決戦前夜、烈とジュンの逢瀬を目の当たりにした豪は内面のバランスを欠き、
目の前のレースに集中できずにいた。
「くそっ、何でだ! 何でこんなことで集中できねぇんだ!!」
自責とプレッシャーに追い立てられ、ますます焦燥を深めていく豪。
そんな彼を立ち直らせたのは、他ならぬ兄、烈の放った鉄拳だった。
「お前が迷ったら必ず俺が殴りに来る。だから安心しろ。
お前の傍にはいつでも俺がいる!」
その言葉にわだかまりを捨て、渾身のマグナムダイナマイトを成功させる豪。
ついにビクトリーズは総合トップへと躍り出る。
だがそのとき、悲劇が起こった。
ハマーDのハンマーDクラッシュが死角から烈を直撃。
更にゾーラまでもがレースに乱入し、アディオダンツァがソニックの車体を深々と貫いたのだった。
消失する烈の生命反応。
息を呑む土屋、ビクトリーズの仲間たち、そしてジュン――。
目前の光景に、豪は恐慌状態へと陥っていた。
暴走状態のライトニングマグナムは他のマシンを蹴散らし、次々とリタイアに追い込んでいく。
その様を眺めながら、ゆっくりと起き上がる影。
「……おちおち寝てもいられないか……」
「もう駄目だ……俺はもう何も……何もできねぇ……」
マシンを制御できないまま、心を閉ざしはじめる豪。
しかしその瞬間、後方から現れた一台のマシンが猛スピードでマグナムに激突した。
「豪!! 歯ぁ食いしばれ!!」
激しく吹き飛ばされる豪。上体を起こした彼が見たものは
満身創痍で駆けつけた烈とブリッツァーソニックの姿だった。
「お前のマグナムは、天と地と、明日を貫くマグナムだろう!
こんなところでへこたれてどうする!!」
そこに現れるハマーD。容赦ない攻撃でマシンを踏み潰そうとするが、
マグナムとソニックの連携がそれを一蹴する。
呟く、烈。
「いいか豪、自分を信じろ。
俺が信じるお前でも、お前が信じる俺でもない……
お前が信じる、お前を信じろ……!!」
炸裂するギガ・ドリル・ブリッツァードリフト。
ハマーDとゾーラを破り、ついにビクトリーズは完全なる勝利を掴み取るのだった。
歓喜に沸く仲間たちの中で、烈は静かに瞳を閉じる。
(あばよ、弟公――)
「……烈兄貴?」
既に答える声はない。
その日、TRFビクトリーズはかけがえのないものを失った。
最終更新:2013年09月03日 09:07