UTAGE


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236 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/18(水) 22:06:25.23 ID:nhE6ELvCo

憧「ふぅ……」

 コトリと音を立て、ティーカップがソーサーに戻された。

 憧は視線を飴色の波紋から虚空へと移す。

憧「……なんか、とりあえずやれたのかなぁ」

玄「うん。大変だったけど」

 返す玄さんの声も穏やかだ。

 インターハイ県予選。

 あの死闘から一夜明け、俺達は束の間の平和を享受していた。

 午後の陽射しが差し込む部室でのささやかなティータイム。

 こんなに贅沢で静謐な時間が、いつまでも続けばいいと――

バタンッ!

穏乃「新聞!! 見た!?」

京太郎「……」

 ――続けばいいと思いました(小学生並の感想)。

237 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/18(水) 22:37:13.25 ID:nhE6ELvCo

憧「ああ、ネットで見た」

 ずんずんと円卓に向かってくる穏乃に憧が答えた。

 それでも穏乃はお構いなしに、持参した新聞を広げる。

穏乃「長野の優勝校……!」

 そして憧も一緒になって紙面を覗き込んで――



「「清澄!!」」



 ――嬉しくて堪らないといった風に、声を重ねた。

穏乃「和のいる学校っ!」

玄「和ちゃん、やっぱり勝ち上がってきたんだぁ」

憧「聞いたことのない学校だけどね」

 志を強く共にする三人が口々に言う。

 まるで弾むように。歌うように。

244 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/18(水) 23:15:18.09 ID:nhE6ELvCo

 そのまま話し続ける三人娘をよそに、俺は新聞を手に取った。

 まず目につくのは、『清澄高校 初出場!』の見出し。

 そしてモノクロ写真。

 ツインテールで、

 何故かペンギンのぬいぐるみを抱いた、

 でっけえ! おもちの!! おもち主!!!

京太郎「……」ゴクリ

 グレート。いやグレートですよこいつはァ。

 こんな、宥さんよりも豊満で、玄さんよりも堂々としたおもち。

 彼女が原村和。

 憧や穏乃が目指すもの。

 なるほどなぁ。小さいもんなぁ。そりゃ目指すよなぁ。

 納得しつつ読み続ける。

 こっちは決勝戦の面子か。

 優勝校である清澄のメンバーは……



 先鋒・片岡優希。

 次鋒・染谷まこ。

 中堅・竹井久。

 副将・原村和。

 大将・宮永咲。



京太郎「ふーん」

































京太郎「え」

254 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/18(水) 23:38:22.80 ID:nhE6ELvCo

 咲。

 咲。

 咲。

 宮永咲。

 長野、清澄高校の一年――宮永咲。

 咲。

京太郎「……………………………………………………」

 うん、





 ねーな。





 ねーわ。

 ねーよ。

 ねーだろ。

 ねーって。

 ねーから。

 ねーもん。



 ない(断言)。

260 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 00:04:15.29 ID:5P0dTJxGo

 冷静に、極めて論理的に考えよう。

 長野県に同姓同名同年齢の宮永咲さん(15)が実在する可能性と。

 あの咲が。

 俺の知る咲が。

 俺のよく知る咲が。

 人見知りで。

 文学少女で。

 何をやらせてもダメで。

 いつも俺の周りをチョロチョロしてて。

 かと思えば一瞬で迷子になって。

 数え切れないくらい俺を困らせて。

 須賀ナポリタンの実験台で。

 俺が奈良の高校に進学すると告げた時なんかビービー泣いて嫌がったあの咲が麻雀でインターハイに出場する可能性と。

 どちらが高いと思う?

 俺は圧倒的に前者だと思う。

 そもそも、あいつが麻雀やってるなんて聞いたこともないし。

 故に、俺はこの件を偶然の一致と断定する。

 異論は認めない。

301 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 21:35:28.22 ID:5P0dTJxGo

憧「そういえば、宥姉と灼さんは?」

京太郎「」ハッ

 不意に耳に入った憧の声で我に返る。

 顔を上げると、憧と玄さんが未だに話し中で、穏乃は燃えていた。

 うむ、問題なし。

 俺も会話に混ざろう。

玄「灼ちゃんは赤土先生と買い出し。おねーちゃんは、テレビに出たからってクラスメートにもみくちゃにされてた」

京太郎「大変だ! 俺ももみくちゃにしに行かないと!!」ガタッ

憧「座ってろ!!」クワッ

京太郎「ウィッス」ストン

 無念なり。

憧「ったく……で、助けなくていいの?」

玄「おしくらまんじゅうみたいであったかいから、嬉しいんじゃないかな」

 宥さんならありえそうだから困る。

 しかし、それなら尚更ご一緒したかったゾ。

憧「だといいけど」

 呆れたように言う憧。

 その時、部室前方の扉が開いた。

303 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 21:52:22.85 ID:5P0dTJxGo

レジェンド「お、みんな揃ってるねー」

灼「ちくわ大盛況」

 まず姿を見せたのはお馴染みズッコケ師弟。

 そして後から現れたのは、

宥「はらほろひれはれ~……」フラフラ

「「「うわさをすればっ」」」

 な、宥さんだった。

 ボロボロのヨレヨレのフラフラで、頬にはキスの痕跡まであるじゃないか。

 クソッ! やっぱり俺も行くべきだったんだ!!

 そうすれば今頃……クソァ!!!

レジェンド「よし。じゃあ早速だけど、全国に向けてミーティング始めるよ!」

「「「おー!」」」

宥「お~っ」

311 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 22:13:51.10 ID:5P0dTJxGo


「「「「「「合宿?」」」」」」

 七人で囲む円卓に、レジェンドがそんな言葉を乗せた。

レジェンド「合宿というか、遠征かな。毎週末の」

「「毎週遠征!?」」

 驚きの余り穏乃とハモってしまう。

 どんなスパルタ運動部だ。

 しかしレジェンドは平然と語りだす。

レジェンド「昔ね、私が全国に出た頃は、県代表になったら練習試合をしちゃいけなかったんだよ」

穏乃「え、小学生でも?」

レジェンド「そう。ところが今は規定が変わって、代表校同士じゃなけりゃ試合してもいいらしい」

憧「へー」

レジェンド「てことはさ」ニヤリ

 不敵な笑み。

 こういう時のレジェンドは、色んな意味で凄い。



レジェンド「各県の二位の学校となら、戦っていいわけだ!」



 やはり天才か……

316 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 22:35:21.74 ID:5P0dTJxGo

レジェンド「これからインハイまでに土日が七回はある――毎週二泊三日で、全国のナンバートゥーを斃しに征く!」

 「どんっ!」みたいな気迫で、破壊大帝みたいな英語の発音で、物騒な漢字で、レジェンドは高らかに宣言した。

 いつものことながら、冗談みたいなことを本気で言い切る人である。

宥「すごい……」

憧「うわっはぁー……」

穏乃「そんなことできるのっ?」

レジェンド「全国出場が決まったおかげで麻雀部後援会が復活したし、部費も増えた。活動費は足りると思うから、あとは各自の親御さんに許可もらえるかどうかだけど……」

 今日セリフ長いっすね。

憧「うちは平気だと思うけど」

玄「うちも」

宥「えぇ……?」

灼「なんとか」

穏乃「私も大丈夫!」

京太郎「右に左に同じっす」

 やってて良かった一人暮らし!

326 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 23:15:06.92 ID:5P0dTJxGo

レジェンド「よし。それじゃ、さっさと対戦相手の候補を決めて、試合を申し込むと――」

穏乃「長野」ボソッ

レジェンド「ん?」

 呟く穏乃に、レジェンドと俺達全員の視線が集められた。

 穏乃はこれまでと一点した真面目な表情で、真面目な声で、

穏乃「長野の、二位と」

 そう言った。

レジェンド「長野? いいよ、まずそこに申し込んでみようか」

 と、レジェンドは手帖を確認する。

 それが済むと顔を上げ、また不敵スマイル。

 わー、言うぞ。なんか言うぞ。絶対に言う。

レジェンド「話は変わるけど――」

 俺は聞きたくなさのあまり肩を竦めて身を縮めて、



                 --……--
         r―‐⌒ヾ : : : : : : : : : : : : : : : \
         |∨: : : : : \ : : : : : : : : : : : : : : : \
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       i{ | ′:.:.'{_|_:.:.:.:| リV:.:.:.:.:.:.:}:.>匕、: :\j--i
        || |/: :.:.:∧}リ≫┘o。v――'’xr示=ミト、:.:.\}、
        リ {: :.:.:.:.|!:‘, ィ芹≧ュ    ’|イi//| 》、:。:.:.:.ぃ、  「――今日は部活が終わったら祝勝会やるよ!!」
           |:.:.:.:.:.「`ヽ《乂_゚ツ        ゞ= '゚ :リ/リ゚。:.:.ト、i
           |:.:.:.:.小   , ,    '    , ,  : /:.:.:.∧:.} リ
           l.:.:.:.:.:| }ゝ-!            jハ:.:.:.:j/}:.|
          :。.:.:.:{ {:j:八    -==ァ     イ }/ j:ノ
            ゚:。.リ  \{≧ュ。.    ィ:jソ  ″ /
           ゞ    イニ}  ` ´  {ニヽ
              ィニ//      ゝ|ニ\_
        ┬==≦ニ/ニ7____    __,.|ニニムニニニニニlヽ
       /ニ|ニニニ/ニニニ|`-―――‐一´|ニニニムニニニニ|ニム
.      /ニニ:|ニ7ニニニニニ|          |ニニニニ}ニニニ=|ニム



京太郎「ィイヤッホォォォオオオオオオオオオオウ!!!」ガタァァァッ

 その反動でバネのように跳び上がった。

336 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/19(木) 23:42:27.49 ID:5P0dTJxGo

穏乃「祝勝会!?」ガタッ

レジェンド「うん。憧んちで」

憧「はあ!?」ガタァッ

 俺に続いて穏乃が、憧が立ち上がる。

 二人とも、それぞれ別の意味で興奮していた。

憧「ちょっと、なんであたしんちなのよ!?」

レジェンド「だって憧んち広いし、家の人には許可取ってるよ? 望だけどね!」レジェッ

 まさにレジェンド。

憧「お姉ちゃん……! またあたしに内緒にしてたな……!」ゴゴゴ

玄「ま、まあまあ憧ちゃん」

宥「憧ちゃんあったか~い」ポワ

灼「怒気で暖を取るのはどうかと思……」

穏乃「いいじゃん憧ー祝勝会やろうよー」グイグイ

京太郎「やろうよー」グイグイ

憧「ひ、引っ張るな! 特に京太郎!」

レジェンド「まあ、もう今頃は望と後援会の有志の方々がご馳走の用意をしてくれてる筈だし、諦めな」ニコッ

憧「う゛~……もーっ!!」

365 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/20(金) 22:14:11.97 ID:1b8pHYVWo

……
…………
………………

~新子家・居間~

レジェンド「えー……お疲れ様です。赤土晴絵です。ご存知レジェンドですよ、見えてますかー。
      えー、本日はお忙しい中、阿知賀学院麻雀部の祝勝会にお集まりいただきまして、っえー、誠にありがとうございます。
      えー、司会進行はワタクシ赤土晴絵が、乾杯の音頭も……えー、ワタクシ赤土晴絵が務めさせていただきます。
      えーっ、………………。結婚生活には三つの袋が必要と言」

灼「乾杯」

「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

レジェンド「まだ話してたのに!?」ズガーン

灼「長……」ズバァッ

京太郎「身内しかいない食事会でどんだけ長話するつもりですか」ズバァッ

憧「しかも早々にネタ切れして結婚生活とか口走ってたじゃない」ズバァッ

レジェンド「うぅ……最近教え子達からの当たりがキツい……」メソメソ

 今に始まったことじゃないから安心して欲しい。

370 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/20(金) 22:43:09.37 ID:1b8pHYVWo

 ともあれ宴である。

 さっき言った通り、ここ新子家には俺達麻雀部員とレジェンド、そして望さんしかいない。

 祝賀会なんて大層な名目だから、てっきり地元のお偉いさんとかと同席させられるかと思っていたんだけどな。

 どうも、頑張った子供達だけで楽しませたいという配慮があったらしい。

 なので保護者は最低限、レジェ……望さん一人という訳なのだ。

京太郎「ま、改めてかんぱーい」

「「かんぱーい」」

 グラスを軽くぶつけ合うのは、俺と憧と穏乃。

 一年三人横並び、仲良しこよしで両手に花だ。

 花より団子とかおもちとか、贅沢を言ってはいけない。

 該当者二名はテーブルの向こうで年長者にお酌をしている。

 流石は旅館の娘といったところか。

宥「ゎゎゎゎゎゎゎゎゎ」プルプル

望「ちょ、宥ちゃんストップ! こぼれる! こぼれそう! こぼれアー!」

 ……旅館の娘ぇ。

373 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/20(金) 23:21:08.09 ID:1b8pHYVWo

京太郎「ところでさ」

 ジュースを飲み干したタイミングで隣を向く。穏乃の方を。

京太郎「なんで最初の遠征先は長野がいいんだ?」

穏乃「えー? だってやっぱり長野でしょ」

憧「しず、理由になってない」

穏乃「ぅ?」キョトン

京太郎「だから、何が「やっぱり長野」なんだって訊いてんだよ」

穏乃「和が戦った人達と私も戦ってみたいから!」ムンッ

京太郎「わかりやすい!」

憧「最初からそう言いなさいよ……」

穏乃「それに、京太郎も嬉しいかなって」

京太郎「オレェ?」

穏乃「うん! 京太郎の地元だし、もしかしたら家に寄れるんじゃない?」

京太郎「……」

穏乃「京太郎?」

京太郎「よしよし」ナデナデ

穏乃「わっ。えへ~」

381 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 00:14:57.71 ID:+Ucigz4co

京太郎「けど、気遣いは確かに嬉しいけどさ、俺は実家に帰るつもりはないぜ」

穏乃「えっ?」

憧「そうなの?」

京太郎「おいおい、長野には麻雀しに行くんだろ? マネージャーの里帰りまで心配してくれなくていいよ」

穏乃「でも……」

京太郎「それに、遠征先がどこになるか知らないけど長野ナメんな? 北と南で文化が違うぐらいだだっ広いんだぞ」

 移動時間だって馬鹿にならない筈だ。

 寄り道なんてさせられない。

穏乃「うー……ごめんね京太郎、私達の為に」

京太郎「気にしてねーって。ま、一目カピに会いたいと思わなくもないけどさ」

憧「あっ! そっか、京太郎んちカピバラいるんだ……! うわー、見たかったなぁ……」ガッカリ

京太郎「はいはい、そりゃまた別の機会にな」

憧「べ、別の機会!?」ビクッ

京太郎「おう。インハイ終わった後の夏休みとか、無理なら冬休みとか」

憧「ついでじゃなく別の機会に……そ、それってまるでこここ恋人を家族に紹介するみたいなシチュエー……ふきゅう……///」プルプル

京太郎「憧?」

憧「ひえっ!? な、なんでもない! あっ、あたし飲み物取ってくるー!」ドヒューン

404 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 16:15:12.75 ID:+Ucigz4co

 行ってしまったわ。

 あいつ最近テンション高いよなぁ。

 まあ祝いの席だし、元気な分には問題ないか。

 俺は料理をバクつき始めた穏乃を置いて移動する。

京太郎「玄さーん」トテトテ

玄「あ、京太郎くん」

京太郎「隣いいっすか?」

玄「もちろん! 座布団どうぞー」

 勧められるままに腰を下ろす。

 と、空になった玄さんのものであろうグラスが目についた。

京太郎「お酌お疲れ様でした。ささ、一献」スッ

玄「わっ、ごめんね? ありがとう」サッ 

 とくとくとくとくジュースを注ぐ。

玄「じゃあ次は京太郎くんに」ササッ

京太郎「これはかたじけない」ススッ

 攻守交代。

 こういう遣り取り、学生だけの外食じゃ経験出来ないよな。

 大人の真似事みたいで、どことなくくすぐったい。

421 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 22:19:26.34 ID:+Ucigz4co

「「かんぱーい」」

 またやった。何度でもやるぞ。

 二人で適当に料理をつまみながら喋る。

京太郎「いやー、勝利の美酒ってのはいいもんですね」

玄「だね。お酒はまだダメだけど、ジュースでも酔えちゃいそう」

京太郎「すぐそこにアルコール臭いのがいますから尚更っすね」

 宥さんがそのアルコール臭いのに捕まったままだ。

玄「あはは。でも今日ぐらい羽目を外してもいいんじゃないかな。お料理だってこんなに美味しいんだし」

京太郎「そりゃまあ……あ、ちょっとすんません」スッ

玄「へ、ふわあっ!?」ドキッ

 断りを入れて、俺は玄さんの顔に手を伸ばした。

 そのまま優しく頬に指を滑らせて、

京太郎「ソース、付いてましたよ」

玄「ぁ……あ、ありがとう///」カァー

京太郎「いえいえ」ペロッ

玄「!?」

京太郎「?」



憧「あ゛ーーーーーーーーーーッ!!」ガラッ



「「!!?」」

426 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 22:50:07.22 ID:+Ucigz4co

 何が起きた――かは、分かる。

 憧が障子を開け放つと同時に絶叫した。ただそれだけだ。

 だから疑問点は、「何故そうしたか」である。

憧「京太郎ぉ……!!」ズンズンズンズン

 答えが大股でやって来た。

憧「アンタ今、自分が何やったか分かってんの!?」

玄「あっ……そ、そうだよ京太郎くん!///」

京太郎「え? 何って玄さんのほっぺについてたソースを拭って……あ゛」

 はいやらかしてたー。

 そうか、道理でソースが甘かったんだ(錯覚)。

憧「あたしの時はちゃんとティッシュで拭いてたじゃない! どうして玄のは舐めるのよ!?」

京太郎「いや理由はねーよ!? たまたま不注意だったんだって!」

憧「本当に……? 相手が玄だからヤバいと思ったけど欲望を抑えきれなかったとか、そういうんじゃなくて?」

京太郎「ド変態か俺は!」

憧「ド変態でしょ」

京太郎「ぐう!」

 ぐうの音しか出なかった。

429 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 23:12:16.95 ID:+Ucigz4co

憧「で、ド変態の京太郎。アンタが今後どうすべきか、分かるわよね?」

京太郎「ああ……次はちゃんと憧の方も舐めるから」

憧「ふきゅっ!? ち、違う! どっちも舐めるなって言ってんの!!///」

京太郎「あー」

 そっちかぁ。

憧「ったく……行きましょ玄、ここにいたら今度は顔を直で舐められるわよ」グイッ

玄「ええっ!? きょ、京太郎お兄ちゃんは大人なのに玄をペロペロしたいの……?」

憧「なに言ってんの」ズルズル

 ああ、玄さんが連れて行かれてしまった。

 追いかけても追い返されるのは目に見えてるし、少し間を空けるか。

 となると次は大人組である。

 が、

京太郎「……」チラッ



レジェンド「灼~お酒おかわり~」

灼「ハルちゃん、もうやめといた方が……」

レジェンド「うるせー! いいから持ってこいってんだー!」ウガー

灼「ううっ、お酒さえ飲まなければいい人なのに……」ヨヨヨ



 近付きたくねー。

437 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/21(土) 23:44:36.71 ID:+Ucigz4co

 が、まあ、一応。

 マネージャーとして監督に酌でもしてやるかという気持ちはある。

 我ながら義理堅いぜ。

 と、いう訳で、



ザッ

京太郎「奥さん!」

灼「お、お米屋さん!?」

京太郎「そんな呑んだくれのことなんて忘れて、俺と一緒になりましょう!」

灼「それは出来な……この人には私がいないと……」

京太郎「でも、旦那さんはあなたに感謝なんて一度もしたことがないんじゃないですか!?」

灼「ッ……」

京太郎「奥さん、俺は本気です。本気であなたを……」

灼「お米屋さ……」

レジェンド「てめーこのやろー!」ガバッ

京太郎「うわっ!?」

灼「ハルちゃん!?」

レジェンド「灼は私の嫁だぁー! てめーなんかに渡さねーぞ、バーロー!」ヒック

灼「ハルちゃん……ハルちゃあん!」ダキッ

レジェンド「ごめんな灼ぁ……私、これからは心を入れ替えるよ……真面目に働く……お腹の子の為にも……」ギュッ

灼「ありがとうハルちゃん……その言葉だけで嬉し……」ギュー

京太郎「……ちぇっ、とんだピエロだぜ」



望「楽しそうねー」

宥「あったか~い」

灼「いい演技だった」

京太郎「どーもどーも。あ、監督ビール注ぎますよ」

レジェンド「悪いねー」

440 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 00:23:23.99 ID:6vb92tX1o

レジェンド「ぷはー! 残念イケメンからお酌してもらうと一味違うね!」

京太郎「いやあ照れちゃいま……残念?」

宥「あったか~い」

望「あ、いいなー。私も残念イケメンからお酌してもらっちゃおっかな」

京太郎「勿論いいで……残念?」

宥「あったか~い」

 解せぬ。

 どうせお世辞なら直球でイケメンって呼んでくれてもいいじゃないか。

望「ぷは。あらホントに美味しいわ。ありがとね京太郎くん」

京太郎「喜んでいただけたなら何よりです……」

宥「あったか~い」

京太郎「……宥さん?」

宥「なぁに?」

京太郎「さっきから「あったか~い」のタイミングが微妙に変な気が……あれ? なんか血色いいですね?」

宥「うん。あったか~い」クピクピ

京太郎「そうですか、あったかいなら何よりってそれ酒じゃねーか!!」

445 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 00:56:18.70 ID:6vb92tX1o

宥「……?」クピクピ

京太郎「ま、まだ飲むのか……!」

 可愛らしく小首を傾げても、缶を両手で持っていても。(結婚したくなっても)

 宥さんが飲んでいるのは酒だった。チューハイだった。

京太郎「ちょっと誰ですか宥さんに酒飲ませたのはー!」

穏乃「え?」

憧「お酒?」

玄「おねーちゃん!?」

 俺の声に全員が集まる。

レジェンド「あちゃー、確かにお酒だわこれ」

京太郎「とか言って監督が飲ませたりしてませんか?」ジトッ

レジェンド「信用ないなぁ!? 流石に未成年に飲酒強要なんてしないってば!」

玄「そうなの? おねーちゃん」

宥「うん……最初は間違えて飲んじゃって、冷たくてびっくりしちゃったんだけど」

宥「なんだか身体の中がぽかぽかしてきて……」

宥「それが気持ち良くて飲んでたんだけど、これお酒だったんだねぇ」クピクピ

京太郎「とりあえず飲むのやめましょう!?」

446 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 01:23:10.78 ID:6vb92tX1o

宥「ふぁ……」ポー

穏乃「わわわ、どうしよう!? 宥さんがお酒飲んじゃった!」

憧「落ち着きなさいしず、別に毒じゃないんだから」

玄「ほ、ほんとに!?」

憧「おい高二」

灼「冗談は胸だけにしてほし……」

望「まあ、飲んだのが家でってのは不幸中の幸いよね。お店だと誰が見てるか分かったもんじゃないし」

レジェンド「だね。悪気はなかったみたいだし、今日のところは目を瞑っとくよ」

憧「ほんと? じゃああたしも飲もっかな♪」

京太郎「おい」

憧「なに?」

京太郎「なにじゃねーよ、なんでそうなるんだよ」

憧「だって保護者と顧問の許可も下りたしー」

玄「未成年はダメですよっ」メッ

憧「えー」

 この反応……こやつ常習犯か。

450 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 01:52:03.58 ID:6vb92tX1o

憧「しずも興味あるよねー?」

穏乃「うーん、あるよーなないよーな……」

灼「ハルちゃんが飲んでるもの、少し興味あ……」

玄「でもそんなんじゃだーめっ。ルールは守らないと」

京太郎「そうだぞ。明日も学校だし、もし二日酔いにでもなったら大変だろ」

 などと説教する側に回っている俺も、まるで潔白という訳ではない。

 実家での親戚付き合いなど、いくつかの場面で飲酒を経験してはいるのだ。

 だからこそ、先達として飲酒初体験の危険性というものを無視することは出来ない。

 そりゃあ俺だって許されるならば酔って乱れてくんずほぐれつしっぽりむふふといきたいものだがね。

宥「くろちゃー、くろちゃー」クイクイ

玄「なぁにおねーちゃん?」

宥「のどかわいたでしょ? はいこれ」スッ

玄「わぁ、ありがとうおねーちゃん。いただくね」

宥「えへへ」

玄「こきゅこきゅ……ぷはっ。ん、このジュース美味しいねおねーちゃん!」

宥「おさけだよ?」

玄「へ?」

宥「おさけ」

玄「ふえぇ!?」ズガーン

454 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 02:30:06.67 ID:6vb92tX1o

憧「ぅーゎー、宥姉やるぅ」

灼「えげつな……」

穏乃「玄さん、お酒飲んじゃったんですか!?」

玄「の、飲んじゃったよぉ! おねーちゃん、どうしてこんなことするの!?」

宥「え……? おいしかったから、くろちゃーにもわけてあげようとおもって」ポワポワ

京太郎「アカン! この人今善悪の区別がついてねえ!」

 堕天使や! 堕天使マツミエル(姉)の降臨や!!

レジェンド「まーまー玄、誰も怒ったりしないから」

灼「観念し……」

玄「う、ぅう~」

憧「決まり! 今日はとことん飲み明かそう!」オーッ

穏乃「お、お~」

望「まったく我が妹ながら……京太郎くんも飲む?」

京太郎「あー、その前にトイレ借りていいっすか」

望「いいわよー。廊下出て右の突き当りね」

京太郎「はーい」

 そして俺は居間を出た。

 きゃあきゃあと騒がしい声を背中で聞きながら、



 この後に、身の毛もよだつ地獄が待ち受けているとは知らずに。 ※個人の感想です

486 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 21:01:17.12 ID:6vb92tX1o


京太郎「ふぅ」パタン

 用を足し終えてトイレを出る。

 廊下を歩く。角を曲がる。

 そこに、

宥「……」ポー

 宥さんの姿があった。

 縁側で、何をするでもなく空を見つめていた。

京太郎「宥さん」

宥「ぁ……きょーたろーくん」

京太郎「こんなところでどうしたんですか? 冷えますよ?」

 6月だけどな。

宥「うん……」

 しかし宥さんの反応はハッキリとしない。

 返事をしても、そこを動こうとせず、視線も俺を見ているようで見ていない。

 やはり酔いが回っているのだろうか。

 それでも自力で立っていられるだけマシか――と思ったのも束の間、

 宥さんが言う。



宥「あつい」



京太郎「!!?!??!!!?!?!!」

498 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 21:27:18.08 ID:6vb92tX1o

 今。

 聞き間違いか?

 聞き間違いだよな?

 宥さんが「あつい」なんて、言う筈ないもんな。

 きっと、「ああ、ついでに氷も頼む」って言おうとしただけだよな。

 ……それも言わねーだろ起きろ!!

 やべえ、じゃあ聞き間違いじゃねえのかよ。

 あの宥さんが「あつい」って言ったのかよ。

 さけのちからってすげー!

宥「あつい、あついぃ……」

京太郎「ゆ、宥さん?」

 と、

 俺があれこれ思考している間も宥さんは唸っていた。

 冗談や痩せ我慢でなく、本当に暑そうに唸っていた。

宥「むしあついから……」

 唸って、



宥「ぬぐー……」ヌギッ



京太郎「うぅおおおおおおああああああああッ!!?」

507 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 21:56:49.48 ID:6vb92tX1o

 今!

 見間違い――では、ないッ! 決してッ!

 自発的に、

 野外(廊下)で、

 宥さんが脱いだ!

 例えカーディガンだけでも、その行為は驚愕に値した。

京太郎「ゆ、ゆゆ、宥さん!? 何を……」

宥「あついからぬぐのぉ……」モゾモゾ

京太郎「何ヲヲヲヲヲッ!!?」

 それがシャツのボタンにまで手をかければ尚更のことである。

 覚束ない手つきでボタンを外そうと苦戦する宥さん。

 と、止めねば。

京太郎「……」

 止めねば!

宥「んぅ……ん~……」モタモタ

京太郎「………………」

 もしかしたら思い直してくれるかもしれない。

 少しだけ様子を見よう。

510 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 22:24:07.58 ID:6vb92tX1o

宥「ぁ♪」プチッ

京太郎「!」

 ひとつ。

 月明かりと障子越しの電灯が左右から照らす廊下で、シャツの第一ボタンが外された。

 まだ巻かれたままのマフラーの奥に肌色が覗く。

宥「すずしぃ……♪」

京太郎「」ゴクリ

 ま、まだだ……まだ引き返してくれるかもしれない……

 俺は宥さんを信じるぞ!

宥「ん、しょっ……ん、しょっ……」プチップチッ

 しかし宥さんは一度の成功でコツを掴んだのか第二第三とトントン拍子で外してしまって谷間が胸が黒いレース調のブラがががががアカン!!!

京太郎「ゆ、宥さんストーップ!!」ガシッ

宥「わ」

 両手で両手をしっかりホールド。

 これ以上脱いだところを憧に見られでもしたら殺される。

 俺の声が聞こえていないのか、居間から誰も出てこないのは不思議だが……

515 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 22:49:15.66 ID:6vb92tX1o

宥「あーつーいー……きょーたろーくん、はなしてぇ……」グイグイ

京太郎「だ、ダメですって! これ以上脱いだら下着が見えちゃいますよ!?」

宥「でもあついもん……」プクー

京太郎「可愛い」

 思わず声に出た。

 だってしょうがないだろう。

 薄着で胸元を肌蹴させた宥さんが子供みたいに頬を膨らませているんだ。

 エロ可愛いからしょうがない。

京太郎「……ゴホン。そうは言ってもですね、俺がいるんですよ? いいんですか?」

宥「きょーたろーくん……?」

京太郎「そうです、男の俺が。そんなの恥ずかしいでしょう?」

宥「……しい」ボソッ

京太郎「ですよね、良かった。それじゃあ残念ですけど早く服を着」

宥「あつくるしい」

京太郎「へ?」



宥「きょーたろーくんもぬいでーっ」グイッ



京太郎「イヤアアアアアアアアアアッ!?」

521 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 23:18:06.63 ID:6vb92tX1o

 宥さん、まさかの攻め!

 予想外の方向に加えられた力に、俺の拘束は意味を成さなかった。

 滑り込む細い指が、シャツのボタンを下から上へ一気通貫。ほんとに酔ってんのかこの人。

京太郎「ちょっ、何す……持って行かないで!?」

宥「ぬぎぬぎ~」スポーン

 脱がされた。

 上半身裸にさせられた。

 あの宥さんに。

 ちょっと興奮する。

宥「ふふ……きょーたろーくん、すずしいでしょ……?」

京太郎「そりゃ色んな意味でゾクゾクしてますけど!」

宥「じゃあわたしも……」ストン

京太郎「待ーーーーーーーーーーッ!?」

 止める間もなく。

 非情にも落ちる――スカート。

 タイツの黒に包まれて尚も圧倒的な存在感を放つ、下着の黒。

 そして気付く。

 これ、こないだ玄さんが穿いてたやつの色違いだ。

528 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/22(日) 23:53:25.41 ID:6vb92tX1o

 姉妹でお揃いなんて仲いいなー。

 なんて考えてる暇はない。

 今や形勢は明らかに俺が不利。

 まるで読めない宥さんの行動に翻弄されている。

宥「あれぇ、きょーたろーくん、なんだかおかおがあつそうだねぇ……」

京太郎「そ、そっすか?」

宥「ふぅーっ」

京太郎「うひァアッ!?」ゾクゾクー

宥「あは、すずしい?」

 コワイ!

 堕天使マツミエル(姉)コワイ!

 気付けば宥さんの方もボタン全部外れてるし!

 その豊満な胸がシャツを押しのけて、大人びた黒の下着が丸見えになってるし!

宥「きょーたろー、くん」

京太郎「は、はひっ」

 食われる。

 俺はそう確信し覚悟した。

 ら、



宥「おやすみなさぁい」バタッ



京太郎「は?」

538 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 00:33:11.62 ID:3C5xIbt0o

 その場にくずおれる宥さん。

 次の瞬間にはすぅすぅと寝息を立てていた。

京太郎「……、は?」

 なにそれ。

 ナニソレ。

 ちょっと、それはないんじゃないですかね。

 いや、別にナニを期待してたとかそういうんじゃないですけどね?

 それはないんじゃないですかね。

 目の前に、巨乳で可愛くて寒がりでエロスが滲み出てて優しくて巨乳の先輩が寝てるとか。

 それはないんじゃないですかね。

京太郎「……」

 今。

 この手が届くのに手を伸ばさなかったら、死ぬ程後悔すると思う。

 それが嫌なら、手を伸ばすしかない。

 この手を――

京太郎「………………」

540 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 00:54:19.21 ID:3C5xIbt0o

パサッ

宥「ふにゃ……?」

 宥さんが脱いだスカートとカーディガン。

 加えて脱がされた俺のシャツを上から被せる。

 流石に抱き起こして着せる訳にはいかないからな。

 我慢出来なくなりそうだし。

宥「んぅ……あったか~い……」ポワ

京太郎「」クスッ

 やっぱり、こっちの方が宥さんらしいな。

 この安らかな寝顔の為なら、上半身裸で居間に戻ることも厭わない。

 憧パンチの二、三十発は覚悟して、

ガラッ

京太郎「須賀京太郎、ただいま戻りまし」



玄「京太郎お兄ちゃんだぁーーーーーーーーーーっ♪」ダキィッ



京太郎「何だァーーーーーーーーーーーーーーーッ!?」

561 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 14:16:44.33 ID:3C5xIbt0o

 居間に足を踏み入れるなり、何かが俺の首に絡みついた。

 いや、「何か」っつーか、腕だけどね。

 誰のものかって言えば、それも見当はついてるけどね。

 この場に集ったメンバーで、俺のことを何故か時々「京太郎お兄ちゃん」と呼ぶ人なんて一人しかいないからね。

 だから、叫ぶ。

京太郎「な……何をするですかァーーーッ、玄さん!」

玄「えへへ~」ムギュッ

京太郎「玄さーん!?」

 ハグられた。

 こっちの話を聞く耳など持たず、真正面から抱き付かれた。

 上半身裸である俺の、みぞおちの辺りに幸せな感触。

玄「お兄ちゃんだぁ……♪ えへへ、京太郎お兄ちゃーん」ムニムニ

京太郎「ほ、ホアアアッ……!」

 そもそも十二分に射程圏内である兵器が今、ゼロ距離に。

 アカンこれ。

563 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 14:47:49.76 ID:3C5xIbt0o

玄「えいっ」グイッ

京太郎「ちょっ!?」ヨロッ

ドサッ

 油断していたら畳に引き倒されてしまった。

 宥さんもそうだが、この体格差で女の子に好きにされるって情けないぞ俺。

京太郎「く、玄さん、何を……」

玄「だってぇ、お兄ちゃんおっきいからこうしないと玄つかれちゃうんだもん」プクー

京太郎「可愛い」

 思わず声に出た。

 だってしょうがないだろう。

 年上だけど小柄でそのくせ胸は一人前な玄さん(何故か当然のように胸元が開いている)に馬乗りされているんだ。

 エロ可愛いからしょうがない。

京太郎「……ゴホン。いいですか玄さん、そもそも人前でこんな風に抱きついたり押し倒したりするのはァアンッ!!?」ビビクンッ

玄「あはは、変な声~♪」

566 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 15:13:35.32 ID:3C5xIbt0o

京太郎「くくく玄さん、今、今の……」プルプル

玄「もう一回?」

京太郎「違っ」

玄「えいっ♪」ツーッ

京太郎「ンヒィ!」ビクンッ

玄「あははははっ!」

 跳ねる俺。

 笑う玄さん。

 笑いながら、白く細い指を俺の身体に這わせている。

京太郎「や、めっ……!」

玄「や。もっとお兄ちゃんの身体さわりたい」ペタペタ

 次は掌で触れる。

 腹筋。あばら。形を確かめるように。

玄「お兄ちゃんのおなか、ごつごつしてるねぇ」サワサワ

京太郎「そ、こ、はぁあぁぁっ……!」ビビクンッ

571 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 15:58:01.85 ID:3C5xIbt0o

 侵略の手が留まることはない。

 今の場所に飽きれば、次を求めだす。

玄「……京太郎お兄ちゃん」

京太郎「な、なんすか……?」ゼーハー

玄「京太郎お兄ちゃんにも、おもちってあるんだよね……」

京太郎「ねーっすよ!?」

 これは胸筋だ。

玄「京太郎お兄ちゃんのおもち~」モミモミ

京太郎「ちょっとおおおおおッ!?」

 しかし幼児化した玄さんに常識は通用しなかった。

 蹂躙される俺の胸筋くん。

 だが俺は男だ。だから、

玄「むぅ……かたい!」プンスコ

京太郎「そりゃそうですよ……」

 揉んでも揉まれても楽しい筈がない。

572 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 16:52:30.08 ID:3C5xIbt0o

玄「おもち……おもち……」スリスリ

京太郎「やめて!」

 胸板に頬擦りとか、もっと違うシチュエーションでなら恰好の青春ポイント源になっただろうに。

 こんな、幼児化した先輩に押し倒された上でされても嬉しくない。

 まるで嬉しくない訳じゃないが、残念さが勝る。

 例えばクリスマス、降りしきる雪の中で抱き合いながら――なんて浪漫だよな。今6月だけど。

玄「ぺろっ」

京太郎「アイエエエエエ!?」ゾワッ

 そこに駆け巡る――感覚。

 ねっとりと生暖かい、生きた感触。

 見下ろせば、その正体は容易に知れた。

玄「れろっ……ちゅ、む」

京太郎「なんで野郎の胸なんか舐めてるんですかアンタって人はァーーーーーッ!!?」

596 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 21:14:43.73 ID:3C5xIbt0o

玄「らってぇ」

京太郎「ッ……と、とりあえず口を離してください!」

 こく、と声なく頷いて、ここでは素直に従ってくれる玄さん。

玄「だって、京太郎お兄ちゃんは大人なのに玄のことをペロペロしたいんでしょ?」

京太郎「そんなことだけ覚えてる!? ていうか誤解ですし!」

玄「だからねだからね、玄もお兄ちゃんのことペロペロしてみたいなーって」

京太郎「そのりくつはおかしい!」

玄「ぺろぺろ」

京太郎「おかしくなっちゃううううううううううっ!!」ビクンビクン

 まずい。

 何がまずいって何もかもがだが、強いて言うなら体勢がまずい。

 仰向けの俺に、玄さんは完全に密着する形でのしかかっている。

 それだけでも柔らかくて柔らかくて柔らかいのに。

 その上で触れるのだ。舐めるのだ。遠慮なく。容赦なく。

 ただでさえ、さっきの宥さんの艶姿の余熱が残っているというのに。

 玄さんと俺の体格差が、接触位置のズレに拍車をかける。

 舌が胸を。胸が腹を。となればその下は必然――



玄「ちゅっ、れる、んぅ……、ふぇ? お兄ちゃん、おしりに何か当たってるよ?」



 殺してくれ。

608 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 21:51:18.63 ID:3C5xIbt0o

 だめだってー。

 これだめだってー。

 せんぱいのぬのさんまいごしのかんしょくでげんきさせちゃだめだってー。

 そりゃ、前科がない訳じゃない。

 むしろ合宿で混浴した時を筆頭に、数えればキリがないくらいだ。

 学内でも屈指の美少女率を誇る我が麻雀部の女性陣を相手に、反応しない方が失礼というものだ。

 玄さんも宥さんも無邪気で無防備で、憧だって警戒心ゆえのエロスというものがあって。

 反応するよ。男の子だもの。

 しかし状況が最悪だ。

 これならいっそ、正気の玄さんが相手の方がマシだった。

 それならきっと、この時点でパニクって、それに乗じてうやむやに出来た。

 しかし状況が最悪だ。

 相手は今、正気を失い童心に返り、好奇心の獣と化しているのだから。

 年頃の男に抱きつき、裸の胸に縋り、あまつさえ舌で舐めることすら平然とやってのけるのだから。

 だから、















京太郎「あてみ」ビシッ

玄「きゅう」バタン

 やむをえなう。

619 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 22:27:54.81 ID:3C5xIbt0o

玄「」チーン

 チーンはコっちのセリフだよ(意味深)。

京太郎「……」

 ともあれ危機は去った。

 今回は本当にヤバかった。

 高一の一学期から卒業するところだった。

 ……よく考えなくても物凄く勿体無いことをしたのではないだろうか。

京太郎「………………いやいやいや」

 こういうことは合意でこそだし、そもそも人前だ。

 ナニかをおっぱじめようものなら大事である。

京太郎「……?」

 その割には、未だに誰も俺達を止めに来ないな。

 覆い被さる玄さんの身体を横へ避け、起き上がる。

 ぐるりと室内を見渡すと、まず憧と穏乃の不在に気付いた。

 どこへ行ったのか。

 もはや一刻も早くこの宴会を中止させるべきなのに。

 その為にはまず保護者を――あダメだわ。二人して酔い潰れてるわ。

 俺がトイレに行ってる短時間でどんだけ飲んだんだ。

京太郎「お」

 その隣に正座している座敷童……もとい鷺森部長を確認。

 助かった、部長が健在なら安心だ。

 憧と穏乃を探すのを手伝ってもらおう。

624 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 22:33:00.08 ID:3C5xIbt0o

 近寄る。

京太郎「鷺森部ちょ」















灼「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ」グリグリグリグリグリグリグリグリ















京太郎「んほお゛お゛お゛おオォおォ゛ぉぉお゛おおお゛お゛らめええええええええええええええええええええっっっ!!!」

632 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 23:02:14.28 ID:3C5xIbt0o

灼「がくっ」ドサッ

京太郎「で、電池切れ……?」ゼーハー

 危なかった。

 もう少しで奪われるところだった。

 まさか鷺森部長が電動こけし上戸だったとは……

 人は見かけによらないな。

京太郎「ふぅ……」

 状況を整理しよう。

 宥さん――第一の刺客。廊下で寝ている。

 玄さん――第二の刺客。畳の上で気絶している。

 鷺森部長――第三の刺客。電池切れ。

 そして望さんとレジェンドは泥酔状態で寝落ち、か。

京太郎「……」

 どうしよう、どうしようもないぞ。

 結局、一人で憧達を探すしかないのか。

 ……ないんだろうなぁ。

 行かねば。

637 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 23:15:19.31 ID:3C5xIbt0o

 俺は入ってきた障子とは反対側の、家の中へと続く襖を開けた。





          /: : : : : : : : 、: : : : : :\         r三ミY_ソ
ヽ         _/:/ : : /:/: : :/ ヽ: : : : : : :ヽ      /::::::::::iソ
::::\      ///: : : /<: :ハi  Vハレ: !: : ハ    /::::::::::::/
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:::::::::::::::::::::\: :V : i:ゝ 、、   丶  、、イ: レ´ /:::::::::::::::::/
、:::::::::::::::::::::::::\⌒{: {     /⌒ ┐  !:} /::::::::::::::::::/  「きょーたろーーーーーーーーーーっ!」ガバッ
 \::::::::::::::::::::::::\{:.{     i    ′ ィ: レ::::::::::::::::::::::/
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   /: :\:::::::::::::::::::V{:Y::::: ̄::Ti::´} _/:::}:.j::::::::::::::::::/
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  Vi: : : : :ハ:{ ヽ:::::::::::::::::::::::::::::}}:::::::::::::ヽ:::::::; ´
  ハ: : : :ハ{   V:::::::::::::::::::::::::::}}:::::::::::::::V:/
    V: : :{ \ {:::::::::::::::::::::::::::::}}::::::::::::::::V
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        `:ゝ   }:::::::::::::::::::::::::::::}}:::::::::::::::::;
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              !::::::::::::::::::::::::::::::}}:::::::::::::::::}





京太郎「わぷっ!?」

643 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/23(月) 23:32:50.24 ID:3C5xIbt0o

穏乃「えっへへ~、きょーたろー♪」ムギュー

京太郎「おま、急に飛びついてくんなって、重い! 重くないけど!」

穏乃「どっち?」

京太郎「どっちでもいいから下りろ! てか下ろすぞ!」ヒョイッ

穏乃「わ。む~……えいっ!」ダキッ

京太郎「っと。くっつくのはやめないのな……」

穏乃「だってしたいんだもん。だめ?」

京太郎「別にいいよ」ナデナデ

穏乃「ん……もっとー」

京太郎「ほいほい」ナデリナデリ

穏乃「んへへ」

京太郎「変な笑い方だな」

穏乃「私ね、京太郎になでられるの好きっ!」

京太郎「おう、俺も穏乃の髪撫でるの好きだぜ」

穏乃「やったぁ♪」

京太郎「ところで穏乃、憧がどこにいるか知らないか?」

穏乃「憧? 憧なら台所にいるよー。さっきまで一緒だった」

京太郎「マジか。じゃあちょっと行ってくるから、穏乃はここで待っててくれるか?」

穏乃「え~? もっとなでてよ~」

京太郎「戻ってきたら続けてやるから、ちょっとだけ我慢な」ヨシヨシ

穏乃「ぶぅ。早く戻ってきてね?」

京太郎「分かってるって。お前もじっとしてるんだぞ?」

穏乃「はーい。いってらっしゃーい!」フリフリ

トテトテ

京太郎「ふぅ……」

 穏乃はいつも通りだったな。

654 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 00:07:50.77 ID:+nJGdD9Ro

~新子家・台所~

 大天使高鴨先輩の情報を頼りに、俺は台所へ足を踏み入れた。

 台所は散らかっていた。

 まさに先程まで酔っぱらい二人がいましたよという具合に。

 しかし憧の姿はなかった。

京太郎「もう移動しちまったのかなぁ……」

 となると一気に捜索が困難なものとなる。

 人の家だし、無駄に広いし。

 自室にいてくれれば御の字、風呂でシャワーでも浴びて酔いを醒ましてくれればスーパー御の字くんだ。

 ……不慮の事故で入浴シーンに出くわそうものならハイパー御の字様だ。

 そう方針を定め、もう用はないなと台所に背を向けた。



「だーれだっ♪」



 その瞬間、後ろから目隠しをされた。

664 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 00:27:38.59 ID:+nJGdD9Ro

 って。

 なんだこれ。

 なんだこの、ベタベタのバレバレの。

 声+消去法で一発なんですけど。

 まあ、ノってやらないこともないが……

京太郎「……憧だろ?」

「ぶっぶー」

京太郎「は?」

「正解は~……」

 と、

 腕を捕まれ、ぐるんと回転。

 後ろの正面に立っていたのは――





       /: : : : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : : : : ; : : : : :> .
    , . : : : : : : : : : : : : : : :/: : : : : : i: : : : : : : : : ; : : : : : : : ヽ
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 ’:: : : : :': : :, : : :i: : : : : : i!: : l: :| ! : : !i: : : : '、: : : : : : :; : : : : : :∨.:∧
. !: : :/ : :i : : | : : f: : i!: : : |1 : i!; ! !: : :| !: : : : ;: : : : : : :|: : : : : : : ∨.:∧
. |: : i!: : :l : : | ―i ト.|!: : | |: :| !:| !: : 」 i!: :- 十: :- : : :|: : : : : : : : ∨.:∧
. |: : !|: : :|: : :i!: : :| Ⅴ|` :i | / .i:! ヽ: :|  ヾ: : !: : : : : : | : : : : : : : : ∨: :∧
. i!: ;!.|: : :|: : :|!: : |   ヽ: :| '  i!  ヾ!,.x=== : : : : ; !:_: : : : : : :| ∨: :∧
 |: ! .!: i: :,: : |ヽ;.|    ゙     / / .-, 、ヽ .》: : :|  !: :|: : : : :.!  ∨ : ∧   「憧ちゃんかと思った? 残念! 可愛い憧ちゃんでした!」
 .!:! |: |: ヽ: | ヾ 、 _,          i ヽ/ |/|: : : !  ! :/: : : : ∧  ∨ : ∧
  i! Ⅳ: : :ヾ     ̄        乂 _ ノ |: : :, ッ/:/: : : : : :∧   ∨ : ∧
   |: : : : : : ,                  |: : :| /: /: : : : : : : ∧   ∨ : ∧
   |: : : : : :/ヽ                      |: : / _/ |: : : : : : : : ∧   ∨ : ∧
   |: : : : :/ .i.       ヽ _ ノ         /| /  ゚  : : : : : : : :∧  ∨ : !
   |: : : :/  , 、             イ  /       ヽ: : : : : :∧  i: : : |
   |:  /  /: : : :> . . _   。  <    /        ∨: : : : :∧ . | : : |
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. /  ヽ ノ:_: :_:_: : : :, ―/  ,j  ./   ,            i!: : : : :∧ |: : :|
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  < ソ: : : : : : :/ \    У      /            /   / : : : : : : |: : :|
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 うわっめんどくさっ。

672 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 00:49:57.90 ID:+nJGdD9Ro

 なんだよ~。

 こういうタイプかよ~。

 最後にコレかよ~。

 ちょっとげんなり。

憧「ね、ね、京太郎っ」ツンツン

京太郎「あん?」

憧「可愛い? 可愛い?」ソワソワ

京太郎「……あー。かわいいかわいいやったー」

憧「やったー♪」ワーイ

 屈託のない笑顔で万歳する憧。

 ……憧だよな?

京太郎「お前ここで何やってんの?」

憧「お料理」

京太郎「えっ」

憧「おつまみ切れたから新しく作ってたの! 京太郎も食べる?」ニコッ

京太郎「NO THANK YOU」

678 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 01:04:36.04 ID:+nJGdD9Ro

憧「なんでよー食べなさいよー」グイグイ

京太郎「痛い痛い」

 引っ張んなよ。こちとら素肌だよ。

 仕方ないのでその場に腰を下ろす。

 ……床かよ!

憧「めしあがれ♪」スッ

京太郎「卵焼きか……」

 かつて弁当勝負で食べたことのある一品だ。

 あの時は焦げていたが、今回は綺麗な黄色をしている。

京太郎「……」

 でもなぁ、作ったの酔っ払いだからなぁ。

 砂糖と塩を間違えたとか、そういう安直なトラップが怖い。

憧「どうしたの? 食べないの?」

京太郎「いやー、そのー」

憧「あ、わかった! 食べさせてほしいんでしょ?」

京太郎「はい?」

憧「しょうがないなぁ……はい、あーん♪」スッ

京太郎「はいィ!?」

684 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 01:21:08.13 ID:+nJGdD9Ro

憧「あーん♪」

京太郎「ど、動じねぇ!」

 こっち方面にもブットんでらっしゃるパターンかよ!

 それは、それなら、俺的にもオイシいけど。

 ただ、断れない流れが出来てしまったのが痛い。

憧「あーんー!」プンスコ

京太郎「分かった分かった! 分かりましたよ……あーん」パクッ

 もぐしもぐし……こ、これはッ!?

憧「美味しい?」ニコニコ

京太郎「う――めぇ。マジに美味いぞこれ!?」

憧「やたっ♪」

 愕然とする。

 前回の「うまくない」卵焼きとは違い過ぎる。

 焼き加減も甘さも、絶妙で、絶品だ!

690 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 01:31:27.71 ID:+nJGdD9Ro

憧「もっと欲しい?」

京太郎「ほ、欲しい!」

憧「しょーがないなぁ~……あーん♪」スッ

 やっぱりあーんはするのか。

 だが構わない。この卵焼きが食べられるなら。

京太郎「あー……ん。うん、美味い!」テーレッテレー

憧「えへへ」

京太郎「すげーな憧……いつの間に上達したんだ? 酔っ払いマジックか?」

憧「ちーがーいーまーすー」

京太郎「じゃあなんだよ?」

憧「京太郎のためだもん」

京太郎「ひょ?」



憧「京太郎においしーって言ってもらうためにぃー、憧ちゃんはがんばってるんですぅー」



京太郎「………………あ、ぁあ、はい……そりゃ、どうも」

 やばい。

 はずい。

697 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 01:45:14.43 ID:+nJGdD9Ro

 憶測でしかないが、やはり主な原因は酒にあると思う。

 けれど、今の憧の言葉も、きっと真実で。

 俺の為に料理が上手くなりたいという意思が、こんな形で発現した――のだと、思う。

 そんな自惚れに浸りたくなる程度には、衝撃的だった。クラッときた。

憧「京太郎京太郎。まー座りなさいよ」ペシペシ

京太郎「す、座ってるよ」

憧「そぉ? じゃ、かんぱーい」イェーイ

 と、どこからともなく取り出したチューハイの缶を掲げる憧。

京太郎「ってオイ、まだ飲む気かよ!?」

憧「だってうれしーんだもん、たのしーんだもん!」クピクピ

京太郎「それにしたって限度があるだろうが……」

憧「ねー、京太郎さー」

京太郎「なんだよ」

憧「ありがとね?」

 なんだよもう!

704 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 02:06:19.24 ID:+nJGdD9Ro

憧「京太郎のおかげさまでぇ、晩成に勝てました! 県大会で勝てました! はくしゅ!」パチパチパチ

京太郎「は、拍手やめい! 俺のお陰とかじゃねーよ、憧達が頑張ったからだろ?」

憧「だぁからー、あたしたちががんばれたのは、京太郎のおかげさま!」

京太郎「っ」

憧「ざつよーとか、いっぱいがんばってくれたもんね」

憧「あたしの男ぎらい、治すのも手伝ってくれてるし」

憧「プレゼントもしてくれた! ストラップ、すごくうれしかったから」スッ

ナデ...

京太郎「!」



憧「ほんとにありがとうって、思ってるんだよ?」ナデナデ



京太郎「憧、お前……」

 そんなことを。

 そんな、照れ臭いことを。

 自分だけ酔ってる時に言うなんて、卑怯だぞ。

 さっきから、俺ばかり恥ずかしい思いをしてるじゃないか。

憧「京太郎、よくできました! えへ」ニッ

京太郎「ッ……」

 そんな笑顔、本当にずるい。

709 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 02:30:36.77 ID:+nJGdD9Ro

 と、

穏乃「きょーたろーっ!」ダキッ

京太郎「おわあ!?」

憧「!」

 穏乃、襲来。

 背後から抱きつかれた。

穏乃「えへへ、待ちきれなくて来ちゃった~」ゴロニャン

京太郎「お、おう。そういえば待たせてたな……って酒くさ!?」

 もしかして居間でまた飲んだのか。

 顔の赤みも増してるし、見てて心配になるレベルだ。

憧「こらしずー! 京太郎から離れなさーい!」プリプリ

穏乃「えーやだよー。もっと京太郎と一緒にいる~」スリスリ

憧「はーなーれーなーさーいー!」グイグイ

穏乃「はーなーれーなーいー!」グイグイ

京太郎「いーたーいー」

 大岡越前はよ。

714 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 03:04:05.45 ID:+nJGdD9Ro

憧「京太郎は今あたしと話してんの! しずはあっち行ってなさい!」

穏乃「さっきからずっと話してるじゃん! 次は私の番ー!」

 はっはっは、順番順番。

 なんて言えたらどれだけ楽か。

 へべれけ×2に通じたら、どれだけ楽か。

憧「しずはいつもくっついてるでしょ! たまには代わりなさい!」

穏乃「やだ! いつも一緒なのは憧の方じゃん! だから私はくっついてるの!」

憧「……だったら」ボソッ

京太郎「へ?」

憧「えいっ!」ギュッ

京太郎「ぬわーっ!?」

 何を張り合ってるんだお前らは。

 などと言葉を挟む余裕もなく、二人はヒートアップしていく――とんでもない方向に。

憧「ふふん、どう? これでまたあたしが一歩リードね」

穏乃「むむむむむ……じゃあこうしちゃうもんね!」グイッ

京太郎「なっ」

憧「あっ」





 ちゅっ。

719 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 03:21:00.37 ID:+nJGdD9Ro

 頬に。

 とても、とても柔らかな感触。

 柔らかくて瑞々しく、そして熱い。

 この感覚が示す事実。

 明白なそれを、それでも理解出来なくて、

 穏乃を見た。

 穏乃は、



                     _
                   / 二>───
             /´ ̄          `
             /                  \
            .         . : : : : : : : . . . . .      \
         /   / . . : : : : :/.: : /ヽ: : : : : : : . .
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        l\.: .:.′:.:.:.l: ′|: :.:| : : |   |:__l__:.:|: : |: : : ヽ:.i
        ト、: \!    |:i .斗‐┼!: :l   jノ人|:.:.`ト、:.|. . .. ..| |
        个x: : :|: : :. イト、人_∧\!   __ |: :/|:i!:.|: : :. :.| |
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       /   l:.:.\:从: : : |              ___ |: : :ハ/
.      /   \ : \l\_j xzzzzz        ⌒¨^'ムイ
     /    .: :\/^Y T ^゚´      ,   、、、 l:.:.:|      「えへへ、しちゃったー♪」
.    /     .: : : : {.⌒i: :|  """            l:.:.:|
   /    .: : : :. :.:.丶 l: :|       i ¨´` T     !:.
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リ |   : : : : :レ'        ∨ ({        i !     i!
l  |   : : : : :|       /   リ..... ____  iノ    _〕
l  |   : : : : :l        /   ヽr'´ ̄ ̄`YY─==ニニX′
.\ト、   : : : : |      /      ! ______.| {       | |ヽ
.    \ : :. :.:.|     ′     └─ッ マ¨:l `ー== ‐┘!(
.     \: : : 、   /        /vvヘ.::|       | }



京太郎「――!!」

723 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 03:47:30.64 ID:+nJGdD9Ro

 え? なに? 可愛っ!

 穏乃、可愛っ!

 いや元から可愛いけど、これは別次元の可愛さだ。

 だってキスされたんだぞ。

 ほっぺとは言え、紛れもないキス。

 やばいやばいやばい。ロリに目覚めそう。

 今度綾ちゃんをデートに誘ってみようかな!

 いや落ち着け!! 穏乃は同級生だ、問題ない!!!

 俺は至ってノーマル、極めてノーマルだ!

 だから必要以上にドキドキするんじゃない、俺の心臓よ。

 もう何が起きても、平常心を保ち続けるんだ――

憧「し、し、し、しず!! アンタ、なんてことを……!」ワナワナ

穏乃「ふっふーん。これで私が逆転だね!」

憧「むっ……言っとくけど、あたしは負ける気なんてないから、ねっ!」グイッ

京太郎「へっ」

穏乃「えっ」

憧「――」

























 ちゅー。

725 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 03:53:37.24 ID:+nJGdD9Ro

 憧にキスされた。






































 唇に。






































 は?

728 名前:6月3日(月)[saga] 投稿日:2013/12/24(火) 04:05:32.57 ID:+nJGdD9Ro

憧「ん、っ……」



               は?

                                          は?
                             は?
        は?

                   は?                               は?
                                    は?


            は?            は?

                                        は?
                         は?               


    は?
                                         【...DEUNITNOC EB OT】
            は?
                               は?   
                 は?
                                         は?

                                               は?
         は?
                      は?

                                   は?

             は?                                           は?


                                            は?
  は? 
                                   は?
                  は?
                                                 は?


                               は?


            は?
     は?                               は?
                      は?                             は?