注意 *
4 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:16:20.15 ID:qSgGUyE1O
「どうしたんだよ、急に模型屋行くから付き合えとか」
「む。この前私の学校の学園祭でミニ四駆の出し物があってな。そこでマシンを提供した店の宣伝をしていたんだ」
「で、これからその店に向かうってわけか。ミニ四駆買うのか?」
「うむ。愛しの烈きゅんのバンガードソニックが欲しくなってな」
「…コスプレの一環か…よくやるよ」
「お前もコスプレしてみないか?豪なんかキャラクター的にも似合うと思うのだが」
「ありえねーよ。っていうか今俺にミニ四駆の話をしないでくれ」
「なんだ、やけに機嫌が悪いな。なにかあったのか?」
「それがよ、俺が出かけてる間に母ちゃんが俺の部屋の本全部売っちゃってよ…」
5 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:17:02.28 ID:qSgGUyE1O
「それは酷いな。しかし部屋を片付けないお前にも非はあるだろう。あの部屋は確かに汚い」
「うっせーな。…その中に大事な本があったんだよ」
「買い戻しにいけばいいじゃないか」
「行ってみたけどもう売れてたんだよ。はあ、あんな本誰が買ったんだか…」
「で、それがミニ四駆の話とどんな関係があるんだ?」
「ミニ四駆の改造本だったんだよ。…お、あの店じゃねーか?」
「む、そのようだな。行くか」
川 ゚ -゚)「邪魔するぞ」
从 ゚∀从「ちわーっス」
6 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:19:00.24 ID:qSgGUyE1O
ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい」
俺たちを出迎えたのは若いねーちゃんだった。俺たちと同じくらいか?
川 ゚ -゚)「む、あなたはこの前の学園祭にもいましたね。ここの店員さんでしたか」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、VIP大学の学生さん?ブーンたちに用かしら?今日はまだ来てないわよ」
川 ゚ -゚)「ブーンたち?ああ、学園祭で企画をしていた彼らか。いや、特に彼らと知り合いというわけではなくてな、今日はミニ四駆を買いに来たんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、そうなの。ミニ四駆のコーナーはそこだから、ゆっくり見ていってね」
川 ゚ -゚)「かたじけない」
7 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:19:39.80 ID:qSgGUyE1O
クーがミニ四駆のコーナーを見ている間、俺は暇つぶしに店内を見て回る。懐かしい気持ちは確かにあるが、今はミニ四駆を見たい気分じゃない。
( ><)「ワカッテマスくん、このパーツはどんな効果があるんですか?」
( <●><●>)「ちょっと待ってください、この本で調べてみます」
店内にはミニ四駆のコースも置いてあるようだ。コースの近くで2人の子供がセッティングをしている。
从 ゚∀从「今のガキでもミニ四駆やってる奴いるんだな。………ッ!」
片方の子供が持っている本に目が止まった。
9 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:21:45.18 ID:qSgGUyE1O
从;゚∀从「お、おいボウズ!ちょっとその本見せてくんねーか!」
(;<●><●>)「な、なんですか!」
返事を待たずに本を取り上げ、裏表紙を確認する。汚い字で書かれた名前。間違いない。
从 ゚∀从「ボウズ、この本元々俺のなんだ。金なら払うからさ、悪いけど返してくんねーかな?」
(;<●><●>)「い、嫌です!その本は僕が買ったんです!返してください」
( ><)「ワカッテマスくんに返すんです!」
从;゚∀从「なあ、頼むよ、大事な本なんだ」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと!あんたなに子供のもの取り上げてるのよ!」
从;゚∀从「い、いや、これにはわけが…」
店員のねーちゃんがやってきた。説明するのめんどくせぇな…。
10 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:23:00.62 ID:qSgGUyE1O
…………。
('A`)「ブーンたち来てるかな…」
午前中は酷い頭痛がしていたので見合わせていたが、今は治ったので荒巻模型店に向かっていた。
「子供から物をとるなんて恥ずかしくないの!?」
「だーかーらー!これには事情があるっつってんだろ!?話聞けよ!」
そろそろ荒巻模型店が見えるというところで、店の方から怒鳴り合う声が聞こえた。片方はツンさんの声だが、もう1人は聞き覚えがない。お客さんだろうか?
11 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:25:07.50 ID:qSgGUyE1O
(;'A`)「ツンさんなにやってんだろ…?」
あまり関わり合いになりたくない気もしたが、そうもいかないだろう。恐る恐る店の扉を開けた。
(;'A`)「こ、こんにちは」
ξ#゚⊿゚)ξ「あ、ドクオ!聞いてよ!こいつがワカッテマスくんの本取り上げようとしてるのよ?」
从#゚∀从「だから、まず落ち着いて俺の話を聞けって!」
川 ゚ -゚)「いや、ハイン、お前も落ち着け」
なにがなんだかわからない。やっぱりあのまま帰ればよかったか。
('A`)「ん?今ハインって…」
从 ゚∀从「…え?ドクオ?」
ツンさんと言い争っていた女と目が合った。
从;゚∀从('A`;)「あーーっ!!」
(;'A`)「お、おま、お前ハインか!?」
从;゚∀从「ド、ドクオか!?」
12 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:26:37.46 ID:qSgGUyE1O
ξ゚⊿゚)ξ「え、なに?知り合い?」
川 ゚ -゚)「どうやらそのようだな」
(;'A`)「…………」
从;゚∀从「…………」
あまりのことにお互い言葉が出ない。
( ^ω^)「おいすー!」
(´・ω・`)「こんにちは」
( ^ω^)「お?ドクオと見つめ合ってる女の人は誰だお?」
ξ゚⊿゚)ξ「さあ?私にもさっぱり」
川 ゚ -゚)「私が思うに2人は昔の恋人同士だな」
(;^ω^)ξ;゚⊿゚)ξ「なんだって!」
(;´・ω・`)(話についていけない…)
13 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:28:19.99 ID:qSgGUyE1O
川 ゚ -゚)「間違いない。あの絡まり合う視線。あれはかつて愛し合った者たち特有のものだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「な、なるほど!」
(;^ω^)「言われてみれば!」
(;´・ω・`)(この人たちなんでこんなにすぐ馴染んでるんだろう?)
(#'A`)(あいつら!なに勝手なことを!)
从 ∀从「…ドクオ」
(;'A`)「…あ、ああ」
ハインに話しかけられて我にかえる。
从 ∀从「黙っていなくなって悪かったな…」
(#'A`)「ほ、本当だよ!勝手にいなくなりやがって…」
14 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:29:28.73 ID:qSgGUyE1O
「どうやらハインがドクオを捨てていなくなったようだな」
「まあ、普通に考えればそうよねぇ」
「おっお、ドクオかわいそうだお…」
(#'A`)(あいつら…いい加減にしろよ…)
と、そこでハインが吼えた。
从#゚∀从「てめーら!少し黙ってろ!」
ドスッ!
( ゜ω゜)「ウッ!」
ブーンがハインのパンチをまともに受け、もんどりうって倒れる。
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン、大丈夫!」
( ´ω`)「おっお…どうしてブーンが…」
从;゚∀从「わ、わりぃ!つい…」
15 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:31:40.53 ID:qSgGUyE1O
……………。
('A`)「…というわけなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「へえ、2人は幼なじみだったのね」
川 ゚ -゚)「その本は君がハインにあげたものだったのか」
落ち着いたところで、俺とハインとの関係を皆に説明した。
从 ゚∀从「おう、ブーンっていったか。殴って悪かったな」
( ´ω`)「だいぶ楽になってきたお…」
ξ゚⊿゚)ξ「いきなり殴るなんて野蛮だわ」
(;´ω`)(;'A`)(;´・ω・`)(いや、あんたが言うなよ…)
16 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:32:31.41 ID:qSgGUyE1O
从 ゚∀从「ん?あんたそいつの彼女か?彼氏に悪いことしたな」
ξ//⊿//)ξ「か、彼女なんかじゃないんだから!私たちもただの幼なじみなんだから!」
ドスッ!
( ゜ω゜)「ハウアッ!」
(;´・ω・`)「ブーン!ブーン!しっかりするんだ!」
川 ゚ -゚)「うむ、ハインに劣らぬ良いパンチだ」
ブーン…。かわいそうに。
17 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:33:16.36 ID:qSgGUyE1O
从 ゚∀从「まあ、というわけで、その本は思い出の品なんだよ。ボウズ、悪いけど譲ってくれるか?」
( <●><●>)「そういうことなら仕方ないです」
从 ゚∀从「…わりぃな。で、いくらだったんだ」
( <●><●>)「30円です」
从;゚∀从「………」
(;'A`)「俺たちの思い出が…」
从;゚∀从「たったの30円か…」
川 ゚ -゚)「まあ、書き込みまでしてあるしな」
なんだか力が抜けてしまった。まあ、思い出はプライスレスってことで…。
19 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:37:18.52 ID:qSgGUyE1O
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばミニ四駆を買いに来たんじゃなかったの?」
川 ゚ -゚)「む、そうだった。すっかり忘れていた」
どうやらクーさんという人はミニ四駆を買いに来たらしい。
川 ゚ -゚)「買うものは決めている。これを頼む」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます、630円です」
クーさんが買ったのはバンガードソニックだった。
川 ゚ -゚)「ここで組んでいってもいいのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ。誰か工具貸してあげて」
( ^ω^)「おっお、じゃあブーンのを使うといいお!」
川 ゚ -゚)「む、すまない」
クーさんは箱を開けてマシンを組み立て始める。
20 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:37:59.42 ID:qSgGUyE1O
川 ゚ -゚)「シャーシは出来たのだが…」
从 ゚∀从「どうしたクー?ボディにシール貼れば完成だろ?」
川 ゚ -゚)「…なんだかずいぶんパッケージと違うな。烈きゅんのマシンはこんなんじゃない」
(;'A`)(烈きゅん?)
(´・ω・`)「紙のシールですからね。仕方ないです。工夫すればある程度は見栄えがよくなりますけどね」
川 ゚ -゚)「ほう。詳しく聞かせてもらおうか」
(´・ω・`)「いいですけど結構根気がいりますよ?」
川 ゚ -゚)「かまわない。衣装づくりをしているから、根気はそれなりにあるつもりだ」
21 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:39:43.07 ID:qSgGUyE1O
(´・ω・`)「それなら教えましょう」
(´・ω・`)「まずデザインナイフ等を使ってシールの余白を切り取ります。結構細かい作業ですよ」
川 ゚ -゚)「大丈夫だ。スクリーントーンを削るのでなれている」
(´・ω・`)「そのあとはクリアースプレーをを吹くわけですが、一気に厚く塗りすぎるとシールを侵食してしまうので、あくまで薄く、何回かに分けて塗ります。
ちゃんと乾かしてから塗り重ねなきゃダメですよ」
川 ゚ -゚)「なるほど」
22 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:40:30.53 ID:qSgGUyE1O
(´・ω・`)「シールの段差が目立たなくなるくらいになったら、よく乾かしてコンパウンドで磨きます。これだけやればそれなりに見られるボディになりますよ」
川 ゚ -゚)「ありがとう、勉強になった。しかしそれは時間がかかりそうだな。道具を買って自宅でやることにしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、お店の中でスプレー使われても困るしね」
ここでハインが俺に話しかけてきた。
从 ゚∀从「ドクオもまだミニ四駆やってるのか?」
('A`)「最近またやり始めたんだ」
从 ゚∀从「へえ、マシン見せてくれよ」
('A`)「いいよ。はい」
ハインにエンペラーPROを手渡す。
23 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:42:37.09 ID:qSgGUyE1O
从 ゚∀从「なんじゃこりゃ!?モーターが真ん中にあるぞ?うわー生意気にベアリングローラー6個も使っちゃって」
ハインは俺のマシンをしげしげと観察している。新しいマシンが珍しいのだろうか。
从 ゚∀从「…この本に載ってる改造じゃないんだな」
('A`)「うん。…その改造じゃあんまり速くないしね」
从 ゚∀从「カーッ!夢がねぇな!…おい、ドクオ!」
('A`)「なに?」
ハインが言おうとしていることはだいたい想像がついた。
从 ゚∀从「この改造計画の通りに作るぞ!」
('A`)「うん、やってみるか!」
少年時代の夢を追いかけてみるのも悪くない。
24 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:43:33.93 ID:qSgGUyE1O
(;'A`)「だけどこのパーツ全部手にはいるかな…」
ξ゚⊿゚)ξ「どれ?見せてみなさいよ」
ツンさんが改造計画を覗き込む。
ξ゚⊿゚)ξ「あら、うちのお店にあるパーツでほとんど全部揃うわよ?」
('A`)「え、本当に?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。エンペラーは最近スペシャルキットが出たし。
トルクチューン、大径アルミベアリングローラー、可変ダウンスラストローラー、レストンスポンジタイヤは今も普通に売ってるわ。
軽量ワンウェイホイールとリヤースキッドローラーはグレードアップパーツクラシックvol.3に入ってる」
25 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:45:24.45 ID:qSgGUyE1O
('A`)「結構手に入るんだなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「スタビポールローラーセットだけはないわね」
从 ゚∀从「おう、あの皿回しみたいなヤツか。…こいつで代用したらどうだ?」
ハインが改造本を開いて指差す。
('A`)「ああ、こんな改造もあったなぁ」
それはジャパンカップの入賞者のマシン紹介のページだった。マシンのサイドは普通のスタビポールを逆向きにつけ、ローラーを取り付けられるようにしてあった。
('A`)「よし、これでいこう」
从 ゚∀从「おし、俺も一台組んでみるか」
26 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:47:33.63 ID:qSgGUyE1O
('A`)「お、なんのマシンにするの?」
从 ゚∀从「決まってんだろ!こいつだ!」
ハインが手にしたキットはサイクロンマグナムだった。
('A`)「ああ、やっぱり」
サイクロンマグナムはかつてハインの愛車だったのだ。
从 ゚∀从「モーターはウルトラダッシュな」
2人ともそれぞれマシンとパーツを買い、組み立て始める。
('A`)「…あとはフロントローラーか」
从 ゚∀从「ドクオはまだ組みおわんねーのか?俺はもう出来たぜ!」
('A`)「あとこれをフロントにつけたら完成だ」
从 ゚∀从「それは…」
俺が取り出したのは、子供のころハインから貰った大径アルミベアリングローラーだ。
27 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:49:41.52 ID:qSgGUyE1O
从 ゚∀从「…そんなのまだ持ってたのか」
('A`)「お前と違って売ったりしねーよ」
从;゚∀从「あ、あれは母ちゃんがだな…」
('A`)「わかった、わかった。…こいつは今日偶然出てきたんだけどな。まさかハインに会うとは思ってもみなかった」
从 ゚∀从「おう、俺もだ」
俺は思い出の品をフロントにとりつける。ゴムリングは劣化してひび割れ、ベアリングは錆びている。アルミもくすんで光を失っている。それでもいい、今はこいつを使いたかった。
('A`)「よし、完成だ!」
从 ゚∀从「おっしゃー!早速走らせるよーぜ!」
28 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:50:56.15 ID:qSgGUyE1O
ハインと2人でマシンを構える。
从 ∀从「懐かしいな…」
( A )「…ああ」
マシンのスイッチを入れる。軽快な音が店内に響き渡る。
从 ゚∀从('A`)「いっけーっ!!」
2人同時にマシンをスタートさせる。
从 ゚∀从「ハハッ、ドクオのマシンおっせーな」
減速用やあまり意味のないパーツをつけ、モーターはトルクチューン。遅いのは当然だ。
('A`)「自分のマシンの心配しろよ」
从;゚∀从「あっ!ちくしょう!」
ハインのマシンは第一コーナーでコースアウトした。ウルトラダッシュを積んでいるのに、ローラーはフロントにつけた大径アルミベアリングだけなのだから当然だ。
29 : ◆ItodYKFaCM :2008/09/23(火) 22:51:59.63 ID:qSgGUyE1O
('A`)「ハハッ、進歩ねーな!」
从#゚∀从「うっせー!」
('A`)「…フフ」
从 ゚∀从「…へへ」
从 ゚∀从 ('∀`)「「ハッハッハ!」」
俺たちは顔を見合わせて笑い合った。まるで子供時代に還ったようだった。
最終更新:2013年09月16日 21:56