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決定要旨

 性別を変更した夫とその妻が第三者との人工授精でもうけた子について、最高裁が嫡出子と認めた決定の要旨は次の通り(決定は10日付)。  

【原審の判断】
 東京高裁は、(1)法律上の親子関係は血のつながり(血縁関係)を基礎とし、結婚を基盤にして決められる(2)民法の規定は、妻が結婚中に妊娠した子を嫡出子と推定することで家庭の平和を維持し、夫婦の秘密を守るとともに、父子関係を早期に安定させるためのものだ―と指摘した。
 その上で高裁は、性別変更した夫との間に血のつながりがないのが明らかな場合は嫡出子と推定できない、と判断した。
 【最高裁の判断】
 性同一性障害特例法(特例法)では、性別変更の審判を受けた人は、法に別段の定めがない限り、変更後の性別と見なして民法その他の法令が適用される。女性から男性に変更した人は、夫として結婚できるだけでなく、結婚中に妻が妊娠した場合は、民法772条の規定で嫡出子と推定されるというべきだ。
 最高裁判例では、妻が妊娠した時期に事実上離婚して夫婦の実態が失われるなど、夫婦が性的関係を持つ機会のなかったことが明らかな場合は嫡出子と推定できない、としている。
 性別変更した夫は妻との性的関係によって子をもうけることは想定できないが、結婚は認められている。嫡出推定の適用は結婚の主要な効果で、血のつながりがないのが明らかだとの理由でそれを認めないのは不当というべきだ。
 そうすると、夫婦が嫡出子として出生届を出したのに、夫が性別変更して血のつながりがないからという理由で嫡出子と認めず、戸籍の「父」の欄を空欄にすることは許されない。
 【寺田逸郎裁判官の補足意見】
 結婚と嫡出推定の仕組みとは強く結び付いており、次の世代に継承する家族をつくるという目的を中心に据えた制度だ。特例法に基づき結婚を認めたということは、血縁とは切り離された形で嫡出子をもうけ、家族関係をつくるのを封じないことにしたと考えるほかはない。
 【木内道祥裁判官の補足意見】
 高度化する生殖補助医療など民法の立法当時に想定しない事態が生じている。きめ細かな最善の工夫を盛り込むことが可能なのは立法による解決だが、現状では特例法、民法で解釈上可能な限り、そのような事象も現行の法制度の枠組みに組み込み妥当な解決を図るべきだ。
 【岡部喜代子裁判官の反対意見】
 民法の嫡出推定は、妻が夫との性的関係により妊娠することを根拠にしており、その機会がないことが生物学上明らかで、その事情が法令上明らかな人には推定が及ぶ根拠がない。
 【大谷剛彦裁判官の反対意見】
 特例法の制度設計では、性別変更した人が遺伝的な子をもうけることは想定されていない。性別変更後も自分の子がほしいという願望は理解できるが、生殖補助医療による法的な問題は、生命倫理や子の福祉などを多角的に検討した上で、立法により解決すべきだ。裁判で父子関係を認めれば制度整備もないまま現在の民法の解釈を踏み出すことになる。