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今日は、マル激トーク・オン・ディマンド 第636回(2013年06月22日)「たかがアベノミクス、されどアベノミクス」の内容前半をご紹介します。
http://www.videonews.com/charged/on-demand/631640/002829.php

編者感想として、リフレ効果は神保さんや宮台さんの認識には織り込まれつつあり、では次に、よりリフレ効果を高め、持続させるためにはやはり構造改革みたいなものが必要なんではないか、という形で考えていらっしゃるように思います。

リフレ派としては少し違うのではないか、と思う部分は多々ありますが、あまりここで「やっぱりわかってない」と目くじら立てるよりは、とにかく「期待への働きかけ」が消費や投資、雇用等の実体経済へつながる可能性が認められたわけですから、そこにまずは注目すべきかと思います。

設備投資を実際にどうやって増やすのかは、あれもこれも、いろんな人がいろんなアイデアを出し合っていくのはいいと思うんですよね。実際のところ、リフレ政策で土壌を整えて「よし」と言えるのは、ミクロなレベルでみんなが切磋琢磨して、より競争力のある企業やサービスが生き残る状況があってこそ。その観点では櫻川先生はたくさんのヒントを述べていらっしゃると思います。

そしてとにかく、雇用状況を改善した上で税収を増やし、さらにそれに先行して社会保障を強化し、セーフティネットを充実させる政策を政権に取らせていく、その圧力をかけていく勢力として、いわゆるリフレ派(社会保障強化派)もともに「連帯」していきたいですよね。


目次


(一部抜粋、要約しています)

神保:今日のテーマは経済政策。一連のアベノミクスの論争の企画をやってるときに、『経済を動かす2つの単純な論理』という本に助けられた。経済は「バブル」と「リスク」という言葉を理解ればいいと。
著者は慶應技術大学経済学部教授の櫻川昌也さん。

バブルは必ずしも悪くない!?


神保:櫻井さん、バブルというと、批判しているように聞こえますよね。

櫻川:アベノミクスをバブルと言う人がいるけど、それを聞くとアベノミクスをつぶしたいんだなと、そういう論調に見える。それはバブルというものが何か知らない人の言うことで、(現実には)山のようにバブルは起きている。(日本は)一度強烈なのが来たので、強い拒否反応があるが、世界的にはこの20~30年で30回ぐらい起きているわけで。
バブルがトータルで見ると損だったか得だったかは国によってマチマチ。パターンの中でいちばん大損しているのは日本で、他の国を見ると、必ずしもそうではない。あんまりナーバスになる必要はなくて、いい面と悪い面あるわけですから、こういうのもアリなんだと、冷静にみながら対処していくことが大事。

(略)

神保:他の国でバブルの後遺症をもう少しうまく吸収できているのに、日本ができないというのは。

櫻川:不良債権処理が早いか遅いかは重要な問題。アメリカは今回2~3年で処理。アジア通貨危機の時は、IMFが入ったから強制的に1年か2年で処理してしまった。だから回復も早かった。
日本は92年に崩壊して、ケリがつくのが2005年なので13年かかってる。しかも真面目に不良債権処理やり出したのは竹中さんがやり出してからで、そこから数えると3年。最初の10年は何もしていなかった。それが結局高くついた。あれをさっさと処理していれば事態はかなり変わっていた可能性が高い。
92年のときに地価が暴落して、銀行が損したらしいというので宮沢さんが不良債権処理しようと言ったが「なんであれだけ儲けた銀行を助けるんだ」と国民感情が許さなかった。それと、銀行が大損することがいったい次に何が起きるのかを誰もわからなかった。だから、国民も反対してるし、先送りしてもいいだろう、いいだろうと、ずるずる来たのが実態。

自民党選挙公約


神保:これ自体42ページもあって、これ以外に報道向け資料が82ページ。この中で見出しになっているものをピックアップ。
名目3%、実質2%の経済成長実現(今後10年平均)
設備投資を年間70兆円の水準まで回復(3年で)
設備投資減税の実施/法人税の大胆な引き下げ
失業期間6カ月以上の人数を2割減少(5年で)
中小企業の輸出額を2020年までに倍増(10年比)
TPPでは「国益にかなう最善の道を追及」

公約の目標値は弱気過ぎる


櫻川:名目3、実質2というのは非常に弱気だなと。もうちょっと強く行ってもいいと私は思う。ほんとに構造改革をやる気があるのなら、もうちょっと高い数字を言ってもいい。設備投資は今60兆円ちょいですから、しかも3年で70兆円とは弱い。もっとガンガン設備投資できるような形をどう作るかということを考えてもいい。たとえば100兆円近くどーんと。

櫻川:法人税というのは本当に下げれるかわからない。これは意味ない。いまは企業にコンサルのような形でエクイティ・ファンドがどんどん入ってきている。彼らが何を指導するかというと、本社はここに置いてください、営業所はこの辺に、支店はこの辺に置きなさいという、そこから始まる。要するに、税金払わなくてもいいように。インターナショナルな世界ではそれが当たり前になっているので、高い法人税を課しているところからは企業は逃げてる。だから(今さら効果がないとしても)これは下げていくしかない。

神保:TPPについては政策集ではとても言及が短い。あまり深くどっちとも言いたくないという感じ。

櫻川:中小企業の輸出額を倍増できればいいんですが、どうやってやるのかと。現実の問題としては、円安がどこまで行くかと。日本の中小企業は半分は韓国と競合しているので、今は立場が逆転してウォン高、円安になってますから韓国の方が困っているわけで、そういう意味では為替がすべてを決める領域だと思う。これは実は円安政策を取るぞと言っているに等しい。
TPPに関してはすごく大事な問題で、日本の産業構造を変えていく、一つの大きなきっかけになると思う。
特に私が期待するのは、日本は会社組織を変えないとやっていけないかも知れない。そして変えることによって伸び代が出てくる可能性がある。ここは重要だが「国益」というのは言語明瞭、意味不明で弱い。

(略)

櫻川:(政策パッケージとしては)ちょっと懐があったかくなればいいかなみたいな程度で、ではどういう風な社会にしたいんだとか、どういう日本を作っていきたいんだ、というような観点はこれからは見えてこない。

宮台:野党の方が、どういう日本を作りたいのかということについても、価値を打ち出せば良いんだけれども、民主党については価値を打ち出したところが、何もできなかったという前例があるし、維新の会が示唆している価値は、実は旧態依然たるものじゃないか、という疑惑が生じている状況で。公約の良し悪しは、選挙においては相対的なものですよね。

神保:下の方はわからないけれども上の方は実現可能性があると言う風に思われるだけでも大きい。

宮台:人々はとにかく景気回復、雇用の改善、これに関心をもっているわけですから。それに答えるような政策を野党が打ち出せない以上、相対的にはこれで十分に強力だと思います。

神保:これが強力である理由は、アベノミクスと言われる経済政策が、うまく行っているように受け止められているから、これならうまく行くんじゃないか、というような見方をされるところがあると思う。櫻川さんとしてはアベノミクスの3本の矢、共産党の志位さんは毒矢だと言いますが、どう評価されていますか。

出足が良くて、それで世の中の雰囲気がバッと変わった


櫻川:出だしは、誰も予想しないぐらいにうまく行ったと思います。いろいろラッキーはあった。金融緩和であんなに円が安くなるなんて誰も思っていなかった。しかも、円が安くなっただけで、あんなに消費が増えるとは誰も思ってなかった。実は意外なことがずっと続いてて、なんでなのか、われわれ専門家筋でもあんまり良くわかってないんですよ。なんでこんなにうまく行ったんだろうというのが。とにかく結果ですから。 とりあえず出足が良くて、それで世の中の雰囲気がバッと変わった、というのは、僕は評価していいと思います。

神保:そこまでうまくいった主だった理由は何なんですか。

櫻川:実はいちばんの要因はアメリカなんです。私は今年の4月までNYにいたので良くわかるんですが、住宅価格がずっと下がっていて、アメリカだめだったのが、下げ止まって上昇に転じた。それでアメリカは底を脱せるんだと。今年に入ると、アメリカの景気回復は間違いないという雰囲気が去年の秋口からあった。そうなると、バーナンキは金利を上げてくるだろうと。そうなれば当然、アメリカにお金が集まり、円は売られる。円高は終わったなという雰囲気はNYでは秋口からあった。そこにタイミング良くアベノミクスが出てきて、日本は0金利のまましばらくお金をばら撒いていきますよと言ったので、アメリカのヘッジファンド筋、金融筋が一気に円を売って、一方方向で円安が実現した。
アベノミクス単体でこれだけの効果があったかというとそれは言い過ぎで、基本的にはアメリカ経済の大きな変化、これが非常に大きかったと思います。
それともう一つはユーロがちょっと落ち着いた。相対的に、円を無理に持っていなくてもいいかなという。そういう世界経済の流れが、無理にもう円を持っていなくていいかなみたいな、大きな流れとしてあった。
タイミングが非常に良かった。で、効いた、という感じがします。

財政規律の乱れが気になる神保さん(日銀独立性編)


神保:そこでいうアベノミクスと言うのは1本目の矢の金融緩和ですよね。日銀の独立性とか金融改革が進まないまま、単に緩和緩和というところに懸念があり、次につながる、財政の規律というもの…あまり財政の規律というと、例のリフレ派対反リフレの神学論争みたいな、おまえこっちの陣営か、みたいになるので、そういう文脈でいいたくないんですけど、日銀の白川さんが、ある種、抵抗していたので、それを首根っこ押さえて云々、というときには、これはやっぱりまずいだろうという声があったんだけれども、ちょうど交替の時期、交替の前に白川さん、辞任されたんですよね。どっちみち交替だったわけですが。一応、政権の意を受けた金融政策を取ろうという人を総裁に据えたと。首根っこを押さえないでも自ら進んでそれをやる黒田さんという人を連れてきた。そうすると先生の懸念は払拭されるんですか。つまり、日銀が違うこと考えている時に無理やり政治が何かやらせようとするという部分は。

櫻川:基本的には中央銀行の独立性を後退させたわけですよね。今回のプロセスは明らかにそうで、中央銀行の独立性は歴史的ないろんな問題があって、政府がより金融政策を握っていたときに、財政インフレということが歴史的にいろいろ起きてきたんです。その問題を解決するには、どうも中央銀行を作って、政府とは違った形で動いてもいいように縛りを入れようと。日本に関していうならば、経緯としては、民主政府が出来た後に、中央銀行がなかった。明治政府が財政も運用し、貨幣も発行した。そして西南戦争が起きた。1877年ですか。戦争で非常にお金がかかると。(公債の説明)インフレが起きた。これではダメだといって中央銀行、日銀を作った。歴史の失敗に学んで中央銀行を作ってきて、今にいたっているわけですから、日本はインフレ率はずっと安定していてそういう意味ではいい国だったんですが、デフレになり過ぎて、中央銀行に独立性を与えすぎたんじゃないかと。ちょっとこっちに戻そうという風なことで、良く言えば、与えすぎた独立性を少し返してちょうだいということを今回やった。これが本当に長期的にいい政策だったのか、悪い政策だったのかは、わかりません。

宮台:僕のような素人から見ると、独立性もさることながら、FRBなどと比較すると、日本の中央銀行は、やや、パラノイアというか、偏執狂的に、ある方針に固執しているように見えた。他国の中央銀行であれば、日銀と同程度の独立性であったとしても、これほどまでに、政府の金融緩和策に抵抗するということもなく、いろんなことが、政治側にとっても、うまく転がった可能性もあると思うんですよね。だから、どうして日銀が、それほどまでに、金融緩和イコールインフレ、みたいな、図式に固執するのか、そこは興味深いですよね。

櫻川:私は日銀の方も知ってるんですが、みんな一緒のことを言うんですよね。とにかくちょっとでも緩めたらすぐインフレになって大変なことになると。我々は物価の安定が大事だと。そのためには何を犠牲にしてもいいと思ってるんじゃないかとすら思えるような節は確かにある。彼らも20代後半の頃は非常に優秀だったと思うんですよ、脳みそもやわらかくて。でもあの空間、中央銀行の役所に入って、洗脳とまでは言いませんが、いろいろ教育があるんでしょうね。強硬に反対する取りまきというのがうちわにいて、官僚機構ですから。非常に頑なな集団ができてしまう。
私は中央銀行みたいなところにプロパーのキャリアがいるという仕組みが間違いなんじゃないかと思う。たとえば、銀行の人が行くとか、我々みたいな人間が行くとか、あそこでずっと一生勤めるような人があまりにも多いんですよね。それは非常に非効率なことだし、いちばん問題なのは、どうも話を聞いていると、日本の貨幣価値を守るのか、あなたは日銀を守りたいのか、どっちなんだ、という話。あなたが守りたいのは日本の円の価値じゃなくて、日銀でしょ、つまり人間が組織に張り付いてしまっているものだから、どうしてもそうなってしまうんじゃないかと思う。それが事態を非常にややこしくしていると思う。
アメリカなんかだとFRBがありますけれども、人間の出入りがもっとフレキシブルですよね。FRBを守るためという話を聞くことはない。日本の組織構造というものが、重大な、なんで日銀の人はこうなわけ?みたいな部分を生む。そういう意味ではああいうものは一度解体した方がいいのかも知れない。
そんなに強く独立性を与えているわけじゃないんだけれども、どうもそんな風に使われてしまう。そういうメカニズムがある。

神保さん、食い下がる(白川カリスマ喪失編)


神保:日銀の組織的な問題を踏まえた上で、物価の財政理論でいくと、中央銀行というものが一切物価の管理を止めると。名目の国債残高と将来の所得財政収支の予想が物価水準を決めると。つまり、櫻川先生ご自身の物価上昇率2%の目標というのは、OKというか歓迎なんだけれども、それをやるんであれば本来のポリシーミックス、つまり一方で、非常に保守的な財政運営で財政規律を守るというミックスを持っていなければいけないんじゃないか。その後者が日本はないですよね。それを考えると(日銀の態度には)一定の合理性があると考えられないかと思ったんですが。
日銀から見れば、明らかに財政規律が緩んでいる状態が続いていたわけですよね。そうすると、かなりそこの部分の物価の管理を厳しくしないとならないという風に考えることには一定の正当性があると。

櫻川:白川さんは、長期金利(?)をすごく気にされていましたよね。財政がゆるゆるなので、ここで自分が、お金のところもゆるゆるにしたら、まずい状況が起きるかも知れない、いわゆる財政インフレと言われますけれども、物価を決めるのは国の予算の問題で決まってしまう。そうなると国債が多いわけですから大変なことになってしまう。それを恐れていたのはあると思います。

神保:それでもやはり日銀はそこにこだわり過ぎたという風にご覧になっていますか。今回緩めたわけですよね。だからポリシーミックスの片方が伴っていない。自民党になってさらに財政が緩んでいるようにも見える。現実問題として悪性インフレのリスクが、 白川さんたちが心配し過ぎたにしても、懸念してたことが起きるリスクは上がってるのかどうか。

櫻川:難しいですね。僕は白川さんのやった政策自体はそんなに悪いとは思っていないんです。あんなもんかなあと。彼の唯一悪かった点があって、ある時期から、「デフレは日銀だけのせいじゃない」と言い出した。国民からしたら「えっ、責任を取らないわけ?通貨の番人でしょ、あなたは」と。だから期待してたし、だから厳しい政策やってもみんなついていったのに。日銀の総裁というのはやっぱりカリスマでなければならないし、カリスマを演じる必要がある。普通の人とは違うという。彼はデフレを解決するのは、今の中央銀行の政策だけでは難しいかも知れないけれども、時間をかけても絶対やりますと言うべきだった。これを日銀だけではダメだとか。人は責任逃れをしていると見る。
あの辺から白川さんに対する批判がすごく激しくなって、ものすごくブーイングがあったじゃないですか。辞める直前とか。ひどいじゃないかというぐらいに。ブーイングで引きずりおろされたと見えるような状況だった。
中央銀行の信任を維持していくために、中央銀行の総裁を演じるということに失敗した。そこがいちばん良くなかった。
政策的には、ちょっと引き締め過ぎかなとは思いましたけど、わたしだったらどうかな、もっと違ったことはやったと思いますね。やはりこれだけ沈滞しているわけですから、あそこまで引き締めるとむしろ、気持ちの点で人間てもたないだろうと。その辺が、演ずるのがヘタクソだったなと。
実は、データを見てみると、グリーンスパンとかがものすごくお金をばらまいたように見えますけど、しゃべりはうまいんだけどあんまりお金をばらまいてないです。

中央銀行の市場との対話


神保:アナウンスメント効果ね。

櫻川:海外の中央銀行を見ても、言うほどお金は撒いてない。バーナンキがリーマンショックの後のQEとかでばら撒きましたが、それまでアメリカの金融政策ではほとんどお金はばら撒いてない。白川さんは結構ばら撒いてる。ばら撒いているんだけどそう見えない。マーケットも動かない。派手なことを言うとウォール街のマーケットは反応する。そういうところがすごくヘタクソで。

神保:じゃぁマーケットと対話ができていなかったというのは本当なんですね。

櫻川:マーケットの対話ということは根本的にはわかっていなかった。そこが彼の残念なところ。やったことは実はそんなに悪い政策じゃない。

宮台:さっきの櫻川先生のバブルに関するコメントにも絡むことなんだけれども、期待を操縦するというマインドが白川さんにはなかったんですよね。緩和しているのに、高橋さんなんかはペースの問題だと言ったけれども、それもあるんだけど、要は、市場との対話、市場に期待を作ることができていなかったことが問題ですよね。
バーナンキさんは、皆さんバーナンキさんの発言に一喜一憂状態じゃないですか。すごいですよね。

神保:今回、安倍政権だって黒田さんになってから、すごいいろいろやってるように見えるけど、実際に始まるのは14年からですよね。だからまだ、新しい体制になってからの金融政策と言うのはまだ実施されていない。にも関わらずというのは、対話がうまいと見るべきなんですか、それともちょっと煽り過ぎなんじゃないのと見るべきなんですか。

櫻川:優れた総裁というのはいかにお金をばら撒かないで影響を与えるかだと思います。ちょっとお金を出してすごく効果を高めるのが望ましい。

神保:ここで経済再生担当大臣の甘利明さんが講演でアベノミクスについて面白いことを言っています。特に金融政策について意外だと思ったんですが。

甘利経済再生担当大臣(2013年6月19日 日本記者クラブ)
安倍総理は金融政策の力というのをすごく信じていた人なんです。党内でいうと、山本幸三さんみたいな人なんですね。我々からすると山本幸三論は「そんなのないよ、そんな簡単だったら明日でもできるんじゃないか」みたいな話だったんですけども、結局やっぱり、大胆な金融政策というのは、私が想像した以上に、影響力があるっていうことです。万能とは言いませんけれども、大胆な金融政策って、私が考えてた以上に、相当強力なパワーだな、というのが反省です。それで終わってはだめなんですよ。だから需給ギャップも埋めていく政策、スタートは官需で埋めていくけれども、民需でも埋めていく、スイッチしていくんですが、そこに金融政策が絡んでいると、これは、こんなに強力になるんだ、ということは、私自身の反省点ですね。

神保:非常に正直に、甘利さんももともとは、「要するに山本幸三さん的な話だろ」と。そんなうまく行くわけないと思ったら、意外や意外、すごくうまく行って、むしろ反省しているって、非常に正直に言われてたんだけど、どうご覧になりますか。

櫻川:それはいつわらざるところだと思いますし、そう思っている人は多いと思います。

神保:金融政策のおかげでいまこういう風になっているという認識に見えて、実は必ずしもそうではないわけですよね。日本側の問題ではなかった。ここは、どう思ったっていいじゃないかという考え方もできるけれども、どうですか。金融政策がうまくいったためだ、と理解されることの危険性というかですね、それによって発生するリスクみたいなものはありますか。

「イメージしていた勝ちパターンじゃないよね」


櫻川:野球のたとえで言うならば、試合には勝ったけれども勝ち方が悪いという状況だと思うんです。つまり、予想していたのは、金融緩和をすることによって、実質金利が下がってくれて、設備投資が増えていく。それにつられて消費が増える。多少円安があって輸出は伸びるけど。そういうことをイメージしていた。まぁ正攻法だと思うんですね。現実にはそれとまったく違う形で良くなってしまった。これをどう評価するか。勝負には勝ってるんだけれども、この勝ち方って、イメージしていた勝ちパターンじゃないよね。勝ちパターンじゃないときに勝っているときにどう判断するか。それで良しとすべきか。これはラッキーだと思って、驕らないで、締めていくところは締めていくと。その辺のところが、見極めをちゃんとしないと、結果だけ見て「効いた、効いた」と。勝負長いですから、5年ぐらいかかって、評価すべき政策だと思うんですね。まだ半年ですから、まだまだ先はある。これから梅雨から夏にさしかかるときにどうやっていくか、と言うと、今までのようなことは使えないと思うんですよ。やっぱり行き過ぎた円高の修正という部分もあったわけですし、このまま金融緩和しててさらに円が120円、130円と行くとも思えませんしね。

神保:緩和すればこんなにうまく行くんだ、と、専門家は別にして、多くの人が思っている節があるので、今回、ちょっとマーケットが調整、戻すような局面になったということで、そのさなかで日銀の政策決定会合が開かれたと。一応、据え置きとなりましたよね。それに対して、幻滅の反応が出る。緩めりゃいくんだから、なんでもう1回行かないんだ、という感じ。金融を緩めたからこんなにうまく行ったという非常に単純にみられていることの副作用なのかなと。それによって幻滅の方にマーケットが反応することがすでに起きている。政策決定会合とそれへの市場の反応をどう思われましたか。

櫻川:日銀の人たちは本当はあんまり緩めたくないんでしょうね。だから今回は無理に緩めなくてもそんなに文句は言われないだろうし、それで景気が悪くなることもないだろうから、とりあえず据え置きだと。この後どうしていくのかなというのはあると思います。もともとあんまり辻褄が合っているわけじゃない政策なので、この後どうやってしのいでいくのかなというのはあると思います。

神保さん、財政規律にこだわる(日本人は真面目編)


神保:3の矢はスカだったということなんですが、いちばん目玉が医薬品のネット解禁だとか、売り上げがそんな増えるとも思えない。薬局がつぶれてケンコーコムが儲かるというのはあるのかも知れないけど、それによって薬のマーケットが急に大きくなるとも思えないし、混合医療の解禁とか、どうも3本目の矢というのはそんなもの。
2本目の矢は、要するに財政政策ということなんだけど、一方で、成長すれば税収も増えるから、財政問題は、解決するんではないかという前提があるのかわからないんですけど、2の矢の話があまり取りざたされていないが、ここで財政規律と言うものをきちんとしなければ、財政が緩いというままいった場合、どういうことを心配しなきゃいけないんですか。

櫻川:財政再建をする気がないとマーケットに読まれたら終わりでしょうね。いまは一応、時間がかかるかも知れないけどやると言っている。マーケットも、信用したいんですよ。日本は大丈夫だよね、みたいな。
どうもその専門家に聞くと、日本とドイツって人気あるらしいですね。人間正直だから、国民が最後税金払って、雇用問題解決してくるっていう。その辺が南ヨーロッパの国に対する評価とは違う。それは非常に重要なことで、海外の投資家筋はあまり日本の国債市場にちょっかいを出して来ない。だから円も高くなる。いざとなったら円を持っていればいいというのは円に対する信用がある。
今まではそれがありますが、ほんとにこれを無視したような財政緩和策をやり出したら、それはその限りではないと思います。日本だめだよこれ、やる気ないよ、政治的にやれないんだろうなとかね。彼らはわれわれが深刻に思っているほど思ってないんですね。日本は、結局長期金利はまだ安いから、ああいうこと言ってるだけで、いざとなったらちゃんとやるよと思ってるわけです。我々が我々日本人に対して、ある意味、すごく信用しているんですね。だからマーケットでもおかしなことは起きてないわけで、我々から見るとこれだけ財政状況が悪いにも関わらず、なんで長期金利が安いのだろうと。国内の金融機関が持っている比率が高いからだと言いますけど、外国人が7%ぐらい持っているわけですから、彼らは非常におとなしい。これはある種の信頼があるんだと思うんですね。
その信頼がどこまで持つかはこれからの政策に関わる。補正予算で大盤振る舞いしているし。2の矢で本当に財政出動するのかというのはポイントになってくるかも知れない。

神保:1の矢は思っていた以上にすごい効いたと。2の矢は、自民党は公共事業でばらまきたいわけですよ。選挙もあるし。3にいたっては規制緩和と構造改革ですよね。これは選挙もあるから非常にやりにくい。今回だって、全面解禁と言ったあとに、その日の夕方にやっぱやめましたになるっていうのは、議員たちから泣きが入るわけですよね。薬剤師の現役の議員だけで4人もいるし、OBも入れると15人ぐらいいるらしいから、安倍さんが午前中に全面解禁と言って、夕方には一部を除いて、などと繰り返すのを見ても、どうもアベノミクスというパッケージは、たまたますごいうまく行ったと言うけれども今言ったように偶然の組み合わせもいろいろあったと。はっきり言ったところが重要だったとは思うけれど。
2、3は、1とのポリシーミックスにもなっていないし、3にいたってはスカであると言う風にも見えるじゃない。でもパッケージとしてはすごい評価高いよね。

金融緩和は良い。でも次は?


宮台:いや、金融緩和しないよりも緩和した方が良かったことは間違いないけれども、今後どうなのかということではないでしょうか。震災復興を口実にして国土強靭化で既得権益を持った人たちにお金を回していくことだとか。薬のネット販売も、既存の市場のプレーヤーを少しシフトするだけの話なので。新しい市場を創造して、そこに人びとの活発な経済活動を、という話とはちょっと違う。
2の矢関連も3の矢関連もしょぼい。
日本の行政官僚は基本的には議員も族議員になって、行政官僚省庁といったいになって、既得権益者の権益を守ると言うことが人々を「ハッピー」にすることだという枠の中で動いてきて。
まったく新しい市場をつくるなどは難しい。
集票装置を傷付けるようなことは今は言えない。

改革しないと、金融政策も効かないはず


神保:銀行が貸し付けできないといけない。地銀がひどくて、50%以上が国債に回っていたりする。国債を買うことがメインになってる現状がある。
金融システムが劣化していて、それを改革しなければいけないのに、それが政策に入っていない。
金融政策が効かない一つの理由として、そこがあるんだけど、そこは依然として手が付けられていないのか、そしてそれはなぜなのか。

アメリカではエクイティファンドが企業を改革する


櫻川:一言で言えば遅れている。遅れていることに気づいていない。20年ぐらい前までは、銀行が金融の中心にいて、企業を審査してお金を貸す。それが一つのひな形で、そうナルト日本の銀行は優秀で、いい仕事したんです。
ところが時代が変わって、アメリカなんかでも主流なのはプライベート・エクイティ・ファンド。金持ちから金を集めてきて企業にもっていく。そこで経営の中身をすぐ聞く。株主の収益率を高めるために経営にすごく文句をつける。昔は金融仲介は銀行がやって審査もしていたが、今はもうコンサルになっている。お金を出すだけじゃなく経営コンサルもやる。いろんな業種を見ているから、企業の弱点とかもわかってしまう。どんどん企業の中に入っていって、経営改善を要求する。最後にお金出すからリストラしろと。ものすごいシビア。このプロジェクトはお金出すけど、このプロジェクトは儲からないからお金出さないと。縮小してくださいと。アメリカのダイナミズムはある意味それが作っている。M&Aが多いです。あれは統合と切り刻むのを繰り返しやることで、いいプロジェクトだけを残して悪いプロジェクトを淘汰している。そしてどーんとリストラもやる。収益性のあるプロジェクトを残す為のツールなんです。日本は日本の企業のカルチャーと合わないといって、そういうやり方を排除している。
日本の企業でやっているのは、一つの会社で5つぐらいのプロジェクトを持っていて、日本人はいい仕事しますからいいプロジェクトがあるんですよ。その時にいいプロジェクトを大きくしていって、ダメなプロジェクトを縮小していくことがやれない。内部の会社の事情があるんでしょうけど。結局、いいプロジェクトができたらその上がりで他の4つも残せると。いいものを食い物にしてしまう。そうなると伸びないですよね。ある意味企業の中の護送船団方式のようなことをずっとやっている。
今の銀行の貸出中心では、銀行はそこまで言いませんから、変えれないわけなんですね。これを変えようとするなら、金を出すけど経営改善の要求もするというタイプの投資家が入ってこないとダメなんだけど、日本の企業はこれを徹底して排除している。
この構造を壊していかないと企業は強くならないし、いい金融システムもできない。

神保:ひところ市場からの直接金融、間接金融みたいな話で、市場から直接お金を引っ張ってくるのがこれからは大事という話はずいぶんあったが、結局いまでは誰も言わなくなってしまった。今回アベノミクスで金融を緩めたら、銀行が貸し出すことが大事だと言う、金融機関からの貸し出しが前提になってるような話。それも確かに低いとは思うが、国債ばかり買ってる状態は問題あると思うが、本来はそっちよりも株式市場の活性化とか、株主の権利とかそうしたものを改革していくことで、直接金融っていう風な流れだったはずなのに。

櫻川:お金を出すだけだったら、日本人はお金を持っている。だから、ノーサンキュー。要らない。金融機関からお金を借りる必要がない。でも今はお金も出すけど知恵もだす時代になって、そこに乗り遅れている。

神保:ファンドというと悪者みたいな感じ。

櫻川:結構真面目にやってるファンドがあって、企業の問題点を的確について、企業を改善して伸ばす。短期の利益を求めるんじゃなくて、5年とか10年とかの単位でこの会社といっしょにやっていこうみたいな。増えてる。その流れに日本の企業、金融というのが乗り遅れている。

金融改革なくして緩和しても、設備投資は増えない


神保:金融改革がないまま、金融緩和を進めるとどうなるのか。

櫻川:設備投資が増えないわけです。企業だけではアイデアが行き詰ってるわけだから。お金はあるけど投資するものがないという状況です。そうするとその溢れたお金がどこへ行くか。今までは銀行が国債を買ってたわけですけど、今は中央銀行がすごいペースで買いますから、海外へ行くか、国内でバブルが起きるしかない。

宮台:既存の枠組みを前提としたもたれ合いがやはりあるんだろうと。ソニーの話で、ゲーム部門と家電部門でほとんど同じ機能を持った競合する製品を出し続けていたとか。要素技術としてはAppleのITMSと同じものがあったが、DVDなどがあって圧迫してはいけないので、顧客向けサービスとして売り出せなかったとか。
内側しか見ていない。中長期的にどうすれば企業が生き残れるかということではなくて。
人や部署をいかにして生き残らせるかと言う。日本的な意味である意味公共的だと思われているんですね。経営者がいろんなことを見渡して判断しているという風に、勘違いされる。

つづきは、Videonews.comで



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