非エロ:第1回白露型駆逐艦会議?4-279

「第1回、白露型駆逐艦会議を始めたいと思いまーす」
横須賀鎮守府、駆逐艦寮に備えられたやや広い会議用の多目的室。
この中には白露、時雨、夕立、村雨、涼風の5人が集まっていた。
「あのさ、白露。五月雨がいなんだけど?」
集まる用に宣言し、会議の開催を告げた白露に時雨が静かに質問する。
「いいんだよ、この会議はあたいが頼んだ五月雨と提督のための会議なんだ」
時雨の問い掛けには白露ではなく涼風が答える。
「あー、最近あの2人ぎこちないっぽいよね」
「他の皆さんも心配してたし」
夕立や村雨も涼風の答えに頷きながら賛同する。

五月雨はこの艦隊がまだ1人だった頃から提督と戦い抜いた古参であり、
持ち前の健気さや一生懸命物事を頑張る姿は他の艦娘にも好かれ、立派に秘書を務めている。
本人や提督は否定するが、誰がどう見ても恋人としか思えないぐらい2人はお似合いである。
そんな2人がここ数日間どこかぎこちなく、2人とも微妙に噛み合わないらしい。
五月雨はお茶をうっかり零したり、提督は遠征部隊を間違える。
よくある些細なミスではあるが、周りの人間からは何かあったと思わせる違和感があるのである。

「で、何か情報はわかった?」
「赤城さん達が言ってたけど喧嘩したっぽい?」
「金剛さんが言うには倦怠期ネーとか」
「北上さんは難しいよねーだってさ」
「皆適当だね…」
ノリノリで話す4人に比べ時雨は乗り気ではない。五月雨程ではないが艦隊に長くいる身としては2人の関係をよく知っているからだ。
「まあとりあえず大井さんからアドバイスっぽいの貰ったし試してみたいかな」
「じゃ、それで決まりね」

「五月雨、ちょっといいかい?」
秘書としての執務を終え、ゆっくり食堂で食事を取る五月雨を涼風が呼ぶ。
「あ、涼風。ちょっと待って、私もこれで食べ終わるから」
慌てて皿に残されたデザートのアイスを食べると五月雨は涼風に笑顔を向けた。
「で、何かな?」
「いやさ、最近五月雨も提督も疲れてるみたいだからこの睡眠薬をあげようってね」
涼風が睡眠薬と称した錠剤を五月雨に渡し、握らせる。
「睡眠薬?何で?」
「なに、疲れてる時はぐっすり寝るのがいいって言うじゃん」
「そうなの?」
「ああ、何人も言ってたから間違いないよ」
「そっか、ありがとう。提督にも渡してくるね」
「五月雨は一錠で提督は二錠だからねい」
嬉しそうに執務室に走り出す五月雨を見送った涼風はニヤリとする。
「あれでうまくいけばいいんだけどね」

「ふう……そろそろ僕も休むか」
執務室には提督が一人書類仕事に没頭していた。長くなったので先に五月雨は食事を取らせ、自分は軽く済ませるつもりだった。
コンコンとドアがノックされる。この時間なら五月雨とわかっているので提督は返事しない。
数秒後にドアは開かれ、静かに、どこか嬉しそうに五月雨が入ってくる。
「うん、どうしたんだい?間宮さんのアイスでも食べたのかな?」
「提督、私そんなに子供っぽいですか?……確かに食べましたけど」
「いや、アイスが好きなのは子供っぽい訳じゃないさ。長門も実はアイス好きだしね」
何気ない雑談、誰も見ていないけど2人はいつもと同じように接しあう。
「そうだ、涼風達が私達を心配してくれていい薬をくれましたよ」
「薬?」
五月雨が包まれていた封を開き、中から白い錠剤を3つ取り出す。
「睡眠薬だそうです、依存性はなく、ぐっすり寝られるよって」
「ふうん、確かに最近疲れ気味だしね。今日は仕事を終わりにして寝ようかな」
机の上に山積みになった書類を床の段ボールにしまい、提督は五月雨の横に座る。
「どれ、貰おうかな。水は」
「は、はい」
「ありがとう」
提督は事前に準備された水を五月雨から受け取り、ゆっくり薬を飲む。
「さて、寝ようかな。それじゃあおやすみ」
「あっ、提督!今日は……その……」
「あ、ああ……いいよ。一緒に寝ようか」
執務室の横に併設された仮眠室は提督と秘書艦の2人が寝れるようになっている。
普段は使わないがたまに五月雨が提督にお願いしたりすると2人で寝ることがある。
「じゃあ着替えてくるから五月雨も隣で着替えなよ」
執務室のクローゼットにはこんな日のために提督と五月雨の寝まぎや着替えがいくつか常備されている。
慣れた2人はそれぞれ執務室と仮眠室で着替えると仮眠室で布団に横になるのだ。

「やったぜ、提督はあの薬を飲んだよ!」
執務室のドアに借りてきたソナーを付けて盗聴する涼風。
隣には白露も座り、同じように中の様子を盗み聞きしていた。
「あとは大井さんの薬が効果出るまで待つだけかな」
涼風が五月雨に渡した薬はもちろん睡眠薬なんかではない。
大井特製の媚薬であり、即効薬ながら効果も強く、依存性がないスグレモノである。
夕立が大井から聞いたアイデアとは単純に提督に五月雨と寝てもらうだけである。
最近忙しくてお互い欲求不満だろうし、一回すっきりすればいいのだと提案したのだ。
「まああたい達も提督は好きだけどやっぱり五月雨には敵わないしなあ」
「さっさとあの2人は結婚すればいいのにね」
「その意見には同意だけどこういうやり方は好きじゃないかな」
「あれ、どうしたんさ時雨?」
ソナーで盗み聞きしていた2人の背後に静かに忍び寄る時雨。
「やっと見つけたよ。さあ行くよ」
2人の首をガシッと掴むと時雨は2人を執務室の前から引きずりはじめる。
「ちょ、痛い、痛いって」
「痛いし目立って恥ずかしいし……」
「あとね、あの薬は僕が五月雨に説明して本当に睡眠薬に変えといたから」
「えっ!?なんでさ?」
「2人の仲は僕らが干渉すべきじゃないってことさ」

仮眠室では並んだ布団で幸せそうに寝息をたてる2人が寝ていた。
きっと明日から2人は疲れもとれてまたいつものように仲良く頑張ってくれる。
時雨はそう信じて姉と妹を引きずりながら自分の部屋に歩くのだった。

翌日、白露と涼風が何故か戦闘もしてないのに疲労していたのだが本人達は何も語らなかった。

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最終更新:2013年11月27日 14:57