非エロ:女性提督と千代田4-207

「千代田……」
背後から甘い呼び声と共に、吐息が首筋に吹きかけられる。
それだけで、全身に走る微電流。千代田はその心地良くも刺激的な感覚に、うっとりと目を閉じた。
続けて、千代田の両脇腹に手が当てられ、それ素早く胸へとあげってくる。
豊かな胸にゆっくりと沈み込んでいく指。そのうち左右1つずつが、服の上から敏感な乳首を探り当てた。
「あん、千歳お姉、そ~ゆぅのは二人の部屋で……」
さすがにいつ誰が通るかわからない鎮守府の廊下でコトに及ぶのはマズイ。
最後の理性を振り絞ってそう言うと、千代田は身をよじって背後を振り返った。
「きゃああああああああっ!!」
廊下の端から端まで届くような悲鳴をあげた。
いや、艦娘たるもの、悲鳴だけで済ますはずもなし。
背後を振り向きざまの肘打ち、続けて股間を狙って前蹴り。そして身の丈ほどもある緑色の機体格納箱を横殴りに振り回す。
その全ての攻撃を軟体動物じみた奇怪な動きでかわした提督は、乱れた髪をかき揚げながらわきわきと両手の指を動かす。
「はっはっは! どうだ千代田、私の声帯模写も磨きがかかってきただろう!」
「くだらない宴会芸に磨きかけてんじゃないわよセクハラ提督! 仕事しなさいよ、大和と武蔵がタンクの底の燃料まで飲み干そうとしてるわよ!」
「これも私の仕事のうちだ。改2になったお前たち姉妹の発育具合を触診するのも……大和と武蔵がなんだって?」
「早く行かないと駆逐艦用の分まで平らげるんじゃないの?」
むむむ、と提督は顎に手をあてて考え込んだ。
「大和・武蔵のおっぱいを維持することを考えれば、多少の浪費には目をつむらねばなるまいが、未来のおっぱいのために投資することも大事……そう言いたいのか、千代田!」
「うっさいこの変態! あと千歳お姉にまでセクハラしたらありったけの艦爆で絨毯爆撃だかんね!」
フ、と提督は意味深な笑みを口元に浮かべた。
「それを言うのは一日遅かったな」
「ええ? ちょっとそれどういうこ」
言い終わる前に、提督はくるりと回れ右して廊下を走りだした。
「ちょっと待ちなさい! お姉に何をしたのよ!?」
「はははは逃げる島風に追いついてスカートをめくれる私についてこれるものかっ」
巨大な機体格納箱をうっちゃっておくこともできず、さりとてこんな重量物を背負ってまともに走れるはずもなく、千代田はあっという間に提督の姿を見失った。
「もおお~!」
足で床をガンガン踏み鳴らしながら、千代田は歯ぎしりする。
「なんであんなのが提督やってんのよ! 軍紀が乱れるってレベルじゃないでしょ!」
「どうしたの千代田。さっき提督がキラキラした笑顔で走っていったけど」
廊下の曲がり角から、ひょいと千歳が顔を出す。
千代田は走っていき、姉の身体に抱きついた。
「千歳お姉、あの変態提督に変なことされなかった? もう一緒に軍法会議に突き出そうよ」
うんざりした声で言う千代田の背中を、千歳はぽんぽんと叩いた。
「まあまあ。あの人以外に適任がいないからしょうがないじゃない。それに、意外と指揮は優秀よ。進出・撤退の判断も的確だし……」
そう言われて、千代田はしぶしぶ頷いた。
常識を超えた存在、深海棲艦に唯一対抗できる艦娘たちも、また常識を超えた存在だ。
これまで教わってきた物理法則も海戦戦術も否定され続ける現場に、普通の士官はまず一ヶ月で身体を壊す。
敵にも味方にも完全に適応して半年以上、艦娘たちを指揮できたのは、あの提督が最初だった。
「お姉は、提督が私たちを受け入れてくれたのは、変態だからだっていうの?」
「さあ……普通に考えれば、『女性』だからだと思うけど。黙ってじっとしている限りは、美人さんよね、提督は」

最終更新:2014年02月14日 23:06