提督×飛龍1-378避

378 :353:2014/06/08(日) 23:23:57 ID:T7DM3MSA
流れぶったですいません。
飛龍できたので投下します

※鬱です。
※艦娘の記憶についてと多聞丸の扱いについて独自設定があります。


戦争が終わってもう随分経った。
あの日、共に戦い続けた艦娘達も今はもう鎮守府を離れ、それぞれの戦後を生きている。
あの日、命がけで守った平和は一応今も続いている。
あの日、拠点であり家であり故郷だった各鎮守府や泊地はその多くが閉鎖されるか縮小されるかした。

そんないつもならば訪れる者などほとんどいない場所に、駅前で拾ったタクシーに乗り、一人の老人が降り立った。
運転手はこの手の客を乗せるのが初めてではないのだろう。
行き先を聞いて老人の目的を察すると、いつものように饒舌に話すわけではなく、ただ粛々と車を走らせた。

タクシーから降りた老人は、一人開放された敷地に入っていき、その中央にある大きな石碑の前で止まった。

『英霊碑』石碑にはそう刻まれている。
先の戦いで死んでいった者達を祀ったこの石碑は、その根元を無数の献花が覆っている。

「なんだ。蒼龍も来ていたか」
老人は献花のうちの一つを見てそう呟いて膝をつき、静かに目を閉じた。

老人がまだ青年だった頃、人類は深海棲艦との戦争を続けていた。
青年は当時対深海棲艦の中核戦力であった艦娘を指揮する提督となり、その規模は徐々にではあるが大きくなっていった。

飛龍はその時に彼のもとに現れた。
明るく朗らかな彼女は、当時は提督もさることながら蒼龍にとっての大きな目標であった。
目指すというより出会うという事が目標だったが。

かつての相棒との再会した彼女の喜びは一際大きなものだったに違いない。
ましてや、

「ゴコウセンガーゴコウセンガー」
「そんな事よりボーキ食べたい」
「瑞鶴!瑞鶴!瑞鶴!瑞鶴ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!(以下ルイズコピペ)」

こんな癖の強い正規空母において数少ない常識人であった蒼龍にとって、
飛龍の存在はただの相棒以上に心休まるものであったとも言える。

そしてまた提督にとっても、快活で気安い飛龍には蒼龍同様の思いを感じていた。
その思いは提督の中で次第に大きくなっていき、徐々に変質を始めてもいた。

提督は女に縁がない。
というか、女に縁がなければ軍人になどならない。
提督が提督になった頃はそんな風潮だった。

実際この提督も懇ろになった女性など一人もいなかった。
そして巷間で語られるほど一人でいることが苦痛ではなかったため、
興味がないといえば嘘になるが、必死になるようなつもりもなかった。

そういう相手が出来て結婚するならそれはそれ、しないのならそれはそれ。
この程度の考えであって、伴侶の有無の差などそれこそ近所の定食屋の日替わりメニューの差ぐらいにしか考えていない。
いや、いなかったと言うべきか。

「飛龍。今日はもう休んでくれ。お疲れ様。明日もよろしくな」
ある日の夕方、提督は飛龍にそう言って下がらせた後、一人になった執務室で彼女の淹れてくれたお茶を啜っていた。
大して柔らかくもない背もたれに体を預け、オレンジ色に染まった天井をぼうっと眺める。

それがいつからかは分からないが、提督は飛龍に惚れていた。
明るくて気安くてよく気が付く、こんな女と仲良くなれたら楽しいだろうと思わせるものを飛龍は兼ね備えていた。
秘書艦になった彼女は、提督にとっていつしか心の支え以上の存在になり始めていた。

しかし同時にこんなことも思う。
(他の男に気の向いている女など抱いても惨めなだけというが……)

提督がかつて、妻に逃げられた知人から聞いた言葉だった。
その人物曰く、そんなのは人形を抱いているのに等しいという。
提督はこの言葉を思い出す度に自分の思いが報われない事を思い知るような気がした。

飛龍はことある毎に『多聞丸』という名を口にする。
蒼龍によれば、飛龍がまだ普通の空母であった頃に指揮を執っていた提督の名との事だ。
蒼龍もその人物の事は知っているし、同じく普通の空母であった彼女に乗っていた時期もあるという。

ただし、船であった頃の記憶は艦娘によって異なるようであり、記憶と言うより記録に近く、年表を丸暗記しているような感覚である者がいたり、
反対に明確な体験として焼き付けられている者もいる。

蒼龍は本人曰く前者に近いそうだが、飛龍はその言動からして後者である可能性が高い。
もしそうであった場合、その多聞丸なる人物の事はどのように記憶しているのか。
ただの上官か、戦友か、父か、息子か、或いは―

(人形に恋することも無い)
そこまで考えて、思考を強制的に打ち切った。
きっとそうだという思いと、違っていてほしいという思いとが提督の中でせめぎあい、それから逃げるようにその結論に至る。
恋い焦がれるというのはこういうものなのかと思いながら。

そして翌日の夕刻。
いつもと変わらぬ執務室。いつもと変わらぬ飛龍。いつもと変わらぬ提督。

「提督?」
「うわっ!」
ふいに、飛龍が提督の顔を覗き込む。
「何か考え事?」
「あ、いや。何でもない」
「ふぅん」

(人形を抱いても虚しいだけ。人形を抱いても虚しいだけ……)
提督は昨日からずっとそれを自分に言い聞かせていた。

そして何度も言い聞かせねばならぬという事は、それだけそれに反対する思いが強くなっているという事でもある。
欲しい。目の前の娘が。例え自分に心がなくとも。ただの一度、それだけでいい。

だからこそ飛龍の一言が提督の中で大きなものとなった。
「提督。私でよければ相談に……」
「相談……か」
大きなため息を一つ。
決心する。

「実はな飛龍」
「なに?」
「……好きだ。お前が、俺は、とても」
覚えたての言葉のようにただ単語を羅列するが、意味は十分伝わっただろう。
一瞬きょとんとした飛龍が、耳の先まで真っ赤になっているのがその証拠だ。

「えっ!?あ、あ、あのっ……。どうしよう。参ったな……」
しどろもどろな飛龍はやがて、大きく深呼吸を一つ。

「その……提督?」
自分の聞き間違いではないことを確認するかのようにゆっくりと尋ねる。

「あの……好きって、その……私が?」
無言で頷く。

それから数時間後、日が沈んだ執務室に二人はまだいた。
二人の間には小さなコップが二つ置かれ、酒が注がれたそれをままごとの様に口に運ぶ。
火をつければ燃えるぐらいの度数はあるはずのそれも、今は水の様にしか感じない。

「美味いな」
ただ台詞のようにそう言う提督に、飛龍は伏し目がちに頷く。
コップがすぐ空になったが、次を注ぐようなことは無い。

「もう、いいか?」
提督の問いに、今度も頷く。

飛龍も子供ではない。このままごとの終着点が何かなど分かっている。
そして、その終着点にすでに辿り着いたことも。

膝で体を進ませた提督は静かに、しかししっかりと飛龍の両肩を抱きしめ、唇を合わせる。
柔らかくて温かい飛龍のそれが提督の舌によって開かれ、侵入したそれを飛龍のそれが出迎える。
二人の舌は絡み合い、味わいあって、離れ際につうと一筋の糸を引く。

「飛龍、お前の心はどこにある?」
唇を離した提督は、飛龍に尋ねながらしかし、その答えを先に封じる。
「いや、答えなくていい」
「……多聞丸は、私の象徴です」
振り切って口をついたそれは飛龍の心遣いか、或いは本音か。
どちらにせよ、提督にとっては十分な答え。

「……そうか」
多聞丸は飛龍の象徴。
上官でも戦友でも父でも夫でも息子でもなく、象徴。
象徴とはつまり、AなくしてBなしというもの。
多聞丸なくして飛龍なし。

「それでいい」
「えっ?」
上官や戦友や家族ですらない象徴。
その答えが思いつかなかった提督と、その次元にいる多聞丸。
これはつまり完全敗北という事。
そしてその事実が、かえって提督の迷いを断ち切った。

(どの道敵わないと思っていたのだ。これでいい)
そう結論付けて飛龍を押し倒す。
(どうせ敵わないなら、心置きなくできるというものだ)
それはつまり人形を抱くという事。
虚しいはずのそれが、今はとても魅力的に見える。

自分の下にいる飛龍を覗き込む。
はだけた胸元からうっすらと汗ばんだ白い肌が露わとなり、形の良い二つの膨らみに手を伸ばすと、
柔らかなそれは指の形に合わせて姿を変える。

「あっ……」
飛龍の口から艶っぽい声が漏れる。
提督は掌全体で揉みしだき、それに合わせて乳房の形は変わり、またそれに合わせて飛龍も声を上げる。

「あっ……うんっ。あっ、ああっ……あん!はぁ……はぁ…ああっ!」
徐々にではあるが、飛龍の声に荒い息遣いが混じるようになってきはじめた。
提督の手が離れても二つの乳房は荒い呼吸に合わせて上下し、汗ばんだ体は先程よりも遥かに色香を放つ。

やがて提督の指が胸から上へと滑り、はだけた着物を肩から脱がせてゆく。
上半身を剥かれた飛龍は提督に抱き起されると、されるがまま、ただその腕に抱きしめられながら再度の口づけを交わす。

提督はそのまま抱きしめた腕を一度ほどき、飛龍の腰に手をやると丁寧にその短い袴を脱がせていく。
シュル、シュル、と衣擦れの音だけが響き、下を自分に向けて露出させた提督は、今度は自分のズボンを下ろし始める。
互いに似たような格好になった二人は、口を合わせたまま抱き合い続けている。

自分の腕の中に飛龍がいるという感覚を提督は存分に味わおうとしていた。
兵器とは思えぬ細い腕と、ともすれば華奢とも言える細い体。
抱いたら壊れてしまいそうな飛龍はしかし、今の提督にとってはいかに貪っても貪りきれないほどに大きな存在となっている。

互いに抱き合った姿勢のまま口だけを離して提督は飛龍を自分の上に乗せ、そのままゆっくりと挿入する。
心地よい温かさの膣内は、包み込むように提督の一物に張り付いてゆく。
「うっ……くひっ!」
飛龍が声を上げ、それに合わせて提督が動くと、その動きに合わせて一物が振動し、その度にまた膣内を新たに刺激されて飛龍が声を上げる。

「ううっ!ふあっ、ああっ……ひいん!」
声を上げながら提督の背中にまわした腕に力が入る。

「……行くぞ」
湿った膣内で一物がぬるりと動き、その主は飛龍の耳元でそう告げるとぐっと奥に向かって動かし始めた。

「えっ……!?ふぁああっ!?あひ、ひぃ、ひぃぃん!!」
飛龍の声が一際大きく響く。
二人の間にぬるぬると血が流れ、潤滑油のように広がっていく。

「あああああっ!!くううっ、あっふぁああ!」
叫びながら、飛龍の腕は更に強く提督にしがみつく。
「ひはっ、提督っ、提督ぅぅ!ひゃ、ひゃああ!!」
最奥部に到着した提督の一物を飛龍の体はしっかりと咥え込み、提督にも一呼吸ごとに刺激を与え続ける。

「くふっ……飛龍っ!」
「はぁっ……はぁっ……!!提督、ていと……ひゃ!?」
脈動する提督とそれを離さない飛龍。

「ふああっ!提督っ!!ふぁああああああああ!!」
ほどなく絶頂を迎え、二人は生気が抜けたようにその場に崩れ落ちた。

ぼうっとする頭で、提督は何度も唱え続けた念仏を反芻していたが、不思議とその虚しさすら心地よかった。
そこには一抹の寂しさとその何倍も大きな満足感があり、
しかしながらこれまで抱えていた焦がれるような思いは嘘のように消えてしまった。

飛龍への愛おしさは前と変わらず、むしろ前にもまして強くなっているのに、今日の昼までのようなたまらない感じはもうなかった。
飛龍の体だけが欲しかったのかと問われれば断じて違うと否定できる自信はあるが、
それでもかつてのような飢えにも似た強烈な衝動は無くなっている。

そんな提督の思考は、隣に寝転がっている飛龍の一言で打ち切られた。
「はぁ……はぁ……たまには…」
「うん?」
「たまには……ね」
「ああ。そうだな」
二人で並んで天井を見ながらそんな事を話した。

事実、この日から何度か二人は体を求めあう関係となった。
昼はいつも通りの提督と艦娘として、夜はお互いを求めあう関係として。

昼には飛龍はそれまで通り提督に接していたし、蒼龍や他の仲間の前でも同様の立ち居振る舞いであった。
提督もまた同様に、まるであの夜は何もなかったかのように振る舞っていた。

そして、ある穏やかに晴れ渡った日の正午。提督はたまたま蒼龍を旗艦に据えて出撃し、その戦いで飛龍は沈んだ。

誰に恨みを言う訳でなく。誰に未練を残すでなく。
その名の通り空を飛ぶ龍のように、提督の元から飛び去ってしまった。

残された提督と蒼龍は、鎮守府に戻ってから泣いた。
飛龍のいなくなった執務室で、二人で泣いた。
戦争が終わったのは、それから暫くしてからだった。


老人は懐からあの日酌み交わしたのと同じ酒のポケットビンを取り出す。
(なあ、飛龍。俺を恨んでいるか?俺を酷薄だと思うかい?)

飛龍が沈んですぐ、後を追う事を考え、提督と言う立場上自由に死ねないという事を理由にして彼は生きた。
だが、戦争が終わって四十年が経とうとしている今までに提督ではなくなったし、結局独り身だった彼には気がかりなものは無かった筈だった。

(結局俺は怖かっただけだ)
死の恐怖に怯え、それから逃げながらも後ろめたさを感じてきた人生だった。

老人は両手を合わせ、静かに祈りを捧げる。
普通、戦死した艦娘には遺品はおろか遺骨の一つ、遺髪の一本すら残らない。
あの日二人で交わした酒の瓶だけが、遺品代わりに老人の家に祀られている。
その瓶に毎日捧げた祈りを、再び捧げる。

(多聞丸さん。私はあなたを存じ上げませんが、もしその姿の飛龍を知っていて、私の思うような関係であったのなら、どうかその娘を責めないでやってください。
彼女はこの酷薄で臆病なクソッタレの間男に弄ばれただけなのです。その責めがいかなるものであってもこの間男が受けるべきなのです。
ですからどうか、飛龍にご慈悲を)

あの日と同じ正午を告げるラッパが、あの日と同じ穏やかに晴れ渡った空に響いた。




+ 後書き
386 :353:2014/06/08(日) 23:52:23 ID:T7DM3MSA
以上スレ汚し失礼しました。
また、昨日中に投下できず申し訳ありません。
多聞丸の扱いが難しかった(粉蜜柑)。
無理やり押し倒せばいいことに投下しながら気づいた。

これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2017年12月19日 10:46