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冒険者はコロシアムに行った

前回の失態が皇帝にばれてしまい窓際に追いやられたアール。
彼は数日後にコロシアムで行われるトーナメントの賞品に散逸した皇室の秘宝が出されることを知った。
名誉回復の為に何とか秘宝を手に入れ皇帝にゴマをすりたいアール。
しかし、アールは未だに前回の傷が癒えず(主に装備の)とても優勝できる状態ではない。
そのため彼はトーナメントに出場し賞品をとることをナイツオブラウンドに依頼する。
トーナメントで何が待ち受ける!?
アリアンロッドナイツオブラウンド、番外編2。「冒険者はコロシアムに行った」
――コロシアムで、強敵と握手!!

参加キャラクター

ウィルソン・ギーン Lv7
ミルテ Lv7
エスト Lv7
クロア・ファントマイル Lv6

オープニング 冒険者と若者と密偵と

その日、ナイツオブラウンドのギルドハウスは緊張感に包まれていた。
修行中の若き冒険者、クロアがギルド破りに来たのだ。
生憎とその日は弁の立つトラゾウもギルド随一の武闘派フィリップも正体不明のカリスマを放つカダー、ヤシュム、モアッレムも留守にしていた。
仕方なしに対応したウィルソンだが、やがてクロアの若い情熱にほだされ勝負をすることに。
先に仕掛けたのはクロアだが、彼の槍の一突きはウィルソンの分厚い筋肉に阻まれ有効打足りえなかった。
そして放たれたウィルソンの掌打はクロアを黙らせるには十分過ぎる一撃となった。

殺気だったギルドハウスの軒先で2人の男を制する男が現れた。
先日の傷もまだ癒えぬアールである。
旧交を軽く温めるとアールは自らの悲惨な近況報告を述べた。
先日の失態が皇帝にばれたのだ。

皇帝にクラウソラスの腹でホホを叩かれた挙句「オイ負け犬?おめぇせめて頭まるめろや?」と言われ
皇帝の側近も便乗した「おっおっおっ?皇帝陛下がいってらっしゃっぞ?何とか言えや、このルーザーガーイ」
廊下でアールを慕っていた後輩・ユーとすれ違えば、ユーは鼻をスンスンと鳴らして
「先輩?なんかここ匂いません?犬臭いっていうか?負けドッグの臭いしません?」
などと言われている。
すっかり部署内で定着してしまった自分の負け犬イメージを払拭するためにアールは動き、皇帝ゼダンの皇位継承時のごたごたの際に散逸してしまった皇室の秘宝を発見した。
秘宝は数日後にクランベルのコロシアムで行われるトーナメントの優勝賞品なっている。
自分の代わりにちょっと優勝してくれないか?というのが今回の依頼だ。
依頼料として彼は5万Gを提示してきた。
帝国貴族である彼は非常に裕福であり、金ならば売るほどあるのだ。
しかし、留守が多く人数に心もとない一行だったがウィルソンの発案でクロアを勧誘に行くことに。愛の狩人ウィルソン・ギーンの説得に応じクロアは一時的にナイツオブラウンドに加わった。

一行はクランベルへ。

ミドル 受付とライバルと奢れる後輩と

大神殿内部の転送装置に到着すると一人の神官(プリ-スト/ヒーラー)に迎えられる。
「クランベルへようこそ」
――小柄な男だった。
いや身長という意味では小柄ではあるがその体系は太く大きい。
一見すると肥満のようでもあるが、目を凝らすとそれが誤りであることに気付く。
男が有するべらぼうな量の肉、それらはすべて鍛え上げられた筋肉であった。
腕が太い、足も、太もも、首も太い、まるで丸太のようだ。
大きくせり出した分厚い胸板とそれよりも太く大きな腹回りは巨大な岩塊を思わせる。
体を包む僧衣の布がパンパンに張り、押し寄せる肉の圧力に悲鳴を挙げている。
洗いざらしの僧衣が不思議とよく似合っていた。
「もしケガをしたら神殿までどうぞ。有料ですが温泉もございますよ」
そして自分もトーナメントの雑用を手伝うことも伝えた。

一行はアールに連れられコロシアムへ

コロシアムで受付を済ませ周囲をうかがうと参加者らしき人影もちらほら見かけた。
  • まだあどけなさの残る4人組の少年少女。どうやら冒険者学校の学生らしい。
  • 全員がケセドの杖を持った身形の良い地元貴族の子弟たち。
  • 全身をエクストラドロップ品(もどき)で武装したアールの後輩ユーがナイトと神官を引き連れて現れた。
彼はアール、そしてナイツオブラウンドの面々に侮辱的な言葉を浴びせて去って行った。

夜に景気づけに酒場で一杯やることをアールと約束し、一行は宿屋へ。
宿泊費についてはアールが出した。礼を述べる一行に対し彼は再び
「心配いらない。金なら売るほどある」
と胸を張った。



夕方のひと時を一行は町を見回ることに。

エストが酒場に行くとそこではアールの連れていたナイトが酔いつぶれていた。
彼女が声をかけてみると彼は呂律のまわらない様子で「俺、本名は内藤っていうんだ」とうわごとのように繰り返すのみだった。
さらに店内を見回すとバーの片隅でトンガリヘッドの学生が一人静かに紫煙を吹かしながらグラスを傾けていた。
エストが声をかけると彼は不快感を露わにした。
「酒は一人で静かにやるものだ……」


その頃雑踏ではウィルソンが残った三人の少年少女とすれ違った。
太ったビッグボーイとオサゲガールが仲睦まじそうにしている後ろで眼鏡ボーイが俯きながらついて歩いていた。
まだ少年にも関わらずその姿は哀愁が漂っていた。
ウィルソンに軽く挨拶をしてビッグボーイとオサゲガールはホテル街へと消えていった。
ウィルソンがその背を目で追っていると一人残されたメガネボーイも軽く挨拶をしてとぼとぼと去って行った。
その残り香からは硝煙の匂いがした。


市場ではミルテが何気なく立ち寄った道具屋で物取りを捕まえていた。
彼女が店主を呼ぶと店の奥から巨大な肉体が現れた。
――背が高く、分厚い肉を有する男であった。
短く刈り込まれた頭髪、意志の強そうな太い眉の下から覗く鋭い眼光は刃物のようでもある。
棚の埃を無造作に払った腕は太く、一瞥しただけでその手の尋常ではない硬度を窺い知れた。
軽く振るっただけで自然岩だろうと容易に砕けそうだ。
男の服装は間違いなく道具屋のそれである。
そしてその朴訥そうな男からは濃厚な暴力の芳香も漂ってきた。
「ありがとう助かったよ。そういえば見ない顔だけどどうしてこの町に」
トーナメントに出ることを伝えると男の眼光が怖い光を帯び始める。
しかし殺気立つ男を一人のドゥアンの男が止めた。
種族特有の大きな骨格にそれに見合った量の肉を搭載している巨大な男だ。
男の物腰に剣呑なものは混じっていない、だが男もまた並々ならぬ戦力を保持していた。
「我々はこんな所でじゃれあうためにマッスルになったわけではないでしょう」
道具やが万引き犯を引き連れ店の奥に消える。
消えた背中を目で追いながら「ちょっと微妙な気持ちなんだ。本当はもっとずっと穏やかな人なんだよ。彼もお礼がしたいだろうしまた来てくれよ」
男たちから自分達はかつて自警団的なものを組織していたこと、かつての弟子が今回トーナメントに出ること、万引き犯を捕まえたお礼に次来たらサービスすることを告げられる。
万引き犯は……それを知った時、俺はもう君に対していかなる保証もできない。


クロアは神殿で神官から明日の試合について聞き出そうとしたが彼の穏やかながらも断固とした信念を滲ませた笑顔に阻まれた。



その夜
アールの奢りで明日の景気づけに酒場で飲む一同。
奢りで喜ぶエストの「本当に奢りでいいんですか」という問いにアールは胸を張った。
「遠慮は無用だ!どうせ汚い金だ!!」
その答えに若干の不安を感じながらも彼の厚意に甘え飲み食いしているとユーが現れた。
再び侮辱的な言葉を浴びせる彼だが、ボッチだった。
「友達いないのか……」とウィルソンは呆れるように零した。

ミドル 爆撃と爆弾とグレネードと

控室でアールから激励を受けた。
「初戦は大事だからな、なーに相手は子供だ。君たちが負ける要素はどこにもない。パインサラダとサラダとステーキを用意しておくから勝って祝杯をあげようぜ!!」
戦場に足を踏み入れるとスコールのような歓声に迎えられた。
満席のコロシアムに詰めかけた観客たちの期待は今にも爆発しそうで怖いくらいだ。
今日行われるのは普段の食い詰め者らの泥試合でも筋書じみた茶番でもない。
久しく行われていなかった凄腕たちの果し合いが見れるのだ。
観客はみな一様に出場者の紹介文が書かれたパンフレットを握りしめ各々気に入った選手へ歓声を上げている。
実況席でMCがマイク片手に立ち上がった。
「女暴走族(レディース)アンド玉無しヘナチン共(ファッキンガイズ)戦いは好きかー!!ガチ勝負は好きかぁー!?俺も好きだぁ。今日ここに集まったのは8組の命知らずの冒険者共だ。」
「今日ここで行われる試合の参加者は一流の冒険者!そして行われる試合に筋書もない、いつもの萎びた茶番に飽き飽きしているクソッタレ共、ようこそおいでなさいました。お待ちかねのガチでリアルでマジな試合が始まるぜぇ」
「それでは選手紹介。聖杯都市ラクレールからお越しの冒険者ギルド、こいつらは騎士でもなーい、そして構成員はバラエティ豊か!円卓を囲えるのか!?ナイツオブラウンド」
「超絶エリートのいけ好かないお坊ちゃまたちの入場だ。『バラバラだった僕たちも今ではギルドが組めるまでに。このクラスの集大成を見せたいです』思い出づくりなら余所でやりな、しかし実力は確かと評判だ!某有名冒険者学校三年B組!!」
「市井の冒険者と学校のエリート様、対照的な奴らの戦いのステージは急降下爆撃ドラム缶バトル。毎ターンの開始時にステージのどこかに爆弾が現れ、クリンナップにステージが超高度から爆撃を受ける狂気のデスマッチだぁぁ。ちなみに爆弾投下およびドラム缶設置はこのお方大神殿のプリースト殿が実況席から投擲してくださるぞぉ!!」
実況席で頬を染めはにかみながらも軽くポーズをとりMCに応えるプリースト。軽快なトークに観客席はさらにエキサイトしコロシアム全体を震わせた。
みなもう我慢できないといった様子だ。
実況席でこの町の首長:ウェルチが立ち上がり銅鑼を叩いた。
「それでは第一試合開始!」
戦いが始まった。


一行は機先を制し有利な陣形を組んだ。
先ずはエストの呪文がミルテの呪術のバックアップを受けて炸裂しオサゲガールを完全に無力化した。
次いでクロアとウィルソンが敵の動きを止めながらその力を見せつけた。
しかし敵のトンガリヘッドと彼に諭され覚悟を決めたメガネボーイがグレネードを放った。
プリーストの放つ爆撃と爆弾も合わさりリングは爆炎に包まれた。
さらにジャイアントボーイも手に持ったナイフに毒を塗りたくり目の前のウィルソンを狙った。
しかし、相手はあのウィルソン・ギーンだった。
結局エスト、ミルテには有効だったグレネードもウィルソンの肉体とミルテの防壁の前には脅威足りえず。
おまけにクロアの槍とエストの魔法によってメガネとオサゲは瞬く間に倒されてしまった。
次いでジャイアントボーイも倒れると残るはトンガリヘッドのみとなった。
だが彼はここで自身諸共にウィルソンを爆破する狂気の技を見せた。
しかしそれもこけおどし以上の物にはならず、彼もプリーストの放った爆撃にとうとう倒れた。

一回戦を見事勝利した一行だがその商品は八百Gのみと非常に時化ていた。
一行が砂をかみしめるような達成感に浸っているとどこからともなく毒矢が飛来した。
しかし一行はそれを躱し大事には至らなかった。

ミドル マッスルと本当の強さと金の力と

試合を終えて一行は町を歩いた。

エストが酒場を訪れると店主が申し訳なさそうに入店を断った。
聞けば地元の富豪の子弟によって貸切られたいるという。中からはしくじったものを叱責する声が漏れてきた。
エストが去ろうとすると店内から一人の青年が現れた。
長い金髪をサークレットで纏められた、美形だが記憶には残らない、どこか薄っぺらな印象を受ける男だった。
青年はエストたちの健闘を讃えた。しかしこうも続けた。まだ甘いと。自分たちには及ばないと。そして
「明日……。本当の強さとは何か教えてあげよう。真の勇気とは何か見せてあげるよ」

ウィルソンは情報収集のため雑踏を歩いた。
しかし何も感じ取ることはできなかった。

ミルテが道具屋を再び訪れると店の奥から言い争う声が聞こえた。
ユーと男が言い争っている、いやユーが一方的に男を非難し筋肉など下らん無駄なトレーニングよりも仲間の力やいい装備の方がが重要だと、手っ取り早い言い去っていく。去りゆくユーに道具屋は鍛錬を怠っていないことを褒める。
ミルテが男に声をかけると男は応えた。
しかしその笑顔は何処か寂しそうだった。
ミルテが男とユーの関係について問うと、かつてユーの命を救ったこと、彼を弟子として鍛えたこと、そしてユーが強さを求めて彼の元を去ったことを教わる。
男に生きることへの恐怖を聞かれるとミルテは仲間がいると、本人には決して見せない顔でウィルソンのことを語った。
その答えに満足そうに頷きポーションを渡してきた。自分とは異なる形ではあるがその裡には揺るぎないものを感じとったのだ。それはさながら悠久の時を逆巻く銀河の輝きのごとく。

その頃、クロアは神殿の温泉で戦いの傷を癒していた。
逞しいながらも少年の無垢を残したその肉体は温泉の熱で朱に染まり、女人の物とはまた違った色気を放っていた。
細い首元の鎖骨と逞しい胸板、どこか華奢な括れ、その手の好事家が舌なめずりするような躯を湯に沈め、彼はひと時の休息を得た。


翌日、コロシアムで一行と対戦相手の青年たち「エコノミックアドヴェンチャラーズ」がにらみ合っていると実況席が俄かに浮足立った。
視線を向けると実況席で品の良い老紳士が黄金色のかがやきを放つ金の棒をウェルチの前に積んでいたのだ。
やがてウェルチは満足そうに頷くと老紳士は彼女に一礼して去って行った。
文句を言おうとした実況もウェルチから延べ棒を一本押し付けられると黙ってしまった。
ブーイングの中、清々しいまでのドヤ顔でエコノミックアドヴェンチャラーズのリーダーは高らかに言い放った。
「これこそが僕たちの真の勇気!衆人環視の中正々堂々と買収する勇気!!」
だが、世俗の摂理を良しとしない、高潔なるものが実況席にはいた。
「それは許されるべきではない」
激昂と共にウェルチに殴りかかるプリースト。風を切って振るわれる剛腕はどんなに堅固な物体でも粉砕するだろう。
ましてウェルチは若いとはいえ女性である。当たればむろんただでは済まない。
しかしウェルチは冷静に、怒りで大降りになったプリーストの右フックを下から掬い上げるようにして左腕で絡め取った。
そのまま勢いを殺さように、振り向くような動きで向き直りながら左腕を振り上げた。一連の動作は滑らかに、そして流麗に行われた。桜吹雪の中を典雅に舞う踊り子のようでもあった。
勢いよく殴り掛かったプリーストは自らの勢いを利用され、自身よりも遥かに小柄なウェルチに重心を掬い上げられ実況席から投げ落とされ、観客席へと転がり落ちていった。
――アームホイップと呼ばれる、絶技である。
邪魔者を排したウェルチに一瞥されると実況は慌てて試合開始を宣言した。

戦闘開始と共にリーダーはケセドの杖を高らかに構え、その秘術を唱えた。
――ファイナルストライク
マジックアイテムを爆発させることによってダメージを与える狂気の魔技である。
爆撃となって襲いくるケセドの杖の破片を受けながら驚愕に染まるナイツオブラウンドを眺めリーダーは愉快そうに喉を鳴らした。
「そしてこれが本当の強さ。即ち」
その口許が凶悪な形に歪んだ
「金の力だ」

彼らの買収劇の結果、御用商人を随伴しながらの戦いとなってしまった。
そして彼ら曰く「浴びせるほどある」資金によりケセドの杖を湯水のごとく消費して放たれるファイナルストライクの嵐に苦戦する一行。
しかし、彼らの内の一人を倒した事により彼らに動揺が生じ、攻撃が乱れ始めた。
その隙を突き一行は勝利を収めた。
金の力を振る彼らだったが、所詮その強さは売買可能な強さでしかなかったのだ。

賞品として一行は名馬を入手した。

ミドル 飲み比べと青春と激励と

「心配するな。どうせ表には出せない金だ」
ここまでの勝利に気をよくしたアールによって部屋のグレードがさらに上がった。
彼の資金源に若干の不安を覚えながらも一行は街へと繰り出した。

エストが酒場を訪れると内藤(ナイト)から飲み比べを仕掛けられた。
酒好きではあるものの酒豪ではないエストだが、内臓に多大なダメージを負いつつも何とか勝利を収めた。

雑踏をクロアとウィルソンが歩いていると路地裏で若い男が言い争っているのを目撃する。
よく見てみると片方はアールが連れていた神官だった。
様子を伺ってみるとどうやら神官の大切な人がどこか遠くへ行ってしまうのだが、神官はまだ自分の気持ちに踏ん切りがつかないらしい。
しかし男の熱い言葉に動かされようやく自分の気持ちに素直になろうとする神官だが今からでは間に合わない。
馬でもあれば別だが。
悔しさをにじませる2人にウィルソンとクロアは先ほど獲得した名馬を譲ることに。
2人に礼を述べ、神官は地平線の彼方へと駆けて行った。
残った男はその背中を見送ると自嘲するようなことを漏らしながら去って行った。その口許に満足げな笑みを浮かべながら。
「青春ですねー」
「青春だな……」
残ったのは青春にはまだ青い少年と遠の昔に去った男だった。

ミルテは勝利報告もかねて三度道具屋を訪ねた。
道具屋は彼女を温かく迎えた。
男から激励と共に上位呪壁符をもらった彼女はその足でウィルソン部屋を訪ねた。
そして酒瓶に手紙を添えて置くと何も言わずに自室へと帰ってしまった。
手紙にはファイナルストライクの嵐から何度も彼女を庇ったウィルソンに対する感謝が綴られていた。

クライマックス 仲間と勇気と銀河と


通信機器で神官にかければ彼女とやり直すからエリンディル行くと言われ、戦士はまだ寝ていた。
呆然としているユーに係員が戦いの始まりを告げた。
絶望に凍った頭のまま覚束ない足取りでリングへと向かった。
長い廊下は13階段に思えた。
高い靴音を鳴らしながら、何故こうなってしまったのか、己の咎は何なのか、ユーは自問した。
しかし、答えが返ってくることはなかった。
胸に去来するのは遠き日の誓い。
氷雨の降りしきる中、目の前で両親を魔獣に食われ、そして師に2度救われた事。
一度は命を。二度目は心を。
絶望し外界を恐れる子供は師に諭され鍛錬を始めた。そして鍛錬の間はすべてを忘れられた。
ただ強くなりたかった。
二度と失わぬように。
涙しないために。
そして何よりも――
冷えた廊下の先に扉が見えた。
扉が、夥しいまでの音に震えている。
――鍛錬は遅い。
その成果は遅々としか積もらない。
紙をいくら重ねようともそれはいかほどの高さをも得ることはできない。
逸る若者の心は焦れて捻じれた。
――もっと早く積むことはできるはずだ。
だから若者は武器を取り群れを成した。
そうすれば手っ取り早く強くなれた。
若者の心はようやく満たされた気がした。
これでもう失わない。
これでもう泣かなくてすむ。
これでようやく
――あの雨の日に、両親の亡骸に縋りながら泣きじゃくっていた少年を救ってやれる。
扉の前で一瞬立ち止まった。
そして、手をかけた。
男は奢る心の命じるがままに勝ちを積み続けた。
いつしか皇帝直属の地位にまで上り詰めた。
積んだ勝利の量が己の正しさを証明しているようで誇らしかった。
しかし、本当に自分は正しいのか?間違っていなかったのか?問うても答えは得られなかった。
当たり前だ。
本当に積み上げたかったものからは、とうに目をそむけてしまったのだから。
気が付けば先輩の失脚すら笑うようになってしまった。
扉を開くと飛び込んできた光にユーは目を細めた。

仲間の不在、それをはやし立てるMCと観客からのブーイングがユーを迎えた。

克服したはずの恐怖が甦って来た。
――ああ、そうか。
自分は間違っていた。
どうしようもない状況で恐怖に震えようやく悟った。
自分は勝ってなどいない。強くなっていない。何も積み上げてなどいなかったのだ。
メッキの強さと仮初の絆に縋り、積み上げた欺瞞によっていただけなのだ。
本当は……、あの雨の日から一歩も動けずに、ただ目を閉ざして夢想していただけなのだ。
当たり前だ。
武装すればだれでも強くなれる。群れてしまえば恐怖は薄れる。
これが答えだ。そう思った。
こんな事態で戦えるわけがない。
棄権を申し出るべく審判を探して動かした視界に一つの巨体が飛び込んだ。
目を細めて自分を見守るその男は視線が合うと、満足そうに頷いた。
逃げたことも自分の欺瞞をも許すように。
遠き日に憧れた、そのままの姿で。
――まだ世界は怖いかい?
怖いし恐ろしい。自分がひどくちっぽけに思えるし、相手ばかりが大きく見えた。
でも、逃げたくないのです。
少年はそう答えた。
今の自分にあの日の勇気の残滓は残っているのだろうか。
己に問う。己の肉体に、何度も折れた骨に、幾度もぶちまけた血潮に、すっかり日常となった甚振りに耐えた筋肉に。
――俺は戦えるのか?
心臓の鼓動が答えた。
審判が棄権するのかを問うてきた。
答えを告げる
「やれるさ」
天を仰ぎ、ユーは畏れに目を閉じた。
逃げながら、誤魔化しながら、縋りながら、それでも積み重ね続けた憧憬の紙片は、今はここまでの高さになったのか。
そして、タフガイは目を見開いた。

――今、銀河が生まれた。


絶望的な状況にも関わらずユーの顔は不思議と晴れ渡っていた。
それを見てナイツオブラウンドの一行は彼がもはや装備と衆に頼る下種ではないことを悟った。
目の前にいる男は恒星の如き光輝を放ち、銀河の如く揺るぎない男だと。
試合が始まると同時にユーは全身に力を込めた。
筋肉が彼の装備を弾き飛ばした。
孵化するかのように、彼の全身が外界に晒された。
一糸まとわぬその裸体にみな声を失った。
砕けた装備など些事。
煩悶を超え、今まさに羽ばたき始めた若者の勇気の宿った肉体に感動したのだ。観客席には涙を拭うものさえいた。
――この世の美が、そこにはあった。
ユーは真っ直ぐと戦った。
エストの呪文に歯を食いしばって耐え、クロアの槍撃、ウィルソンの殴打には足を踏ん張り真っ直ぐに殴り返した。
しかし、いかにユーがマッスルになれどもその肉体にダメージは蓄積していった。
そしてついに放たれたウィルソンの一撃。
ウィルソンとてすでに一撃、ユーの流星のごとき一撃を受けている。
だが、ユーはそれを真っ直ぐに受けて立った。
共に満身創痍の両者の腕が交差し、ほとんど同時に炸裂した。
だがしかし、倒れたのはユー一人だった。
ウィルソンの拳はユーに直撃し、ユーの拳はミルテの防壁によって阻まれた。
両者を分かったもの。それは守られていたユーと守っていたウィルソン。
二人の歩んだ道程と、紡いだ絆の確かさだった。

エンディング 夕焼けと強敵と握手


金を渡して賞品をひったくってアールは帝都へ消えた。
一行が呆れているとユーはようやく意識を取り戻し握手を求めてきた。
憑き物が落ちたような清々しい顔つきだった。
「いい試合だったよ。勝つとか負けるとかそんなことに固執していた事がバカみたいだ」
ギルドを代表してウィルソンが手を取った。
男たちは握手を交わし、お互いを称えあった。
「また会おう。強敵(とも)よ」
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