ダンゲロスWar&Wall・福篠単波エピローグ「ゆにばちゃんと『おおきなはち』」


ゆにばちゃんの、はじめてのハルマゲドンが終わりました。
多くの壁が壊され、多くの人が死にました。
人が死ぬのは、いつだって悲しいことです。
でも、戦いの中で死んでいくみんなの姿は、どことなく満足そうでした。
ゆにばちゃんは、老人ホームで静かに最期のときを待つおじいさん、おばあさんたちの事を思いました。

ふとく短く生きるのと、ほそく長く生きるののどっちが幸せなのか、やはりよくわかりませんでした。
たぶん自分が生きたいように生きられた人が、幸せなのでしょう。
そして、魔人は戦うための力を持っているのです……。

もしかしたら魔人が戦う力なんて持ってなくて、平和に暮らせる世界もあるかもしれません。
この世界を、魔人が戦いあうように作った神さまがいるとしたら?
ゆにばちゃんは、そんな神さまがいたら電気パンチしてやりたいと思いました。
でも、そんなことを考えてもしかたがありません。
たとえ世界のしくみがどんなに残酷なものだったとしても。
人は、魔人は、すべてのいきものは、その中でいっしょうけんめい生きるしかないのです。

戦いが終わった、崩れた壁のそば、青い空のした。
ゆにばちゃんがふと見ると、大きな蜂がよろよろと飛んでいました。
蜂はひどくぼろぼろで、今にも死んでしまいそうな様子でした。
でもなぜか、ゆにばちゃんには、その蜂がとても満足そうに見えました。
(蜂さんも、なにかをやりとげたのかな? ……おつかれさまっ!)

がっしゃん!
蜂を見送ったゆにばちゃんは、電源オフした低周波ナックルをかち合わせて気合いを入れました。
明日は久しぶりにホームへバイトに行かなくちゃ。
病気とハルマゲドンで、ずいぶん長いことおやすみしてしまいました。
きっと、チーフのお説教が待っています。
だけど、ゆにばちゃんは元気よく、力強く歩きます。
おじいさん、おばあさんたちが、ゆにばちゃんのことを待っているからです。

(ダンゲロスWar&Wall・福篠単波エピローグ「ゆにばちゃんと『おおきなはち』」おわり)




最終更新:2013年06月25日 23:25
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