提督×鳳翔4-347

「よい風ですね」

「ああ」

時刻はフタサンサンマル。
駆逐艦は寝静まり、大型艦は長い入渠のためにドックで寝静まった。
本日の出撃と執務仕事は終えたが、突如として現れた新たな出撃場所のおかげで
ここ最近の執務の忙しさは増す一方だった。
加えてこの鎮守府の提督は決して勤勉と言えるようなタイプではない人間だったこともあり、
資源を倹約するという名目のもと明日は出撃を控えるつもりでいた。
上層部によると今度の出撃場所は一定の期間しか突撃できないとのことだが、
その期間は短くはないようなので、資源倹約という理由に納得してくれた。

数日ぶりに行う鳳翔との2人だけの宴を、夜空にぼんやり輝く三日月が出迎える。
鳳翔の持つ酒瓶や杯と、提督の持つ肴のシシャモをそれぞれ床に置いて縁側に腰掛けた。
もう執務時間外なので提督は帽子を執務室に置いてきており、頭には何も被っていない。

「ああ、全く楽じゃないね。船を仕切る仕事ってのも」

提督がぼやいた。
何気なく放ったそれに鳳翔は反応した。

「すみません。いつも苦労をかけてしまいまして」

「ああいや、それはこっちの台詞というものだよ。
出撃してこの鎮守府や船を守るだけで十分責務は果たせているというのに、
秘書艦やって小料理店やって、あまつさえこうして酒の付き合いもさせてしまっている」

「もう、全部私が好きでやっていることですから。
私には不満はありません」

鳳翔は提督に向けていた顔を、前面に広がる海の方へ戻した。

秘書の仕事は鳳翔以外のほとんどの艦にもやらせてみたが、
結局提督は鳳翔が秘書艦を務めることを一番に望んだ。
秘書の仕事を務められる艦は他にいくつもいたが、
提督はそういった艦の能力でなく、個性で鳳翔を選んだ。
鳳翔には泰然自若という言葉が似合う。
鳳翔が醸し出す穏やかな空気と安らぎを気に入り、ここが自分の帰る場所であり、
第一の故郷が自分の生まれた土地ならば、第二の故郷が鳳翔の傍らなのだ。
つまるところ鳳翔に自分の仕事を手伝ってもらいたいではなく、自分の傍にいてほしいだけ。
鳳翔もまた、自分や他の艦がとても大事にされていると実感しているからこそ、
この提督に不満を持たずについていく気になる。
流れ行く日々は決して楽ではないが、
この提督にとって傍にいてほしいということがよく分かるから喜びを感じる。

「お酌しますね」

少しの沈黙ののち、鳳翔が動いた。
何も言わず差し出された杯に並々と透き通った酒を注いだ。
それを煽り、そこそこの辛さを舌で味わい、塩焼きにされたシシャモに頭からかぶりつく。

「あーうまい」

喉にアルコールを通してゴロゴロした声で感想をこぼした。
適当に塩をまぶして焼いただけでも、
肴に分類される料理なら適当でもそれなりに美味くできるのが利点だ。
普段料理をしない提督でもこの程度の知識は持ち合わせていた。
料理なら『趣味で』店を営む鳳翔にさせればいいはずだが、
提督が鳳翔に自分の作ったものを食べさせてやりたいと自ら行った。

「鳳翔にもお酌してやろう。ほら」

箸を置き、鳳翔の杯にもこちらから酒を注いだ。
鳳翔は何の癖か目をつぶってそれを流し込んだ。
普段口にする燃料とは似ているようで違う液体は鳳翔に飽きを与えさせることはなかった。

「肴も俺が食べるだけじゃなくて、食べてもらいたくて作ったんだよ」

「まあ。……ではいただきますね」

感嘆し、もう一膳の箸を取り、控えめに齧った。
ほどよい塩気とシシャモの卵の食感は味覚を楽しませてくれた。

 

2人だけの静かな宴は細々と続いた。
時が経つにつれ風は寒くなっていったが、
それに対抗するためお互い寄り添った。
先に肴がなくなったが2人ともその場から動こうとすることはなく、
酒を飲み交わすだけになった。

やがて酒さえもなくなったときは、瓶をいくつか床に並べていた。
2人とも体は温まり、むしろこの夜の風が涼しいと思えるほどだった。
提督の肩に頭を預けていた鳳翔はゆっくりと頭を起こした。

「……提督」

ぽつりとつぶやいただけだが、提督は確かに聞き取った。
それが合図となった。

「……いこうか」

「……はい」

泥酔しているわけではないので、立ち上がることは困難ではなかった。
そのまま2人は片付けもせず肩を抱き合ってその場を去った。

執務室のさらに奥にある提督専用の仮眠室の鍵を締めた。
まさか艦娘の使う仮眠室で行うわけにもいかない。
こじんまりした畳の部屋には布団が一枚敷かれているだけだったが、それで充分だった。
布団に彼女を寝かせた。顔が少し赤いのは酔ったせいか、これから行うことに恥じらいを感じるせいか。
別に抱くのは今回が初めてというわけでもないのに、彼女はこのときになるといつもこうだ。
しかし、それに加えて顔に少しの怯えを現した初めてのときから考えると、全く変わっていないわけではない。
回数を重ねると彼女の顔や体から怯えはすっかりなくなった。
今ではこうして完全に体を委ねてくれるようになったところに、征服感を感じる。
上から両手をついて覆いかぶさっていたが、いい加減欲求を満たすべく顔を近づけていった。
彼女は静かに目をつぶり、抵抗もなく自分を受け入れてくれた。
唇を重ねた。ただ数秒重ねるだけだが、彼女の唇の柔らかさが充分に感じられた。
一旦離すがこれだけで満足するはずもなく、何度も口付けを繰り返した。
欲求は収まるどころか膨らみ、その気持ちが口を離す代わりに鳳翔の衣服を脱がせる行動を起こす。
肩を縛る紐をほどき、絹擦れのシュルリとした音が自分を焦らせた。
毎日行っているわけではないためそこそこ欲求も募らせていたのだ。

「……焦らなくても、私は逃げませんよ」

鳳翔は手のかかる子供を見るような声でそう言った。
逃げる逃げないの問題ではない。
早く、鳳翔を味わいたいだけなのだ。
いくらこういうことに慣れようとも、鳳翔を愛しく思うこの気持ちが廃れない限りは
恥も捨ててはしたなく求めるだろう。もちろん廃れるなんてのは考えられないことだが。
しかし逸る気持ちを抑え、驚かせないようゆっくりと和服を開いた。
皆から年長者として慕われたにしては華奢な肩が顕わになる。
露出度の低い和服に隠された体は日焼けなどしていない。
駆逐艦娘からお母さんのようだと比喩されたにしては小ぶりな、
下着に隠された膨らみが和服から解放される。
華奢な体にはちょうどいいくらいだ。
同じように袴も脱がせ、袴を顕わにした。
こちらも下穿きで隠された下半身が姿を見せた。
もったいぶって、あまりそういうところからではなく、お腹や太股を撫でたりする。
夢中になってて何も言えないまま手を動かしていると――

「……もう綺麗だとは言ってくれないのですか?」

「そんなことはない。飽きないのなら何度でも言おう。
足も、腹も、胸も、手も、顔も綺麗だ」

普段の調子ならこんなこと吐けない。
酒の力は偉大だ。羞恥心をこうも崩してくれる。
自分は素直じゃない。愛しい人に想いを伝えるのも一苦労だ。
鳳翔は顔を綻ばせた。いつもよりも笑顔成分の乗った笑みに加えて赤らみも付与される。
自分はこの顔が好きだ。ぼうっとなってくる。

すべすべと太股を撫でていた右手も左手と同じ胸へと伸ばす。
胸部の下着を上へずらした。外すのは煩わしい。
小ぶりだと言ったがお椀のようにしっかりとした形で
女性の象徴を主張しているそれを撫でたり揉んだりしていく。

「ん……ぁ……」

しばらく続けたところで胸を揉んでいた左手を止め、
頂点に口をつけて緩くちゅうちゅうと吸う。
まるで赤子のような行為だが、このようなプライドも捨てた行動を取れるのも鳳翔の前だけだ。
柔らかくて、鳥肌立っているのが面白い。

「うううっ、んん……」

まあ、この程度の責めなら口を閉じて嬌声を抑えることも可能か。
ならばと今度は下のほうを口で責めることにしよう。
下穿きを下ろし、まだ濡れていない秘所を自らが濡らすべく顔を近づけ舌を伸ばした。

「あっ! 提督……」

彼女は今どんな顔をしているだろう。
しかし余計なことを考えずに集中して秘所を味わう。
かすかな嬌声を拾いながらそれを味わい、秘所を責めることを続ける。
やがてそこは自分の唾液とそこから出てきただろう液体で濡れることになった。
出口すぐそこまで流れてきたそれを舌で掬い取っては味わって催促するように舐め上げ、掬い取っては舐め上げ……。

「んぁ……、ああ……、はあ……、はあ……」

「はあ……ぁっ!?」

何も言わずに両手の親指で目いっぱい広げ、舌をそこに沈めていくと小さく驚きの声をあげた。
しかし構わず沈めていく。愛液が奥のほうから分泌されてきているのが分かる。

れろれろ。くちくち。

「あっあっ、て、いとく……ああっ」

「何?」

くちゅくちゅくちゅ。

「た、足りません……もっと……」

ならばと唇を完全にそこに密着させ、吸い上げにかかった。

ずずっ。

「ああっ!」

じゅるじゅる、ちゅるるるっ。

「あっ、いい、ですっ、ああ……」

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鳳翔
最終更新:2013年11月27日 15:00