熊本県天草郡の牛深町という街で起きた悲劇で、世に知られる事となった悪夢のような寄生虫。
1915年9月15日の夜、とある若い女性が友人の家から帰宅すると悪寒と強い頭痛を感じた。
その日は眠ったものの翌日は食欲も失い、4日後には赤く痛みのある腫れが左大腿部の内側にできているのを発見する。
痛みは日に日に酷くなり夜も眠れない程になったので、近所の医者へ行って腫れを切開してもらうと、恐るべき事に。
何の変哲もなかったはずの場所から、なんと大量の膿が流れ出てきたのだ!
手術による切開はその後2回行われたが、腫れは引かないままだった。
約二年後には腫れは左下肢・右大腿・下腹部にまで広がっていた。
その腫れを引っ掻くと皮膚が破れ、やがて膿や血に混じって動く白い虫が出てくるようになる。
虫はある時は5、6匹。時には2、30匹にもおよんだ。
症状は悪化するばかりで、ついに1921年の4月4日に九州大学病院へ入院することになった。
入院後は肥大した下腹部と両大腿部の成形手術等を数回受けるが症状は好転せず、逆に身体の数箇所に腫れが広がっていく。
やがて肺炎の兆候が現れ全身状態が悪化していき、1922年の4月23日、24歳という若さで死亡してしまった。
死亡後、女性を解剖すると胸・腹・大腿部の皮膚、脳の表面・肺・小腸・腎臓・膀胱などから無数の白い虫体が検出された。
まさに全身虫だらけ、というにふさわしい恐ろしい状態だったのである。
この寄生虫の恐るべき特性は謎が多すぎる事と、その致死率の高さである。
感染経路不明。発症不明。成虫の姿不明。対処方法不明。治療方法不明。そのくせ、世界のどこよりも多く日本で発症しているのである。
……そして、治療方法不明という事は。
『致死率100%』の寄生虫、であるという事だ。
幼虫を手術で物理的に取り出す以外に対処法はなく、かつその幼虫は無制限に人の肉を食らって増殖していくという悪夢。
全身の皮膚を全てひっぺがした所で根絶は不可能、とまで言われる寄生虫のハイエンド。
そのあまりの恐ろしさとマイナーさから一般人には架空の寄生虫と思われ、『都市伝説の寄生虫』と呼ばれていた人の天敵。
できれば都市伝説のままであって欲しかった、人類史上最凶最悪の寄生虫となりかねない存在である。
初出は第二十二話。
士栗との戦闘前に京太郎を消耗させるため、マスカレイドが用意した現象型の都市伝説。瓶がいっぱいになるほどの数を集め、京太郎が逃げに徹すればそれらを街の住民に寄生させると脅しをかけた。また、青い薔薇と同じく都市伝説から現実になった存在でもある。
最終更新:2013年08月23日 23:59