執務室で淡々と仕事をしていた所で急に提督が口を開いた。
「なあ、夕張、第六駆逐隊の遠征終わりまで後どのくらいだ?」
「それなら後もうすぐです。」
「そうか、じゃあ迎えに行って来るよ。」
「それなら、工廠で新しい艦も出来ているはずですよ。」
「そうか、有難う。」
提督が上着を羽織りながら出ていく。
「……はあ。」
この提督は姉妹艦、というものが好きすぎる提督だ。
資材的に大変で有っても、姉妹艦をセットで使い続ける。
仲が良いことはいいと思う。
だけど姉妹のいない私は、ずっと資料整理などしか働けない。
「……はあ。」
「ため息ついてると幸せが逃げるよー。」
「……加古ね……」
「出撃出来ないからって暗いよー、のんびりと行こうよー。」
「あんたはのんびりしすぎなのよ。まだ古鷹がいないから、って。」
「ZZzz…」
加古は提督が居なくなるとよく執務室に来る。
執務室の日あたりが良いから昼寝しやすいらしい。
そこまで干渉して来ない上に、出撃出来ない者同士、気負わずに会話出来る。
でも、いつかは加古も出撃してしまうのよね……。
「ん?妖精さんなあに?紙?」
妖精さんが持ってきた紙は提督から私への連絡だった。
加古を連れて工廠まで来るように。との事。
「加古、起きて、呼ばれてるよ。」
「んー?なんでー……?」
もしかして、噂すれば影かしら……。
「おう、来てくれたか。」
「重巡洋艦、古鷹です。」
ああ、予想通りか……
「ふ、る、た、かーー」
「うわ、加古!」
「待ってたんだよー待ってたんだよー。」
「えへへ、ごめんね。」
これで、気楽に話せる人がまた居なくなってしまった。
まあ、いつかは来ると思っていたからいいや。
「夕張、さんですよね?」
古鷹が意外にも私に声を掛けてきた。
「ええ、そうよ。」
「重巡、古鷹です。」
「うん、知ってるわ。」
「えっと、昔はありがとうございました。」
「え、昔?」
「えと、昔、私という船を造る際に、貴女のデータを活かさせて貰ったので。そう、私にとって、夕張さんはお姉さんなんです。」
「私があなたの姉…って事?」
「そう、なります。」
「え、え。」
急な事実に顔が真っ赤になる。
「おー、夕張は私のお姉ちゃんだったのかー。」
加古までお姉ちゃんだなんて言ってくる。
顔が真っ赤になる。
「おーそうなのか、じゃあ、これから三人組で指示をだすから、よろしくな。」
「提督、って事は私も出撃して良いんですか!?」
「ああいいさ、姉妹なんだろう?一緒にいきたまえ。」
「よろしくお願いします、夕張お姉さん。」
「よろしくだよー夕張お姉ちゃん。」
「軽巡洋艦の妹が重巡なんて知らないわよ……こちらこそ、よろしくお願いします。」
「よし、出撃!」
「「「はい!」」」