緩む財布と緩む規制 大型店急増が投資押し上げ
2013/9/2 17:16

 アベノミクスの焦点となる設備投資がようやくプラスに浮上した。財務省が2日にまとめた法人企業統計によると、2013年4~6月期の金融・保険業を除いた全産業の設備投資は、0.02%増の8兆3106億円と3四半期ぶりに前年同期を上回った。

 設備投資といえば、製造業の会社が工場を建てたり、機械を買ったりすることを思い浮かべがち。でも今回の数字を押し上げたのは投資額全体の3分の2を占める非製造業だ。個人消費の盛り上がりを受けて大型商業施設の出店が相次いでいる。

 近畿日本鉄道は6月13日に一部開業したあべのハルカス(延べ床面積30万6000平方メートル)に総額1300億円を投資した。三菱地所は6月21日にマークイズみなとみらい(店舗面積4万3000平方メートル)をオープン。東京急行電鉄が開いた武蔵小杉東急スクエアなど駅近くの開業も目立つほか、地方でも大型施設の出店が相次いでいる。

 日本ショッピングセンター協会によると、13年1~6月に新規開業したショッピングセンターは31件。昨年1年間の35件に迫る件数で、13年通年では約70件と昨年から倍増し、5年ぶりの水準を達する見込みだ。

 出店が増えているのは、地域ごとの事情もある。都市部で商業施設が相次いでいるのは便利な立地の再開発が進んでいることが大きい。

 一方、地方は「大型店を誘致する地方自治体が増えてきた」(北関東を中心に大型モールを展開するベイシア)との声が多い。かつて多くの自治体にとって大型商業施設は「商店街の敵」。出店を厳しく規制してきた。しかしいくら大型店を食い止めても商店街の衰退は止まらない。

 逆に大型店を受け入れたほうが雇用を生み税収も増え、地域は活性化する。隣の市町村に出店されて、客だけ奪われるよりはよっぽどいい――そう考える自治体が規制を緩め、大型店を呼び込み始めた。財布と規制がゆるむなかで、出店攻勢はまだまだ広がりそうだ。(佐伯遼)
最終更新:2013年09月02日 17:45