイ・キャット」を持つ。
本ロワ内では「現在の所有者」を主人として認識し、主人の意思である程度猫草の攻撃を操ることが出来る。
現在の所有者以外の者が猫草を入手すると、その人物を『新たな主人』として認識する。
 
<ミスタの拳銃>
リンゴォ・ロードアゲインに支給。
ミスタが愛用する小型の回転式拳銃。装弾数6発、ハンマーの両サイドがフレームで覆われてるのが特徴。
銃の種類は作中では言及されていないが、S&W M49かS&W M15が有力とされている。
 
投下順 010:GUILTY CROWN
時系列順
遊戯開始 秋静葉
遊戯開始 リンゴォ・ロードアゲイン 064:蓬莱の人の形は灰燼と帰すか
遊戯開始 グイード・ミスタ 死亡
 
最終更新:2014年02月06日 00:56