提督×元艦娘1-577

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突如として、人類に牙を剥いた正体不明の敵対異種知性体、通称“深海棲艦”。
それらは半霊体構造―――すなわちこの次元にありながらにして別の位相次元(便宜上“霊界”と呼称される)にも
同時に重なって存在するという特質上、通常次元のみにしか干渉できない従来兵器による攻撃はほぼ通用しない。

都市ひとつを含む多大な犠牲を払ってやっとのことで撃退、回収したたった一隻の深海棲艦の残骸から、
それらの情報と霊的次元干渉技術の片鱗を手に入れた人類は、歴史の闇に埋もれた魔術呪術の数々を掘り起こし、
機械工学、バイオ/サイバーテクノロジーとのハイブリッドによるまったく新しい兵器体系の開発に着手。

そして、かつてさまざまな文化圏において、強力なシャーマンの血は女たちに受け継がれてきたことを思えば、
完成したその兵器の適合者が、高い霊的親和性を持つ若年の女性に限られたのも道理だったのかもしれない。

試製艦装霊攻巫娘兵器―――通称“艦娘”の誕生である。

だが、その素体としての遺伝子的適合性を持つ者は数万人にひとり。
戦死や未帰還はもちろん、心身の戦傷や経年により霊力が摩耗する例もすでに確認されており、
限られた適合者をこのまま戦線で損耗させていてはリスクが大きすぎる。

当然の帰結として、適合者をクローニングで“増やす”という手段が実行に移された。

非人道的、などという言葉は、人類種そのものの存亡を賭けた生存戦争においては何も効力を持たなかった。
彼女たちはあくまで兵器である、という建前は、その最期が戦死ではなく轟沈と呼称されることからも見て取れる。
結果、同じ艦名、同じ姿、同じ顔、同じ声を持つ艦娘たちが次々と“量産”され、
世界各地における終わりの見えない戦いに投入され続けている―――。

 

◆◆◆

 

軍港からさほど遠くないその色街は、伝統的に海軍の関係者たちを上客として賑わっている。
いまどき珍しい古風な木造建築の階段は、がっしりした体格を持つ男の体重を受けてかすかにきしんだ音をたてた。
案内された和室で、何をするでもなく座っていると、買った娘はすぐにやってきた。

「はじめまして、提督さん」
心構えはしていたものの、提督と呼ばれた男は思わず目を見開いた。
あでやかな和装をまとい三つ指をついたその少女の容姿は、当然ながら自分の知る“彼女”に瓜二つだったからだ。

「……わかるのか? 俺の仕事が」
「ええ、勿論。姿勢とか雰囲気……それに、ほら、私も軍で働いていたんですもの」
「そうか、それもそうだな」
動揺を隠そうとして、つい間抜けな受け答えをしてしまい、沈黙して目を泳がせる軍人を見て、
「お客さん、ひょっとしてこういうお店初めて?」
「ん……まあ、そうだな」
「“そうだな”ばっかり。そう緊張しないで、楽にしてくださいね」
元艦娘はころころと楽しげに笑い、男の腰に細い腕を回してしなだれかかった。
ためらいがちに抱擁に応える軍人に、少女は背伸びして接吻をねだる。
その積極性はもちろん、喋り方も彼の知る“彼女”とは少し違っていたが、紛れもなく両者は“同じ個体”だった。

第二世代艦娘―――経年による霊力摩耗を防ぐため、クローニングと同時に不老処置を施されたタイプだ。
もっとも、結局それが戦線離脱を幾分か先延ばしにするだけに終わったのは、ここにいる彼女の存在が証明している。
艤装を解体され、軍を離れた元艦娘に残されるのは、なけなしの“手当金”を除けば、年をとらないその体だけ。
戦うだけの存在として生まれ育った彼女らが、いまさら他の方法で社会に適合することは難しい。
このような場所に流れ着く者は決して少なくなかった―――酔狂な金持ちに飼われるよりは余程ましかもしれないが。

甘い香りと、唇から滑り込んでくるあたたかな舌の快楽に包まれながら、男はそんなことを考えていた。
「提督さんの所にも、別の“私”はいるの?」
白い首筋から胸に這わせていた男の愛撫が止まり、しばらくの沈黙を経て答えが返ってくる。
「……ああ」
「あら、いけない人。それで私を指名したってことは、その子にこんなこと、したいって考えてたの?」
「……そうだったかもな」
「それとも、ひょっとしてもう手をつけちゃった?」
「いや、さすがにそれは……」
「ふふ、冗談。でもそっちの“私”、きっと提督さんを困らせてばかりでしょう? 私も昔、ひどい態度だったから」
「ひどいってほどじゃないが、まあ確かに……手を焼かされたことがないと言えば嘘になるな」
「ああ、やっぱり。なんだか私まで申し訳ない気持ちになるわね」
本人のことを、同じ顔と声を持つ相手から懐かしげに語られるというのも奇妙な体験だった。
元艦娘の表情や声色は、妹のことを話す姉、娘に対する母の言葉にも似て、そしてどこかで決定的に違う。

「でもね、心の中ではほんとうは―――」
すでに半ば屹立している肉の柱に、たおやかな指が絡まり、
「提督さんのこと、信頼してるし……心の中では、憧れてもいると思うわ」
羽根でくすぐるようなもどかしい愛撫が、男の情欲をより熱く硬く高めていく。
「う……それは君が、そうだったというだけじゃ、ないのか?」
同じ遺伝子でも、万事において同じ考え方感じ方になるとは限らない。第一、それぞれの提督はまるで違う人間だ。
だが、元艦娘の声は不思議と確信に満ちていた。
「ううん、きっとそうよ。だってお客さんは、“私の提督さん”によく似ているんだもの」

だからきっと“そっちの私”も、提督さんのこと好きになるわ―――と、
反り返った欲望の塊に接吻の雨を降らせながら、彼女はどこか寂しげに告げた。
「ん……あぁ、提督ぅ……さぁんっ……!」
ずぶずぶと彼女の中に侵入すると、狭くきつい背徳的な快楽が男を締め付け、甘く苛んだ。
きめ細かな肌をした、少女そのものの細い肢体に、ごつごつした大人の肉体が覆い被さる光景はひどく淫猥で罪深い。
だがもしかしたら、彼女の方が男より遙かに長い時を生きていてもおかしくないのだ。
深海棲艦との果てしない戦争は、それほどの期間続いているのだから。

「い、いつも生意気言ってごめんなさいぃ……いっぱい、お仕置きしてください……っ!」
とろけた声で、“提督に抱かれる艦娘”としての言葉を意識して紡ぐ。
そうすることで男の欲望がより加速すると踏んでのことだろうか。

「ああっ!? てっ提督のがぁっ、中で、おっきくなって……! すごい、ですっ……!」
事実、最初はどこか遠慮がちだった男の腰使いは、しだいに叩き付けるように激しさを増し、
柔らかな肉壁をごりごりと容赦なく責めさいなんで、高い嬌声を迸らせた。

「提督ぅっ、し、司令官っっ……! すっ好きです、愛してるのっ、本当はずっとっ、ずっとぉっ!」
共に上り詰めながら、どこまでが演技かわからない言葉が次々と漏れ出て、
肉同士がぶつかり合う乾いた音と、混じり合う体液の湿った音の中に溶けていく。

「だからぁ……っ、ずっと一緒に、いてくださぃっ―――!」

男が、応えるように“彼女”の名を叫んだ。

日に焼けた背に細い爪が食い込み、わなないた肢体が弓のように反って、ふたりは同時に絶頂を迎えた。
どくん、どくんと、幼いままの子宮に熱い精が、幾度も幾度も注がれる。
だが、彼女たちの遺伝子は不老の特性と引き替えに生殖機能を喪失しており、妊娠することはできない。
元艦娘にとって、娼婦はまさに第二の天職といえた。

 

◆◆◆

 

「……俺の部下だった“君”は、先週、南の海で沈んだ。死んだんだ」

澱んだ情念をぶつけ合うような行為のあと、赤い爪痕の残る背を向けて、男は少し低い声でそう告げた。
長い沈黙。

「もう一度……“私”に会いたかったから、ここに来たんですか?」
「わからない。君がさっき言ったように、やりたくても果たせなかった本懐を遂げたかっただけかもな」
乾きかけの汗でやや冷たくなった男の背に、白い裸体がそっと寄り添う。
「でも、君と彼女は違う……別々の人間だ。俺は、ただ侮辱してしまっただけだ。君も彼女も」

「……あなたの所にいた“私”は、幸せだったと思いますよ」
そうだろうか、と男はつぶやく。
きっとそうですよ、と女は答えた。

女は羨んでいるのかもしれなかった。
最期まで艦娘として生き、提督の下で死ねた、自分と同じ顔の存在を。
それともいっそ妬み、憎んでいるのか。
あるいは実のところ何の感慨も抱いておらず、ただ客の望む受け答えを返しているだけなのかもしれない。
忠実で従順な兵士のように。

いつしか降り始めた雨が、色街の瓦屋根を黒々と濡らしはじめていた。
雨だけは、今も昔も、海の上に降るそれとも、変わらぬままだった。


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元艦娘 風俗
最終更新:2014年06月11日 22:27