非エロ:提督×島風6-538

【独自設定】
・提督は霊的な力を認められてこの鎮守府に着任した(左遷ともいう)
・提督は艦娘の前世の一部をぼんやり視(み)ることができる。
でもすごく疲れるからあまり視ない
前世を視るときの体感時間は長いが、実時間は一瞬。
没入するまでの集中に時間がかかる
・艦娘は人ではなくあくまで艤装の精霊のようなもので、半分神格化している
・本体である艤装は建造や改修などの際、資材に霊的儀式を混ぜて行う
・霊的密度の高まった艦娘(LV99)は人と契ることが可能
・鎮守府にきた艦娘たちは魂の一部、末端であり、
本当の彼女たちの魂は今も海底に眠っている
・同じ艦娘(ダブり)はその魂から顕現するが目覚めてからの記憶はリンクしない
・改修素材になる艦娘の魂は大本の魂に還り、わずかながら大本の魂の浄化になる
・轟沈も同じ
・艦娘の大本の魂が(平和など各艦娘ごとに違うが)願い続ける限り艦娘は顕現し続ける
・一部の艦娘は今も悪夢にとらわれている
・鎮守府の仕事はその魂の解放である


最近島風が速いとか遅いとかうるさ・・・周りから孤立していると感じてしまった提督
島風を良く知るために前世を視ることに

島風「おそいおそいおっそーいー!」
提督「・・・」
島風「てーとく遅すぎー!まだ終わらないのー?」
提督「しばらく静かにしてくれないか?島風」
島風「ぶーぶー。早くしてよね?てーとくー」
提督「島風は堪え性がないな。・・・・・・よし、始めるぞ」
島風「もー、待ちくたびれちゃったよー。早くしてよ!はーやーくー」
島風をやさしく諭すと提督はおもむろに島風の額に手を当て印を結ぶ。
特に呪文らしきものも唱えず何ともあっさりとした方法だが
相手の魂の起源を遡る行為はかなり難度の高い術である。

かくして島風の記憶に没入した。

??「速くあれ、速く有れかし」
??「速くあれ、速く有れかし」

提督「なんだ?・・・ここは・・・工廠か?」

??(大勢の声)「初代のごとく、帝国海軍最速であれ!!」
兵型(島風)「(速く!速くならなきゃ!絶対速くなってみせるんだから!)」

提督「これは・・・当時の海軍の声・・・いや期待か。島風にはこう聞こえていたという事か・・・」
提督「時期的に見て2代目島風は建造途中といったところだな」
提督「だが、因果が薄い・・・。どうやら速度に拘る一番の要因ではないようだ。・・・次」

そういうと映像がぐんにゃりと変わり、舞台が移ろうとしていた

~ ザザ・・ザ・・(ノイズ) ~


しまかぜ「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ------!!」
提督「しまかぜ・・・。泣いているのか」
ふと横を見ると第一号型哨戒艇(初代島風)撃沈を知らせる電文が目に留まる
提督「-------」
帽子を目深にかぶり島風に手を伸ばす。
触れること能わずともそうせずにはいられなかった。
提督「(だが、ここも違うのか・・・)」

~ ザザザ・・ザザ・・・・(ノイズ) ~


しまかぜ「○月×日ヒトマルマルマル。本日も護衛任務着任します。・・・・。」
握りしめた拳は細かく震えていた。

提督「低速輸送船の護衛任務・・・か。」
普段の島風からは想像もつかない沈痛な面持ちで出航していく様は
先ほど見てきた過去からその心うちが伺える。

提督「速くあれと創られ、先代から最速を引き継ぎ、だがその速度を生かせず」
提督「(すでに天龍ほか多数の艦が沈められている中でのこれは・・・)」

提督「・・・次」


~ ザ・・ザザ・・・・(ノイズ) ~


提督「だいぶ時代がとんだな・・・。それにここは・・・」
あたりは白煙に包まれ視界が悪い。
先ほどから迫撃砲や機銃の音で耳が痛い。
間違えようもなく戦場のど真ん中なのだろう。

ドーン・・・!!ドドーーン!!!
ブーン・・・ヒュー・・・バラララララ!!ドゴーン!!

白煙・・・弾幕を抜け出ると、上空を無数の敵艦載機が飛び交い、
その大編隊は空を黒く覆い尽くしていた。
その数350機近くだったと聞く。
護衛対象の輸送船はすでに撃沈されてしまったのだろう。姿は見えなかった。
島風は雷装を投棄、その速力を生かして対空戦をしていた。
暁色の空は、今が夕刻だと教えてくれた。

島風「もっと・・・」


島風「もっと・・・もっと速く!」

驚くべき運動性能で直撃弾をすべて回避している島風だが
至近弾と機銃掃射で体中から血を流している。


島風「もっと速く・・・!!速く!!」


提督「ッ!!」
見ていられなかった。
もはや船団は壊滅し島風のほかに朝霜(艦これ未実装)しか残っておらず、
しかし当時の提督は機銃掃射で絶命し、
なおも激しい交戦をつづける島風にはその事実を把握する手段などなく・・・。
至近弾2発を食らい、もはや航行不可能となる。

悉く回避し続ける島風に恐怖を抱き集中攻撃で何としてでも落とそうとしたとは聞いたが
これだけ攻撃しないと落とせない駆逐艦はそうそういるものではない。
これでは朝霜が救援を断念するのもわかるというほどの苛烈さだった。

島風「もっと・・・はや・・・」


提督「島風・・・お前の速さへの渇望はここなんだな?」
目を見開き、彼女の最後を見届ける覚悟を決める。

島風「まだ・・やれる・・・」

視界などとっくに塞がれ、満身創痍のはずだ。

島風「もっ・・・と・・」

もはや舵は効かない。応急修理も間に合わない。

島風「はや・・・く・・」

ドオォォン・・・・・・

それまで酷使され続けたボイラーは最後の断末魔を上げる
爆炎が上がり、沈んでゆく。

提督「-------------」

沈みゆく彼女は何を思ったのだろうか。
彼女は速さで何を成さんとしていたのだろうか。

---静かに、夕暮れに染まる海は赤々と染まっていた。


提督「・・・帰還する」


~ ザ・・ザザ・・・・(ノイズ) ~

島風「うぅ~ん・・むにゃむにゃ。もっとはやくぅ・・・すやすや」

魂の記憶に没入してからほんの数刻と思われるが
島風は完全に寝入ってしまったようだ。
どうやら術につかれて自分も一緒に寝てしまっていたようだ。

提督「・・・」

上着をかけてやると、幸せそうな島風の顔に涙の跡が見える。
この術を使うと対象者も同じ夢を見る。

提督「つらい夢を見せたようだ。・・・すまなかった」
そういうとそっと頬の涙の後をなぞる。

島風「むにゃ・・・てーとくぅ・・かけっこぁ・・・まえませんぉ~」
かけっこは負けませんよと言いたいらしい。

提督「ふっ。おまえらしい。今度また、かけっこしような」

そういうと提督執務室の窓から外を眺める。
すっかり日は暮れて夕方になっていた。
そこには先ほど見た赤い水平線がどこまでも広がっていた。




後日、提督により島風の話を聞いた艦娘たちにより、かけっこ大会が開催された。
優勝した島風はご満悦のご様子。
言うまでもなくかけっこで惨敗した提督であった。
以後鎮守府では速さを自慢する島風を優しく見守る艦娘が増えたとかなんとか。
 

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最終更新:2014年06月26日 20:00