('A`)がミニ四駆をふたたび走らせるようです 第9話

4 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:12:11.56 ID:y5TFtl6CO
('A`)「こんにちは」
俺は今日も荒巻模型にやってきていた。
ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい。ブーン達はまだ来てないわよ」

('A`)「あ、そうなんですか」
店内を見回してみる。確かに俺以外の客はいないようだ。
ξ゚⊿゚)ξ「こないだの大会でお客さん増えるかと思ったんだけどねえ…」

(;'A`)「はあ…」

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、まだ早い時間だしね。…そういえばあんた他にやることないの?」

(;'A`)「ハハ…」
痛いところを突かれてしまった。彼女も友達もいない、アルバイトもしていない。俺は大学の長い夏休みを持て余していた。


5 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:14:47.90 ID:y5TFtl6CO
ミ,,゚Д゚彡「オッス」と、そこへ予想外の客がやってきた。
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと!もう私には付きまとわないって約束だったでしょ?」
ツンさんが激高する。フサギコはブーンとのミニ四駆レースに敗れ、二度とツンさんに近寄らないと約束していたのだ。
ミ,,゚Д゚彡「いや、今日はそうじゃなくてよ…」
フサギコがチラッと俺の方を見る。
(;'A`)(目が合った!)

ミ,,゚Д゚彡「おう、おまえ、ドクオっていったっけ?」

(;'A`)「は、はい。なんでしょう?」
何故か俺に話しかけてくるフサギコ。正直コイツは俺の最も苦手にするタイプだ。できることなら構わないで欲しい。


7 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:18:22.26 ID:y5TFtl6CO
ミ,,゚Д゚彡「おまえこの前のレース3位だったよな?」

('A`)「…え、まぁ、一応」
この男は俺になんの用があるというのだろう。
ミ,,゚Д゚彡「あのよ…その、なんだ……どうしたら速くなる?」

('A`)「え?」
フサギコの口から飛び出したのは意外な言葉だった。
ミ,,゚Д゚彡「だからよ、どうしたら俺のミニ四駆は速くなるんだ?」

(;'A`)「えっと…それを聞きにわざわざ来たの?」

ミ,,゚Д゚彡「おう、そうだ」
どうやらフサギコは本気なようだ。どうしたらいいんだろう?俺はツンさんの顔を伺ってみる。
ξ゚⊿゚)ξ「…教えてあげたら?お客さんとして来たなら追い出すわけにもいかないわ」

(;'A`)「…え、ちょ、待って…」
教えるといっても俺も復帰したばかりだし、それになによりフサギコは俺の苦手なタイプなのだ。


8 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:19:57.67 ID:y5TFtl6CO
ミ,,゚Д゚彡「頼むよ、すぐにヤレる女紹介してやっからさ」

(;'A`)「ヤ、ヤレ…」

ミ,,゚Д゚彡「なあ、教えろよ」
どうも引き下がりそうにない。仕方ない、教えるしかなさそうだ。
(;'A`)「えっと…じゃあ、とりあえずフサギコ…さんのマシンを見せてくれる?」

ミ,,゚Д゚彡「フサでいい。おう、こいつだ」
フサギコからレイスティンガーを受け取る。
('A`)「…なるほど」


9 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:23:22.89 ID:y5TFtl6CO
フサギコのマシンは俗にいう夢パーツを満載したマシンだ。
ワンウェイホイール、レストンスポンジタイヤ、スライドダンパーetc.どれも第二次ブーム時に流行ったパーツだ。
('A`)「う~ん…こういうパーツはあんまり効果ないんだよね。それにパーツ付けすぎで重いのに、トルクの少ないレブチューンじゃまともに加速できないね」

ミ,,゚Д゚;彡「げ、そうなのか?でもボディ肉抜きして軽量化してるぜ?」

フサギコの言うとおり、レイスティンガーのボディは綺麗に肉抜きされ、丁寧にメッシュが貼られていた。
('A`)「あ、肉抜き上手いんだね…」


12 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:26:06.80 ID:y5TFtl6CO
ミ,,^Д^彡「だろ?子供の頃近所で一番上手かったんだぜ?」
自慢気にフサギコがいう。あんまり嬉しそうなので、少し肉抜きしたくらいでは速度に影響ないということは伏せておく。
ミ,,゚Д゚彡「で、どうしたらいいんだ?」

('A`)「うん…基本的なセッティングから教えるよ…」

………。
ミ,,゚Д゚彡「これでいいのか?」

('A`)「うん、さっきよりは全然速くなってると思う」

俺が教えたのはFRPプレートを使ったバンパーの強化や幅出し、お勧めのベアリングローラーやタイヤ、ホイールなどといったごく基本的なことだった。


14 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:28:50.72 ID:y5TFtl6CO
('A`)「ほとんどショボンやブーン達からの受け売りだけどね。俺のマシンはMSだからフサ…くんの使ってるスーパー1シャーシは良くわからないし。ショボンやモナーさんが詳しいよ」

ミ,,゚Д゚彡「おう、ありがとよ。じゃ、早速走らせようぜ」
そういうフサギコはレイスティンガーを持ってコースに向かう。
ミ,,゚Д゚彡「……」
フサギコがこれまでにない真剣な表情を見せる。
ミ,,゚Д゚彡「行けっ!」
レイスティンガーがスタートした。まずまずといったスピードだが、この前よりは格段に速くなっている。


15 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:29:40.18 ID:y5TFtl6CO
ミ,,^Д^彡「ギコハハハ!速い、速いぞ!」
レイスティンガーはコースアウトすることなく無事に3周してゴールした。
ミ,,^Д^彡「見たか!俺のマシン速くなっただろ?ありがとよ、ドクオ!」
俺の背中をバシバシ叩きながらフサギコが言う。
(;'A`)「わ、わかった!わかったから叩かないで…痛い…」
喜ぶのはいいけど、俺の背中は太鼓じゃない。
ミ,,゚Д゚彡「おう、悪かった…嬉しくてよ」

('A`)「そういえばどうしてマシンを速くしたいの?ブーンとまた勝負して勝って、ツンさんと付き合いたいの?」
俺はさっきから思っていた疑問をぶつけてみる。


16 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:33:48.39 ID:y5TFtl6CO
ミ,,゚Д゚彡「…いや、今度はツンちゃんは関係なくてよ…」

ミ,,゚Д゚彡「子供の頃は一応そこそこ速い方でよ、それなりに自信もあったんだぜ?」
だけどよ、とフサギコは続ける。
ミ,,゚Д゚彡「この前の勝負、俺のマシンは完璧に負けた。ブーンだけじゃない、他のマシンと比べても明らかに遅かった」
さらにフサギコは続ける。
ミ,,゚Д゚彡「なんていうかよ、悔しかったんだ。もっと速くしたいって思っちまったんだ」

('A`)(こいつ…そんなに悪い奴じゃないかもな)
俺はフサギコに少しだけ親近感を抱き始めた。


19 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:35:55.11 ID:y5TFtl6CO
( ^ω^)「おいすー!」

(´・ω・`)「こんにちは」
と、そこへブーンとショボンがやってきた。
(#^ω^)「フサギコ!お前がどうしてここにいるんだお!もうツンには付きまとわないって約束だお!」

('A`)「あ、ブーン、実は…」

(#^ω^)「ストーカーは立派な犯罪だお!警察に通報してもいいんだお!」

(;'A`)「ブーン、俺の話を…」

ミ,,゚Д゚彡「…いいんだ、ドクオ。今日はもう帰るぜ。邪魔したな」
そういうとフサギコは帰っていった。
(#^ω^)「早速約束を破るなんてなんて奴だお!」

(;'A`)「いや、今日は客として来てたみたいだよ?」


20 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:38:39.19 ID:y5TFtl6CO
(#^ω^)「そんなのツンに近づく口実に決まってるお!」

(´・ω・`)「正直僕も彼はあんまり信用できないね」
フサギコへの風当たりは強いようだ。
「「「こんにちはー」」」
と、元気のいい声が店内に響きわたる。( ^ω^)「お…あの子達は…」
店内に入ってきた子供たちは、この前行われた大会の参加者だった。
「あ、コースあるぜ!」

「でもこの前より小さいぜ?」

「それでもいいよ、走らせよう」

と、そこで子供達は俺達に気づいたようだ。
「ねえねえ、この間のブロッケン見せてよ!」
まずはショボンが捕まった。


21 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:42:37.03 ID:y5TFtl6CO
(´・ω・`)「いいよ…はい」

「すげー!シャーシが反対向きになってる!」

「俺にも見せろよ!」
マシンを取り合うようにして観察する子供達。
(;´・ω・`)「あ、あ、あんまり乱暴にしないでね」
今度は俺とブーンのところにもやってくる。
「ねえ、どうしたら速くできるの?」

「走らせてみせてよ!」

(;^ω^)「おっお、わかったお。わかったからブーンのお腹をつつかないでくれお」

(;'A`)「え、あ、俺もそんなに詳しくないんだけどね…」
それからしばらくの間、俺達は子供達にアドバイスをしていた。
ξ゚⊿゚)ξ「あら、混んできたわね」


23 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:45:29.26 ID:y5TFtl6CO
気がつくと店内には他にも何人かお客さんが来ていた。やはりこの前の大会の参加者のようだ。

/ ,' 3 「おや、ずいぶんたくさん買っていかれるんですのう」

「ハハ、この前走らせてからどうも火がついてしまいましてね」

カゴいっぱいにパーツを入れている人もいる。

( ^ω^)「おっお、商売繁盛だお」

ξ゚⊿゚)ξ「みんなありがとう。おじいちゃんも嬉しそうだわ」

( ^ω^)「おっお、いいんだお。荒巻模型にはいつもお世話になってるし、当たり前なんだお」

(´・ω・`)「そうですよ。今度大会開くときも手伝いますからね」

('A`)「うん、俺も」


24 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:48:46.95 ID:y5TFtl6CO
ξ゚⊿゚)ξ「みんな……ありがとう」

ツンさんはいつになくしおらしい。

( ^ω^)「おっお、ツンが素直だとなんだか変だお」

と、ブーンがここで余計な一言を口にする。

ξ#゚⊿゚)ξ「…なんですって?」

(;゜ω゜)「痛い!痛いお!ブ、ブーンが悪かったお!だからほっぺたつねらないでくれお!」

どうやらいつものツンさんに戻ったようだ。

(´・ω・`)「ところでブーン、ドクオくんに話があったんじゃなかったかい?」

(※^ω^)「そうだったお」

('A`)「俺に話?」

いったいなんだろうか。


26 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:53:29.32 ID:y5TFtl6CO
( ^ω^)「そろそろ夏休みが終わるおね?」

('A`)「うん」

( ^ω^)「夏休みが終わって少しすると学園祭があるのは知ってるお?」

('A`)「あ、そうなんだ…」

正直大学で空気のような存在の俺にとって、学園祭なんてものには興味がなかった。

( ^ω^)「おっお、あるんだお。そこで、ブーンたちでミニ四駆レースを開かないかお?」

('A`)「え!…でもサークルとかじゃなくても参加できるの?」

(´・ω・`)「その辺も調べてあるよ。実行委員会の審査を通れば大丈夫らしい」


27 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:54:57.39 ID:y5TFtl6CO
('A`)「そっか…面白そうだね」

( ^ω^)「おっお、じゃあドクオも参加してくれるかお?」

('A`)「うん。参加する」

それまで学園祭なんて興味がなかった。どうせ1人で構内の隅っこの階段に座って焼きそばを食べるくらいで終わると思っていた。

しかし、ブーン、ショボンとミニ四駆大会を開くなら、楽しくなりそうな予感がした。

( ^ω^)「おっお、それじゃあよろしくだお!…そういえばまだドクオの携帯番号とアドレス知らなかったお。教えてもらってもいいかお?」

('A`)「あ、うん」

( ^ω^)「おっお、じゃあブーンから送るお。ショボンとツンのも一緒に送っていいかお?」


28 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 00:57:59.66 ID:y5TFtl6CO
(´・ω・`)「よろしく頼むよ」

ξ゚⊿゚)ξ「構わないわ」

( ^ω^)「お、わかったお」

3人の番号とアドレスが送られてくる。カーチャン以外の人を登録するのは初めてだ。

('A`)「今度は俺が送るね」

俺の番号とアドレスを3人に送る。

( ^ω^)「お、届いたお。…そうだお、モナーさん達にもドクオのアドレス教えていいかお?」

('A`)「あ、うん、お願い」

しばらく話をしたり、マシンを走らせたりしたあと、俺達は解散した。


30 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 01:00:33.31 ID:y5TFtl6CO
('A`)「ふぅ…」

家について一息つく。と、携帯が光っているので取り出してみる。メールが何通か届いているようだ。

「ドクオ、これからもよろしくだお!」

「よろしくね、ドクオくん」

「友達少なそうだから、一応メールしてあげるんだからね!」

「ドクオくん、モナーだモナ。これからもよろしくモナ」

「なおるよだよ!よろしくだよ!」

「ふっふっふ ドクオくん 私が 誰だか わかるかな?
フヒヒヒヒwwwみんなのwwwwアイドルwwwwオワタだよwwwwwwwwよwwwろwwwwしwwwwくwwwっうぇうぇwwwwwwww」

('∀`)「おお!みんなからメールが来てる!」


31 : ◆UcHUIyQWbY (関東):2008/09/14(日) 01:06:05.31 ID:y5TFtl6CO
今までメールといえば迷惑メールしか来なかった俺の携帯にメールが来ている。自然と頬が弛むのを抑えられなかった。

('A`)「返信しなくちゃな。…よし、5通全部返したぞ」

最後のメールは見なかったことにした。

('∀`)「へへ…今日はもう寝るか」

おやすみ、誰にともなく呟いて電気を消す。

カーチャン、俺、この町でなんとかやっていけるかもしれない。




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最終更新:2013年09月16日 21:47