どうしようもなく疲れていた。だが許される云われはない。
そもそもだ、私は何度、彼女と肌を重ねた? 何故、間違えた。寝間着姿は似ていても声で分かるではないか。
布団に広がる赤を見て、正気に戻った私は猛烈な後悔に苛まれた。
「すまない。何と言って、」
謝罪はキスで遮られた。何度も何度も繰り返される。
繋がったままであるから、動くのすらままならない痛みに襲われているはずなのに。
ああ、そうだ。ひとまず抜かなくては。
その動きを邪魔するように、足を絡ませられる。
「大丈夫だ」
呟かれた言葉を頭ごなしに否定したくなる。何が大丈夫なものか。問題しかないではないか。
そんな視線を感じ取ったのか、再び唇を奪われる。
「その、確かに痛いぞ。だが、悪くない。温かくて幸せな感じだ」
腹を括ると、引き返す気はないかと訪ねる。答えは分かりきっていたのだが。
抱え上げるように、体を入れ替え私が下に入る。
「んっ、くっ」
嬌声とも嗚咽とも取れる声が漏れる。
慣れない事をしても綻びが広がるばかりであるのは気づいた。既に恥などはない。
一瞬戸惑いを見せたが、決して無知ではないらしく、腰を動かし始める。
身を捻るたびに、痛いほどに締め付ける。本当に大丈夫なのか。
暗がりで良くは見えないが、涙目ではなかろうか。
やはり、私には彼女しかいないのだろう。
しかし、とうに止め時を失っているのは自明の理。なら、どちらかが果てるかでもしなければ収まらないか。
赤い潤滑油、どこか狂った嬌声、さして変わらない表情。
突き上げる度、痛みに耐えるように短い悲鳴が漏れる。
途中から半笑いになり、狂気の交わりと変わった。
空が朝焼けに染まり始めた頃になり、私は土下座をしていた。
24時間続けられるとうそぶくのをたしなめた後、この状態である。
「連絡がある、いやあったみたいだぞ」
過去形なのは、伝えるべき時を逃したからだろう。
そこにはただ短く、『戦略的勝利を収めるにあたり、四本の魚雷と一隻の駆逐艦を消費した』と書かれていた。
昨夜戦闘を行ったであろう駆逐艦には一人しか心当たりはない。
雷は私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!
なのに何故、と呟く私を抱きしめてくれた。
「安心しろ。私がいるじゃないか」
だけど、きっとこの報告書を書いたものを許せない。
「また、この手を汚せと言うのか」
ああ、若葉は何を言っているんだ。誰か、教えてくれ。