きよしこの夜

XXX 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) xx:xx:xx.xx ID:kakiorosi

 雪の降る聖夜だった。

 街は白く塗り潰され、その上を賑やかな声が跳ね回る。

 大切な家族。気の置けない友達。愛を誓い合った恋人。

 誰も彼もがそれぞれに幸福を覚え、また分かち合う。

 そんな聖夜だった。

 そんな喧騒の只中を避けるように、一棟の高層マンションは聳え立っていた。

 そして一人の少年が、マンションの一室の前に立っていた。

「……」

 少年はポケットから携帯電話を取り出す。

 もう何度目かも分からない確認。

 結果は何度目とも同じだった。

 「少し遅れる」という謝罪の旨のメールに対する了解の返信。

 それが届いたのが一時間前だった。

「………………」

 こんな筈じゃなかったのに。

 少年は溜め息をひとつ、ドアノブに手をかけた。


777 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 22:35:01.58 ID:+nJGdD9Ro

ガチャッ


























































                ´  ̄ ̄ `
              /              \
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         { イ   A A    A  l |  l| |
           X{   | v八  // \ト|  l| '\
        // \ト、{丐ミ、\/ ィテ丐   l|/¨\\
          〃  | ハ弋ソ   弋rソ1  l!    \ヽ  「グッドモーニング、京太郎」
         /'    | 小 ,,,   '    ,,, !  八     ヽj
              |  j 丶、 ワ   . イ /
           从/ / >-<´ト、j_/\
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             .-ニ1  /Yヽ   }ニ- _
          , ´    ヽ/∨/ \/    `ヽ
            iヽ         /∧         ハ
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           八        |// |      八 |

782 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 23:01:51.09 ID:+nJGdD9Ro

京太郎「……えっと、良子さん?」

良子「なんでしょう」

京太郎「今、夜ですよね」

良子「いえす」

京太郎「じゃあそのグッドモーニングは、折角のクリスマスに大遅刻した俺への当て付け……だったりします?」

良子「ノーウェイ。これは単なるジョークです」

京太郎「そ、そっすか……あ、でも遅刻はごめんなさい」ペッコリン

良子「気にしてませんよ。この雪ですからね」

京太郎「そうそう、雪ですよ雪! ホワイトクリスマス!」

良子「長野出身の京太郎には珍しくないのでは?」

京太郎「そりゃ雪自体はそうですけど……恋人と過ごすクリスマスは、やっぱり特別ですよ」ニコッ

良子「ッ……あ、アイシー。それなら、私も同じ気持ちです」

788 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 23:41:20.94 ID:+nJGdD9Ro

京太郎「でも、ちょっと惜しい気もしますね」

良子「?」

京太郎「来る途中に綺麗なイルミネーションがあったんですよ。一緒に見たかったなーって」

良子「……そうですか。一緒に」

京太郎「はい。もちろん、こうして家で二人っきりってのも嬉しいですけど」

良子「ソーリー、京太郎。迷惑をかけます」

京太郎「迷惑だなんて思ってませんよ」

良子「でも――」

ギュッ

良子「――、ぁ……」

京太郎「良子さんが人前でこういうこと出来ない人だって、ちゃんと分かってますから」

良子「……会いたかったです京太郎。ずっと待ってました」ギュ

京太郎「俺もです。お待たせしましてすみません」

良子「ノープロブレム。こんな寒い中を来てくれた恋人に、冷たい言葉を投げたりなんてしませんよ」

京太郎「じゃあ、身体が暖まるまで、もう少しこのままでいいですか?」

良子「おふこーす。こちらこそ、お願いします」ギュー

789 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 00:07:45.34 ID:JvSw/GhAo

~キッチン~

京太郎「あの、本当に俺なんかの料理でいいんですか?」

良子「アファーマティブ。楽しみにしてますよ」

京太郎「えー……」

良子「音に聞こえし京太郎の手料理を、ステディの私が食べたことないなんて悔しいじゃないですか」

京太郎「なんすか音に聞こえしって。どこ情報っすか」

良子「藤田プロです」

京太郎「つまり部長経由か……ちなみになんて聞いてます?」

良子「京太郎が可愛いガールに丹精込めたフードを毎日イートさせてるって」

京太郎「デマです」キッパリ

良子「りありー?」

京太郎「はい。優希は別に可愛くないですしタコスなんて今や楽勝で作れますし、食べさせるのも二日に一度です」

良子「……つまりガールにフードをイートさせてるのは間違いないと?」

京太郎「ええ、それはまあ」

良子「……」プクー

京太郎「あれ? 良子さん、野依プロみたいになってますよ」

良子「二人きりの時に他の女性の名前を出さないでください!」プンスコ

京太郎「アッハイ」

791 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 00:29:26.07 ID:JvSw/GhAo

スッ

京太郎「良子さん?」

良子「私も手伝います」

京太郎「え、悪いですよ。座っててください」

良子「手伝います。恋人ですから手伝います。こう見えて尽くすタイプなんです」

京太郎「そ、そうですか……」

良子「……それに」

京太郎「?」

良子「キッチンとダイニングじゃ遠いです。私はもっと、京太郎の近くにいたいから」

京太郎「良子さん」

良子「迷惑、でしょうか?」

京太郎「まさか。それじゃサラダを任せてもいいですか?」

良子「いえっさー。共同作業、頑張りましょうね京太郎」ニコ

792 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 00:57:27.55 ID:JvSw/GhAo

……
…………
………………

京太郎「出来ましたよー」

良子「出来ましたね」

京太郎「……なんか二人とも料理する側だと、いまいち作り甲斐が……」ウーン

良子「根っからの奉仕体質なんですね、京太郎……」ホロリ

京太郎「さ、早速食べましょうか! 冷めちゃう前に」

良子「そうですね、いただきます」

京太郎「いただきます」

パクッ

良子「ん!」

京太郎「どうですか?」

良子「べりーでりしゃす……すげーです京太郎、予想以上のクオリティ……」キラキラ

京太郎「喜んでいただけて何よりです」

793 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 01:30:53.70 ID:JvSw/GhAo

良子「このチキンのトマト煮、グッドですね。実に私好みの味です」

京太郎「クリスマスってことで一応鶏肉を使ってみたんですけどね。ナスも入ってますけど平気でした?」

良子「好きですよ。もちろん京太郎の方が好きですけど」

京太郎「ナスと俺って比較対象なんですか……? あ、ポトフもどうぞ」

良子「ん……うん、あったまりますね」

京太郎「多めに作りましたんで、明日の朝にはもっと味が染みてると思いますよ」

良子「それは楽しみです」モグモグ

京太郎「……あの、本当の本当によかったんですか?」

良子「?」

京太郎「クリスマスなんだから、食事くらい外でディナーとかデートらしいことを……」

良子「あーん」ズボッ

京太郎「へ、もごっ!?」

796 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 01:44:54.44 ID:JvSw/GhAo

良子「おいしいですか?」

京太郎「お、おいひいれす……んくっ。あの、何を」

良子「こんなに美味しくて幸せな気持ちになれる料理、外では食べられません」

京太郎「え?」

良子「全部私が望んだことです。京太郎が気にかける必要はありませんよ」

京太郎「良子さん……」

良子「それに、学生の財布にクリスマスディナーは厳しいんじゃないですか?」

京太郎「う゛」

良子「だから、これが私達のウィンウィンですよ。京太郎が一人前のジェントルマンになったら、その時は大人のデート、楽しみにしてます」ニコッ

京太郎「……はい」

良子「さあ、トークもいいですけど素敵なディナーを続けましょう」

京太郎「ですね」

良子「あ、京太郎」

京太郎「なんですか?」

良子「私にも、あーん」アーン

京太郎「いィ!?」

812 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 21:51:20.18 ID:JvSw/GhAo

……
…………
………………

京太郎「ふぅ……良子さんのチョコケーキ、美味しかったですね」

良子「京太郎のタルトもなかなかデリシャスでしたよ」

京太郎「……コホン。ところで良子さん」

良子「わっつ?」

京太郎「あー……その、ですね。えーっと……」モゴモゴ

良子「?」

京太郎「~~~っ、……これ!」サッ

良子「! これって……」

京太郎「いわゆる、クリスマスプレゼント……ってやつです」

良子「……開けても……?」

京太郎「ど、どうぞ」

ガサガサ...ガサッ

良子「ぁ――」





良子「指輪……」

813 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 22:29:04.08 ID:JvSw/GhAo

京太郎「プレゼントって難しいですよね」ポリポリ

京太郎「どういうものが喜ばれるのか、どういうものが相応しいのか」

京太郎「なにせ初めてのプレゼントなんで、全然分かんなくて」

京太郎「知り合いに色々訊いて回ったりしたんですけど、ピンと来なくて」

京太郎「結局、最後に決めるのは自分だとも言われましたし」

京太郎「……それで、良子さんのことを考えました」

京太郎「良子さんに喜んで欲しいって、思いました」

京太郎「だから、その指輪を贈ります」

京太郎「重い……ですかね」ポリポリ

良子「そんなこと」

京太郎「え?」

良子「そんなこと、ありません。とても、とても嬉しいです、京太郎」

京太郎「ほ、本当ですか!?」

良子「これが……嘘をついている顔に、見えますか……?」ポロポロ

816 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 22:55:07.14 ID:JvSw/GhAo

京太郎「よ、良子さん!? なんで泣いて……」

良子「何故でしょうね……こんなに嬉しいのに、なんで……」グスッ

京太郎「本当は嫌だったとか、そういう訳じゃないんですか?」オソルオソル

良子「」フルフル

京太郎「よかった……そうだ、実はこの指輪なんですけど、」

良子「ペアリング」ボソッ

京太郎「ペアリングなんで――え?」

良子「……知ってますよ」ニコ

京太郎「な、なんで!? 内緒のつもりだったんですけど、バレてました!?」

良子「同じだから」

京太郎「え?」

良子「このペアリングが、私の選んだプレゼントと同じだからですよ……京太郎」ギュッ

京太郎「えぇえ!?」

822 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 23:30:01.65 ID:JvSw/GhAo

良子「……」ギュー

京太郎「あ、ああああの良子さん。ごめ、すみませんでした!」

良子「? 何を謝っているんですか」

京太郎「だって、折角のプレゼントが被っちゃったんですよ?」

良子「そうですね」

京太郎「俺ダメダメじゃないですか……ああ、こんなことなら事前に確認しておくべきだった……」

良子「逆ですよ、京太郎」

京太郎「、逆?」

良子「事前にチェックもせず被ったのが、私はたまらなく嬉しいんです」

京太郎「ど、どういうことですか……?」

良子「私も、京太郎のことを考えていました」

京太郎「!」

良子「京太郎に喜んで欲しい。京太郎と一緒に、このリングをしたい」

良子「そう思ったんです」

良子「京太郎も同じ思いでいてくれて、本当に嬉しい」

京太郎「良子さん……」ギュッ

823 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/25(水) 23:54:20.16 ID:JvSw/GhAo

良子「……私、幸せです。怖いくらいに」

京太郎「怖い?」

良子「はい。こんな幸せがいつまでも続くのか……そう考えると、とても怖い」

京太郎「……」

良子「そーりー、こんなに弱い恋人で。私の方が年上で、大人なのに」

京太郎「関係ありませんよ」ギュ

良子「っ」

京太郎「大人も子供も関係ありません。俺達は恋人でしょう?」

京太郎「その恋人相手にも敬語が抜けないような良子さんが、俺はすごく愛おしいんです」

京太郎「だから、俺の前でぐらい弱いままでいてください」

京太郎「そうでないと、恋人甲斐がありませんから」

良子「京太郎……」

京太郎「ね?」ニコ

良子「……いえす。あなたがそう言うのなら」

824 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/26(木) 00:18:12.83 ID:4yM9lxtIo

京太郎「けど、プレゼントどうしましょう? 良子さんがいいならお互いのを交換ってことで構いませんけど……」

良子「……じゃあ、」

京太郎「ん?」

良子「じゃあ、もうひとつ。プレゼントをもらえませんか?」

京太郎「もうひとつ……ですか? いいですけど、正直予算が心もとな――んむっ」

良子「ん、ふ……」

京太郎「っ……!?」

良子「ちゅ、ちゅっ……ちゅう、ぁふ、んっ……」

京太郎「、良子、さ、」

良子「なにも、ぁ、言わないで、ください」

京太郎「……!」

良子「好き、好きです、ちゅ、京太郎、きょうたろぉ……っ」

京太郎「――」

良子「ふ――ぅん!? ちょ、激しっ……待、う、ゃあっ……!」

826 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/26(木) 00:30:38.87 ID:4yM9lxtIo

ドサッ

良子「ぁ、はっ……はあ……は、ぅう……」

京太郎「良子さん……」グイッ

良子「す、すとっぷ。だめ、待ってくださいっ」

京太郎「どうしました?」

良子「わ、私が欲しかったのはキスだけで……なのにこんなの、すっげー恥ずかしい……です」

京太郎「……」

良子「京太郎?」

京太郎「やべえ。敬語で拒む良子さんすっげー萌える。そんで燃える」

良子「!?」

京太郎「ごめんなさい、良子さんが可愛いのでストップ無理です」

良子「わ、私敬語やめます! 直します!」

京太郎「ええ、頑張ってください。明日から」ニコッ

良子「ゃ、やだ、そんな、まだ心の準備が、ぁ、んっ――」

827 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/26(木) 00:35:27.09 ID:4yM9lxtIo

 ――空の雲は、ちぎれ飛んだ事に気づかず

 消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえ認識しない

 『結果』だけ……この世には『結果』だけが残る




















































         ,x─‐==、--,-,─‐,-、
       /   `ヽ ∨/\/\i
        {o  o │|│\/\/|
       l  ___   ノ i ト、/\/ヽ!
.        ∧ ー' / / / ∨/\/|
.       {\ー' / /__ j∨/\j
       Yoヽ/ /fo ソ  V〈_,ノ      『メリー・クリムゾン!!!』
.       i  ̄  ̄ ´ ̄ |  |/}
        ',        ノ  l  ハ--、
       ∧ }王lヨ   / / ∧ ‘,__
.         ∧     /  / / ∧ i\ }\
.       /  iー一<___/ /  /   / 人
       /   ∨O \_____// ̄   _/ /   \
      ,'  /`し'⌒ヽO__OV´ ̄      __ 丶、
.     i  ∨  |/^\/   乂{ ̄ , '"´    `゙ヽ \
      j__/|  ∧  / \   / .) '"_             ヽ
     /「\ハ /  \/   \/ i ,〃⌒ヽ.           ∧
.    /-|─|ーV__/\   /\廴lj \./}   ,  -‐ "´  }
   /___」___|___ヽ ̄/ヽ__\./   \ //,ノ     ___ /
.   /│ |  |   \{  \ >ー----< ( 、_        i
    │ |__.」 --/  ヽ  /\    /  \` ┬─==ミ     |
   ̄ l ̄l │/    ∨   ヽ /   / /\ / \\___/

830 名前:某月某日(EX)[saga] 投稿日:2013/12/26(木) 00:40:02.67 ID:4yM9lxtIo

……
…………
………………

良子「というわけで、人生で一番ハッピーなクリスマスでした///」ポッ

はやり「おっけー、続きは卓で☆」クイッ

健夜「」グギッ

理沙「」プンスコッ

【THE END】
最終更新:2013年12月26日 13:07