非エロ提督×熊野6-251

前回の話


今日はクリスマス。
たとえ深海棲艦との戦いの中にあっても艦娘の為に息抜きは必要だ。

そして本日は艦娘全員に休養を与えると共に以前から準備していたクリスマスパーティーを開催することにした。
皆が普段使っている食堂をパーティー会場にしてのお食事会とプレゼント交換会。
間宮さんと鳳翔さんが腕によりをかけて作ってくれた料理に舌鼓を打ちながら戦いの日々を一時忘れる。

自分が提督として着任して最初の年も終わりが近い。
そして、艦娘達が誰一人欠けることなく新年を迎えられる事を心から喜びつつ俺は…………そう、俺は執務室で急に舞い込んだ仕事を片付けていた。

おかげでパーティーに顔を出すことは出来ず、紅茶を口に流し込みながら書類にハンコをつきまくる。
普段なら熊野が紅茶のおかわりを淹れてくれるのだが、今はいない。

俺が「せっかくのクリスマスだから皆と楽しんでおいで」と言って彼女の仕事分を引き受けたからだ。
熊野が「提督もご一緒に」と言って俺を誘うのではないかと思ったが、意外な事に彼女は「では、わたくしはこれにて失礼しますわ」とさっさと退室してしまった。

(そういえば熊野は、ここ数日先に帰ることが多いよな……エステの予約を入れている様子でもないし鈴谷と出かけている様子も無いけど)

そんなことを考えながら最後の書類決裁を終えた俺は執務室をあとにする。
時刻は2100時、もうパーティーはとうに終わっている頃だろう。

(俺の料理、取り置きぐらいしてくれているかな……)

普段利用する食堂の様子をうかがうと既に灯りは消えており厨房の奥から食器を洗う音が聞こえるだけだった。

(こりゃ戻ったら晩飯はカップ麺だな。熊野に料理ができるとも思えないし)

ガックリと肩を落とした俺は、ようやくその豪華さにも慣れた自分の部屋に戻る。

「ただいまー」
「あら提督、おかえりなさいませ」

ドアを開けると熊野が待っていてくれた。
だが、普段のブレザー姿ではなくエプロンドレス姿だったのには驚いた。

「どうしたんだその恰好?」
「ふふ、こんな恰好するなんて決まっていますでしょう?遅めのディナーもよろしいんじゃなくて?」

熊野は俺の手を取るとそのままリビングへ向かう。

「こいつは……」
「いかがです?提督の為に一生懸命作りましたのよ」

リビングに来て驚いた。
テーブルには見事なクリスマスディナーのフルコースが用意されていたのだ。

「これ、熊野一人で作ったのか?大変だっただろう?」
「実は間宮さんからこの日の為に料理の作り方を教わってましたのよ。さぁ提督、冷めない内にどうぞ召し上がって」

ここ数日、熊野が先に退室していた理由がようやくわかった。
熊野は、多分いや間違いなく俺に秘密で間宮さんの下で料理の練習をしていたのだろう。
俺の為にそこまで努力していたかと思うと嬉しくなってしまう。

「それなら早速、いただきます……」

席に着いた俺はまず七面鳥のローストを口に運ぶ。
一方の熊野は俺の隣に座って期待と不安を入り混じらせた表情で俺を見ている。

「っ!これは……っ!」
「提督……いかがかしら?」
「こいつは……絶品だな」

お世辞抜きに熊野の作ってくれたローストは旨かった。
これなら他の料理も美味なのは間違いないだろう。

「よかったですわ。では提督、次はわたくしが食べさせてあげますわ。はい、『あ~ん』して下さいね」
「あ~ん」

俺が口を開けると、熊野がスプーンでスープを運んでくれる。
ああ、あの高飛車だった熊野がここまで尽くしてくれる女の子になるなんて……。
だから俺もフォークにプチトマトを突き刺すと熊野の口元に持っていく。

「それじゃ、こちらからも……熊野、『あ~ん』してごらん」
「提督ったら……では、お言葉に甘えさせていただきますわ、あ~ん」

そんな感じで、俺と熊野は互いに料理を口に運び合いながら素敵なディナータイムを楽しんだのだった。

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熊野
最終更新:2014年01月11日 01:53