「裕也、お風呂どうだった?」
「うぅ…たっぷり湯船に浸からせてもらったはずなのにまだブルブルする……」
外には雪が降り積もってる冬休みのある日、中学2年生の裕也は幼馴染の真琴の家でお風呂に入れさせて貰ってた。

雪遊びに夢中になっていたら足を滑らせ小川に盛大にダイブしてしまい真琴の家がすぐそこだったからご厄介になってるという訳だ。

「っていうか今バスタオルだけなんだからあんまりジロジロ見ないでよ」
「あ、う、うん ごめんね」
心配して思わず様子を見に来てたものの慌てて背中を向ける真琴。
実際今では温まったおかげで軽口を叩いてる裕也だが先ほどまで、数℃しかない真冬の川の中に全身を浸からせてしまったせいで会話もままならずガクガク震えていたので真琴の心配も無理は無かった。

「でもまだ結構寒いんだよね?」
「うん、お風呂の中では大分温まったと思ってたけど出た途端また寒気がしてきたかな・・・」
「私っ 何か着る物探してくるっ」
ずぶ濡れになった裕也の服は今洗濯機で洗ってる最中だ。
暖房の前に干せば夕方にはある程度乾くだろうが、それまで裸のままにするわけにはいかず手当たり次第にタンスの中を漁る真琴。

だが父親が単身赴任で母親と二人暮らしだったのが仇となったのか上に関しては何とか見つかったのだが、男の子用のパンツ等は家には一切置いておらず更には真琴は年中ほとんどスカートだった為長ズボンは1着しか持っておらずその長ズボンも今はちょうど洗濯中だった。

(そっか…昨日友達とスケートしに行った時に長ズボン使っちゃったんだった……)
「クチュンッ!」
何とか膝丈のハーフパンツを見つけたもののどうしようかと悩んでいると、脱衣所から裕也の盛大なクシャミが聞こえる。
(このままじゃ裕也君本当に風邪ひいてしまうよ……こうなったら男の子用とか女の子用とか気にしていられないよね)
そう思いふっ切れる真琴だった。


「裕也、とりあえずこれ履いて」
「え? こ、これって……」
「……これしかなかったの」
いきなり真琴に女の子用の白い無地のショーツを手渡され思考が止まる裕也
「こ、これはいくらなんでも嫌だよ……これ履く位なら何も履かなくても……」
「ちゃんとしないと風邪ひくかも知れないよ お願いだから履いてっ」
だが真琴の勢いに押され断りきれなくなってしまう。
「そ、それじゃ履くから向こう行ってて」
覚悟を決めた裕也は真琴に席を外して貰った後、そっと手渡されたショーツを足に通し出した。
腰まで引き上げるといつも履いてるトランクスとは全然違う、最低限の部分を薄い生地でしか包み込まれない頼りなさと同時にぴったりと股間にフィットするしっかりした着用感が達也の下半身を刺激する。
(うぅ……なんか変な感じだよ……)

初めて着用する下着のせいで落ち着きなくソワソワしてると脱衣所の外から何やらゴソゴソと音がしていた。
「真琴ー 一応履いたけど他に何か着れそうな物は……な、何やってるのさ!?」
真琴に声をかけながら脱衣所を出た所で、裕也は目の前の光景に呆然とした。
なんと真琴が自分の服を次々と脱いでいってるのだ。

「あ、裕也、着てもらう服の事なんだけど………」
ブラとショーツだけの下着姿になり、少し照れくさそうにしてる真琴はたった今脱ぎ捨てた衣類一式を拾い上げると裕也に差し出し……
「とりあえずこれを着てね」
 ……っと、あまりにも予想外の事を言ってきた。


「ちょ、ちょっとっ いきなりこんなの着れるわけないよっ」
「え? 私と裕也の身長あんまり変わらないし着れるでしょ? 裕也は女顔だからそんなに不自然じゃないかもしれないし」
「そ、そういう問題じゃなくて・・・だ、大体何で真琴が今着ていた服なんだよ!?」
「この服朝からずっと着てたから、私の体温でポカポカになってるって思って。 裕也まだかなり冷えてるんでしょ? 少しでも暖かい格好しないと」
「だ、だからって………、こ、これスカートじゃんっ 誰かに見られたら終わりだよっ」
「今日はお母さん夜まで帰って来ないし、家の中なら誰にも見られる心配ないよ」
「で、でも……」
「私も絶対に秘密にするから……正直今暖かい格好したいんでしょ? ね?」
「………うぅ……」
しばらくの押し問答が続いたものの、凍えた体でこれから夕方まで裸同然で過ごす事は絶対に避けたく、泣く泣く真琴の指示を受け入れる裕也だった。


「それじゃまずこれね」
手渡される真琴の衣類を緊張した面持ちで身につけていく裕也。
最初にインナーであるスリップを手渡され、どうやって着るのか困惑していたら
「普通に頭からかぶって大丈夫だよ」と教えられ、言われるままに通してみた。
するとスリップは裕也の体に滑り落ちて来て、肩紐が両肩に引っかかりアッサリ装着してしまい少し意外そうにする裕也だった。

次に白いブラウスを渡され袖を通し出したのだが、いつも自分が着てるシャツと違いボタンが左前なので全部留めるのに少し苦戦する。
「ほら、全部留めるの」
「一番上は別に留めなくてもいいでしょ?」
「ダメだよ、そのブラウスは男の子のシャツと違って最後まで止めてないと見栄えが悪くなるんだよ」
「だ、誰も見て無いじゃん」
「誰も見てなくてもオシャレには気を使うものなのっ それに裕也体冷えてるんだから少しでも暖かくしないと……留めにくいのなら代わりにやってあげるね」
「は、恥ずかしいよぉ」
面倒くささと照れくささから適当に着崩そうとする裕也だったが、真琴に注意されどうしようかと思ってるうちに、世話好きな真琴に最後の首元のボタンまで留められてしまった。

「ふわ……なんかこれ……」
「どうしたの?」
「……なんでもない」
見につけた衣類から真琴の女の子特有のいい匂いと心地よい体温が伝わって来てくすぐったい気分になる裕也。

「えっと、それじゃあ上に着るのは少し一休みして次はこれね」
そして今度は真っ黒い厚手のタイツを渡してくる。
普通の靴下みたいに上から足を入れようとしたら
「こうやって履くの」と言われ、足部分をくるくると巻き込んでそれを裕也のつま先に合わせてそのまま膝上まで引き上げられた。
「じ、自分でやるからいいよ」
「それじゃもう片方は自分でやって見て」
これ以上女の子に着替えさせてもらうのはさすがに恥ずかしかったのでもう片方は教えて貰った通りに自分で足を通し、一気にヘソの上まで引き上げた。
初めて感じる、つま先から腰までしっかりと包み込まれる感触とタイツからも感じる真琴の体温に、再びくすぐったい気分になる裕也。


「はい、次はこれー」
そして休むまもなく今度は女の子専用の衣類の代名詞と言っても過言ではないスカートを手渡される。
茶色くて比較的短いスカートで、つま先から通して腰まで引き上げる。
その時、普段自分の服を着る時みたいにブラウスの裾を出そうとしたら
「見栄えも悪くなるし寒いから、ちゃんとブラウスの裾はスカートの中に入れてね」
という真琴の注意が飛んだ。
とりあえず真琴の言う通りにして、最後にスカートのチャックを上げようとすると………
「うわっ スカートのチャックの位置は前じゃなくて横だよ!」
と再び真琴に注意される。

女にとっては常識なのかもしれないが、いつも前チャック付きのズボンを履いている裕也にしてみればこれもまた意外なことだった。
こうしてやっと履き終わったスカートだったが、今までの衣類とは違い履く前と履いた後では腰に軽くベルトを締めた様な着用感を感じる程度の差しかなかったのが不思議だった。

(女の子ってこんなピラピラなの履いて平気なのかな……もしタイツ履かなかったら下着だけみたいなものじゃないか……)
そう不思議に思ってると……
「それじゃあ最後にこれを来て」
最後にピンク色に軽いチェックが入った暖かそうなセーターを手渡される
今まで渡されてきた露骨な女の子用の衣類とは違い、形自体は男でも着れそうなセーターだったが生地の質やカラーリング、そして可愛いチェック柄が女物である事を物語ってた。
それを頭からかぶった所で真琴に言われて中に着ているブラウスの襟をセーターの上にピョコンと飛び出させる。
「ちゃんと出さないと襟の一部分が捻れてしまってたり片方しか飛び出てなかったりするから気をつけてね」
あくまで洗濯中の自分の服の変わりに1回だけ着てるだけで、もう二度とこんな事しないのに何を気をつけるんだろうか……と思う裕也だったが何となく言葉にするのは躊躇した。

「はい、これでおしまーい」
こうしてやっとの事で用意された衣類全てを見につけ終わった裕也。
「何か女の子の服って着るのが難しかった……」
「そうかな? これ位普通だと思うけど」
思っていたより手間取り少し疲れた様子でいると、真琴はさりげなく裕也の髪をブラシで綺麗に整えだす。
「……それで今度は何やってるのさ」
「せっかくだから髪も可愛くしてあげようと思って。 最後にリボンをつけてっと……はい、完成ー ほら、どうかな……?」
「う、うわ……」
真琴に鏡の前まで手を引かれて、姿見に写った自分の姿を見て裕也は言葉を失う。

真琴に整えられている、いつもより女の子っぽくなっててリボンで可愛くなってる自分の髪。
女の子柄の暖かそうなセーター。
その首元はちょっと大きくて丸っこい感じの襟が華やかにしている。
そして下半身には茶色で短く、女の子の象徴とも言うべきスカート。
そこから伸びる足は厚手の黒いタイツに包まれていて色っぽさより可愛いらしさが輝く。

それらのせいで、散々見慣れたあんまり男っぽくない自分の顔が本当に女に子に見えてしまいそうになり裕也は呆然としていた。


「裕也、どうしたの?」
「え!? あ、ああ ありがとう……」
そのまましばらく目が離せないでいる所に声を掛けられ慌てて返事をする裕也。

「それで着てみた感じはどう? 寒くない? スカートがスースーするならハーフパンツ持って来ようか?」
「正直上はセーターが暖かいし、下もスカートだけどタイツが結構暖かいし大丈夫だよ」
そこまで答え終った所で、裕也は思わず出た自分のセリフに軽いショックを受けてしまう。
(よ、よく考えたらハーフパンツ持って来て貰ってスカートを脱ぐチャンスだったのに……)
「そっか、そのタイツ結構厚手で暖かいからね。それじゃあ何かあったら言ってね」
「う、うん……」
今からでも、念の為ハーフパンツにしたいと言えばこのスカートから逃れれ、大体リボンは防寒とは関係ない
と分かってても、いざ口にしようとすると不思議な抵抗感があり困惑せざるおえない裕也だった。

「あ、そういえば真琴は服脱いだままだけど恥ずかしくないの?」
「う、うわ、そうだった。 み、見ないでよ。 裕也のエッチ」
「ま、真琴から脱いだんでしょう!?」
裕也に指摘された所で真琴は慌てて、先ほど裕也用に集めていた服を着だす。
裕也同様に最初にスリップを身に付けると赤いチェックガジュアルなYシャツに袖を通し最後のボタンは留めずに上から紺のパーカーを着た。
そして下は裕也同様に厚手の黒いタイツを履いた後、膝丈くらいのデニム地のハーフパンツを着用した。
「な……何か真琴の方がよっぽど男っぽい服着てるじゃないか」

実際外から見える範囲で今真琴の着てる衣類のほとんどは男の子でも着れそうな物ばかりで膝から下のタイツだけがかろうじて女の子の目印になっていた。
「え、えへへ、そうかもしれないね。 ハーフパンツとは普段は履かないんだけど
 せっかくタンスから出したから履いてみようと思って……」
「もぉっ 最初からそれを出してよっ」
「私の体温が残ってる服を着て少しでも早く暖かくなった方がいいって思ったんだけど……」
「あ、ありがとう……じゃなくてっ 僕そっちの服の方がいいから交換してよっ」
「ダメだよ、脱ぐ時にまた裸にならないといけないし」
「じゃあせめてそのハーフパンツとこのスカートだけでも交換しようよっ」
「うーん、その服にこれは合わないからそれもちょっと……大体裕也スカートのままでいいって言ってたよ」
「うぅ……」
そう言うと何も言い返せなくなる裕也。
そこで再び先ほどの、この服を脱ぐ事への不思議な抵抗感が湧き上がりこれ以上抵抗する気が無くなっていく。

「わ、分かったよ……今日だけなんだし……」
「うんっ」
複雑そうに了承する裕也を見て満足そうに微笑む真琴だった。


~数時間後~
体の震えもとっくに収まり、真琴と一緒に漫画を読みながら適当に時間を潰してた裕也だったがその間もどうしても今身に着けている服に注意がいってしまっていた。
(なんかこれ着ていると変な感じだよ……)

胴体に感じるスリップの、女の子の素肌用の繊細な生地で包まれた優しく保護されている感触。

その上から感じるブラウスの、スリップ同様女の子用の繊細な生地をしながらも首元から腰、手首にかけて上半身は隙間無くしっかりと包み込まれ、ボタンを閉じてる限り手先と頭以外の上半身の素肌は決して表に晒される事はないアンバランスな感触。

更にその上から感じる女の子用セーターの、冷気をシャットアウトして体をしっかりと保温してくれつつも表では可愛いチェック柄で自分の上半身を彩ってくれている防寒・オシャレの両面で頼もしく感じる感覚。

少しのびきっている髪に感じるリボンの、髪を優しく編まれている照れくさい感覚

腰に感じるスカートの、視覚的・精神的には一番影響を与えているものの触覚的には丈が短いせいで緩いベルトで軽く締め付けてる程度の着用感しか感じられない頼りなくも不思議な感覚。

腰からつま先にかけて感じるタイツの、下半身全てをピッタリと包み込み素肌もショーツも表からは完全に見えなくして防寒、清楚さの両面で短いスカートのフォローをしてくれている安心感という名のくすぐったい感触。

あそこに感じる女の子用ショーツの、性器を軽く圧迫されていながらも全体的には優しく包み込まれ反面最低限の部分しか覆わない、いつも履いているトランクスとはそのほとんどが正反対のもどかしい感触。

…それら全て、ショーツ以外の物にいたっては数時間前まで真琴が着用していたため思春期の女の子の香りがしっかりと染み付いており、それをも伴った感触・感覚が絶え間なく裕也の全身を刺激していた。

漫画を読みつつも、どうしてもチラチラと目線を自分の着てる服の方に持っていってしまい時々セーターやスカート、ブラウスの襟やタイツ、そしてリボンを撫でるように触ってしまう裕也。
(女の子の服って何だか凄く優しく包み込まれる感じがする……自分の体が大事に守られている感じだ……)
今裕也が身につけているものでは男用どころか男女兼用の物さえ1つも無い。
上半身と下半身、下着からトップスにボトムに至るまで全て女の子の服でのフルコーディネートである。


「ねぇ裕也、ちょっと頼みがあるんだけど」
その時、横目でそんな様子を見ていた真琴が話しかけてくる。
「あ、うん、何?」
「今日お母さん帰ってくるの遅いらしいし、私が晩御飯作ろうと思うんだけど、一人じゃちょっと運ぶの大変なの」
「そうなんだ……それで?」
「できれば裕也に運ぶの手伝って欲しいなぁ……なんて……」
「でも僕の服はまだ乾かないし……」
「その服で行けばいいじゃん」
「えぇ!?」

突然とんでもない事を言い出す真琴に、裕也の思考は今日何度目かの停止をした。
「こんな姿を他の人に見られたら絶対変に思われるよ!」
「そんな事ないよ、今の裕也は誰が見ても女の子にしか見えないし」
「知り合いに会ったら大変だよ!」
「大丈夫だよ。この家は私達の校区の中では凄い外れだし、今から行くスーパーも家のすぐ近くだしあっという間だって」
そう言いながら女の子用のニット帽を取り出すと目深にかぶせてくる真琴。
「ほら、こうすればあんまり顔が見れないから安心でしょ? 念のため私も他の帽子かぶって知り合いにバッタリ会ってもすぐには分からないようにするから」
「う、うん……って、真琴っ 何ボクのジャンパー着てるのさ!」
「だって今の裕也の格好の上にこの男の子が着そうなジャンパーだと逆に不自然でしょ? バレたくないならこれも思いきって交換しないと」
「うぅ…」
恐らく断固として反対すれば留守番出来るのだろうが何故かこの姿で外に出るという事に奇妙な高鳴りを感じてしまい、気づいたら真琴の予備の靴を履いて一緒に家の外へと繰り出していた。


「ほら、言った通りでしょう? 誰も変な目で見て来ないじゃん」
「うわぁ……本当だ……」
道行く人達は裕也が男だと気づいてるなら絶対に女装している事に対して奇異の眼差しを向けて来るのだろうが実際気にとめる様子は全く無く、それが完全に女の子だと思い込まれている事を実感させられる。
「裕也ったらみんなから完全に女の子と思われてるね」
「そ、そうみたい……だね……」
スーパーの中でもそれは一緒で他のお客さんや店員は女装してる裕也が視界に入っても注目する素振りは見せずに普通に受け流してる。

「ねぇ真琴……この服、真琴はともかく僕が着てると変だったりしないかな…?」
「おでかけ用の服じゃないちょっと子供っぽい感じのだけど変なんて事はないよ。下手したら私より似合ってるかもしれないよ」
「や、やっぱりちょっと不安だよ……建物の中でもジャンパーの前は閉めといた方が……」
「もっと自信を持って大丈夫だってば」

「うぅ……ねぇ真琴、僕のブラウスの襟曲がってない?」
「大丈夫みたいだよ」
「髪は変な風にちぢれてない? ニット帽に合ってる?」
「うん、下手な女子よりサラサラしてると思うよ」
「スカートが短すぎて不安なんだけど……覗かれたりしないかな?」
「タイツ履いてるから大丈夫じゃない?」
「あ、今の男の人に変な目で見られた気がする。この格好変に思われたのかな…」
「ああ、それは可愛い子だなっていう目で見られたんじゃない? 男の人って結構そういう目で見てくるから」
「そ、そうなんだ……」

「クスクス 裕也ったらさっきから、女装がバレないかより自分がちゃんと綺麗に見えてるかを気にしてばかりだね。中身も本物の女の子になったみたいだよ」
「そ、そんな事っ………と、とにかく早く買い物済ませようよっ」
「うん」

そんな事ないと断言できなかったのを誤魔化す様に買い物を急がせる裕也だったが内心そんな自分に動揺を隠しきれないでいた。


「えっと……にんじんとじゃがいもに……あ、ブロッコリーも入れてみようかな」
「シチューにブロッコリーって合うの?」
「知らないの? シチューって言えば鶏肉とブロッコリーだよ。裕也も今度お母さんに頼んでみれば?」
やがて本当に買い物に熱中していき、再び知らず知らずのうちに自分の潜在意識に飲み込まれていく裕也。
(やっぱり以外と気づかれないものなんだ……可愛い女の子として見られるのはちょっと気持ちいいかも。あっ あの子の着てる服可愛いな……あの服僕が着ても似合うかな…?)
いつの間にかニット帽は普通にかぶりなおし顔をしっかり出した状態になり、その様な事を考えながら最後に真琴とお菓子コーナーへと立ち寄った時……

「ねぇ、さっきすれ違った子の片方って男の子だったりするのかな?」
お菓子の棚を挟んだ向こう側から、少し前にすれ違った部活帰りらしい女子高生のお姉さん2人が自分達の事に付いて語り合ってるのが聞こえ裕也の背筋は凍った。
「んー? 別にどっちでもいいじゃん」
「あの子達多分中学1年か2年位だよ。男の子と女の子ならカップルじゃん。何か可愛いくない?」

(や、やっぱり変に思われてたんだ……)
今まで麻痺してた羞恥心が一気に沸き立ち今すぐ真琴の家に逃げ帰りたい衝動に駆られる。
「しっ 裕也、おちついて。まだハッキリバレてるわけじゃないみたいだし」
真琴もそう言い裕也を落ち着けながらも気になってるようだ。
だが女装がばれてるのならその点を指摘して気持ち悪がられるはずなのに、その様子は全然ない事に少し違和感を抱く二人。

すると……
「んー でもその子って確かハーフパンツの下はタイツじゃななかった? 男の子ならありえなくない?」
「そっか、そだよね、やっぱり女の子か、残念……それじゃ行こうか」
「うん」
その女子高生2人はそう言いつつどこかへと去っていった。

どうやら男の子か女の子かを議論してた対象は裕也ではなくて真琴だったらしい。
確かに今の真琴は男の子用に近い前つばの帽子に髪を入れ先程までの裕也同様に目深にかぶっているせいで可愛い髪と顔が隠れており、更に着ている服も男の子でも着れそうな物ばかりでこれで普通の靴下だったら見間違われても不思議ではなかった。

そして裕也の方はあの女子高生2人にも完全に女の子だと思われていたのである。
「よ、良かった……でもこれはこれで複雑かも……」
「それは私もだよ……ちょっとショックだよぉ~」
「いっその事下は長ズボンにしちゃいなよ。そしたら今の真琴なら本当に男の子に見えるよ。男子と女子を間違われる不思議さを共有しちゃおうよ」
「い、いやだよっ 私は女の子なんだから男の子に見えても全然嬉しくないよっ」
「男子の僕にこんな事させといて……」
ホッと胸を撫で下ろした裕也は、少しご機嫌斜めになってる真琴をここぞとばかりにからかってから改めてスーパーを後にする。


「そういえばさっきのお姉さん達もそうだけど、こんな雪が降ってるのにスカートにナマ足の女の人よく見るけど、あれって寒くないの? 学校でも女子の半分はそうだし、真琴って確か私服も年中スカートばかりだよね?」
一安心した途端、早速帰り道でついつい女の子の服の話題を出してしまう裕也。
「う~ん……確かに私は昨日のスケートとか今日みたいな特別な事がない限りはスカートしか履かないけど、その代わり必ずタイツも履いてて、寒い時にスカートだけになった事全く無いから、どんな感覚かは実際には分からないかも……」
真琴が質問1つ1つに丁寧に答えてくれているせいもありついつい話に熱中してしまう。

「僕は今の格好でナマ足だったらって思うと、想像しただけで凍えそうだよ」
「一応友達とかの話だと、普通に凄く寒いのを無理矢理我慢してるみたいだよ」
「うわ……女の人って大変だ……」
「女の私から見てもよくやると思うよ……私だったら今の気温が10℃上がっても絶対無理っ。まぁ、逆に言うとタイツもちゃんと履いてるからこんな雪が積もった真冬でも短いスカート履けるんだけどね」

「そういえば今まで意識する機会なかったけど真琴ってタイツの期間が他の女子より断然長いみたいだもんね」
「え、えへへ 小さい時から少しでも肌寒くなったらすぐにタイツに衣替えしてて、春になっても急にナマ足になるとスースーするから靴下になり辛くてそのまましばらくズルズルいく感じかな……」
(へぇ~ 真琴ってああいうお姉さんとかと違って、しっかり暖かい格好をした範囲内でオシャレする主義なんだ……)

どうやら裕也の頭の中ではさっきの緊迫感はすっかりと忘れ去られているみたいだった。




「あれ? 留守番電話のメッセージが残ってる。お母さんかな?」
家に戻ると電話の着信ありのランプが光っているのに気づく。
どうやら買い物に言ってる間に電話が掛かって来てたらしく、再生してみた所どうやら真琴の母親からの様だった。
留守電には掛け直すようにとのメッセージが残ってたのでさっそく連絡する真琴。
「あ、お母さん? うん、うん、あ、今日かなり遅くなるんだ。終電に間に合わないかも? あ、それじゃあそっちに泊っても私は大丈夫だよ。 うん、平気 うん 分かった、それじゃ」
会話の内容から察するにどうやら仕事の都合で今晩は帰れないみたいな雰囲気だった。
「真琴のお母さん今日は帰って来ないの?」
「うん、毎年この時期はお仕事忙しいみたいで……時々こういう時もあるの」
「そっか……」
もう自分達は中学生とはいえ一人ぼっちはちょっと寂しいのかもしれないと思う裕也。

すると……
「ねぇ、良かったら今晩私の家にお泊りしない? 冬休みで学校の心配は無いし」
普通に寂しいからなのか、色々な意味でチャンスだと思ったのか、あるいはその両方なのかもしれないが真琴はそう提案して来た。
「う、うーん………分かった、お母さんに聞いてみるよ」
たった今真琴の力になれる事があるなら協力したいと思ってただけに断る気にもなれない裕也。その申し出を受けるのはいわば必然だった。


「ふぃ~ 食べ過ぎちゃったよ~」
数時間後、幼馴染である真琴の事は裕也の家族も信頼しきっていたおかげであっさりとOKを出された裕也は、一緒に作ったシチューを食べ終わりくつろいでた。
一緒に作ったといっても学校の調理実習位でしか料理した事のない裕也はあんまり戦力にはなれなかったが、真琴曰くフリフリのエプロンをつけて一生懸命料理してる裕也の図は女の子そのものだったらしい。

「それで洋服同士の色にも相性があって、例えばセーターがクリーム色とかだとそれに合うスカートの色も変わってくるけど、もしお互いの色が逆だったらまた話は違ってくるの」
「へぇ~ そうなんだ」
「私は寒い間は足は真っ黒なタイツで固定で、それにあんまり明るすぎる色のスカートは基本的に合わないから上の服を買う時もその2つの事を考えて選ぶ様にしてるの」
「タイツって黒以外とかも売ってるんじゃないの?」
「あるにはあるんだけど寒いからとっておきの厚手で暖かいのを履いてるから…… でもそういうのだと色は黒か肌色だけっていうのばかりで肌色はちょっとおばさん臭いから嫌かな」
「やっぱりオシャレに気を使いすぎてもダメっていう事か……このタイツ結構暖かいもんね」
「そうでしょう だけど外から見えない所だったらやりたい放題なんだけどね。ババシャツとか以外と便利だよ。凄く暖かくて、ダサいのも上から洋服きたら全然分からないし」
「なるほど…」
くつろぎながらも話題は自然と女の子の服の話になっていき解説を受けている裕也。


その時不意にかなり自然に女の子の服を着て女の子の服の話に夢中になってる自分に今になって気づく裕也。
(そ、そういえば真琴からフリフリのエプロンを出された時、僕は当然の様に自然に受け取ってたな……)
料理をする男は今時珍しくも無いが、それでも女の子を連想させる料理というものを女の子の服とエプロンを付けて一生懸命している自分……。
何だか自分がどんどん深みにハマっていってる気がして言い様の無い不安に襲われそうになる。
(べ、別にこんなの今日だけで、明日からは普通の男に戻るんだ! ……でも……何かそれが凄く寂しく感じてしまう……ダ、ダメだ! そんなんじゃ!)

そう心の中で葛藤してると……
「うわ、裕也ったら足を広げすぎだよっ それじゃスカートの中見えちゃうよ? 女の子ならもっとお行儀よくしないと」
くつろぎモードに入ってたせいで行儀悪くなってた所を真琴に注意されてしまった。
「い、家の中で位いいじゃないのさ どうせタイツで見えないし、大体僕は男なんだし」
「女の子の姿でそんな格好される事自体が嫌なの。それに今は見えなくても夏だとそうはいかないでしょ?」
「な、夏って……女の子の格好するのは今日だけでもう終わりだよ」
「じゃあ今着替える? 服はもう渇いてるんでしょ?」

(………もう………着替える? もう終わり……?)


            ~もう着替える~


真琴の放った、その終焉を意味する一言は裕也の心に例え様の無い寂しさを湧き上がらせた。


「……ど、どうせもうしばらくしたら2度目のお風呂に入ってパジャマに着替えるんだし…… わ、わざわざ洗濯した綺麗な服を着るのはもったいないよ……」
「それならバスタオル1枚になるっていう手もあるよ? もうすぐお風呂沸くし、今凄く暖房聞いてるから、もう凍えてないなら風邪まではひかないでしょ?」
「そ、それでもちょっと寒いよっ 何だかんだでこの服暖かくて凄く着心地いいから脱ぎたくないよぉ!」
裕也はそう言い、自分の体を……正確には自分の体を暖かく繊細に包み込んでる服を大事そうにギュっと抱きしめた。

しばらくの沈黙の後……
「くすっ 聞いちゃったぁ~ 裕也って女の子の服がそんなに好きなんだぁ~」
「あ、いや、違う、今のは……」
「違うなら脱いで」
「……い……いやだ……着ていたい……」
「えへへ、冗談だよ。それじゃ私が先にお風呂入ってくるね。裕也はちゃんとその服着てるのなら後でも大丈夫そうだし。あ、裕也の番になったら本当に脱がないとダメだよ」
(僕は……僕はやっぱり女の子の可愛い洋服が大好きなんだ……)
満足そうに部屋を後にする真琴を見ながら、自分の中で何かが吹っ切れるのを感じる裕也だった。


~翌朝~
「ふぁ~……真琴、おはよう」
真琴に借りた女の子用のパジャマを身に付け、眠気眼を擦りながら居間に顔を出す裕也。
「おはよう裕也。朝ご飯はパンでいいかな?」
「うん、ありがとう」
裕也より少し先に起きてた、おそろいのパジャマを着ている真琴と一緒に軽く朝食を取る。

「それで裕也、今日の服なんだけどそこに出してるから。好きな方を着てね」
そう言われて見た先には2通りの着替えがあった。
1つは昨日洗濯した、普段いつも自分が着ている服。

そしてもう1つは昨日のにも負けない位可愛い女の子用のおでかけ服一式。
それらを前に少し考える素振りをする裕也だったが、どちらを着たいかはもうとっくに答えが出ておりしばらくすると当然の様にその内の片方に手を伸ばした。

「裕也おまたせー。ちゃんと着れた? って……裕也超可愛い……」
「う、うるさいなっ 真琴こそ格好いいぞ」
「それって褒め言葉~?」
真琴は昨日着てた男の子でも着れそうな服を、あんまり汚れてなかったため今日も着ている。
但し下半身は洗濯し終わった長ズボンで帽子もしっかりとかぶっていた。

「まぁいいや、それじゃあ初デートよろしくね裕也ちゃん」
「こちらこそ、真琴君」
「普段長ズボンなんて全く履かないから何か新鮮でドキドキするよ~」
「こっちはもっとドキドキだって」

数時間後、遊園地で楽しそうに初デートをする、可愛い服を着た女の子と中性的な男の子の中学生カップルがいた。


おわり

「うわ……裕也可愛いすぎ……」
「そ、そうかな? ありがとう」

裕也が時々女の子の格好をする様になってから2ヵ月ほど経ったある日。

その日はほんの少し寒さが和らいだため、真琴のあまり使わない春物の可愛い洋服を着たのだが、そのあまりにも可愛い姿に真琴は目を奪われてしまっていた。

今裕也が着ている服は、上半身はセーラー服に似た形をしたピンク色の可愛いシャツで、胸にはスカーフの代わりに細いリボンが揺れており、その上の開いた胸元からは鎖骨が見えていた。
そして男子にしては少し伸びてきた髪は服と同色の髪留めで形を整え、下半身には茶色くて短いプリーツスカートと、その丈ギリギリまでありそうな長い白ニーソックスを履いており、それが余計に可愛さを引き出していた。

ミニスカートとニーソックスの間から、裕也の太ももがチラチラと見え隠れする様子は女の真琴から見てもたまらないものみたいだ。

「真琴ってこんな洋服持ってたんだ……」
「うん、前に親戚のお姉ちゃんの家に遊びに行った時に可愛かったからお下がりとして貰ったの。だけどセーターとかに比べたら寒いからあんまり着る機会無かったんだけど……裕也、それ寒くない?」
「外に出たら少し寒いかもしれないけどそこまで深刻じゃないと思うよ? スカート短いけど長い靴下履いてるし」
「はぁ……裕也は寒さに弱くなくていいなぁ……寒がりな私はもっと暖かくならないとそれ着るのは絶対無理」

実際、人一番の寒がりで防寒を重要視したファッションしか出来ない真琴は、自分より広い範囲でオシャレを出来る裕也に対して憧れと羨ましさが混ざった複雑な思いを抱かずにはいられなかった。


「それじゃ裕也、実際外に出ても平気か確かめるのを兼ねて、スーパーでお菓子とジュース買って来てくれない?」
「えぇ!?、この格好で真琴抜きの一人で外に出るのは不安だよぉっ。それにいい様に使われてる気がする……」
「いいからいいから。毎回外に出る時私が一緒にいてあげれるとは限らないんだし、そろそろ一人に慣れなきゃ。ご褒美にその服は完全に裕也の物にしていいから。ね?」
「え!? いいの!?」
「うん。 私だと着れる時期かなり限られちゃうし」
実際もうちょっと暖かくなれば真琴でも上の服とスカートなら着れなくも無いのだが、タイツからニーソックスに代えるのには少し抵抗があった。
この服に黒のタイツだと真琴のファッションセンス的にかなり相性が悪く、可愛い服だからこそそんな事をしたくなかったのである。


「それじゃ行ってくるっ」
少し緊張しながらも嬉しそうな様子で玄関に駆け出し真琴のローファーを履いて買い物に行く裕也。
その時慌てて駆け出したせいで、裕也のミニスカートからチラリと可愛い純白のショーツが見えてしまい、本来自分のショーツなのにかかわらず少し赤面してしまう真琴だった。

「……はぁ……裕也には女の子の動作をもうちょっと学んでもらわないとな……」
一人になった部屋でそう呟くと椅子にガタンを座り込み、改めて今までの事を思い返してみる。


最近女の子にオシャレに大分慣れてきた裕也は、冗談抜きにどんどん可愛くなっていってると思う。
女の子の格好をしている時は、唇やうなじはなんだか艶っぽいし、さっきはパンチラの失態を犯したものの、椅子に座る時のスカートを撫で下ろす仕草は本物の女の子に全く劣らなく色っぽさも感じるし、先ほど見せた絶対領域の太ももは凄い威力があったし……
もし男女兼用の服を着たとしたら、かつての裕也だったら男に見えただろうが、今の裕也なら誰が見ても女の子にしか見えないだろう。
……そんな風に中身が女の子になる事によって着ている服も余計に引き立っていると思う。


そして服自体のファッションセンスも良くなってきて、真琴の服と女子でも着れそうな裕也自身の服を上手く
コーディネートさせて真琴をビックリさせたことも一度や二度じゃない。
しかも寒さにある程度の耐性を持ってる故に、真琴ほど防寒重視の厚手の格好まではしなくてもよいというオマケ付きだ。


(それに比べたら私って裕也と比べてどうなのかな……? 髪の長さとかでは負けてないと思うんだけど服装は……?)

なんとなく椅子から立ち上がり、姿見の前で自分の着てる洋服を眺める真琴。
上半身は温かそうなうす茶色の無地セーターで、その下にはチェックのYシャツを着ているものの、寒さ対策としてボタンは首元までしっかりと留められており、鎖骨周辺を露出させてる裕也の服とは対照的にセーターの丸襟から見えるのはYシャツの第一ボタンだけだった。
そしてYシャツの角襟はセーター、裾はスカートの上に出している。

下半身は茶色いチェックが入ったプリーツスカートで、チェックが入ってる以外は裕也の物と似ていたが、その下の足はミニスカートの代償として厚手の黒タイツにしっかりと覆われていた。

普通の女子と比べてかなり寒がりの真琴は、Yシャツ、ブラウス等といった首元まで保護してくれるボタンシャツとトレーナー、セーター等といったその上に着るしっかりした厚手の上着。
そして厚手の黒タイツの3セットを絶対に手放すことが出来ずにいたのだ。

襟を下に隠してると首周りがちょっとキツくなってしまうので、上半身は下のシャツの襟を上に出した服装。
寒がりなのに関わらず年頃の女の子としてスカートは絶対に履きたいので、下半身はスカートに黒タイツという服装が基本となり、冬はそれらの色や柄といった限られた範囲内でしかオシャレが出来ずにいるのだ。

それだけに、今の自分には出来ない裕也の可愛い格好は激しく印象に残るものがあった。

(やっぱり服の可愛さでは裕也に負けるのかな……で、でも女の子は中身も大事だもん! ……だ、だけど最近の裕也の仕草って凄く女の子っぽくて可愛い……うぅ~)


思わず唸ってしまいながらも再び椅子に戻り座り込む真琴。

(裕也ったらまさかニーソックスに手を出すなんて……)
ふと裕也の絶対領域を思い出し自分のスカートの裾を見下ろす真琴。
当然自分の履いている物はニーソックスではないので絶対領域などは無く、試しにスカートをペロリとめくってみるものの、そこからは素肌の太もももショーツも現れず、一面真っ黒いタイツに覆われてるだけだった。
せめてうっすらとパンツが透けているなら色気があったかもしれないがかなり厚手のであるためそれも叶わない。
何となく少し残念な気持ちになるものの、それに守られているという安心感があるのも確かだ。

(ニ、ニーソックスはどんなに長くても覆うのは足の部分だけじゃん。普通の靴下よりはいいだろうけどそれでもやっぱり寒そうだよ。それにスカートが短いとさっきの裕也みたいにちょっとした拍子にショーツ見えちゃいそうだし。 ……まぁ……可愛いのは認めるけど……それを履いた裕也もね)


やっぱり悔しいけど、正直今の裕也は自分より可愛いと思う。
本来なら本物の女の子として負けじと対抗する所なのだろうが、何故か逆に更に裕也の可愛さを引き立てたくなり、自分自身は極端なオシャレに力を入れる気にならず、そればかりか男装までした事もある。

男の人が、恋人には可愛くなって欲しいと思うのと同じ気持ちなのだろうか。
それとも、可愛い子の服を見立てるのが大好きで、そういうのは自分でやっても面白くないと思う女の人と同じなのだろうか。

裕也の事を同姓として好きなのか異性として好きなのか、はたまた異性は異性でもこっちが男役として好きなのかよく分からなくなってくる。

自分は百合っ子なのか、それとも恋する女の子なのか、たんに自分以外の子を可愛くさせるのが好きなだけなのか……
一つだけ分かってるのは、女の子の格好をして少し恥ずかしそうにモジモジしながらも嬉しそうにしてる裕也を見てると可愛さのあまり、たまらなく無茶苦茶にしたくなる衝動に陥るという事だ。



「……裕也ぁ……」
気づかぬうちに自分の手をあそこへと伸ばしている真琴。

真琴は今時の中学2年生にしては珍しく、自慰の経験は触り程度しか無かった。
多少の好奇心で時々自分の部屋でこっそり触ってみても、悪い事をしている様な罪悪感と自分の体を弄る恐怖感に気後れし、直接あそこを刺激するのはもちろん、ショーツ越しにも抵抗感を感じてしまい、触るのはいつもタイツ越しだったのだ。
それにより触ってるのは直接の体や下着ではなくて、あくまで衣類なんだという建前が出来るのである。

「……ん………んん…」
いつもの様にタイツの上から出来るだけ丁寧に撫でて、不思議な痺れとムズムズ感を味わう真琴。
(女の子の裕也を押し倒してギュッてしたい……裕也の無い胸を触ってみたい……裕也のショーツをもっと見たい……)

だが今日の真琴は、先ほどの裕也の可愛い姿によっぽど心撃たれてしまってるせいか、いつも切り上げている頃合になってもまだ続けていた。

「ハァ、ハァ、裕也……はんっ!」
いつもより強くあそこを押し揉む毎に全身に電流がかけめぐる様な錯覚を受ける。
初めて感じる、いつもとのちょっとしたムズムズ程度とは全然違う刺激と、頭の中の裕也の姿に真琴は罪悪感も恐怖感も忘れ夢中になっていた。


「はぁ……はぁ……これ、邪魔……」

そしてついに衣類越しの抑制された刺激に物足りなくなり、腰に手をかけるとショーツとタイツを一気に脱ぎ捨てる。
普段真琴は制服から私服に着替える時もタイツはそのままなため、朝起きて夜お風呂に入るまで滅多な事では出さないナマ足が露になった。

ある程度暖房が効いてるとはいえまだ寒い室内の空気に鳥肌が立ちそうになるものの、体の火照りがそれを防いでくれていた。

そしてスカートをしっかりめくり直してあそこを観察すると、その部分は愛液でじゅんわりと湿っていた。
「や、やだ、なにこれ……」
過去の自慰行為で愛液までは全く出なかったわけではないが、それは微量でパンツとタイツをほんの少しだけ湿らせればそれで済み、湿った所もすぐに気にならない程度には乾いてくれていた。
だが今回は吸収してくれる物は無い上にいつものよりかなり多い量の愛液が出ており、それを目の当りにして
麻痺していた恐怖感と罪悪感が蘇りそうになる。

もう止めようかとも思った真琴だったが裕也の姿を思い浮かべるとムズムズ感が更に強まった為、試しに少しだけあそこを直接弄ってみた。
「ひゃん!」
いつもよりダイレクトな刺激に思わず声を荒げてしまう真琴。

もうここまで来たら後戻りは出来ない。
不安とそれ以上の期待を込め改めてあそこに手を伸ばそうとしていると……

ドサッ

不意に部屋の入り口から音がして振り向くと、可愛らしい女の子……つまり裕也がスーパーの袋を地面に落とし顔を真っ赤にしながらこちらを見ていた。
真琴は手を伸ばそうとしてる体勢のまま固まり、両者の目が合ったまま数秒の時が流れる。


「あ、あああの、真琴ったら寒そうな格好で何を……じ、じゃない!」
「裕也ぁ……」
「ごごごめん、えっと、ぶどうジュースが安かったからそれ買って、その分お菓子を沢山買ってきたから……」

「裕也があまりに可愛いからこうなっちゃったよぉ……」
「え!? ぼ、僕が?」
そう言い顔を真っ赤にしていながらも、その表情をただただ焦っていたものから照れ臭さが混じったような恥ずかしそうな表情に変化させる裕也。
思わず自分のスカートをキュッと握り締め、それによりスカートの裾が若干上がり絶対領域が姿を現す。

「裕也が可愛すぎるのがいけないんだよ!」
「う、うわぁっ」
それを見た真琴は遂に耐えられなくなり裕也に駆け寄ると力一杯抱きしめた。

裕也の髪からは真琴がお勧めした女の子用シャンプー&リンスのいい香りとサラサラ感がしてきて、体からはコロンの心地よい香りがし、反面男の子特有のお日様の香りもしてそれらが真琴の鼻を燻る。
更に二次成長期に入ってもまだあんまり筋肉が付いていない裕也の、女の子みたいな柔らかい抱き心地も加わり、真琴はすっかり夢中になっていた。

「裕也っていい香りがして柔らかくて本当の女の子みたい……でもちょっと男の子の部分も残ってて不思議……」
「ま、真琴、恥ずかしいよっ」
「女の子同士なら全然恥ずかしくないよ。クラスでもよく女子同士が抱き付き合ったりしてるでしょ?」
「だ、だって僕、これでも本当はオト……」
「こんな可愛いのに男の子だなんて反則だよぉ」
「も、もうっ 恥ずかしいから離してよ」

なんとか振り解こうと真琴の腕の中でジタバタする裕也だったが解ける気配は全くなかった。

裕也は女の子の格好をしても全く自然な事から察しの通り、同年代の男子と比べて二次成長期の効果があんまり現れておらず、それゆえ肌は綺麗なものの身体能力もそれ相応しかなかった。
対する真琴は女の子の二次成長期の効果がしっかりと出ており、男子のそれに比べれば低いものの、それなりに身体能力は上昇しており、その結果裕也より若干腕力があったのだ。


「裕也って私より力弱くて中身も本物の女の子みたいだね」
「そ、そんな……なんだか傷つくよぉっ」
「今は女の子なんだからいいじゃない。ほら、裕也の太もも凄く綺麗」

抱きしめながらも裕也の太ももに手を持っていき、パンツ周辺の太ももを優しく撫でる真琴。
「ひゃ! く、くすぐったいよぉ」
(裕也の肌……吸い付く様なさわり心地……)

しばらくそのままでいる二人だったが、女の子に抱きしめられている刺激に耐えられなくなっていき、次第に抵抗が少なくなっていく裕也。

一方真琴は自然と、自分の足を裕也の両太ももの間に割り込ませ白いニーソックス越しに裕也の太ももの感触を足でも感じ始めたりしていた。

「ふ、ふぁ……」
その後も真琴に髪を優しく撫でたり、うなじにそっと鼻を近づけてクンクンされたりとしてた裕也だったが、ついに立ってる事にも限界を迎えたのか、真琴の腕の中でくたぁっと脱力した。

「裕也……?」
真琴は不思議に思って体を離すと、裕也はそのまま崩れ落ちる様にペタンと座り込むと
「ま……真琴ぉ……変な事しちゃ嫌だよぉ……」
とトロンと上気した表情で頬を染め、上目使いに見ながら言ってきた。

「ゆ……裕也、その表情は反則だよ……」
「表情……? 僕なんか変な顔してる……?」
「い、いいの! ほら立って、横になりたいならベッド貸してあげるから」
「うわわっ」
真琴はドキドキしながらもそう言うと、裕也を出来るだけ優しく抱き起すとベッドまで肩を貸す。

トサッという音と共に仰向けにベットに横になる裕也だったが、その上で頬を染めながらも白いニーソックスに覆われた足をモジモジと擦り合わせていた。
両手は軽く握り締めた状態で口元に持って行きモジモジとしていて、少し着衣に乱れが出ており、手の元の部分は服の袖に少し隠れていて、スカートは端っこがめくれておりそこからショーツがチラリと見えていた。

「ま、真琴ぉ……僕なんか体が変だよぉ」

息を荒くし、ピンクのセーラー型シャツの胸を軽く上下させながら、ボーっとした目を向けてくる裕也。

その様子がたまらなく愛おしく感じた真琴は、自然と裕也の体の上で四つんばいになり、真上から覗き込むような体勢になった。


「裕也ぁ……」
「あ、あの……真琴ちょっと怖いよ…?」
「だ、大丈夫、私も始めてだけど出来るだけ優しくしてあげるから」
「や、優しくって……僕をどうするの……?」

「え、えっと……とりあえずこうしちゃおっ」
そう言うと四つんばいにしてた自分の体を、裕也の隣に横向きに横たわらせる真琴。
そして片手を裕也の首の後ろ経由で向こうの肩まで伸ばすとそっと抱き込み、もう片方の手で裕也の乳首を可愛いセーラー型の服越しにコリコリと弄りだした。

「ひゃっ」
いきなりの事に思わず体をビクンと震わせる裕也。
「やっぱり裕也は私と比べても胸全然無いね。男の子だ~」
「も、もうっ 僕の事女の子って言ったり男の子って言ったり、本当はどっちがいいのさ」
「どっちだろうね~ でもあんまり男っぽいのは嫌かも~」
そう言うながらも胸を刺激し続け、次第にエッチは表情でトロンとしていく裕也。

「………や、やめてよぉ……」
「本当は止めて欲しくないんじゃない? 裕也も私の胸、服の上から触っていいよ」
「う、うん……」
そう言われぎこちない手つきで真琴の胸に手を伸ばす裕也。
そこには自分にはないふくらみがあり男の子として興奮を覚えずにはいられなかった。

「はぁ……はぁ……これが女の子の胸……」
(どう見ても可愛い女の子なのに、その女の子が男の子みたいに夢中で私の胸を触ってる…… 裕也ったらまるで男の子みたい………あれ?)

自分の胸を弄られている事以上に、ピンクのセーラー型の服をなびかせた可愛い子が、男の子みたいに夢中になって自分の体を触ってるという事実に一層興奮を覚える真琴。
その女の子の、男の子の胸に、可愛い服越しにこちらからも存分に触っているという事も加わり、真琴の息も一層荒くなっていく。

「はぁ……はぁ……」
二人はしばらくそのまま無我夢中でお互いの胸を服越しに撫で回しあった。


「ねぇ、裕也のスカートの中、どうなってる?」
一段落した所でそう言い唐突に裕也のスカートをめくりだす真琴。
「うわっ 真琴のエッチ!」
「それ普通逆でしょ? まぁ、今の裕也だったらいっか。……うわぁ……」
スカートの中には可愛い太ももとショーツ……
……そしてそれらには不釣合いな男の子のトレードマークとも言うべき大きな膨らみがあった。
少し躊躇したものの一気にパンツを下ろすとすっかり興奮した裕也の物が姿を現し、恐る恐るそれを撫でてみる。
「ひゃん!」
その瞬間裕也に電流が走り、悶えながら真琴に背を向けてくの字になった。
「え、えへへへ、裕也ったらここはやっぱりすっごく男の子なんだね」

スカートの中を見なかったら明らかな女の子……だがスカートの中だけを見たら立派な男の子……
……真琴は初めて触った男子のあそこに少し驚きつつも、そのアンバランス感を面白く感じていた。

そんな裕也を背中からしっかりと抱きしめ、手先を裕也のあそこへと持っていき両手で弄りだす真琴。
(……男の子のおちんちん……はじめて見た……)
「あ、あんまり乱暴に触らないでよぉ……ひゃうぅっ!」

正直充血したそれを見た時から、好奇心の他に恐怖感も抱かずにはいられなかった真琴。
もし裕也が外見、中身共に完全な男の子モードだったら狼を連想し、たとえ僅かに腕力が勝ってるとはいえ、気後れして怖い事になってたかもしれない。
だけど今の裕也は外見はどう見てもミニスカートに白いニーソックスが似合う可愛い女の子で、自分が手先を一往復する度に女の子みたいな高い声を上げて、くの字を更に深めてプルプルと震える様子は子猫を連想した。


「ま、真琴、なんか僕変になっちゃいそうだよぉっ」
「はぁっ はぁっ 裕也、ちょっと怖いけど可愛いっ コワカワイイよぉっ」
真琴が裕也を背中から抱きしめているという事は、裕也がくの字を深めるとその分真琴のあそこに向かって裕也がお尻を押し付ける様な形になる。

両者ともスカートはだらしなく捲れあがっており、パンツも下ろしているか脱いでいるため、真琴が一生懸命弄る度に裕也のお尻が真琴のあそこにグリグリと当たるのだ。

「裕也ぁ……っ……ふくぅっ……」
先ほど自慰を中断したのがよっぽど堪えていたのか、真琴はいつの間にか両手で裕也のあそこを攻めながらも自分のあそこを裕也のお尻に押し付けて上下させていた。


「ま、真琴ぉ……僕もうイっちゃうよぉ」
「い、いいよ、裕也、私は初めてだけどがんばるから、一緒にイこうっ」
そうしてるうちにいよいよ絶頂が近づき、そのまま勢いに任せてしまおうとする二人。
だが、自分のベッドが汚れるのを少しでも防ぎたいという真琴の最後の理性が働き、太ももまで下げてた裕也のショーツを手早く履かせた。
そしてショーツの上からペニスを握り締め、同時にショーツに自分のあそこを押し付けてから再び上下に深く動かしだす。
「あっ、あっ、はぁっ ま、真琴ぉっ!!!」
「くぅっ あっ ああっ 裕也ぁっ!!」
こうして二人同時に絶頂を向かえてしまい、裕也のショーツの前面には大量の精液、後面には大量の愛液のシミが出来るのであった。

「はぁ……はぁ……真琴の……いじわる……」
余韻に浸りながらも腰を捻って上体だけを背後の真琴の方に向けてると頬を膨らませて抗議する裕也。
「裕也が……本当に……可愛すぎるのがいけないんだぞ……」
その顔の可愛らしさに胸を一杯にしながら真琴の意識は落ちていった。


ゴソ……ゴソゴソ……ガサガサ
(あれ?……私……あのまま寝ちゃってたんだ……)
幾分かの時間が経過した後、真琴は室内から聞こえる何らか作業音よって意識は覚醒しつつあった。

激しい絶頂を迎えた時の女子の刺激は男子のそれとは比べ物にならないという。
真琴は14歳にして初めてそれを経験しただけにしばらく気を失ってしまっていたのも無理はなかった。

シュッ シュッ……ゴソゴソ
「これ位でいいかな……」
どうやら作業音の正体はティッシュを出す音や袋に捨てる音みたいで、音を出しているのは裕也らしい。
不思議に思って目を開けて見ると……
……目の前でピンクのセーラー型の服を着た可愛い女の子が、はしたなく自分のスカートを捲り上げて、ショーツを履いてないその中を一生懸命拭き上げていた。

「……裕也、……いきなり可愛い物を見せちゃって何してるの?」
「うわわっ ま、まま真琴おはよう!」
ジト目で問い詰める真琴と慌てた様子で挨拶する裕也。

……眠ってて目が覚めたら、目の前で(中身は)男子が自分のあそこを丸出しにして何かしてる……
普通だったらトラウマになってもおかしくないレベルの出来事だが、先ほどあんな行為をした仲だという事……
そしてなにより裕也の姿は先ほどと変わってなく、真琴好みの可愛い女の子のままだという事が真琴を妙に冷静にさせた。
裕也のあそこがさっきの迫力をすっかり無くして萎んでるのも一因だ。


「裕也のエッチ……」
「ち、ち 違うよ! ここの汚れを拭いてるだけだよ! ほらっ これウエットティッシュッ」
慌ててウエットティッシュを見せて弁解する裕也。
たしかに本当に拭いてただけな様子で、横にはスーパーの空袋に使い終わった複数枚のウエットティッシュと
二人分の絶頂で相当汚してしまった、裕也の履いてたショーツが入っていた。
だが裕也の服装を見るかぎりは、ショーツ以外の衣類は無事だったみたいだ。
「うぅ……幸い服はほとんど汚れてなかったけど後始末大変だったんだから……えっと、それで新しいショーツ使わせてもらっていい?」
「……うん」

さっきはほとんど一方的に犯してしまっただけに罪悪感から断る気にもならず承諾すると、裕也は今ではもう何がどこにあるかすっかり把握してる真琴のタンスからショーツを取り出し足を通した。

(普通に女の子が下着を替えてるだけにしか見えない……よね……?)
……男子が自分のタンスからショーツを引っ張り出して履いている……
……本来はかなり異様な光景なのだろうが、目の前に映ってる申し訳なさそうにしている可愛い女の子を見てると自然な事に思えてくるのが自分でもおかしかった。


「あ、私も拭いてから着替えよっと」
ふと、自分もスカートの中はスッポンポンのまま寝てしまってた事を思い出し、後始末しようと布団から出ようとする真琴。
(あれ?でもそれにしては下半身は全然寒くないけど…?)
ナマ足にままでいるにしてはやけに暖かいし、そもそも濡れてるままの不快感も感じられない事を不思議に思いながら、実際に布団から這い出て自分の下半身を見る真琴だったが、その次の瞬間驚愕する事となる。

「ち、ちょっと! 何で私元通りにタイツまで履いてるの!?」
「え、えっと……」
意識を失う時さらけ出していた、14歳の未発達な肢体の一部でもある真琴のスカートの中はいつの間にかショーツとタイツにしっかりと守られていた。

「ご、ごめん……あのまま拭かないでいると風邪ひきそうで、起こすのも可哀想だったから……」
「むぅ……だからって女の子の部分をそんな風に………やっぱり裕也はエッチだ……」
自分が無防備に寝てる間、恥ずかしい部分を丁寧に拭かれて衣類まで履かせてもらっていたと思うと恥ずかしさで頬を赤らめる真琴。
しかもその相手はミニスカに白ニーソックスを履いた可愛い子で、そんな子が自分よりこっちの後処理を優先してスカートの中はノーパンの状態で必死にお世話をしてくれてたと思うと胸がキュンとなって変な気持ちになる。

(裕也ってメイドさんみたいだな……)
「ご、ごめん、余計な事しない方が良かった?」
「まぁ……そもそも私は、裕也があまりにも可愛いから我慢できないで襲って犯しちゃったし…… 仕返しで一緒に変な事までしなかったよね…?」
「し、してないよぉ、ただウェットティッシュで綺麗に拭いてタンスからショーツとタイツ出して履かせただけだから…… え、えっと、真琴って靴下はタイツじゃないとダメだろうなって思ってそれにしたんだけど…正解だった?」
「う、うん……これじゃないと安心出来ないから……そもそもタンスにはタイツしか無かったでしょ?」
「そ、そういえばそうだったかな」
何だかどんどん会話が脱線してしまってる二人。

「と、とにかくっ……その……ありがと」
「う、うん……」
最後は素直にお礼を言い、それにより頬を染める裕也だったが、微妙に着衣は崩れたままになっているみたいで、その開いた胸元のセーラー襟からは鎖骨と乳首の中間位のきわどい所の肌まで見えていた。
「……っ………」
そんな裕也を見て、思わず再び思いっきり抱きしめる真琴。
「え? ま、真琴?」
「やっぱり裕也って男の子だけど可愛い……それにフワフワしてて抱き心地いいな……」

今度は下半身までしっかりと衣類に覆われた体をこすり付けてくる真琴。

「そ、そうだっ 真琴、買ってきたお菓子一緒に食べ……」
「なんか中途半端に寝たせいでまだ眠いから、裕也一緒にベッドで寝よう? 色々あって疲れたでしょ?」
「た、助けて~」

そう言いながらも少し血走った目をした真琴にベッドに引きずりこまれていく裕也だった。


おわり

「脱退 ダッタイ ダッタイツ」

「ま、真琴ぉ……僕にこれはまだちょっと早いよ……」
「ダメだよ、結構暖かくなってきたんだしここらへんで慣れとかないと」
あれから数ヶ月が経ち春も中盤に差し掛かってきたある日の事。
女の子の服を着る事にすっかり慣れた裕也は、定期的に母親が留守の真琴の家でいつもの様に女の子の格好になってたまに思い切って真琴と出かけてみているのだが、この日は初めて女装した日の様におちつきが無かった。

「うぅ…なんか脚が凄くスースーするよ……」
「この組み合わせだと履いてると不自然だから我慢してね。それにしても裕也の脚って女の子みたいに綺麗だね~」
今日の裕也のファッションは、上は袖なしのキャミソールの上にカーディガンで両方とも色は明るめ。
下も相変わらず丈は短いものの明るめの色のスカートだったが、相性が悪いという理由でいつも女装する時は必ず一緒に履いてたタイツを無しにされてしまい、ナマ足をさらけ出していたのである。

ちなみに真琴の方はまだしっかりとタイツを履いている。
「真琴はまだ履いてるのにズルいよ……」
「私の服になら履いてても変じゃないからからいいの。大体その服可愛いから試しに着てみたいって言い出したのは裕也だよ」
「うぅ……」

真冬の服はしっかりと包まれてたのに対し、今着てる春物はそっと包まれてる感じがして新鮮だったがそれ以上に下半身の無防備さに不安になってしまう。
今までのオシャレは何だかんだで頭と手先以外の肌の露出は一切無かっただけにその反動も大きいらしい。
裕也は改めて自分の下半身を包んでる衣類を1つ1つ見てみた。


まずは下着であって最低限の性器しか隠してないショーツ。
上半身の衣類に例えるならブラジャーだ。

そして、もしも丈が長いなら風よけになりそうなものの現実には最低限ショーツを隠す程度の丈で密封感0のミニスカート。
上半身の衣類に例えるなら袖なしキャミソールといった所か。

そして靴と靴下は足先だけはしっかり保護してるものの、逆に言うと他の部位は一切保護しておらずふくらはぎから上はむき出しになってる。
肢の先端だけ保護と言う事は、上半身のいるに例えるなら手袋といった所か。

いくら暖かくなってきたとはいえ、もし上半身はブラジャー、袖なしキャミソール、手袋の3点だけ着て外出しろと言われてもかなり辛い。
ましてや一部の女子みたいに真冬にそうする事など想像したくもない。
自分だったら夏でもない限りは、必ずタイツの様な上半身の衣類に例えると長袖洋服にあたる物を着用するだろうと思う裕也だった。

「真琴……ごめん」
「え? いきなりどうしたの?」
「いつも、これ位の気温になってもまだタイツは脱ごうとしない真琴を見てて暑苦しそうだなんて思ってたけど実際は全然逆だったよ……」
「うん……これ位の気温なら頑張れば慣れれると思うけど、やっぱり暖かい格好してる方が安心感あるから…… 私はもうしばらくこのままだと思うから、裕也その分までしっかりナマ足に慣れてね」
「ゆ、許して~!」

梅雨が明けたら寒さは気にせず思いっきり素肌を晒せる夏が待っている。
真夏のファッションはどうなるだろうかと胸を弾ませつつもとりあえず今は防寒意識を改めて持ちなおしとこうと思う裕也だった。

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最終更新:2013年04月27日 21:13