提督×長門3-122

前回の話

 

『俺の艦隊がこんなに狂信的なわけがない』

「我らが指揮官――造物主殿」
作戦から帰投した第一艦隊の艦娘たちが執務室に入ると、旗艦である戦艦・長門は尊崇と敬愛に
満ちた目で提督を見上げ、躊躇することなくその前に跪いた。彼女と同じ建艦組の加賀も、長門の
後に倣い、司令官へ粛々と跪いた。
長門は彼女を建艦した神へ報告した。
「愚劣にも造物主殿に抗い、我らが姉・千代田と木曾を殺した、深海棲艦どもの首を獲って参った」
加賀が立ち上がると、提督の前へ進み出て、深淵の神に仕える巫女のように、銀色の盆に載せた
二つの供物を差し出した――戦艦タ級と空母ヲ級の生首だった。
もちろん、第一艦隊が首を奪ってきた二体の深海棲艦は、かつて提督の艦娘を轟沈させた船とは
別の個体だ。千代田を轟沈させたタ級は次の瞬間に摩耶の砲撃で沈められ、木曾を轟沈させたヲ
級は吹雪の雷撃によって木端微塵にされていた。ところが提督は、ただ彼らを殺し返すだけでは飽
き足らず、同型艦から首を奪ってくるよう建艦組へ命令を下していた。
白い手袋をした手が伸び、戦艦タ級の黒髪と空母ヲ級の頭部から伸びる触手をつかんで持ち上
げた。空中で、二つの首は、命のない目で指揮官の顔を見返していた。空虚な瞳に映った唇が、飽
食した鮫のように笑った。
提督が生首から手を放すと、空を舞って現れた妖精たちがそれを受け止め、二つの首を工廠へと
運び込んでいった。防腐処置を施し、提督の部屋に飾るためだ。提督は深海棲艦の死体に触れた
手袋を取ると、長門の髪を撫で、加賀の頬を撫でた。
「よくやった」
陶然と見上げる建艦組たちの目を見返して、提督は言った。加賀は、自分の頬に触れる提督の手
に自分の手を添え、愛しげに頬を摺り寄せた。
「提督……造物主殿」
提督と、彼に心酔し文字通り隷属する建艦組の間には、今や、末期のビザンチン帝国や古代ペル
シャ帝国を思わせる、頽廃と個人崇拝が蔓延していた。彼女たちは、提督がひとたび命令を下せ
ば、自分の姉妹艦の首でも取ってくるだろう。
「すまない、造物主殿」
長門は跪いたまま、恥ずかしげに俯いた。
「出撃前、偉そうなことを言っておきながら、私は沖ノ島海域の完全制圧に至らなかった」
「問題ない」
提督は長門の顎に手をやって、彼女の顔を上げさせた。そして、陶然と自分を見つめる長門の前
に膝を折り、自分の唇を重ねた。提督が唇を離しても、酩酊したように彼から目をそらさない長門に
微笑してから、提督は第一艦隊のメンバーを見回した。
「最悪なのは、君たちが沈み、俺の艦隊が主要構成員を失って、作戦の継続が不可能になること
だ。俺が死んでも代わりがいるが、君たちにはない」
建艦組は厳粛と、神託に耳を傾けるかのように提督の言葉に聞き入っていた。提督の言葉が終る
とともに、畏敬に満ちたため息をつく建艦組とは対照的に、“ドロップ組”の実力者である金剛は、陽
気に諸手を挙げた。
「提督がなんだか幻影旅団みたいなこと言い出しマシタ! フランクリンみたいでカッコいいデス! 
ラァァァヴ!」
金剛が、まさしくダイヤモンドのような明るい声とともに提督の首筋に飛びついた。提督の首に縋り
付いて、彼の顔に頬を摺り寄せる金剛に振り回され、提督は彼女と一緒に独楽のように回った。金
剛の姉妹艦である比叡がそれを見咎め、抗議の声を上げた。
「お姉さま! また提督の部屋から漫画持ち出しましたね! 私にも貸してください!」
ひとしきり振り回された後、提督は金剛を床に降ろし、笑い交じりに言った。
「それにしても、今回は結構やられたな」
提督が金剛の煤で汚れた頬を指先で拭うと、恭順と跪いたままの長門はまた美貌を曇らせた。彼
女はずっと手で隠している左の胸と、折れ曲がった砲身に目をやった。
「申し開きもない、造物主殿。ほとんど損害がないのは比叡と赤城だけで、金剛と伊勢は小破。加賀
は中破で、私は……」
長門は口ごもった。
「大破だ」
恥じ入るように言った長門の肩に、提督は手を置いた。
「強大な敵に対して技巧を凝らして戦い、生き延びた。ミハイル・クトゥーゾフ勲章ものだ」
提督は彼を見上げる長門を見返した。
「無茶をさせたな。高速修復材を持って、入渠ドックへ行け」
提督は艦娘たちをまた見回した。
「御苦労だった。他の者も損害の大きな順に入渠するように」
提督の言葉とともに、皆が入渠ドックへ向かって執務室から出ていった。そんな中、長門だけは立
ち上がらずに部屋の中に残っていた。提督は床に膝をついたままの艦娘に静かな目を向けた。
「どうした?」
彼が目をやると、拝跪したままの格好の長門は、肩に乗った手に自分の手を重ねた。長門は彼女
の指導者へ、欲情に濡れた秋波を送った。
「造物主殿」
提督は膝を折ると、長門にまた唇を重ねた。夢でも見るかのように目を閉じて余韻に浸っている長
門の耳元に提督は囁いた。
「まず入渠して来い」

「あたしはあんたを造物主なんて呼んだりしねえぞ。長門や加賀とは違うんだ」
執務室の机の影で、床に座った摩耶は足をばたつかせた。提督は書類をまとめながら、夕日の中に座っている摩耶に目を向けた。
「お前や木曾を作った時の秘書艦は吹雪だった。吹雪に似たんだろう」
「は? あたしがあんな駆逐艦に似てるって?」
眉を吊り上げた摩耶に、提督は毫も表情を動かさないまま言った。
「少なくとも、お前と作った長門や高雄は、吹雪よりお前に似てる」
「あたしは、あんたが頼りないから助けてるだけだぜ。あんたが少佐の時からな。わかってんの?」
摩耶は飛び起きると、提督の前で腰に手をやり、不機嫌そうに問いかけた。提督は書類を脇へど
けると、摩耶の前で腕を組んだ。
「そうだ。君のおかげで空母や戦艦相手にも渡り合えるようになった。その鎖は、俺の信頼の証だ」
提督は摩耶の首筋に手をやった。建艦組とドロップ組の区別なく、エリートにのみ許された装身具
が摩耶の白い首筋にはあった。近代化材料になることや解体されることを許さぬことを示す、提督が
かけた錠だ。
「使い慣れた兵器を廃棄するのは信条に反する」
夕日を受けた提督の唇は血を啜ったように濡れ、薄く微笑しているようだった。抗いようのない魅惑
と恐怖に、摩耶の背筋に怖気が走った。
摩耶は唇を歪めると、舌先で唇を嘗めた。
「あんたは怖い奴だよ、提督。完全に狂ってるぜ。吹雪の奴も、よくあんたについてきたもんだ」
摩耶は椅子に座った提督の上にしなだれかかった。摩耶は提督の手を自分の胸の上に置いた。
「長門が来る前に、どう?」
「欲しいのか」
問いかけではなかった。

夜が深まり、鎮守府には闇が満ちていた。
執務室を控え目にノックすると、すぐに扉が開いた。長門は自ら扉を開けた提督に驚き、立ちすく
み、彼の顔へ恥ずかしげに目をやった。提督はそんな長門をしばらく静かに見つめていた。長門が
居心地悪げにまごついていると、提督は一歩踏み出して、長身の長門を抱きしめた。
「あ」
力強く抱きしめられて、長門は思わず声を漏らした。彼の腕の中で脱力した様子の長門の耳朶を
唇に挟むと、提督は長門の敏感な箇所を舌先でねぶった。
「あっ! うあ!」
提督は長門の腰を抱き寄せ、柔らかさを確かめるように尻に指を喰い込ませた。すでに彼に触れ
られることを全身で期待している長門は、提督の一挙一動に反応し、漏れ出る声を抑えようとしてい
た。熱く湿った息を吐く長門に、提督は尋ねた。
「相変わらず敏感だな。怪我は治ったか?」
長門は肩で息をしながら提督に目を向けた。
「……肯定だ、造物主殿。傷一つない。あなたにお作り頂いた時のままだ」
「確かめよう。おいで」
提督は軽々と長身の長門を抱え上げた。恥ずかしそうに身をすくめる長門を抱えたまま、提督は
足でドアを閉めると、悠々と部屋の中へ入っていく。彼に運ばれながら、長門は薄暗い部屋の中で
赤面した。
「造物主殿、重くないだろうか」
「艤装も外してる。軽いものだ」
寝台の上に長門を横たえた提督は、不安そうに尋ねた長門にまたキスした。
すでにカーテンは閉め切ってあった。提督は横たわった長門の足の間に膝を滑り込ませると、ダン
スにでも誘うかのように長門の手首をとり、また腰に片方の手を回して、彼女の上半身を抱き起し
た。
期待に満ちて長門が目を閉じると、彼は何も言われずともまた彼女に唇を重ね、舌を滑り込ませ
て、それを待ちわびていた長門の舌と絡め合わせる。長門の口の中すべてを舌先でなぞり、長門の
唾液すべてを汲み取ろうとする提督にしがみつき、長門も必死に彼へ唾液を送り、彼の唾液を受け
取ろうとした。
「ん、んう……んあ」
長門は唇から溢れた彼女と提督の唾液に、口元をしとど濡れさせながら、助けを求めるようにあえ
いだ。頭の中と耳の中に水音が淫らに響いていると、長門の腹の底でも貪欲な熱が目覚めてくる。
「はあ、造物主殿……私にさわって」
懇願するように言ってから、長門は自分で胸をはだけ、待ち焦がれたように先端で肉の芽を尖らせ
ている乳房を揉みしだき、指先で充血した乳首を弾いてみせた。提督はそんな長門に微笑した。
「そこだけでいいのか?」
提督は長門の腹を撫でると、彼女のへそをなぞるようにして、そのまま手を下腹部へ滑り込ませ
た。
「うあ」
すでに熱くなっていることが長門自身もわかる部分を指でなぞられ、彼女は切なげに眉間を寄せ
た。溢れ出した長門の蜜を指先に絡めて、提督は長門の裂け目により深く指を潜り込ませた。物欲
しげに開いた口は、また唇で塞がれた。
長門はまた、提督から唾液を注ぎ込まれた。長門は彼が送り込む毒液を、彼の胸元にすがりつき
ながら、必死に嚥下していった。その間にも、提督の指先は長門の中へ進み、胸元では焦らすよう
に長門の胸の頂をこすっている。
長門が恐る恐る彼の方にも手を伸ばすと、提督もふと声を漏らした。
「ん」
「はあ、はあ……苦しそうだな、提督」
長門はすっかりテントを張っている提督の局部を、宥めるかのように手でさすった。
長門は提督の懐に体を滑り込ませると、ジッパーを開けた途端に飛び出した陰茎の先端に口づけ
た。長門は提督の唾液にまみれた舌で裏筋をなぞり、脈打つ男根を頬張って崇め讃えた。長門は
下着を下ろすと、先ほど提督に弄ばれて猛っている陰部に指をやり、提督の性器を咥えたまま、自
分でも刺激し始めた。
えずきそうになるまで陰茎を喉まで飲み込み、長門は必死に頭を動かして、提督に快楽を味わわ
せようとした。長門の奉仕を受けながら、提督は満足そうに長門の黒髪を撫で、長門が体を動かす
たびに揺れ動く乳房を揉んでいた。
「うまくなったな、長門」
「はあ」
称賛の声に顔を上げ、長門はいったん口を離し、提督を見上げた。その間にも長門は指先で熱い
肉の塊を包み、快楽に震えている陰茎を刺激していた。
「造物主殿のせいだぞ……あなたのにおいに触れていると、私は……」
唾液に濡れて怒張している陰茎に頬を摺り寄せて、長門は幾重にも醜悪な肉の兇器へキスした。
長門は自ら両の乳房を寄せて、そそり立っている陰茎を挟むと、胸の谷間から飛び出た先端を嘗め
ながら、上半身全体で提督に刺激を与え始めた。
「はあ……はあ……」
提督の肉の件を胸に抱いていた長門は、口の中で先端が力強く脈打つのを感じた。
次の瞬間、長門は口の中を満たすほどの勢いで始まった射精を舌の上に受け止めていた。長門
は蕩けた表情で、提督を口に咥えたまま、提督が彼女の中にすっかり最初の精液を吐き出し終える
まで待ち続けていた。
長門が陰茎から唇を離すと、長門の唇と男の体の間に、白い精液と長門の唾液が混じった橋がで
きた。唇の端に垂れた液を、提督は指で掬い取り、長門の顔へ塗り伸ばした。熱に浮かされたような
表情で生臭い精子を嚥下しながら、長門は提督の指が自分の顔を穢すに任せた。
提督を見つめて、長門は自ら残った服を脱いでいった。やがて彼の前で、長門は全装備を外し、
ただの長い黒髪の女の姿になった。身に着けているのは、摩耶と同じように、長門に提督がつけた
錠だけだった。
「造物主殿……お情けを」
長門は提督に裸の尻を向けると、待ち焦がれたように白く濁った涎を垂らす陰部を指で自ら広げ
た。溢れだす蜜を指先で掬うと、指を自分の中へ差し入れてみせる。
微笑した提督は、長門が指を突っ込んだ場所に手を這わせると、いきなり彼の指を突き入れた。目
を見開いた長門があげた声を楽しげに聞きながら、彼は長門の首筋に舌を這わせた。彼のいきり
立った男根の先端が、長門の腰から尻にかけてをなぞり、その感触に、長門の背筋には電流が走っ
た。
提督は、猫のような声を上げて期待に震える長門に囁いた。
「頼むのは、こっちの方だ」
「あ……んう!」
提督が長門の中に滑り込んできた。
すっかり潤っていた長門は、シーツを掴み、反射的に陰部を締め、提督の感触を確かめようとし
た。提督は長門の尻をつかみ、涎を垂らして絡みつかせる長門の中を味わい尽くすかのように、最
初から兇暴なピストン運動を開始した。
「ああっ! ああ! んああっ!」
提督が腰を引くたびに、提督に絡みついた長門の涎が自分の太腿を汚すのを長門は感じた。揺
れ動く乳房を回した手で受け止めて、提督は長門に囁いた。
「可愛いぞ」
「ああ、提督、嬉しい……あう!」
提督が深く奥を抉ると、長門は腰が砕けて突っ伏した。長門は、自分の胸にやった提督の手に自
分の手を重ね、もう片方で充血している陰核を擦った。すべてが官能に結び付き、長門を狂わせ
た。
提督と舌を絡めながら、長門は息も絶え絶えに懇請した。
「はあ、はあ……ああ、造物主殿、どうか、このまま……」
提督はそれに答えず、長門の腰に手を回し、結合部をさらに押し付けた。長門は白い喉を震わ
せ、提督が与える快楽を甘受した。長門の尻を提督の下腹部が打つ音が部屋中に響いた。長門が
夢うつつの快楽に悶える中、提督はますます長門を犯す動きを速めた。
やがて、提督が長門のひときわ奥深くへ突き入れ、子宮を突かれた長門が喘鳴を漏らすと、長門
の腰に回した手に力を込めながら、提督は欲情を炸裂させた。射精が始まり、長門の子宮を穢し
た。長門は自分の中で痙攣する提督を感じ、救いを求めるように手を伸ばした。
「ああ……造物主殿、お父様」
提督は長門の中から陰茎を引き抜いて、まだ脈打っている男根を長門の頬へ押し付けた。自分と
提督のものが混じった粘液に頬を汚されながら、長門はまた唇を開き、なかば本能的に、舌先を動
かして、提督の陰茎を洗い清めた。
陰茎にまとわりついた液を丁寧に嘗め取ると、まだ息の荒い長門は、自分を見下ろす提督に、懺
悔するかのように言った。
「愛している」
提督は、子供のように自分を見上げる長門の頬に手を添え、また唇を重ねた。
「俺も愛してるよ」
長門は満ち足りた表情で提督の首に腕を回した。

膜がかかった、浮腫んだような不気味な月が夜の海を照らしていた。

das Ende/koniec/конец/おわり
 

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長門
最終更新:2013年10月30日 20:52