参 - 経済産業委員会、財政金… - 1号 平成25年05月31日


金子洋一君 
 まず、この消費税の転嫁ということ、今回の転嫁を考える上で一番大切なことは、これまで二回の消費税の導入そして引上げ、二回ございましたが、このときには、その年度で見ますと、引上げ分と引下げ分というものが直間比率の是正ということでプラス・マイナス・ゼロでございました。ところが、今回は五%引き上げると、そしてそのうちの一%は社会保障の増強、残り四%は平たく申しますと財政再建に向けられるということになっております。となりますと、純粋な増税という部分がはるかに大きいということになりますので、今回は転嫁をすることが非常に難しい環境になるということが言えると思います。
 転嫁を考える上で大事な要素が幾つもございます。例えば需要の量がどのくらいあるのかということ、あるいは価格自体が上がりやすい環境にあるのかそうでないのかということ、そういったものがあると思います。あるいは、同時にほかのものも転嫁するということになったら、これはなおのこと難しいというような、そういった三点あると思います。
 まず最初の需要についてですけれども、これは要するに、我が国の成長率がどうなるのかということに言い換えられると思います。内閣府に短期日本経済モデルというのがございまして、その最新版二〇一一年版によりますと、消費税率の一%引上げは実質GDP成長率を〇・三二ポイント一年目に引き下げるというふうに書かれております。名目で見ましてもたしか〇・三六でほとんど同じだと思いました。五%でしたらマイナス一・六%、つまり約八兆円の需要が減るということになります。
 これ、これまでの政府の試算を見てまいりますと、例えば経済財政の中長期試算などで見ますと、平たい言い方を申しますと、いや、そんなことないよと、長い目で見るとすぐ成長軌道に戻るんだというようなことが書いてありますけれども、この短期日本経済モデルというのは、もう純粋に、こういう変数を動かしたらこういうアウトプットになりますよという、言わば投入と産出の関係を、その係数を示しているものでして、一方のこの中長期試算というのはそれプラスアルファがあるということであります。
 どういうプラスアルファなのかということで、これは質問答弁書から引用をいたしますと、社会保障・税一体改革による消費税引上げは、国民が広く受益する社会保障の安定財源確保に向けたものと明確に位置付けられていることから、消費税率引上げの前後の期間でならして見ると、経済への影響は限定的になると考えられると書いてあるわけです。恐らくこの試算の中には非ケインズ効果を入れているんではないかなと思います。これ、役所との議論の中でどういう試算なんだとお尋ねをしましてもなかなか明確に出てきませんので、恐らくそういったものが入っているんだろうと思います。
 この非ケインズ効果というのは、理屈の上ではありますけれども、実際、じゃどこの国であったのかというとなかなかその実例がない。IMFなんかも、昔は北欧の小国でそういう効果があったというふうに言っておりましたけれども、それでもその同じ報告書の中に統計学的には有意ではないというような書かれ方をしておりました。そういう非ケインズ効果というようなものに頼っている可能性のある試算よりも短期マクロ経済モデルの方が頼りになるんじゃないかと思います。つまり、日本経済全体として見ますと需要は減るということです。
あと、もう一点、価格そのものです。これは、

デフレの環境にありますと価格転嫁というのは非常に難しくなります。

これは経済白書にたくさんそういった実証研究が載っております
ので引用はしませんけれども、簡単に申しますと、価格が全体としてどんどん上がっている状態ですと、自分の販売をする品目について、例えば五%上乗せをするということにしても、まあ周りも上がっているんだから自分の売っているものも上げられるというような感じになるわけです。これ、逆の言い方で申しますと、デフレの環境にあるとそういった価格転嫁は難しいということになってまいります。しかも、先ほど申しました第三点の点なんですが、消費税の上昇分の転嫁だけではなくて、今回は円安による原材料費の上昇というのもあって、これもきちんと転嫁をしないと事業者の皆さんは大変なことになってしまうということであります。
 これは、アベノミクスで結果的に円安が進んでいる。アベノミクスについては、私、株高になっているということで高く評価をいたしますけれども、全体としては非常にいいことだと思いますが、同時に、この円安による輸入物価の上昇というのは消費者あるいは中小企業に対して非常に悪い影響を持っております。先ほども議論の中に出ましたけれども、漁業関係の方、あるいはトラックですとかタクシーですとか、そういった運輸関係の方々が大変お困りになっているということがあるということになっております。
 そういったことで、全体的な需要も大きく下がると。そして、価格転嫁自体もデフレの環境の下にあると非常に難しい。そして、原材料費の高騰が、これは政策的な判断に基づいて円安が結果的に生じてそして輸入物価が上がってしまっているということから、これも非常に厳しい環境にあるということになっております。これ、消費税の新規発生滞納額というのが二十三年度ですと三千二百二十億円あります。大体例年三千億円台ありますけれども、こういった滞納額がもっと増えるんではないかなと私は思っております。
 そこで、麻生財務大臣、副総理と申し上げた方がいいんでしょうか、この場合には。この消費税導入時と比較をして、あるいは一九九七年と比較をして大変厳しい状況にあると、そしてかつデフレの環境にあるということ、それでかつ円安で原材料費が上がっている、輸入物価が上昇をしているという環境でこの転嫁というのが十分できるんでしょうか。そして、御自身は、国内の物価上昇率二%の実現というのは当面難しいのではないかと発言をしておられますが、そうなりますと、やはりずっとデフレが続いてしまうと、どうしても難しい環境が続いてしまう。企業にとって非常に厳しいということになりますが、そういった環境の中でどういうふうな形で転嫁対策を打たれるのか、お答えをいただきたいと思います。
国務大臣(麻生太郎君) 
 誠に御指摘しておられる点は、一番重大な点が、これまでこの種の質問の中で最も重大な点を今まで誰も語られませんでしたので、初めて伺った見識だと思って、正直、はあ、初めて出たなというのが正直な実感です。まず正直に申し上げておきます。
 今般のこのいわゆる税制改革というか、この消費税の値上げに関しましては、元は何かといえば、増大する社会保障というものに対して、これに対して安心に、これは大丈夫なんです、対応できるんですよという持続性とか、また国家として債券を大量に発行しておりますが、そういうものに対する国としての信認の維持とか、そういった大前提がこの消費税の値上げにつながっている一番大きな背景としてあるというのはもう御存じのとおりだと思いますが、今回は、仮に三が五ということで、五でいきますと十三兆ぐらいのものになろうかと思いますが、これは全額社会保障の財源化にいたしますという前提でこれをスタートさせておりますのは、これ最初に、まず国として申し上げておかねばならぬところだと思っております。
 九七年と比べてと言われる話をされましたけれども、確かに一九九七年、三%から五%に値上げをさせていただいたときには、たしか増減税一体ということもこれあって、五%の消費税によって得られる五兆円程度の増収が、現実問題としては法人税それから所得税等々が減収になりましたために、結果として四兆円、プラスマイナスで、四十一兆から三十七兆まであのとき落ちましたので、約四兆円落ちたという結果、プラスマイナス九兆円の差が出たということになったというような点を言っておられるんだと思いますが、これはもう間違いなく事実であります。
 ただ、翌年、第一・四半期が終わりました後、その次の四半期からは一応元に戻って、いわゆる駆け込み需要の反対側が起きましたので、一挙にまたそこは上ってきたというのがあのときの経過ですが、今回の場合の一番違うのは、これは金子先生、何といってもいかにもデフレーションというものがはっきりしている。あのころでもデフレは始まっていましたよ。始まっていましたけど、今回の場合の方がデフレーションというのははっきりしていると思っておりますので、ここが日本銀行と私どもと一番話をさせていただいて、二%のいわゆるインフレターゲットというものをきっちりしていただくというのが我々として最も強く要求したところであります。
 ほかの国も、二%ターゲットという、インフレターゲットをやっているではないかと言うけど、それは四%とか六%を二%に下げるというのと、マイナスのものをプラスにして二%でという話はこれ全然話が違いますので、そういった意味では、日銀の金融緩和等々は避けて通れぬというところなので、ここのところを非常に強くお願いしたところですが、まずはインフレターゲットとして二%になるべく早くしていただくということが、我々としては、

消費税というものをお願いするに当たって一番肝心なところはこのインフレが一番大きなことになると、私どもの立場ではそう思っております。


最終更新:2013年07月23日 12:31