提督×不知火、鈴谷4-916

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久々の長期遠征から帰った不知火。
鎮守府の長い廊下を抜け執務室の扉をくぐるとそこは
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な光景であった。

慣れ親しんだどことなくボロ臭い壁と床、窓にかかっていた赤いカーテンは姿を消し
壁はピンクドットな壁紙、真っ赤な絨毯にティーセット、なんか落書きのしてあるガラス窓
部屋の隅には季節にはまだ早い白いツリーが置いてあり
トドメに壁には何故か『第六駆逐隊』の掛け軸がかかっている。
見慣れたものは提督と自分の机くらいだ。

まさかとは思いながら一旦外に出てみると、やはりそこは執務室に続く鎮守府の廊下である。
再び中には入りしばらく頭をひねっていると後ろから声をかけられた。
「すまない、出迎えに間に合わなかったか。おかえり不知火」
「お~、ぬいぬいおっかえりー」

「司令に鈴谷さん……これは一体何が起こったのでしょうか?」
「あーこれな……」
提督も苦笑いを浮かべている。
「うちは基本こういうのに金をつかわかったんだが予算はおりているんだ。
で、基本的に寮の改修やら間宮さんの方に金を回していたんだが
こういう使い方もしていると報告しないとこの手の予算が次からおりなくなるんでな」

年末の道路工事みたいなもんだ。
とざっくりと説明されてだいたい納得する。
「それにしても少し派手すぎないでしょうか、落ち着かない気がするのですが…」
「それはコイツに文句を言ってくれ」
そう言うと提督は鈴谷を指さす。
「えー、どうせなんだから可愛くしたほうがいいじゃん」
「……鈴谷さんの趣味ですか」
ガックリと肩を落とす不知火。
ちなみに掛け軸は部屋を見た第六駆逐隊が作成して飾ってくれとねだってきたものである。

「あーなんか傷つくなーその反応。他の娘たちには結構好評なんだよ?」
「いえ、主にこの部屋を使うのは司令と不知火なのですが……」
「机は変えてないし大丈夫大丈夫、慣れるって」
得意満面な鈴谷を見た不知火はハーっとため息をつき諦める事にした。

遠征から戻ったばかりにも関わらず溜まった書類を整理し始める不知火と提督。
鈴谷は基本ブラブラしつつたまに不知火から頼まれた仕事を手伝っている。
提督にとってはかなり意外な事に、二人の仲は最近悪くはない。
鈴谷が前ほど仕事の邪魔をするでもなく、むしろ手伝っているということもあるかもしれないが
あの不知火にもまったく物怖じせず接することのできる鈴谷のフランクな性格のなせる技なのかもしれない。

しばらくすると扉がノックされた。
「提督、今よろしいですか?」
「ああ、間宮さんですか。どうぞ」
返事をすると間宮がお盆を片手に入ってきた。
「あら、どうしましょう」
「??? なにか?」
「いえ、提督と不知火さんにアイスの差し入れを持ってきたんですが、鈴谷さんもいらしたんですね」
「ああ、アイスの数ですか」
「はい」
「なら二人にあげてください、こっちはお茶でも飲みますから」
「そうですか? ではお二人ともどうぞ」
そう言って不知火と鈴谷に間宮アイスを渡すと間宮は一礼をして部屋から出ていった。

「提督あざーっす」
「申し訳ありません、不知火たちだけいただくなどと」
「ねーねー提督」
「ん?」
「どうせだからさぁ、あーんするから食べさせて。そしたらお返しに食べさせてあげるから♪」
またアホなことを言い出し始めたよコイツは……
と思っているとまるで加賀張りに「ここは譲れません」とばかりに不知火が接近してくる。
「鈴谷さん、いくらなんでも司令に対して無礼ではないでしょうか?」
「いや、別に食べさせるくらい構わんのだが……」
「構わないってさー、ぬいぬい? あっ、そうか。ぬいぬいも食べさせてもらいたいんでしょ~?」
「ッ……!!!!!」
とたんに顔を真っ赤にする不知火。
なんだか不知火も随分わかりやすくなった気がするな、などと提督が思っている間に勝手に事態は進行している。

「で、では、その……じゃんけんで勝った方がということで……」
「あっれ~、いいのかな? こないだの夜戦は鈴谷の勝ちだったのに」
「今度は負けません」
真剣な顔をして一体何やってるんだろうこいつらは……呆れながらも口を出すのは憚られるので静観する提督。
「「じゃーんけーん」」
「「ぽん!!」」

「う……嘘……負けた?」
「フッ……」
今回は不知火の勝ちのようだ。
「で……では司令。そ、その……お願いしてもよろしいでしょうか」
「はいはい」
そう言いながら不知火のアイスをスプーンですくい、彼女の口元に持っていく
「ほら、あーん」
「あ、あーん」
アイスを口にいれた不知火、なんだか顔がにやけるのを必死に押さえつけているような妙な顔になっている。

しかしなんというか他人の前だというのにこんなことをする不知火など
少し前までは全く想像もできなかった。
まぁ近くにいるのが鈴谷だからかもしれないが。
話を聞いていても自分の事についてはあけすけに喋るが『不知火がどうしたこうした』という噂は全く聞こえてこないあたり
わりとそのあたりのTPOは弁えているのかもしれない。

「で、では司令、どうぞ」
自分が口をつけたスプーンにアイスをすくい提督の口元に持ってくる不知火。
必死にポーカーフェイスを装っているが顔は真っ赤で口元がヒクヒクと引きつっている。
「ああ、ありがとう。で、あーんは?」
「あ、あ……あーん」
「あーん」
パクっとスプーンを咥え、アイスを食べる。
美味である、さすがは間宮さん特製のアイス。ファンが多いのも頷ける。

よくよく考えればこれ以上ないほどこっ恥ずかしい
どころか不知火に至っては鈴谷以外に見られたら自決するんじゃないかというやりとりをしながら
アイスを消費していく。
一方鈴谷は「ブーブー」とブーイングをしながら自分のアイスを頬張っていた。

 

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不知火 鈴谷
最終更新:2014年02月08日 17:16
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