OpenMusicの歴史
ここではOpenMusicが生まれるまでの歴史をざっと説明する。原文は筆者Takuya Imahoriが2013-14年度ジュネーヴ高等音楽院修士論文Réalisations d’analyses du style de 3 compositeurs avec un environnement d’aide à la composition : OpenMusicに書いた文章のうちの第1章第3節Histoire de développement des logiciels de CAO à l’IRCAMからの抄訳である。
1982-1985年、IRCAMでFORMESと呼ばれるコンピュータ補助作曲(英語でComputer Aided Composition (CAC) フランス語でComposition Assisté par Ordinateur (CAO))プログラムが開発された。これはMacintoshに移植され、その際にPREFORMと改名された。このPREFORM上では様々なライブラリが開発され、中でも作曲家のトリスタン・ミュライユによってESQUISSEが挙げられる。ESQUISSEは2014年現在もOpenMusicの拡張ライブラリに搭載されている。
CRIME(1984)とCARLA(1986-1990)の2つのプログラムを経て、1990年にはPatchWorkと呼ばれるプログラムが開発された。LISPベースによるグラフィックインターフェースのパッチコードプログラミングが可能なこのプログラムは、現在のOpenMusicのベースとなっている。これはまた現在のOpenMusicにも搭載されている様々なライブラリを搭載していた。Esquisse, Chaos, Kant, AS->PW (PWはPatchWorkのことだが、現在OpenMusic上ではAS->OMと名乗っている。ASとはIRCAMのソフトウェアであるAudioSculptのことである)、またCsoundを外部操作するためのライブラリもすでにこの頃生まれていた。
PatchWorkはOpenMusicと改名され、IRCAMの作曲科研究課程をはじめ、様々な大学や音楽院で教材や研究用に用いられている。
PatchWorkから派生したもう一つのCAOプログラムとして、フィンランドのシベリウス音楽院で開発されているPWGLが挙げられる。これはOpenGLを搭載したグラフィックインターフェースを採用しており、PatchWorkのもう一人の息子ないしOpwnMusicの兄弟だと言える。
もう一つの有名なパッチコードプログラミングとしてMax/MSPが挙げられる。これは最初IRCAMで開発され、Opcode社への売却を経て現在はCycling 74より発売されている。Max/MSPはリアルタイムに特化されたMIDIおよびサウンドシンセシスのプログラムである。昨今ではMax/MSPにもCAOのための拡張オブジェクトBACHが開発されている。
参照
- Célestin Deliège, Cinquante ans de modernité musicale: de Darmstadt à l'IRCAM, 2003, ed. Mardaga, Paris, [FR], ISBN 9782870098288