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希望崎SS




『ミズを使いすぎるな』


「水が鳥取に無い!おれのところに回ってこない!昨日おれは理由を知った!希望崎の水使いの奴が!水を使い過ぎる!」
「マワッテコナイ!ミズガコナイ!」
「コナイ!コナイ!ミズガコナイ!」
「ミズを使いすぎるな!」
「ミズを使いすぎるな!」
「ミズを、使いすぎるな!」

【岸間直嶺プロローグ「リボン」】


あの日、たまたま俺の鞄の中に入っていた黒いリボン。
あの日、君に渡すはずだった忘れ物。
何もかもが津波に流されて、手の中に残った物は一本のリボンだけだった。

長く伸びた髪を後ろで束ねて、君のリボンでひとつに束ねる。
一目見れば女物と判るが、幸い希望崎にはもっと珍妙な奴は山ほど居る。
ちょっとした服装倒錯にも寛容な、この学園の空気は割と気に入っている。

ああ。俺は過去に縛られている。
取り返しのつかないことを嘆いても意味がないことは知っている。
世界を呪って。魔人となって。暴れ回った愚かなフェイズはもう終了した。
だが、過去を切り離し、君を忘れてしまえる程ドライになれるわけもない。

だから、俺は伝える。
津波の恐怖を。無慈悲な破滅の奔流を。災害への備えの大切さを。
そして、俺の《緊急小津波警報》が誰かの命を救うきっかけになったなら。
君の死も、結果としてプラスになるんじゃないかと思う。
このリボンは、未練ではなく“誓い”なんだ。

そんなわけで、可愛い子がいたら、遠慮なくまた恋するつもりだから悪く思うなよ。
いや、実はもう、ちょっと気になる奴はいるんだ。
そいつは――

大矢モニアプロローグSS『イミテイション』


その日、兄さんは死んだ。

そもそもの原因は私がプールで溺れてしまったことだった。
自分の不注意が原因だった。両親からもあそこは危険だから近づくなと言われていたのに。
プールサイドにいた兄は私を助けようとして、プールに飛び込んだ。
だがその結果、今度は兄が溺れてしまったのだ。
私があんなことをしなければ兄は今もそこにいたのに。

家に戻ったあともみなが自分を責めているようで辛かった。
大矢コンツェルンの後継者である兄よりも自分が死ねばよかったと言われているようで。
けれどきっとそれはただの被害妄想だったのだ。
家族は私に優しかったのだから。でも、私にはその優しさが辛くて――

だから私は長く伸ばしていた髪を切った。言葉遣いも変えた。服装も部屋も何もかもすべて変えてしまった。
兄さんになりたかった。
自分のせいで死んでしまった兄さんになって自分を殺してしまいたかった。
けれど、そんなことはできないと僕はわかっていたのだ――

――――

「夢か…」

窓から差し込む光を浴びて、大矢モニアは目を覚ました。
今もあの頃のことは夢に見る。何度も繰り返される悪夢。
忘れてしまうことなどできない。
大切な兄を自分のせいで殺してしまったのだから。

「そろそろ学校の準備の時間だな」

時計を確認し、パジャマを脱ぐと、クローゼットの中から学生服を取り出しそれに着替える。
男性的な服装に男性的な口調。
それはあの日から続けてきた習慣。兄になりたくて。
けれど、それはただの偽物に過ぎない。そんなことは自分でもわかっていた。
でもすでに身体に染み付いてしまった。
今更変えられないだろう。

イミテーションゴールド。
他者のコピーを生み出す彼女の魔人能力。
だが、それはすべてを完璧には再現できない不完全なコピー。
まるで兄になりたくて、決してそうはなれない自分自身のようだと思う。

着替えが終わり部屋を出ると用意された食事を取り、いつものようにその日も学校に向かった。

『私の居るない場所』


遠くに行きたいな
どこか遠くに行きたいな

私はここに居るけれど
ここに私は居ない

みんなのために何かをするのは好きだけど
自分のために何かをするのはちょっと苦手なの

だからみんなの間に私は居るけど
私はどこにも居ないんだ

ここは私の居るない場所
私をどこか遠くに連れてってくれる不思議なちからが溢れてる

どこに行くのかな
ちょっと怖いな
でもみんなのためならば私は飛べる気がする

……みんなのため?

自分がやりたいことのはずなのに
みんなのせいにしなきゃ何もできやしない
やっぱり私はどこにも居ない

無題

ハルマゲドンに関しては俺も動く
抗議デモだよ
具体的には普段はいがみ合ってる各希望崎陣営と連絡を取り合い、短期の新希望崎を発足した
自分でも驚いたが、豪華なメンバーが集まった
当学園最大水使いのリーダー、幹部3人
水使いではないが最大派閥のNo2、No3
学園では有名な、小学生以来一度も喫煙したことがないというヘビースモーカー
戦闘部隊が四十四人いる上毛衆の一員
アキカン辞めて中二力カンストした奴
他に挙げたらきりが無いが、そうそうたるメンバーで総勢20人を超えた
狩れない鳥取はもはやいないだろうという最強集団だ
ソロでShimaneを狩った奴もいる。
学園ではスズハラ機関、アキビン、斧部(俺含む)、一家などの超一流だ
なによりも強いのは、全員鳥取でのハルマゲドンをぶっ通しで何日も可能だ。
リアル予定が・・・なんて奴は一人もいない
はっきり言って、俺らが声を掛ければ学園のJKは半数以上が動くだろう
四天王の連中はらくだ、砂エルフにも顔が利く。奴らの中にもバンされた奴はいうだろう
協力して全員でハルマゲドンしたらさすがに黙ってられないだろう
ちょっと顔なじみのGKに話つけてくるわ



死にたい人にお薦めの危険な学校鳥取砂丘高校


•らくだ上がりの8人なら大丈夫だろうと思っていたら同じような体格の20人に襲われた
•ユースから徒歩1分の路上で穴洗がおしりから目をだして倒れていた
•足元がぐにゃりとしたのでござをめくってみるとサボテンが転がっていた
•眼鏡をした旅行者が襲撃され、目が覚めたら眼鏡が破壊されていた
•砂泳で旅行者に突っ込んで倒れた、というか泳いだ後から荷物とかを強奪する
•宿がニャン崎さんに襲撃され、女も「男も」全員猫にされた
•タクシーからショッピングセンターまでの10mの間にメカワームに襲われた。
•バスに乗れば安全だろうと思ったら、バスの乗客が全員魔人蟻だった
•魔人の1/3が八百長経験者。しかも接触者が金回りがよくなったという都市伝説から「貧乏人ほど危ない」
•「そんな危険なわけがない」といって出て行った旅行者が5分後キノコまみれで戻ってきた
•「何も持たなければ襲われるわけがない」と手ぶらで出て行った旅行者が大切な想い出を盗まれ下着で戻ってきた
•最近流行っている役は「門から手を出す役」 金属釘バットを手に持って悪党に殴りかかるから
•鳥取砂丘高校から半径200mは人外にあう確率が150%。一度襲われてまた襲われる確率が50%の意味
•鳥取砂丘高校における亀甲縛りによる死亡者は1日平均120人、うち約20人が外国人旅行者。

上毛茜プロローグSS


20XX年某月某日。
都内に位置する私立希望崎学園は、その面積の大半を砂漠地帯が占める鳥取に転送された。原因は不明。
当時学園内に居た生徒も転送に巻き込まれる。
その中には潜入捜査をするために希望崎高校に入学していたグンマー人、上毛茜も含まれていた。


◇◇◇

「喉乾いたなぁ……」
「こっちに飛ばされる前は蛇口を捻れば水が飲めたのにね」
「まぁ砂丘学園が厚意で水を分けてくれてるんだし、そう文句をいうなって。」

希望崎の生徒達の何気ない会話。
ここ数日の取り留めのない話の中には、現状への不満が混ざることも多かった。

「……その水なんだけど、鳥取の人達水の配給をケチってるって噂があるみたいだよ?」

そっと。事実無根の噂を流す。
無論こんな程度の低い嘘をついた所で本気で信じられるとは思ってない。ただ、少しでも彼らの不満に指向性を持たせることができればいい。すなわち、現状に対する不満を砂丘高校に対する不満へとすり替えるのだ。

「マジでー? 鳥取の奴ら、どうもきな臭いと思ってたんだよなぁ。」
「私たちがこっちに来てから、あっちはしばらく水の配給について揉めてたみたいだもんね。」
「いや、彼らだって生活が掛かってるんだからそれはしょうがないんじゃないかなぁ」

やり場のない負の感情を持て余している時、明確な捌け口を求めるのは至極当然な心理である。特に、現在の様な非常事態であればそういった心理はより一層強く働く。
仲間たちの反応は茜にとっておおよそ想定通りの感触だった。
この調子で少しずつ、少しずつ希望崎学園の生徒の鳥取砂丘高校に対するヘイトを増やしていければ。



――――希望崎学園VS鳥取砂丘高校のハルマゲドンを引き起こせるかも知れない。



そんな企みを心の内に隠し、人懐っこい笑みを浮かべて会話を続ける。

……心の何処かで微かな罪悪感が生じ始めていることに気づかないふりをしながら。

◇◇◇

希望崎学園が転移してから、茜が真っ先にやろうとしたことは上毛衆の隊長への連絡だった。
上毛歌留多を持っている者同士でのみ会話できる、呪符を媒体とした通信で連絡をとった。

【※ここから先の一連の会話はグンマー独自の言語で話されますが、理解できる人はいないと思われるので日本語に翻訳して書かれています】

『ハルマゲドンだ』

現状を伝えると、隊長はしばらく考えるような間があった後そう呟いた。

「ハルマゲドン、というと希望崎学園でよく行われる魔人闘争ですか?」
『然り。鳥取砂丘高校と希望崎学園を対立させ、ハルマゲドンを引き起こすのだ』
「……しかし希望崎学園に手を出すのはまだ早いと、この間の定例会議で決めたはずでは?」
『それは我々が直接希望崎に侵攻するかどうかの話だ。砂丘高校と希望崎が争えば、我々の手を汚さずして希望崎を潰せるかもしれん。絶好のチャンスだ。』
「でも……!」
『くどい。それとも何だ、貴様が単騎で希望崎を滅ぼしてくれるというのか?』
「それは……」
『不可能だろうな。希望崎を叩くなら機会は物資が足りず弱体化している今しかない。奴らは戦力として非常に危険だ。しかし残念ながら上毛衆から援軍を出すことは出来そうにない。皆それぞれの任務で忙しいし、鳥取の奥地となると遠すぎる。だからこそのハルマゲドンだ。これなら貴様一人でも希望崎を貶められる可能性は高いだろう。』

できれば、共に過ごした仲間を地獄へ落とすような真似はしたくない。
ゆっくりと言葉を選び、隊長の説得に掛かるが……。

「その希望崎の危険性ですが、あくまでグンマーの近隣地域にあったが故に危険視されていたはず。鳥取に飛ばされた今ならば、それほど脅威ではないのでは?」
『確か原因不明の転移なのだろう? もし何かの拍子に関東に戻ってきたらどうする。物資は補給され、希望崎は万全の状態となり、再びグンマーの身近に位置する脅威となるだろう。そうなる前に叩いて置かねばならん。何か文句はあるか?』
「……いえ」

(駄目だ。恐らく、何を言おうが隊長は意見を変えたりしないだろう……)

『これは命令だ。ハルマゲドンを引き起こせ。成功すればそれなりに報酬は弾んでやろう。』
「……かしこまりました」

通信が切れた。

(やるしかないのか……)

――援軍は来ない。潜入している学校でハルマゲドンを起こす。
この作戦には大きなリスクがある。
それは、扇動する本人がハルマゲドンに巻き込まれる可能性だ。直接戦闘に参加しなくても、そもそもの目的である「希望崎の負け」が決定すれば水の供給が断たれ茜は他の生徒と共に野垂れ死ぬ。
隊長は頭は固いが、決して馬鹿ではない。そういった事態も予想済みだろう。
つまり、茜は使い捨ての駒扱いをされたというわけだ。

この任務は希望崎の生徒達にとっても、茜本人にとっても得にならない。

暗鬱な思いを抱きながら、茜は任務に取りかかりはじめた。



◇◇◇

水が少しずつ不足していく。
希望崎には水を大量に消費する魔人も居るため、砂丘高校からの配給では足りるはずもなかった。
希望崎学園はもっと水を寄越せと要求し、鳥取砂丘高校は水の消費を抑えろと反発する。
茜が少しずつ煽り立てた功もあって、二校の溝は深まっていく。

それと同時に罪悪感も徐々に茜の精神を蝕んでいく。
敵地だと教えこまれ、潜入した学園の生活は思いの外楽しくて。
機密部の皆は私の正体を知った上で情報を秘匿してくれて。

使命と罪悪感の狭間で揺れつつも、茜は扇動の手を止めることができなかった。


――――誰かが、きっと誰かが止めてくれる。

そんな甘い願望を縋るように抱いて、任務を遂行していった。

◇◇◇

遂に水不足により倒れる人が出てきた。
希望崎、砂丘高校の両方でハルマゲドン開催を望む声が上がり始め、学校内で開戦派と穏健派の派閥が生まれた。


茜は穏健派に所属した。
抑圧が強ければ強いほど人は反発するものである。それを利用して、茜は穏健派として過激派を抑圧することでより過激派の活動を活発にした。

「武力で解決しても何も生みません。平和な解決方法を探しましょう。」

そんな心にも思ってないことを何度口にしただろう。
……あるいは、本心からの言葉だったかもしれないけど。

過激派の一人はこう語った。
「このままでは二校とも共倒れだ。現状を維持して何になる? 俺は、仲間たちが次々と倒れていくのをただ見ていることなんてできない! 鳥取の人達を犠牲にしてでも自分も仲間たちを守りたいと思うのは、そんなおかしいことだろうか? そして向こうだって同じようなことを考えているはず。もはや衝突は避けられない。ならば、いっそ戦うなら、ゲリラ戦になって泥沼化し始めるという最悪の事態を避ける為にも、明確な勝利条件のあるハルマゲドンを開催するべきだろう!」

彼の考えは少し過激だけど、学園の仲間達を真剣に想う熱意は伝わってきた。

(過激派も穏健派も根本は同じ。皆が皆のことを思って行動している。ただ目的の為に選んだ手段が違うだけだ。それに比べて私は、私は一体何をやっている……?)

ここに来て生じ始めた孤独感、疎外感とも言える寂しさ。
仲の良い友だちと話していても、その寂しさが紛れることはなく。
むしろ彼らの笑顔が鈍痛となって心に重く響いてくる。
この寂寥感はきっと罪の意識から生じたもの。
茜の企みの内容からすれば当然ともいえる仕打ちだろう。

計画は成功に近づいているはずなのに、茜は精神的に追い込まれていく。

もうきっと止まらない
今更茜が扇動を止めようが止めまいがいずれにせよ大好きな友人達は命懸けの闘いへと身を投じることになる。

(私は…………わ、たしは…………)

任務と仲間を比べた天秤がぐらり、と揺らいだ瞬間だった。

◇◇◇

派閥発生から数日が経ち、水の盗掘未遂事件が発生した。

誰が犯人だったかなど、もはやどうでもよかった。
状況が起こした当然ともいえる帰結であり、例え今回の事件がなかったとしても今後似たような事件は発生していただろう。
ただ一ついえることは、この事件が両校の間に決して埋めることの出来ない亀裂を刻み、事態は急速にハルマゲドン開催へと動き出したということ。

そして。

「番長グループに引き続き、生徒会でもハルマゲドン開催が決議されたぞー!!」

ハルマゲドン勃発。

「マジすか」
「生徒会マジクール」
「今回は生徒会だの番長グループだのって内輪もめじゃねぇ、俺達希望崎が全員一丸になって砂丘高校をぶっ飛ばすんだ。テンション上がってきたぜ―!」
「鳥取の地平線に勝利を刻むのです!」
「気合!いれて!いきます!」

開戦の知らせに盛り上がる希望崎の生徒たち。
喧騒に包まれる中、茜は一人悪寒に震えていた。

「――――あぁ、遂に。」

これで、上毛茜は使命を果たした。
希望崎学園と鳥取砂丘高校は潰し合い、どちらか一方あるいは両方が潰える。

「……ぅ。」

突然、胃のあたりから何かがせり上がってくる気配を感じて、茜はトイレに駆け込んだ。

「……っ。…………っ!……はぁ……はぁ……」

胃の中身をほとんど吐き出した。
口から胃液を垂らすほど吐き出しても、足りないと言わんばかりに身体はえずく。
突如発生した身体の異常に、しかし茜はなんとなく原因を理解していた。

(多分精神的なもの……。自責の念に駆られて、とかそんな感じかな)

胸が痛い。
ハルマゲドンは遊びじゃない。人が死ぬ。
下手すれば戦闘に参加する全員が死ぬかもしれない。たとえ勝てたとしても、無傷の完全勝利とは行かないだろう。

茜は涙で瞳を滲ませながら嘆く。
(私のせいだ……。全部……全部……吐き出して消えてなくなってしまえ。使命も。上毛衆という肩書きも。)


そこで、ふと気づく。

(……あぁ、そうだ。消そう。今の私にいらないもの、全て。)

立ち上がって、個室からでる。

颯爽と歩き出した茜の目には固い決意が宿っていた。


◇◇◇

上毛衆の隊長との呪符による通信を試みる。
なかなか相手が応じない。苛立ちが募る。
だが、この通信を使うのも最後となるはずだ、と思うことで焦りを抑える。

【※ここから先の一連の会話はグンマー独自の言語で話され(以下略】

『茜か。どうした』

繋がった。
すぅ、と息を吐き出し呼吸を整える。

「……命令通り希望崎学園VS砂丘高校のハルマゲドンを引き起こすことに成功致しました」
『そうか、大儀だ。ハルマゲドン本戦の際に参戦メンバーに選ばれないよう、しばらくは目立たぬ様に行動するといい。貴様も命は惜しいだろう。』

友達を死地に向かわせておいて、自分は安穏とした立ち位置にいられるか?
――そんなもの、答えは決まっている。

「いえ。私は参戦メンバーに立候補しようと思います」
『……何?』
「そして今この時をもって、私は上毛衆を脱退しようと思います。今までありがとうございました。」
『!? 貴様、自分が言ったことの意味がわかってるのか!』
「許可無く脱退する者はかつての同胞の手によって“消される”のでしたよね? ええ、結構です。やれるものならやってみて下さい。確か、せっかく希望崎を潰すチャンスなのに援軍を出すことすら出来ないほど皆多忙なのでしょう?裏切り者一人殺す為に人材を派遣できるほど余裕があるんですかね……?」
『…………。何故だ? さっきから訳が分からない。何が貴様をそうも駆り立てる?』
「やりたいことがあるんです。上毛衆にいたら、恐らくそれは成し得ることが出来ない。」
『やりたいこと、だと?』
「希望崎の仲間たちの役に立ちたい。ただ、それだけのこと。彼らの為になら命を投げ打つことだって惜しくもありません。」
『その仲間たちを死地に追いやったお前が、か? なかなか滑稽なことを言うじゃないか』
「ええ。だから、その罪滅ぼしをしたい。簡単に償えるような軽い罪ではありませんが、上毛衆の名を捨てて、希望崎の生徒としてハルマゲドンに参戦することで少しでも罪を償いたいのです。」
『……ハルマゲドンが終わる頃には余裕もできるだろう。なにやら偽善に酔っているようだが、それも本戦終了までだ。生き残っているならお前の命を、死んだなら上毛歌留多の回収に隊員を回すつもりだ。貴様はいずれにせよ死ぬ定めとなる。』
「そうですか。ハルマゲドンでの生存率は低い。そして上毛衆の追手も返り討ちにできる自信はない。ですが私もむざむざとやられる訳にはいきません。生き残っていたならば自分で、死んでしまったなら仲間に託し、私の持っている上毛歌留多をこの鳥取の広大な砂漠に廃棄します。以後、見つかることはないでしょう。これで“上毛茜”の座は永久に失われます。……ざまあみやがれ。」
『貴様ぁーッ!!!』

通信を切る。
晴れ晴れとした気分だ。

皆が集まる場所に戻ると、既に作戦会議や参戦メンバーの募集が始まっていた。

「あの、私参戦しようと思います!皆の為に頑張りたいんです」

嘘偽りではない、本心からの言葉。
仲の良い友人の数人は心配するような顔でこっちを見てきた。
私はそれにはにかんで手を振る。

――こんな私にも、心配してくれる人がいる。
――優しい人達。
――彼らの為に報いよう。死に物狂いで戦おう。それが、私に出来る唯一の罪滅ぼしだと思うから。


【END】