潮血潮--熱い血のルーツ--1


 これは俺、潮血潮が魔人になる切っ掛けと、覚醒して間もない頃の話だ。

 希望崎学園に入る前、中学に入った頃か………。

 中坊の時分から喧嘩っ早い俺は、ものの見事に入学初日に停学となった。

「あいつ等から喧嘩売って来たんだ、それを買って何が悪いんだよ!!」

 何の事は無い、上級生が俺を生意気だと因縁付けて絡んで来たんだ。

「お前はやり過ぎなんだよ!!」
「7人中3人が病院送り、内1人は両腕骨折……」

 俺の担任と生活指導の先公が罰の悪そうな顔をし、俺を睨み付けた。

「お前はとんでもない奴を病院送りにしたんだぞ」

 とんでもない奴?
 先公はまくし立てる様、続け様にこう告げた。

「病院送りにした奴が他校の番長グループと仲が良いのを知ってるか?」

「どうせ魔人の事だろ?」

 俺の言葉に頷く担任、周りの先公がどよめき出すのも無理は無い。
 この時は知らなかったが、この学校の近くには四つの学校が点在し、それぞれのには番長が存在していた。
 番長魔人を筆頭にそれぞれ腕に覚えの有る者が傘下に着いていたんだ。

「そんなの大した事無いね」

 確かに"魔人"の超常的な力は"人類"の脅威だが、俺が病院送りにした上級生も例に漏れず、だ。

「俺が病院送りにした連中も魔人だろ?それなら魔人も大した事無いな」

 この時の俺は自分より強い者が居る事を知らなかったんだ……。

「潮、お前は一ヶ月の停学処分だ、その間は"絶対"にここへは来るな!!」
「いいか、"絶対"だぞ!!」

 異常な迄に"絶対"を強調された挙句、疫病神扱いする様に学校を追い払われた俺。

「さてと、どうしたもんか………」

 学校初日にして停学、しかも一ヶ月の休日を頂いたのだが、予定の無い休日ほど苦痛は無いなと思った。

「はぁ〜、家帰ったら何て説明するか………」

 後先考えず行動し、その都度に後悔するのが俺の悪癖だが、それが顕著になるのはこの頃からだった。

 その頃、俺を強制下校させた後の職員室は騒然としていた。

「よりによって彼奴等に手を出したのか!!」
「番長四天王が黙って無いぞ!!」
「彼等が動けば在校生はおろか、我々まで危険な目に………」
「校長、ここは潮血潮を正式に退学にすべきです!!」

「…………………」

 教師達は恐れていた、そもそも、何故学校側が上級生達の悪行蛮行を黙って居たのか、それは彼等の後ろに番長四天王が存在していたからだった。

「……皆さん、静粛にして下さい」

 今まで沈黙していた校長が重たい口を開いた。

「『転校生』を呼びましょう………」

 校長の一言に、ある教師は驚愕を、ある教師は絶望を、ある教師は狂喜を…………

「番長四天王の恐政を止めて貰いましょう……」

 "転校生"、魔人を超えた強さを持つ別次元の存在。
 彼等"転校生"は報酬により様々な依頼を行う。

 その報酬とは……

「『転校生』への報酬、それは………」

 人の命と人の肉。

「潮血潮」

 報酬は"俺"だった………。

〜〜〜〜〜<完>〜〜〜〜〜



最終更新:2013年06月19日 00:49