ひきこさん


ある町に、『森妃姫子』(もりひきこ)という少女が居た。

背も高く、明るく活発で美人な人気者の女の子。
だが優等生であったために大人から認められた事が「えこひいき」と言われ、彼女は何の謂れもなくいじめられ始めた。

かばんの中に子猫の死骸を入れられたり、給食に蟲を入れられたり、上靴をカッターでズタズタにされたり、教科書をゴミ箱に捨てられたり、掃除用具のロッカーに押し込めて閉じ込められたり、そんな事は序の口だ。

ありとあらゆるイジメが、彼女へと向けられた。誰も助けようとはしなかった。
友人も、親も、教師も。

そしてある日恐ろしい事に、いじめっ子達は『彼女の足を持ってうつ伏せのまま学校中を引き摺り回す』という恐ろしい事を決行した。

彼女は泣いた。喚いた。助けを求めた。
だが、誰もが彼女を笑い者にするだけだった。

彼女の顔はすり切れ、こすれて潰れ、最後に柱に叩き付けられた。
当然その顔は、どんな医者でも元に戻す事は出来なかったという。

彼女は、その醜い顔を恥じ、ひきこもりになった。


だが彼女をそんな風にしたいじめっ子達は、何も咎められず、そのまま同じ学校に通い続け、楽しい日々を送っているという。

彼女はそれを、閉ざされた部屋の中で知った。
遠く離れた学校でも、雨の中でも、密閉された部屋の中でも、それらの要素を無視するように、特定の子供達がどんな道を通って帰っているかを把握していた。

そして、復讐に走った。

イジメに加担した者が一人で帰っている所を狙い、首輪を付け、鎖で引き摺る。
自分がかつて、そうされたように。
顔が擦り切れて、命が事切れても止めることはない。
死体を引き摺ったまま、町を徘徊する。

いつしか死体の首はもげ、鎖と首輪が一つ自由になる。
だがその頃には、新しく繋がれるいじめっ子が捕まっている。
そうやって、「かつて誰かをいじめた者達」を引き摺り殺し続ける。

イジメと、ひきこもりと、復讐の都市伝説。



初出は第五話。鶴田姫子が保有する都市伝説。

姫子が中学時代にクラスメイトからいじめを受けたことが切っ掛けで発現した都市伝説。また彼女の母方の旧姓が『森妃』であり、名前と合わせると『森妃姫子』とひきこさんの本名と同じ字面になることもこの都市伝説を発現した一因であった。
都市伝説としてのひきこさんの能力は多岐に渡り、その中で姫子が特化しているのは『いじめっ子を探すこと』。そこから派生して、対象を一つに絞れば距離も障害物も関係なく、その存在の位置と一部の情報を把握することができる遠距離向きの能力となっている。

初ネクサスシフト後はさらに能力が強化され、ひきこさんの鎖を作り出すことができるようになった。彼女の保有技能である『リザベーション・バースト』の他、閑話で京太郎を縛り上げたりと大活躍。鎖は相当な強度であるらしく、京太郎曰く寺生まれのTさんの能力を使わなければ素手では破壊できないほどらしい。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年05月08日 01:14