MCS


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74 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 00:14:02.99 ID:xPu09oJSo

 時間割の巡り合わせで、全教科のテストが週明け早々に返ってくることとなった。

 朝一番の異端審問を切り抜けた俺に容赦なく襲い掛かる現実。

 しかし、これまでは辛うじて最悪の結果を免れている。

 残るは――数学。

 その答案が、今。

 俺に手渡される。

京太郎「……」

 裏返しとか、なんの嫌がらせだよ。

 心臓に悪い。

京太郎「…………」ゴクリ

 めくる。

 めくれば。

 めくらなきゃ。

京太郎「………………!」ピラッ

 めくった!



答案「」アズカバァァァァァァァァァァン



 オワタ!!!!!

79 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 00:29:44.79 ID:xPu09oJSo

京太郎「」ゴーン

 終わっ、た。

 ギリギリ――赤。

 赤点だ。

 最後の最後で、赤点を取ってしまった。

 それが意味することは、ふたつ。

 さよならデート。よろしく追試。

京太郎「……」

 信じたかった。

 本当に……鉛筆サイコロを信じたかった。

 さようならデート……さようなら。

京太郎「――」

 失意のまま、席へ戻る。

 その隣には、憧が座っている。

84 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 00:42:41.13 ID:xPu09oJSo

憧「おかえりー。結果どうだっ……あっ(察し)」

 ああ、察してくれ。

 俺が全身に纏う悲痛なオーラで、存分に。

 しかし、言葉にしなくてはいけないこともある。

京太郎「……ごめんな、憧」

憧「え?」

京太郎「あんなに熱心に勉強教えてくれたのに、応えられなかった」

京太郎「期待を、裏切っちまった」

京太郎「ごめんな」

憧「京太郎……」

 自分が情けない。

 デートという餌を目の前に吊り下げられても、全力以上の実力も発揮出来ないなんて。

 本当に、情けない。

87 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 01:06:04.13 ID:xPu09oJSo

憧「……ごめん、ちょっとそれ貸して!」バッ

京太郎「あ、おい!?」

 驚く間もなく引ったくられる答案用紙。

 憧はそれを、自分の答案と並べて見比べている。

 とても真剣な目で。

 そして、

憧「ッ! せ、先生ー!」タッ

 弾けるように席を立ち、教壇の担当教諭の下へ。

憧「あの、須賀くんのテストの採点なんですけど――」

 それから何事かを話している。

 壮年の男性教師と。

 ところどころ、言葉に詰まりながら。

京太郎「あいつ……」

 教師であれ異性は異性。

 同年代よりマシでも、苦手な相手には変わりない筈なのに。

 憧は必死に説明を続けていた。

92 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 01:34:16.50 ID:xPu09oJSo

憧「――ありがとうございます、失礼します!」

 やがて憧は深々と一礼。

 踵を返し、駆け足気味に俺の隣に戻ってきて、

 そして、

憧「どう!? 赤点回避してあげたわよ!」

 ぱんぱかぱーん、と。

 どこか誇らしげに答案用紙を広げて見せた。

京太郎「なっ……!?」

 ギリギリ落第だった点数の上に、改めて及第点が記された答案を。

京太郎「え、ちょ、マジで!?」

憧「大マジよ。採点ミスがあったの」

京太郎「採点ミス!?」

憧「なによ、珍しいことじゃないでしょ?」

 そりゃ、ありえないとは言い切れないが。

 落ち込んでて採点ミスを探そうなんて思いつきもしなかった。

97 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/04(月) 02:04:47.41 ID:xPu09oJSo

京太郎「……ありがとな憧、命拾いしたよ」

憧「いいわよ別に。これで心置きなくデートが出来るわけだし……あ」

京太郎「え」

憧「………………」

京太郎「……あk」





憧「したいとかじゃないけどね!?」

憧「あたしが採点ミスを見つけてあげたのはほら、その、あれよ!」

憧「京太郎が頑張ってたのは知ってたから、努力は正当に評価されるべきだと思うし!」

憧「それに追試とか補習とか受けてたら部活に支障が出るでしょ!? あたし達も困るし!」

憧「それにそれに日曜はもう予定空けちゃってるからドタキャンとかされたら迷惑だし!」

憧「分かった!?」





京太郎「はい^^」ニッコリ

憧「分かってないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

 そんな絶叫も、クラスの喧騒に紛れて消えていった。

200 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 21:49:47.25 ID:n4KgGquqo

……
…………
………………

~校外~

テクテクテク...

京太郎「悪いな、買い出しに付き合ってもらっちまって」

憧「付き合っ……!」ビクッ

京太郎「ん?」

憧「な、なんでもない。ハルエに頼まれたし、お店の位置も分かりづらいし、しょうがないわよ」

 そっか、と返したら会話が途切れてしまった。

 俺達はアウトオブ学校にある雑貨屋を目指して歩いていた。

 時は放課後、目的は部活の備品の買い出しである。

 街で『雑貨屋』と言えば小洒落たイメージがあるが、この山奥では文字通りの細々とした日用品を扱う店という意味しかない。

 そんな雑貨屋が町の入り組んだ位置にあるとのことで、ジモッティーたる憧に案内を頼んでいるのだ。

 何故か早歩き気味の憧の、相変わらず小ぶりでエエ尻を眺めながら歩いていると、





???「あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙だ゙ア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」





 空襲か!?

206 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:13:21.60 ID:n4KgGquqo

ドダダダダダダダダ...ガバッッッ!

???「あっこちゃーーーーーーーーーー!!」ズドーン

憧「ふぎゃあ!?」グハッ

京太郎「!?」

 やっぱり空襲じゃないか!

 前方を歩いていた憧が、その更に前方から駆けてきた何者かにタックルを喰らった。

 “何者か”は穏乃と同じぐらいの背丈で髪は長く――え、女の子?

???「あこちゃんだあこちゃんだあこちゃんだァ゛あ゙ご゙ぢ゙ゃ゙ん゙だ゙ア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~」スリスリスリスリスリスリスリスリーッ

憧「ちょ、熱ッ! 摩擦! 摩擦で熱いってば、ねえ! 桜子!!」ギャース

 え、知り合い?

 名前を呼んだように聞こえたが……

綾「あーもー桜子! 憧ちゃん困ってるってば!」

凛「大丈夫ですか憧先輩!?」

???「憧ちゃんひさしぶりー」

 あ、また増えた。

 しかも内二人には見覚えがあった。

 いつぞや酔っぱらいに絡まれていた憧の馴染みじゃないか。

209 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:29:12.62 ID:n4KgGquqo

憧「あー、うん。久しぶりねみんな。……とりあえず桜子どかすの手伝ってくれる?」

 おーえす、おーえす。

 憧にしがみついて離れようとしない少女を、残り三人が力尽くで引き剥がす。

憧「あいたたた、腰が……」サスサス

凛「ほ、本当に大丈夫ですか先輩?」

憧「まーねー」

綾「もー桜子! 人に飛びついちゃダメっていつも言ってるでしょ!」メッ

???「でも憧ちゃんだよ?」キョトン

綾「憧ちゃんも人だからね!?」

 賑やかだなー。

 見たところ学年もバラけてそうなのに、なんとも気安い仲のようだ。

 うちの麻雀部みたいだな。

憧「それよか、揃って何してたの? ここって登下校には使わない道でしょ?」

???「それはねー」

???「王子様を探してたん゛だ゛よ゛ォ゛オ゛ア゛ァ゛イ゛!!!」

215 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 22:52:51.56 ID:n4KgGquqo

憧「王子様ぁ?」

 なんだなんだ。

 話が面白くなりそうだし、そろそろ合流するか。

綾「さ、桜子! それは違うって……!」カァッ

凛「ほら、先輩と私達を助けてくれた男の人のことですよ。一ヶ月くらい前に」

憧「え゛」

凛「綾が会って一言お礼を言いたいらしいんです。あ、もちろん私も」

憧「へ、へぇー? そうなんだー?」

???「綾ちゃん、ずっとその人の話ばっかりするんだよー」

???「王子様なんだって!」

憧「………………」

綾「だ、だから違うってば! けど金髪で背も高くて、か、格好良かったから……///」モジモジ

京太郎「おーい」スタスタ

綾「そう、ちょうどそこにいる人みたいな――え?」



京太郎「よー、なんか盛り上がってるみたいだな」



綾「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?!?!!!??」

京太郎「うおぅ!?」ビクッ

憧「」アチャー

220 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:11:56.72 ID:n4KgGquqo

綾「な、なっ、なぁっ///」プルプル

凛「あ! あの時の……」

???「この人がー」

???「王子様だ゙ア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~!!」

京太郎「オレェ?」

 なんだなんだなんだ。

 訳も分からず憧を見る。

憧「京太郎……アンタってほんとに……」ハァー

京太郎「オレェ?」

 こっちもさっぱりだった。

綾「え、憧ちゃん王子様と知り合いなの!?」

???「王子様って言った!」

???「言ったねー」

綾「う、うるさいなぁもう! で、どうなの憧ちゃん!?」

憧「あー……うん。知り合いっていうか、同級生」

綾「同級生!?」

憧「で、今は麻雀部のマネージャー」

綾「マネージャー!!?」

221 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:32:23.39 ID:n4KgGquqo

憧「京太郎、改めて紹介するわね。阿知賀こども麻雀クラブ時代の後輩で……」

綾「ししし、志崎綾でしゅっ!///」カチコチ

凛「桐田凛です。その節は本当に助かりました。ありがとうございます」ペッコリン

京太郎「いやいや、そんな大したことはしてねーよ。あの後は大丈夫だったか? 怪我とかは?」

凛「はい、おかげ様で」

京太郎「なら良かった」ニカッ

綾「はわわわわわわわ///」プシュー

凛「……あー、ごめんなさい。約一名重症です」

京太郎「えっ」

憧「はいはい、紹介続けるわよー。こっちの二人は小学生ね。ほら、挨拶」

ひな「山谷ひなですー。はじめまして王子様ー」

ギバ子「ギバード桜子だよ! よろしく王子様!!」

京太郎「はじめまして、よろしくな。王子様じゃないけど」

ひな「じゃあ何様のつもり?」

京太郎「言い方ァ!……俺は須賀京太郎。まあ好きに呼んでくれていいぜ」

ギバ子「京太郎……京、た、ちゃ、京ちゃ……ぎ゛ょ゛う゛ぢ゛ゃ゛ん゛だ゛ア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~!!」

京太郎「それは毎回やらないといけないやつなのか?」

224 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/05(火) 23:55:18.96 ID:n4KgGquqo

 けど、

 「京ちゃん」か。

 ちょっと懐かしい気持ちになるな。

 まさか咲以外に呼ばれることがあるなんて。

 不覚にも郷愁がこみ上げてくる。

京太郎「……おう、よろしくな」ナデナデ

 誤魔化しついでに頭を撫でてみた。

ギバ子「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛(歓喜)」

京太郎「ひぃっ」ビクッ

 非常に分かりづらいリアクションだが、(歓喜)と付いてるから大丈夫だろう。

 憧の鉄拳も飛んでこないし。

綾「なっ!? さ、さく、桜子――!」

ひな「あ、いいなー。私もしてほしい所存ー」

綾「ひな!?」

京太郎「おう、いいぞ? うりうりー」ワシワシ

ひな「きゃー♪」

綾「うぅぅ……」グヌヌ

232 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 00:15:33.22 ID:noXwwhDso

京太郎「ついでにそっちの二人もどうだ?」

綾「ぴっ!? あっ、そのっ……!」ワタワタ

凛「あ、私はいいです。そんな子供じゃないですし」

綾「!?」

京太郎「だよな、中学生を小学生と一緒に扱っちゃ失礼か。わりーわりー」

綾「……ぁぅー……」ションボリーン

凛「………………えっと、ごめんなさい先輩、やっぱりしてもらってもいいですか?」

京太郎「え、いいのか?」

凛「気が変わりました。綾の気も変わってると思います、多分」

綾「凛……!」パァァ

京太郎「じゃあ、まず桐田さんから」ナデナデ

凛「ん……」

京太郎「どうかな」ナデナデ

凛「いい感じです……上手ですね先輩」

京太郎「ペット飼ってるからな」ナデナデ

凛「……なんか複雑」

240 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 00:39:41.97 ID:noXwwhDso

綾「り、凛っ。なんか長くない……?」ジトー

凛「あーごめん。先輩、ありがとうございました。もういいです」

京太郎「アッハイ」パッ

 桐田さんはなんつーか、サッパリしてるな。

 見た感じオシャレな雰囲気もあって、男に免疫のある憧、みたいな感じだ。

 ……最強じゃねーか。

凛「じゃあ交代ね」グイグイ

綾「ちょ、お、押さないでよっ!」

京太郎「準備はオーケー?」

綾「は、はひっ! おーけーでふ!」カチコチ

京太郎「うし。そんじゃまあ――」スッ

ナデナデ

綾「ふぁああ……///」

京太郎「加減はいかがですか、お姫様?」ニコッ

綾「ふにゃあ!?」ドキーン

京太郎「ははっ、なんつってな」

綾「ぁ……ぁ……」パクパク

凛「うっわぁ……」

ひな「だいたーん」

ギバ子「ガ゛ム゛ビ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

244 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 00:57:14.99 ID:noXwwhDso

京太郎「で、どうかな志崎さん」ナデナデ

綾「ぁ、ぁう、あの、その……名前……」ボソッ

京太郎「うん?」

綾「な、名前で、呼んでくれて、いー、です///」ゴニョゴニョ

京太郎「そうか? じゃあ、綾ちゃんかな」

 年下とは言え、初対面から呼び捨てには出来ない。

京太郎「さっきも言ったけど、俺のことは好きに呼んでくれていいから」

綾「じゃ、じゃあ……きょ……、…………………………お、おにーさんって呼ばせてくださいっ!」

京太郎「おお、なんか新鮮な感じ」ナデナデ

綾「///」プシューッ

 俺が撫でやすいようにしてくれているのか、俯く綾ちゃんの頭を撫で続ける。

 他の三人同様、子供らしい暖かな手触りが心地良い。

 いつまでも撫でていられそうだ。

憧「……京太郎ってさ」

 と、

 今まで沈黙を守っていた憧が口を開いた。

京太郎「なんだ?」

憧「軍艦だったら駆逐艦が好きそうよね」

京太郎「急になんだ!?」

291 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 21:53:00.60 ID:noXwwhDso

……
…………
………………

テクテクテク...

 雑貨屋への道行きに綾ちゃん達が加わった。

 買い出しの途中であることを告げると、同行を希望してきたのだ。

 総勢六人が三人ずつに分かれて歩く。

 先頭グループは憧とひなちゃんと、ギバー……なんだっけ。

 前半のインパクトが強くてフルネームが定着していない。

 ……ギバ子でいいか。

 先頭グループは、憧とひなちゃんとギバ子。

 俺と綾ちゃんと桐田さんがそれに続く。

 道路側が俺、真ん中に綾ちゃん、反対側が桐田さんという並びだ。

綾「」カッチンコッチン

凛「はあ……」

 どうして片側の手足を同時に前に出しているんだろうか。

295 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 22:24:32.12 ID:noXwwhDso

京太郎「なあ」

綾「ひゃい!?」ピョインッ \コイーン/

 配管工みたいな音を立てて飛び上がった。

京太郎「……大丈夫?」

凛「あー、気にしないでください。こういう子なんです」

綾「いや違うよ!?」

 違うよなぁ。

 ギバ子達には割と快活に接しているようだし。

 まあ、話を戻そう。

京太郎「折角だから部室にも顔を出したらどうだ? 穏乃達とも知り合いなんだろ?」

綾「いっ、いいんですか!?」パァァ

凛「……あーや」

綾「あっ……そ、そっか。そうだったよね」シュン

京太郎「?」

296 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 22:53:34.96 ID:noXwwhDso

 俺の言葉に笑顔を見せてくれたのに、桐田さんの窘めるような声がそれを一転させてしまった。

 綾ちゃんは残念そうに、

綾「ごめんなさいおにーさん……私達、麻雀部には行かないって決めてるんです」

京太郎「え、なんで?」

綾「だって、迷惑になっちゃうから……」

京太郎「迷惑って」

凛「もちろん、先輩達がそう思わないでくれるってのは分かってますよ?」

 でも、と繋ぐ桐田さん。

凛「やっぱり県予選前の大事な時期だから、私達は邪魔になっちゃいますよ」

京太郎「……そっか」

 そんなことはない、とは敢えて言わなかった。

 この子達なりの気遣いを、わざわざ否定する必要はないと思ったからだ。

 代わりに、

京太郎「まったく中学生は最高だなぁ!」ワシャワシャ

凛「わっ」

綾「ひやあああっ!?///」

 また二人の頭を撫でてやることぐらい、許されるだろう。

 閻魔様も子供の相手で忙しいようだし。

301 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 23:12:11.64 ID:noXwwhDso


 いいのかなぁ、とか思いながら。

 あたしは左右からじゃれつく桜子とひなの相手をしていた。

 しながら、意識が向いているのは後ろの京太郎――じゃなくて、その隣の綾に。

 今日の綾は、なんか、どうも、ヘン、だ。

 普段はもっと常識的で、元気はあるけど落ち着きもあって。

 凛と並んで麻雀クラブ年下組のお姉さん役だった筈なのに。

 ……いや、まあ桜子とかには普段から振り回されてるんだけど。

 それでも、今日のようなポンコツキャラじゃなかった筈なのに。

 何が原因なのか、なんて考えるまでもなく。

憧「……」チラッ

 あの駆逐艦マニア、だよね。

309 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 23:32:42.54 ID:noXwwhDso

 いいのかなぁ。

 綾の態度。言動。

 どれを取っても、導き出される結論はひとつ。



 あの子、京太郎のことが好き……だよね。



憧「ふっきゅ」

ひな「あこちゃー?」

ギバ子「どしたの憧ちゃん゛ん゛ん゛!!!」

憧「な、なんでもないない」

 やば、変な声漏れた。

 でも仕方ないじゃない。

 可愛い後輩の恋路だもん。

 友達が容疑者なんだもん。

 どうしても気を揉んでしまうのは、性分ってやつだ。

315 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/06(水) 23:55:54.46 ID:noXwwhDso

 でも、いいのかなぁ。

 京太郎なんて好きになっちゃって。

 絶対苦労するのに。

 アイツは絶対に女を泣かせるタイプだと思う。

 絶対、釣った魚には餌をやらないタイプだと思う。

 確証はないけど。

 でも、指令の時みたいな気安さで近付かれたら、勘違いする子だっていると思う。

 アイツの、決める時は決める一面を知ってしまったら、運悪く騙される子だっていると思う。

 あたしは違うけど。

 綾のことは、先輩として心配だ。

 でも、人の恋愛に口を挟める程の経験はあたしにはなくって……

 恋ってのはやっぱり、どこまでも当人達の問題であるべきだと思うし……

 そもそも、綾が京太郎を好きってこと自体あたしの早合点かも知れないし……

 もー。

 あーもー!

憧「………………うん」

 とりあえず、あたしは駆逐艦なら敷波が好きかな(現実逃避)。

323 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 00:14:17.65 ID:zpwCSnGQo

……
…………
………………


憧「着いたわよー」

ひな「よー」

ギバ子「Y゛O゛!!!」

 ギバ子の喉は大丈夫なのか?

 さておき、ここが目的地らしい。

 見上げる看板は古めかしく、店そのものも相当な年季が入っている。

 こじんまり、と言えば多少は聞こえもいいが……

京太郎「ここで本当に必要なものが揃うのか?」

憧「む、ボロっちいからって馬鹿にしたわね?」

 バレた。

憧「確かに装いはアレだけど品揃えは確かよ。信頼と実績の、ってやつ」

京太郎「へー」

 小中学生ズも揃って頷いている。

 地元民が言うなら、そうなんだろうな。

325 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 00:38:57.11 ID:zpwCSnGQo

京太郎「けど、こんな小さな店なら全員で入ると窮屈かもな」

憧「それもそうね、桜子達にはここで待ってもらって、あたし達だけで入る?」

 だな――と返す前に。

綾「は、はい! はいはい、はいっ!」

 元気一杯に挙手をする綾ちゃん。

 うん、なんで?

憧「……綾?」

綾「わ、私が入るよ!」

憧「はあ!?」

綾「私が、おにーさんと、中に、入る!」ムンッ

憧「はあぁ!!?」

綾「ダメかな……?」

憧「いや、ダメってことはないけど……」

綾「お、おにーさんはどうですか?」

京太郎「ああ、俺も構わないぜ。店内を案内してくれるなら誰でも」

綾「ぁ……やったぁ……!」グッ

憧「ふーん、誰でもねぇ……?」ジッ

京太郎「どうした?」

憧「別にぃ……?」ジトー

331 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:03:08.54 ID:zpwCSnGQo

 物言いたげな憧の視線に背中をチクチクとやられながら、綾ちゃんと二人で入店。

 店主らしい爺様に会釈して、棚に挟まれた通路に入る。

京太郎「さて、じゃあ買い出しメモを渡すから案内してくれるか?」

綾「は、はいっ! こうしてると新婚さんみたいですね、おにーさん!」

京太郎「え?」

綾「ああああああ間違えました! 噛みました!!」

京太郎「いや、噛んだってレベルじゃ」

綾「噛みまみた!!!」

京太郎「アッハイ」

 凄い剣幕で押し切られてしまった。

京太郎「……えっと、じゃあ改めて案内よろしく」

綾「………………ハイ///」プシュー

 その後は至ってスムーズに事が運んだ。

 メモに書かれた品物を、雑多な陳列棚から的確に見つけ出す綾ちゃん。

 俺がそれをカゴに収めて……なるほど、新婚さんみたいってのも分からなくもない。

 しかし、考えていることをつい口走って恥ずかしがるなんて、初心で可愛いよな。

 まったく中学生は最高だぜ。

334 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:20:35.12 ID:zpwCSnGQo

 で、

京太郎「……高いな」

綾「……高いですね」

 店内は狭い。

 狭い店内の、壁に棚に商品がひしめき合っている。

 俺達はその中から買い出しリスト最後の一品である洗剤(メーカー指定)を発見し、途方に暮れた。

 先程申し上げました通り――高いのだ。

 値段がじゃない。位置が。

 棚の一番上にある。

 そこには俺が手を伸ばしても届かない。

 狭い癖に? 狭い故に? 上に上に積まざるをえないようだった。

京太郎「さてどうするか……」

綾「どうしましょうか……」

 一考。後、

京太郎「よし、俺を踏んでくれ!」バッ

綾「ふええええええええええっ!?///」

337 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 01:41:53.47 ID:zpwCSnGQo

 言葉よりも早く、その場に四つん這いになる俺。

 その体勢から綾ちゃんを仰ぎ見る。

綾「っ!///」サッ

 慌ててスカートを押さえる綾ちゃん。

京太郎「あ、悪い」

綾「い、いえ……でも、あのその、急に踏んでくれなんて……///」

京太郎「でも、そうでもしないと届かないだろ?」

綾「ですけど……」モジモジ

京太郎「大丈夫、絶対覗いたりしねーから!」

綾「や、そうじゃなくて……うう、分かりました、乗りますよ……」

京太郎「ばっちこーい!」

 渋々ながら承諾してくれた綾ちゃんが靴を脱ぐ。

 そのまま、ハイソックスに包まれた足で俺の背中に――のしっ。

綾「お、重いですか? 重いですよねっ?」

京太郎「いんや、全然」

 お世辞ではなく。

 むしろご褒美だぜ(罰ゲームではないという意味)。

339 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 02:09:04.70 ID:zpwCSnGQo

京太郎「それより、届きそうか?」

綾「あ、はい。やってみます。んーっ……」ググッ

 俺の上で爪先立ちになる綾ちゃん。

 ぐっと体重がかかるが、それでも気にならないレベルだ。

 細いなぁ中学生。軽いなぁ中学生。

綾「ん、んぅ……っ! もうちょっとで、奥、奥に届い、てっ……ぁ、ダメぇ……!」プルプル

 まったく中学生は最高だぜ!

京太郎「無理はしなくていいからな。足を滑らせたら大変だ」

綾「は、はい……」

 ぴょん、と飛び退く。

 そそくさと靴を履く綾ちゃんの横で俺も立ち上がる。

綾「ごめんなさい、役に立てなくて……」ショゲー

京太郎「気にすんなって。駄目なら次の手を打つだけさ」

綾「次の手……ですか?」

京太郎「ああ」スッ

 今度は跪く。

 その体勢から――



京太郎「さあ、今度は肩車だっ!!」



綾「」

344 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 02:29:43.69 ID:zpwCSnGQo

京太郎「ん? どうした?」

 返事がない。

 太ももの位置にあった目線を上げて問い掛ける。

 と、

綾「む――むり! 無理です!!///」ブンブンッ

 両手を振って全力拒否されてしまった。

京太郎「無理って……なんでだ? 嫌なのか?」

綾「い、嫌とか、そういうわけじゃ……」モゴモゴ

京太郎「じゃあ」

綾「でも無理なんです!///」カァー

京太郎「そんなこと言わないでくれよ! 頼む、させてくれ!」

綾「うっ……だ、だって、ちゃんと知り合ったのは今日がはじめてなのに、いきなり……///」

京太郎「優しくするから! な? とにかくやってみようぜ!」

綾「や、優しく……してくれるんですか……?」

京太郎「ああ、約束する。絶対に痛くしないし、すぐに済むから」

綾「……」

京太郎「……」

綾「……それなら」ボソッ

京太郎「!」

綾「それなら……おにーさんなら、いいです、よ……///」モジモジ

349 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 02:55:05.86 ID:zpwCSnGQo

京太郎「本当か?」

綾「……///」コクン

 言葉の代わりに首肯が返ってきた。

 俺の為に勇気を出してくれているのが伝わって、無性に嬉しくなる。

京太郎「ありがとな綾ちゃん。俺、精一杯やるから」キリッ

綾「は、はひ……ふつつかものですが……」ポーッ

 了解を得て、改めて行為に取り掛かる。



※ここからはセリフのみでお楽しみください



京太郎「じゃあ、後ろ向いてくれるか?」

綾「はい……」クルッ

京太郎「脚、開いて」

綾「……っ」

京太郎「どうした?」

綾「ご、ごめんなさい……やっぱり、恥ずかしく、て……」

京太郎「……悪い。ちょっと触るぞ」スッ

綾「え、ひやあっ!?」

グイッ

351 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 03:16:45.20 ID:zpwCSnGQo

クパァ...

綾「やっ! やだぁ……///」

京太郎「ゴメンな、でもこういうのは一気にやっちゃった方がいいから」

綾「そ、そうなんですか?」

京太郎「ああ。ほら、もう入れるぞ」

綾「えっ!? そんな、いきなり!?」

京太郎「言ったろ。一気の方がいいって」

綾「でも……」

京太郎「いいから、もう少し広げて……」グッ

綾「あ、ぁああっ……///」

京太郎「よし、いくぞ……」ググッ

綾「んっ……お、おにーさぁん……」プルプル

京太郎「今だけの辛抱だから、すぐに良くなるから、な」

綾「わかりました……んんっ///」

スポッ

京太郎「どうだ? ちゃんと(頭が太ももの間に)入ったろ?」

綾「はい……おにーさんの(頭)、すっぽり……」

382 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 21:36:06.13 ID:zpwCSnGQo

京太郎「いいか、動くぞ」

綾「あ、あのっ!」

京太郎「ん?」

綾「や……優しくして、くださいね……?」カァァ

京太郎「ははっ。心得ました、お姫様」

グッ

綾「ふ、ぁ……っ」

京太郎「痛くないか?」

綾「はい……これくらいなら……」

京太郎「ゆっくりするから、痛かったら言ってな」

ググッ

綾「んぅ……すごい……体が、ふわーって……///」

グググッ

綾「ゎ、わっ……浮いちゃう……っ!」

384 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 21:53:03.50 ID:zpwCSnGQo

京太郎「ッ――!」

グンッ

綾「っ、ふわぁぁぁ……///」

京太郎「綾ちゃん、平気か?」

綾「だいじょぶ、です……少し、くらくらしますけど……」

京太郎「そっか、それなら良かった」

綾「わ、私の方こそごめんなさいっ」

京太郎「ん?」

綾「えと、太ももなんかでおにーさんの(頭)、挟んじゃって……」

京太郎「そんなことか。気にしなくていいよ」

綾「でも……」

京太郎「安心しろよ。すごく綺麗ですべすべして、いい太ももだから」サワサワ

綾「ひゃ、んっ///」

京太郎「ずっとこうしていたいくらいだよ」

綾「ず、ずっとは困ります!」

京太郎「はは、そりゃそうだ」

綾「もうっ、からかわないでくださいよおにーさん!」プンプン

京太郎「悪い悪い――じゃあ、ここからは真面目にやるから」

綾「ぁ……はい、おねがいします……///」

……
…………
………………

387 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 22:21:39.47 ID:zpwCSnGQo

京太郎「よ、おまたせ」

 買い物が終わって。

 店外で待っていた憧達に声を掛けた。

憧「おかー。ちゃんと買えた?」

京太郎「ロンオブモチ」ガサッ

 手にした袋を掲げて見せる。

京太郎「ま、綾ちゃんのお陰だけどな」

憧「だよね。ありがと綾……って、どうしたの? 顔赤いわよ?」

綾「ぅ……?///」ポー

 俺の背中に半身を預けるように立っていた綾ちゃんに憧が気付いた。

 彼女の顔はのぼせたように赤く、目もとろんとしている。

 風邪かと思い店を出る前に訊いたが、違うらしい。

391 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 22:54:49.92 ID:zpwCSnGQo

憧「何かあったの?……何かされたの!?」ガタッ

京太郎「オイ」

 失礼な。

 紳士の俺が中学生に手を出す訳ないだろ。

 胸だって、見たところ憧より小さいし。

 まだ発展途上なのだろうが、今の時点では食指は伸びない。

綾「な、なんでもない! おにーさんは何も悪くないよ!///」ブンブン

憧「めちゃくちゃ庇ってるような言い方なんですけど……」

綾「本当だよ! おにーさんは優しくしてくれたもん!」

憧「え?」

綾「え?」

憧「………………優しく?」

綾「う、うん……えと、私は初めてだからいきなりは無理って言ったんだけど……」

綾「頼むからさせてくれって、優しくするからって、おにーさんが……///」ポッ

憧「」

398 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 23:23:35.03 ID:zpwCSnGQo

綾「それからすぐ後ろを向かされて、おにーさんの手で広げられて……///」モジモジ

憧「」

綾「おにーさんは、もう入れるぞ、って。一気にやっちゃった方がいい、って」ギュッ

憧「」

綾「最初はやっぱり怖かったんだけど、すぐ良くなるから、って声を掛けてくれて」フニャ

憧「」

綾「してる時も、「痛くないか?」、「綺麗だよ」、「ずっとこうしていたい」、って……///」クネクネ

憧「」

綾「確かに恥ずかしかったけど、それでも嫌だなんて思わなかったから――」

綾「――だから、おにーさんは悪くないよ!」

綾「ねっ、おにーさん!」

京太郎「うんっ! そうだなっ!」

 まったくもってありのままだ!

404 名前:5月20日(月)[saga] 投稿日:2013/11/07(木) 23:56:31.89 ID:zpwCSnGQo

 が、

憧「……………………………………………………」

京太郎「あれ?」

凛「先輩……そんな人だったなんて……」

ひな「げんめつー」

ギバ子「げ゛だ゛も゛の゛だア゙ア゙ァ゙゙ァ゙ア゙~~~!!」

京太郎「アレェ?」

 何この雰囲気。

 まるで俺が悪者みたいな。

 普通に考えて、後輩思いの良い先輩だなーと評価が上がる場面では?

憧「京太郎」

京太郎「あ、はい」クルリ

 振り返る。

 鬼がいた。

 空が青かった。

京太郎「え?」



 宙を舞っていた。



綾「お、おにーさーーーーーん!?」

 綾ちゃんの悲鳴と、

憧「悪は滅びた……」コォォ

 俺を空に発射した憧の声を聞きながら、

 着陸したら、次は薬局に寄らなくちゃな――と考える俺だった。

【TO BE CONTINUED...】



【須賀京太郎のステータスが更新されました!】
 称号:駆逐艦マニア(?) (new!)
 憧への印象:...→うまくない
  →M(まったく)C(中学生は)S(最高だな!) (new!)

【新子憧のステータスが更新されました!】
 称号:恋バナ聞き専ガール (new!)
 京太郎への印象:...→いつか見返してやるんだから!
  →黙れ (new!)