参 - 大蔵委員会 - 16号 昭和41年03月30日


政府委員 大蔵省主税局長  塩崎 潤君

柴谷要君 
 物品税の大体前身は、昭和十二年、戦費調達のために創設されたのですが、その名前は北支事変特別税法ということで、ダイヤモンドや写真機など、当時十品目ぐらいしか課税されておらなかったのですね。ところが、年を経るに従って、
品物が消費者の手に渡れば、黙ってがっぶりと税金が取れる
ものですから、戦争末期の十九年には百余品目にふえた。戦後多少整理されて、大きく分類をすると五十品目ぐらいにはなったけれども、まあ減少はしてきたけれども、一体、簡単に取れるものですから、この物品税というものは依然として、減少をたどるのじゃなくて、むしろ現行維持そのままが前進をしていくと、こういう姿のようなんだ。課税対象の商品は第一種が宝石、装飾用品、調度品、これらは物品税の対象にごくいいと思う、第一種は。それから、第二種の乗用車であるとか写真機とか、家具でも特別なぜいたく品、それから化粧品の特別な輸入したぜいたく化粧品、このくらいまでは物品税の対象で私はいいと思う。ところがですよ、第三種になってくると、マッチのようなものにも、千本に一円の税金がかかっておる。こういう第三種物品税なるものは、どうもわれわれは納得がいかない物品税のように思うのです。で、依然としてやっぱりこういうことを続けていかれるのか。この点をひとつお聞かせをいただきたいと思うわけです。
政府委員(塩崎潤君) 
御指摘のように、物品税につきましては、消費税のうちで最も批判の多いものでございます。
しかし、一方また、所得税、法人税という直接税だけでも、どうも大方の御意見は、もの足りない、やはり、消費に対して課税を相当重視してもいいではないか、まあこんなような意見もあるのでございます。このあたり非常にむずかしい点でございまして、私どもといたしましてこれをどう考えるか。今後ひとつ税制調査会等にはかりまして、さらにまた研究しなければならぬと思っております。
 まあしかしながら、個々の商品を取り出して議論を始めますと、各種の意見も出てまいりますし、ただいま柴谷委員のおっしゃったような、極度のぜいたくなものにだけ課税していくということも、これは一つの消費税の行き方だと思います。今回の減税の趣旨は、できる限り国民生活の向上に伴いますところの消費水準等と見合ったような減税をはかってきたつもりでございます。今後も、おっしゃったような方向で物品税の改正は考えていくべきであろう、かように考えております。
 しかしながら、財政事情、さらにはまた消費税の体系としての物品税の位置と申しますのは、酒税、たばこ益金というような特殊な消費に対しまする課税だけで消費税を考えるということでは、どうも不十分であり、財政上もその要求を満たさない、こんなような御意見もございます。このあたり加味いたしまして、今後ともひとつ慎重に検討いたしてまいりたいという――おっしゃっている方向は、私は一つの方向であると思います。しかしながら、消費に対しましては、所得や財産に対しまする直接税の課税よりも進めるべきであるという意見もございますので、このあたりひとつ根本的に検討してまいりたい、かように考えております。
柴谷要君 
 政府がなかなか、検討をして、物品税の分類減少をはかろうとしない理由の一つは、国税の中でも第五位を占めているのですね。年間千四百二十二億、まあ千五百億近い税収があがってきますから、これはたいへん徴税の上においても楽なのですね。品物を売りさえすれば金が入ってくる。これは税務署の手を経ないで、源泉徴収と同じようなものですから、たいへん楽だ。しかも、五位を占めるという税収の徴税額。だから、これを簡単にやめてというと、ほかに財源を求めるのはなかなか困難だから、これはわかりますよ。わかるけれども、マッチのようなものにまで税金をかけておきながら、実は新聞に出たことなんですが、孫の初節句に三万円のおひなさまを買ったというのです。さぞかし三万円のおひなさまだから物品税が相当かかっておるのかと思って調べてみたところが、これは五万円までは無税だと、こういう。おひなさまのような、まああってもなくてもいいようなものを、三万円のものを買って、お孫さんに与えた。それに物品税相当高くかかっているかと思ったら、一銭もかかっていない。調べてみたら、五万円までは無税だと、こういう。こういうものと比較して、日常必要品であるところのマッチというものに課税をしておる。これは全く納得がいかないという新聞記事が出ておりました。これはなるほど国民感情だと思う。
 その原因をなしているのは何かというと、大蔵省の用語に便益品というのがある。便益品というのがあるのだそうですね、大蔵省には。便益品という用語が、それは便利な品物に税金をかけるという、こういうのが便益品という用語になっている。便益品というのは便利な品物だということになるから、電気製品は便利な品物だから税金をうんとかける、こういうことになって、家庭必需品であるものに過大な税金を課しているというのは全く困ったものだというのが、国民感情のようであります。一体、便益品に課税をするということをきめたのは、いつごろの時代の局長さんですかね。
政府委員(塩崎潤君) 
 二つの品目を例示されての御質問でございますので、まあ物品税の性格をあらわすものといたしまして、若干御説明申し上げたいと思います。
 確かに物品税は、先ほど来御指摘のように、非常に問題が多い。さらにまた、これも当委員会で私がたびたび御説明申し上げましたように、
究極的には物品税は消費者の負担だと思いまするけれども、その間の商品の自由なる価格形成を通じての転嫁の過程におきまして、企業――製造する方々の規模が小さければ小さいほど、その物品税の価格転嫁に伴いますところの苦痛は大きい
こういうことを申し上げましたが、まさしくそのことが私は玩具の免税点にあらわれておると思うのであります。
 おっしゃるように、個々の品目をとりまして、ダイヤモンドが一万五千円の免税点、玩具が組で四万五千円、こんなことになることをつかまえられておっしゃられますと、確かに多分に問題があり、客観的な基準は何かということが疑問が出てまいるのでございます。しかし、私どもの気がつきますことは、やはりマッチの業者に比べまして玩具の業者はより零細であり、さらにまた裏長屋で家庭内職を使いながら製造を続けていくような方もないわけでもないわけでございます。こんなように考えまして、
免税点は消費者の負担だけの見地じゃなくて、企業の物品税の価格転嫁に伴いますところの苦痛を緩和する意味が含まれております。
さらにまた、その金額につきましては、多分に過去に定められました沿革に基づいておる面もございます。そんなような観点でできておることをひとつ申し上げ、さらにマッチにつきましては、半分以上はこれは広告マッチでございます。
 過去にはこれもマッチの課税は私ども、私も古くから物品税やっておりまして、もう私は御批判を受けておりましたが、過去におきまして、その課税の根拠は、たばこに対して消費税を課税する。しからばたばこを吸う場合にマッチを幾ら使うか。したがいまして、たばこ消費税と物品税とを一体として考えまして、課税の根拠を御説明したような時代もございます。そういう時代にはライターも普及しておりませんので、大体課税の根拠もある程度そのあたりにも求められたのでございますが、現在ライターが普及してまいりますと、なかなかむずかしい。現在ではそういった意味で、私どもはこれは過当競争の結果であったかと思いますが、広告用のマッチがこれは半分以上ある。広告税をこんな形で起こす気持ちもございませんけれども、これは一つの担税力のあらわれと見てもいいではないか、こんなようなことを御説明申し上げている次第でございます。
 便益品というのも、これは一つの根拠でございますが、これをいつからきめたと申しますか、これは税制調査会で審議の、物品税を検討する際に、どういう基準で物品の性格を分けるかといった際に一つ設けられた基準で、一つの考え方を示すにとどまるだけでございます。そういった意味では、私どもは絶対的な課税の根拠ではないと思いますが、先ほど申し上げましたように、消費に対して課税することが一つの税制といたしまして考えられる根拠でございます。それからまた、所得税、法人税のような直接税はあまり高いと勤労意欲を害するとか、資本蓄積を阻害するとかというようなお話があり、さらにまた税務上のトラブルも最も多いものでございます。まあそんなようなことを考えますと、ある程度生活必需品ではないにいたしましても、生活の便宜を向上さすもの、生活水準の向上を示すようなものにつきましては、課税の根拠を求めてもいいんではなかろうか、こういったことが考えられると思うのでございます。
 日本の税制の消費に対します課税、現在の間接消費税の形は私は決して十分とは申しませんけれども、外国に比べまして、やはりこういった酒、たばこのような特殊な商品以外の一般的な商品についての消費、しかもそれが生活水準の向上に関係するものにつきましては、ある程度の課税を求めることが現在の税制上の欠陥を補うものではないか。外国に比べましても、わが国の消費税は、当時税制調査会で指摘されましたように、酒、たばこ、ガソリンとか砂糖に片寄り過ぎておる。消費に対して課税いたしますれば、こういった耐久消費財のような、おっしゃるように便益品と言ってもよいかもわかりませんが、そういったものを課税の中に取り込むことも一つの消費に対する課税を完全にする意味では考えられるのではないか、こんなようなことが指摘されましたので、現在でもそういったことが言われておるのではないか、かように考えております。

最終更新:2013年07月23日 14:14