コトリバコ


『子取り箱』。

呪殺というジャンルにおいて、頂点に座す都市伝説。


約150年程前、東北地方に非人道的な差別を受け続ける、とある部落が存在した。
部落差別がまだまだ根強く、解放運動の活発化まで早くとも数十年の時間を必要とする時代である。

そこに、一人の男が逃げ込んできた。
それが全ての始まりである。

かつてこの国において黒船来航より始まった公武の対立構造。
尊王攘夷運動やそれに類する各地の紛争。

国が生まれ変わるきっかけとなった戊辰戦争、日本国最後の内戦と呼ばれる西南戦争。

それらはあまりにも有名だが、それらに及ばずとも多くの人を巻き込んだ内乱がある。

その内の一つが、この男がこの部落に流れ着くきっかけとなった『隠岐騒動』である。

気になった人は調べてみよう。

大雑把に言えば、一地方による幕府からの独立運動。

『船幽霊のムラサ』等のオカルトで有名な、隠岐で発生した一連の騒乱の総称である。

逃げ込んできた男を部落の村人は『厄介事』と判断し、男を殺そうとする。
しかしそこで、男は命乞いのための取引を提案する。

「迫害から逃れるための武器。自由になるための武器が欲しくはないか?」
「憎い奴、気に入らない奴、敵を殺すための武器が欲しくはないか?」
「俺を見逃してくれるのなら、最初に作った武器を俺にくれるのなら」
「その武器の作り方を教えてやる」

その悪魔の提案を、村人は受け。
彼らは、悪魔に魂を売った。

箱/武器の作り方は、凄惨かつおぞましいものだった。

小箱の中を雌の畜生の血で満たし、一週間後に血が乾ききる前に蓋をする。

そして……その箱の中に、殺したばかりの『子供の一部』を入れる。

生まれたばかりの赤子の臍の緒と人差し指の先。それと、その子のハラワタから絞った血。
七歳までの子供の人差し指の先と、その子のハラワタから絞った血。
十歳までの子供の、人差し指の先。

子供を間引き、その子供の一部を材料として完成する呪い。

ゆえに、『子取り箱』。


内包する子供の数で、「イッポウ」「ニホウ」~「チッポウ」「ハッカイ」と名前が変わり、数字が大きくなるほど呪いも増していく。

「ハッカイだけは絶対に作るな」と念を押し、男は最初に作らせたハッカイを持ってその部落を去った。

材料になった子供を殺す時は、苦しめて苦しめて苦しみ抜かせて殺す。
だから、この小箱に近づいた女性と子供は、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて死ぬ。

徐々に内蔵が千切れ、血反吐を吐いて死ぬ。
痛みと苦しみの中、怨嗟に呑まれて死ぬ。

その小箱に近づいただけで、女子供は問答無用で殺される。

女性と子供だけを殺す、おぞましい呪いの都市伝説。



初出は第十五話。黒フードが作り上げた現象型の都市伝説。

女性と子供に対して必殺の呪いを保有する、非常に危険な都市伝説。子供の定義がどこまでかは曖昧だが、少なくとも高校生である京太郎は子供の範囲に含まれていた。
物語内ではこのコトリバコが街中の至るところに設置され、タイムリミットともに自動的に起動するようセットされていた。また、解説ではハッカイは絶対に作ってはならないとあるが、本編ではハッカイまで作成されており黒フードがそれを隠し持っていた。その呪いの威力は都市伝説のエピソードに反さず強力で、比喩でなく一度京太郎を死に至らしめたほど。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年05月10日 02:55