※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

【経済ニュース】 2013/07/26(金) 17:27
PDF版→https://www.monex.co.jp/static/jpmorgan/er/economic_20130724_1.pdf

  7月24日レポート「日本の財政赤字を減らす確実な方法」について多くの賛意を示すフィードバックを頂いたが、批判的なご意見も頂戴した。その中の一つが、「日本の債務残高が200兆円以上増加しているのを勘案していない」である。

  「日本の債務残高」という言葉使いが正確ではないが、メディアに登場する識者の中にも「政府債務は1000兆円を超えているから、日本の財政は深刻な状態」という言説を度々見かける。これを強調する識者は、一刻も早く増税すべきと唱えることが多い。

  霞が関発の情報に頼る大手新聞からもこの点が頻繁に報道されるが、実際に日本政府の債務残高は1000兆円を超え、GDP比率で2倍以上という国は主要先進国の中で日本だけである。ただ、膨らんだ債務残高がなぜ問題なのかが、冷静に議論されることは余りない。

  理論上、政府債務の返済は将来世代によって行われるため、政府債務拡大は「将来世代の負担」である。その負担を減らすために、現役世代の負担である増税で、政務債務の拡大を止めて、将来世代の負担をなるべく軽くする、というのは当たり前である。

  筆者も、将来世代の負担を真剣に考えている。ただ、増税で税収が増える経済状況なら良いが、先日のレポートでも述べたが、増税でデフレ圧力が再び強まり名目GDPが縮小すれば税収は減る。再び1990年代後半と同様に公的債務が増えるリスクを懸念しているわけである。増税のタイミングとその程度を間違えれば、将来世代の負担が更に増える。

  それでは、先の読者が懸念するような、「政府の債務残高の増大」が日本の財政問題に及ぼす影響はどの程度深刻なのか?メディアに登場する識者も大抵そうなのだが、それがどの程度深刻な問題で、日本経済の脅威であるかは実は曖昧である。「借金が増えて大変」という感情論ではなく、この点をデータを踏まえて考えてみよう。

  政府債務残高が膨らみ過ぎることが引き起こす問題の一つは、債務による利払い負担が増えて、それが財政赤字を拡大させることである。利払い増加で財政赤字が増えてしまい、更に政府債務が積み上がる、という悪循環に陥ると財政政策が機能しなくなり弊害が甚大になる。

  それでは、国債などの利払い負担が、日本の財政収支にどの程度影響しているのか?公的債務が増え続けているため、利払い負担も大きく増えていると思っている方も多いかもしれない。グラフでは、政府の利払い負担である、「財産収支(利子等の受取ー利子等の支払)」を示している。

  最新データは2011年度だが、財産収支は3.8兆円の支払い超(支払>受取)である。2008年以降支払超が増えているが、1990年代よりも政府の財政負担は小さい。これは、公的債務残高が増えても、国債利子が大きく低下して利払い金額が減っているためである。

  政府の利払い負担(財産収支の支払い超)は、公的債務残高が増えても、金利水準が低いままであれば大きく増えない。グラフで示しているように、財産収支よりも、経済成長や景気循環で税収は大きく動き、これが財政収支を最も動かしている。

  名目金利の上昇で政府の利払い負担が増えて、それで更に政府債務残高が増えることが懸念されている。もちろん、名目金利「だけ」が上昇すればそういったことも起こるが、通常は名目金利が上昇する時は経済成長率が高まるので、税収がより大きく増える。だから、景気回復によって2000年代半ばに起きたように財政赤字は縮小する。このグラフが示す、税収と財産収支のデータを踏まえれば、それがなぜ起こるかは明白だろう。

  政府債務残高が増え過ぎて、日本の財政が危機的な状況が起きているという認識は、「経済成長が起きず名目金利だけが上昇して、財政赤字が増え続ける」という特異な状況を懸念しているのだろう。ただ、なぜがそうした状況が起こるのか、筆者は真っ当な説明をほとんど聞いたことがない。ちなみに現在南欧諸国ではそれが起きているが、それは金融政策が南欧諸国のためだけには機能しないからである。

最新レポートの詳細(グラフ入り)を読む

(執筆者:村上尚己 マネックス証券チーフ・エコノミスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)