提督×空母ヲ級1-677

 

横須賀鎮守府。
明治十七年創立のこの鎮守府は、もとは増設など全く考えてもいなかったという、伝統ある古参向け鎮守府である。
時代は移り変わり、サーバー群が第1から第11まで増設された今日でさえ、十二日通い続ければ温室育ちの純粋培養な電探が箱入りで出荷される、という仕組みが未だ残っている貴重な鎮守府であった。
そう、つい先日までは…

今日もいつものように遠征艦隊の報告書を確認したり、次の海域に向かわせる艦隊の構成を練ったり、家具職人にどの家具を作ってもらうか考えたりといった仕事をこなしていた。
横須賀鎮守府に着任してから毎日のようにこなしてきた仕事であり、イベント中でもない今は落ち着いて事務処理を行うことが出来ている。
それでも処理すべき事案は多く、疲れは次第に溜まっていく。

コトン

そういった状況において、こちらの疲れ具合を把握し、適切なタイミングでお茶を出してくれる秘書艦の存在はとても助かる、助かるのだが…

「いつもありがとう、助かったよ」
「ヲッ!」

白い肌、白い髪、碧眼。そういった容姿の艦娘なら外国艦としてそのうち実装されそうなものだ。
しかし、我が鎮守府において秘書艦を務めているのは、正規空母「ヲ級」と呼称されている深海棲艦だった。

そもそも、なぜ敵艦であるはずのヲ級が鎮守府で秘書艦を務めているのか。
簡潔に述べると、駆逐艦「電」が作戦終了後に拾ってきたことが始まりである。
電曰く「沈んだ敵も、出来れば助けたいのです…」とのことで、なんと、轟沈寸前のヲ級を救助して鎮守府へ連れ帰ってきたのである。
深海棲艦の、それも正規空母の鹵獲などという出来事は前代未聞であり、この問題は上層部でも議論が紛糾した。
武装が外され艦載機も積んでいないとはいえ、深海棲艦である。そのため、処遇が決まるまでの間は横須賀鎮守府預かりとなり、生態観察をしつつ様子を見ることになった。

当初は救助した電や雷といった駆逐艦が世話をしていたが、ヲ級にも敵意がなく、駆逐艦たちと遊ぶようになるまでそう時間はかからなかった。
害意がないことが分かり、そのうちに某正規空母から「働かざる者食うべからず」という意見が出たため、鎮守府内で掃除や洗濯などの簡単な雑用もこなすようになった。
更には間宮さんの作った料理に影響を受けたのか、間宮さんによる指導の下で炊事も覚えると、今度は同じ正規空母である「赤城」や戦艦「大和」からも認められるようになった(餌付け?)。


そうこうしているうちにヲ級の処遇が決めるため、上層部から査察団がやってきた。
当初、上層部はヲ級を研究施設で徹底的に調査するつもりだったらしい.
しかしヲ級の仕事振りや駆逐艦達の上目遣いお願い攻勢、艦載機ステンバーイ状態の赤城や46cm三連装砲を向けてくる大和の無言の圧力に折れた。
その結果、ヲ級は横須賀鎮守府において艦娘待遇として配備されることとなり、司令官である私にはヲ級の生態観察が正式な任務として与えられることとなった。

正式に鎮守府配属が認められたとはいえ、流石に艦隊へ加えるわけにもいかないので、今まで通りに雑務や新たに秘書艦としての仕事をするようになった。
言っている言葉はわからないが、何を言っているかは段々と分かるようになり、今では意思の疎通もある程度の範囲で可能になってきた。
一見すると何も問題はないように見える。しかし、一つだけ大きな問題が発生した。

それは、ヲ級が無防備すぎるということである。

一般的な常識が欠如しているためか、例えば制服を支給したら司令室で着替えを始める、仮眠中の蒲団に入り込むといったことは日常茶飯事で、昨日は一人で風呂に入っているところに乱入してくる一歩手前だった。
不幸中の幸いか、他の艦娘や上層部には今のところは気づかれていない(はず)が、司令官が深海棲艦を手籠めにしようとしていると噂が出ようものなら、ヲ級の処遇にも影響が出かねない。
しかし、提督も健全な男子である。深海棲艦とはいえ、可愛いくて自分の世話をしてくれている女性に対して特別な感情を抱かないではいられない。
どうしたものかとぼんやり考えながら、ヲ級の淹れてくれた茶を飲もうとするが、淹れたてだったのもあり、熱さに驚いてうっかり茶を服にこぼしてしまった。

「あっちぃ!」
「ヲッ」

お茶がこぼれたことに気づいたヲ級が布巾を持ってきてくれた。

「せっかく淹れてくれたのにすまんな」
「ヲッ」
「いや、自分で拭くから大丈夫だよ」
「ヲッ!!」

これも自分の仕事だ、と言うように、こちらの意見を無視してヲ級は服にこぼれたお茶を布巾で拭きとっていく。
上着から始まり、次第に下へ…、下?

「いや待て!ヲ級そこはいい!」
「ヲッ?」

こちらの制止も聞かず、ヲ級が拭いているのはちょうどズボンの股間の部分。股間は、まずい…。
最近は普段の業務に加えてヲ級の世話などもあり、忙しくてほとんど抜いていないから、ちょっとした刺激でも反応しかねない。
おまけに昨夜は脱衣場でヲ級の着替えシーンを目撃したことも重なり、ヲ級の手によって与えられた刺激で股間の主砲はたちまちキラキラ状態に!

「ヲ級!もう大丈夫だから!綺麗になったから!」
「ヲッ?」

主砲によって出来たテントに興味を持ったヲ級。一体何が隠されているのかを確認するべくチャックを開けると、なんとそこにはそそり立つ主砲が!
これには提督も苦笑い。

「いや、これは…、その…」
「……ヲッ!」
こっちが説明に苦慮している間に、ヲ級は主砲を口に含んでしまった。そういえば、小さい子供ってなんでも口に入れたたがるよね。

「くっ!」
「ヲッ?」

ヲ級は主砲を口に含んだまま、舌を使ってアイスキャンディーを食べるように舐めはじめた。
溜まっていたこともあり、主砲からはすぐに先走りが出始めてきた。

「ヲ級!待て!やめっ!」
「ヲッ!」

まるで蜜でも舐めるように先走りを飲もうとするヲ級の舌からの刺激によって、主砲はすぐに発射態勢へ移行。

「駄目だ!ヲ級、離れて!」
「ヲッ!!」

ぎりぎりで引き抜いた主砲から発射された白濁液が、ヲ級の顔に降りかかる。

「ヲッ!」

何があったのか分からないまま茫然としているヲ級。久しぶりの射精の快感からしばし賢者モードに入ってる提督。
しかし腐っても提督。意識が正常に戻るやすぐに状況を把握し、自分が何をしてしまったのかを理解した。

「すまないヲ級!すぐに拭くから!」
「ヲッ?」

そうして、先ほどお茶を拭くのに使っていた布巾でヲ級の顔の汚れを拭こうと動き始めた途端に…

ガチャ

「ども、恐縮です、青葉です!ヲ級ちゃんの仕事振りを取材しにきま…、し…た……」

まだ事後処理も始まっていない司令室にノックもなしに入ってきたのは、重巡「青葉」。
鎮守府内でも取材活動を行っていて、新聞発行も手掛けるジャーナリスト(自称)である。

「………………………」
「………………………」
「ヲッ?」

パシャパシャパシャパシャ!
状況が呑み込めていないヲ級と、何と説明したものかと思案していた提督に向けて、青葉のカメラがシャッターを切る。

「よし青葉、少し落ち着いて話をしようではないか?」
「いえ。提督のおっしゃりたいことはよく分かりました!任せてください、夕刊までにはちゃんと仕上げますから!」
「ちょっとここにフィルムと記憶を置いていってもらおうか…」
「ヲッ?」

「分かった。言い値で買おう。いくら欲しいんだ?」
「巷で噂の提督とヲ級ちゃんの衝撃スクープの証拠写真はプライスレスですよ!」
「ヲッ?」

「そもそも提督がヲ級ちゃんにラブなのはすでに公然の秘密でしたし」
「ちょっ!」
「ヲッ?」

「ヲ級ちゃんもまんざらではなかったみたいで、昨日なんかは空母寮の皆さんが、ヲ級ちゃんを提督とお風呂で鉢合わせるように誘導してましたし」
「あれはあいつらの差し金か!」
「ヲッ?」

「それに重巡寮では、提督がいつヲ級ちゃんに手を出すかを賭け、じゃなかった予想してましたし。まぁ皆3日以内に手を出すと思ってて賭けが成立しませんでしたが…」
「Oh…」
「ヲッ?」

「まぁどっかのお偉いさんが文句言ってきたとしても戦艦寮の方々が優しくHANASHIAIをしてくださりますから安心してください!」
「………」
「ヲッ?」

「では、青葉は夕刊作りがありますので失礼します!あとはごゆっくり…」

バタン

「………」
「ヲッ?」

運悪く青葉による襲撃を受けたあとの司令室には、頭を抱える提督とまだ顔に汚れが残ったままのヲ級が残された。

「とりあえず、顔を拭こうか…」
「ヲッ!」

夕食時にどう話をするかを考えながら、提督は行為の後始末を開始した。
 

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最終更新:2014年06月11日 22:37