勉強会(直球)

361 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 01:21:43.47 ID:7DOisu05o

 鉛のような時間が続いていた。

 一秒が一分にも、永遠にも感じる鈍重な時間。

 息苦しい。

 激しい運動をした訳でもないのに、呼吸が乱れる。

 心が軋みを上げているのだ。

 碌な身動きも認められず、手足を伸ばすことも叶わない。

 そんな状態で強制される行為に、俺は精神を蝕まれていた。

 悲鳴を上げたい。

 しかし許されない。

 この空間の主が決して許しはしない。

「……もう、やだ」

 隣で、声。

 俺の友人にして、同じ囚人である、高鴨穏乃のものだ。

 穏乃は、平素からは考えられないほどに衰弱していた。

 感情の消え失せた瞳で、命じられたままを行う機械。

 それが今の、今までの穏乃だった。

 その穏乃が、か細い声を零した。

「もうやだよ、おねがい、ゆるして……ねえ、憧……っ」

 言葉に、

「……駄目よ」

 この空間の主――憧は、淡々と答えた。

 親友の悲鳴じみた訴えに、眉ひとつ動かさず。

 どこまでも冷酷。

 どこまでも残忍。

 どこまでも非情に、憧は言った。

「これは、アンタ達の為にしていることなんだから」

「ッ!」

 それが俺の限界だった。

「ふ、ッざけんな……!」

 椅子から立ち上がる俺を、憧の視線が射抜いた。

 それがどうした。

 強い意志で睨み返す。

 穏乃は苦しんでいるのに。泣いているのに。

 こんな仕打ちが俺達の為だなんて。

 納得出来る筈がない。

 全身の毛が逆立つ感覚。

 血液が沸騰する錯覚。

 叫ばずにはいられない。

「憧……どうして、」

 どうして――

362 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 01:23:59.91 ID:7DOisu05o















京゛太゛郎゛「゛ど゛う゛じ゛で゛勉゛強゛な゛ん゛が゛ざ゛ぜ゛る゛ん゛だ゛よ゛お゛ぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛ア゛!゛!゛!゛!゛!゛」゛















365 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 01:48:01.61 ID:7DOisu05o

憧「うるさい。口じゃなく手を動かしなさい」

京太郎「はい……」ストン

 力なく椅子に腰を落とす。

 目の前の机にはノート、ノート、プリント、教科書、ノート、キン消し、参考書、ノート、プリント……

 そう、勉強会なう。

 会場は麻雀部の部室だ。

穏乃「もーやだー! 勉強したくなーい!」ウギャー

 隣で穏乃が騒いでいる。

 俺だって同じ気持ちだ。

 こうして憧が監視の目を光らせていなければ床を転げ回りたいほど、勉強したくない。

 したくないが、しなければならない。

 何故なら木曜から中間テストだから。

 何故なら部活禁止期間だから。

 何故なら憧に勉強会の監督を頼んだのは他でもない俺と穏乃だから。

 だから、逃げ場なんて最初からどこにもないのだ。

368 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 02:12:29.72 ID:7DOisu05o

憧「普段から勉強してればこんなことにはならないのよ。自業自得」ツーン

京太郎「おっしゃる通りでございます……」

穏乃「でもさぁ、普段は部活で忙しくて勉強してる暇なんてないよ?」

憧「じゃあ家に帰ってから何してるか言ってみなさいよ」

穏乃「えーっと……ご飯食べてー筋トレしてーお風呂入ってーストレッチしてー漫画読んでー、で、寝る! 11時前には!」

憧「ダンベル持ってる暇があったら鉛筆持ってなさいこの脳筋娘!!」

 それには同意する。

 こんな元気だけが自慢ですみたいな奴がなんで麻雀やってんだろう。

京太郎「つーか、筋トレなんてしてるから背が伸びないんじゃないのか?」

穏乃「そ、そんなことないよ! 無茶なトレーニングはしてないし!……多分!」

京太郎「どうだかなぁ」グリグリ

穏乃「わー! 縮むツボやめー!」

憧「そこ、サボらない!!」カッ

369 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 02:36:30.22 ID:7DOisu05o

 怒られたので真面目にやる。

 今はテスト範囲の基礎の部分を復習している。

 まずは一通り基本を洗い直し、それから応用問題に取り組む。

 授業を濃縮したような、出来ない子向けの方針だった。

京太郎「でも、あー、」

 なんとなく言い出して、だが口ごもってしまった。

 お陰で憧から怪訝な視線を向けられる。

憧「……なによ?」

京太郎「いや、うん。ありがとな、俺まで世話になっちゃって」

憧「別に。しずのついでだし。マネージャーに赤点取られても困るし」

京太郎「はい。ありがとうございます」

 会話終了。

 いいから続けろと言わんばかりに穏乃の方へ向き直る憧。

 そんな憧に、穏乃が。

穏乃「憧ー。やっぱり京太郎のこと怒っ」

憧「てるわよ」

穏乃「ぁう」

 ぁう。

370 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 03:01:01.66 ID:7DOisu05o

 ちら、と横目で窺う。

 食い気味に返す憧は無表情で、だからこそその裏の怒りが滲んでいた。

穏乃「でも、胸を触られただけなんでしょ? そんな何日も引きずるようなことじゃ……」

憧「触られただけ!!?」クワッ

穏乃「ひッ」

憧「あのねぇ、マンガやアニメじゃないのよ!? 実際に胸を触られたらね、キャーとかイヤーじゃ済まないの! 思い出すだけでム……イライラするの!!」ゴッッッ

穏乃「ひぃぃぃ」ガタガタ

 ひぃぃぃ。

 この荒ぶりようである。

 まあ、お怒りはごもっともなんだが。

 土曜の指令以来、憧はすっかり激ぁこプンプン丸なのだ。

 それこそ、この勉強会に応じてくれたのが奇跡的なほどに。

玄「うーん……これはなかなかのなかなかだね」アハハ

宥「あったかくない……」プルプル

灼「ハルちゃん、ここ教えてほし……」ピトッ

レジェンド「う゛、専門外の教科……」タラリ

 この人達もいます。

378 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 03:33:05.32 ID:7DOisu05o

 現在、部室の中央に机を集中させて上級生組と一年生組で半分に分かれて使っている。

 上級生組はレジェンド、一年生組は憧が先生役だ。

 と言っても、赤点が危ぶまれているのは俺と穏乃だけなので、先輩方はゆるーい雰囲気である。

憧「大体、中高一貫で油断してたしずと受験で入った京太郎がどうして同レベルなのよ?」

京太郎「受験の時だけ必死に勉強したからだよ!」キリッ

憧「偉そうに言うな! 阿知賀なんて楽勝じゃない。中の下ぐらいでしょ」

京太郎「うわー言うねぇ。勉強見てもらっといてナンだけど、憧ってそんなに頭いいのか?」

憧「アンタ達よりはね」

京太郎「そりゃそうだけど」

穏乃「京太郎ー、憧はすごいんだよ? なんたってあの晩成高校も余裕ってぐらいなんだから!」ムンッ

 と、ない胸を張る穏乃。

京太郎「いや、地元民じゃないから凄さが分からん」

レジェンド「偏差値70ぐらいだっけ」

京太郎「すっげえ!!?」

灼「その晩成を倒してインターハイに出場したハルちゃんもすごい!」イヤッホォーゥ

京太郎「アッハイ」

379 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/11(金) 04:25:17.25 ID:7DOisu05o

 ていうか、そうか、晩成=例のインハイ常連校か。

 この辺の情報がまだ足りてないな。

京太郎「……ん? 待てよ、じゃあ憧が進学するつもりだった高校って」

憧「晩成よ」

 やっぱり。

京太郎「そんなすげートコ蹴って阿知賀に来たのか……親に何か言われなかったのか?」

憧「別に。阿知賀だって地元の評判は悪くないし、そもそも晩成を目指してたのだって強い麻雀部があったからってだけだし」

京太郎「基準は麻雀っすか……でも、部活ばっかりしてたらやっぱ成績落ちるだろ?」

憧「落ちるけど、いつでも巻き返せるもん。文句を言われない程度の順位をキープして、今は麻雀優先」

京太郎「はー……」

 なんというストイックさ。

 憧レベルで部活と勉強を両立させるのは、常人には相当厳しいだろう。

 賢くて可愛くて、麻雀馬鹿な憧だった。

401 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 00:53:05.37 ID:AIc87zpmo

……
…………
………………

憧「――はい、じゃあ一旦休憩ね」

「「よっしゃああああああああああぁ」」グデェェェン

 言葉の勢いとは裏腹に、力なく机に突っ伏す俺と穏乃。

 疲れた。

 入学してからの一ヶ月間より濃密に勉強した気がする。

京太郎「もうダメだ、頭から煙出てきそう。あるいは液状化しそう」ゲルゲル

憧「そんなオカモチありえないから」

 よく分からない言い回しで切り捨てられた。

穏乃「はー……何もしないをするって幸せ……」グッタリ

京太郎「健康優良児らしからぬ発言!」

憧「休憩が終わったらワンランク上の問題を出すからね」

穏乃「うぎゃー! これからは家の手伝いもちゃんとやるから許してー!!」

憧「いや、それテストに関係ないから」

403 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 01:16:06.31 ID:AIc87zpmo

京太郎「家って、そういえば店やってんだっけか」

穏乃「そだよ、和菓子屋ー」

京太郎「ふんふむ。で、玄さん宥さんちが旅館で憧んちが神社」

玄「そうだよー」

宥「あと、灼ちゃんのおうちはボウリング場だね」

憧「それがどうしたのよ?」

京太郎「いや、女子部員全員の家が自営業なんだなーと改めて思ってさ」

憧「あー」

玄「確かに、ちょっと珍しい偶然かもだね」

穏乃「京太郎の実家は違うの?」

京太郎「ごく平凡な一般家庭だな。だから家が何かの店ってのが不思議っつーかなんつーか」

灼「私達からすればそっちのが新鮮……」

憧「家でゴロゴロしてたら仕事手伝わされるもんねー」

宥「うん……おこたでのんびりしてたいのに……」プルプル

 環境の違いって大きいんだなぁ、と感じる会話だ。

405 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 01:32:22.23 ID:AIc87zpmo

 と、

 ふと思いついたことを口に出してみる。

京太郎「じゃあ、みんな結婚する時は婿養子を取るのかな」

 すると、

憧「……………………………………………………アンタねぇ」ジトッ

京太郎「オレェ?」

 何やら冷めた視線を頂戴してしまった。

憧「女所帯のド真ん中でいきなり結婚の話とか、どういう神経してるのよ……」ジトー

京太郎「いや、ふと気になって。そんなにマズい話題だったか?」

憧「アレを見れば分かるわよ」クイッ

京太郎「アレェ?」クルッ



レジェンド「お見合い……縁談……家族の視線……うっ頭が! 頭がああああああああああ!!!」ウゴゴゴ

灼「ハルちゃーん!!」



憧「分かった?」

京太郎「分かった」

408 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 01:56:26.80 ID:AIc87zpmo

憧「ま、流石にハルエよりは全然若いし、あたしはそこまで危機感持ってないけどね」ケロッ

レジェンド「」チーン

灼「ハルちゃああああああああああん!!!」

 男嫌いがぬかしおる、と思ったがヤブヘビ怖いもんね。黙っとこ。

京太郎「で、婿養子の話に戻っていいか?」

憧「どんだけ婿養子トークしたいのよ……期待に添えなくて悪いけど、あたし次女だしあんまりそういうことは言われてないわよ」

玄「私も次女だからどうだろう? あ、でもおねーちゃんは……」

宥「うん……もしかしたらそうなるかも」モフン

 マフラーに口元を埋めるおなじみの仕草。

京太郎「やっぱり老舗旅館って跡取りとか気にするんですか?」

宥「お父さんは心配しなくていいって言ってくれてるけど……」

 そういう訳にもいかない、と。

 しがないサラリーマンを父に持つ身には遠い世界の話に聞こえてしまう。

灼「うちは半分おばあちゃんの道楽だから問題な……」

京太郎「なるほど」

穏乃「私んちは期待してないって言われてるよ!」

憧「あんた、もうちょっと親心を汲んであげなさいね……」

422 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 04:41:25.85 ID:AIc87zpmo

京太郎「ってことは、この中で婿を取る可能性があるのは宥さんだけ?」

憧「なんじゃない? うちはお姉ちゃんがちゃんと巫女やってるし」

宥「ぅう……女将なんて出来る気がしないよぅ……」プルプル

玄「おねーちゃんがんば! 私も一生懸命働くから!」ギュッ

宥「玄ちゃあん……おねーちゃんを養ってぇ……」プルプルプルプル

 ダメ姉がいる!

 憧もお互いを支え合う(物理)姉妹を複雑な表情で見ていた。

 容姿は文句なしに最高なんだけどなぁ、どっか危なっかしいんだよなぁ。

 しかし。

 宥さんが結婚か……

京太郎「………………」

穏乃「? 京太郎、急に黙ってどうしたの?」

京太郎「……ウオアー!! お父さんは許さーーーん!!!」ガタァァァッ

穏乃「本当にどうしたの!?」ビクゥッ

427 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/12(土) 05:33:55.07 ID:AIc87zpmo

京太郎「ハッ……すまん、宥さんが結婚すると考えたら親心がこう、グツグツと」

憧「なんでアンタが親心煮えたぎらせてるのよ……」

京太郎「だってよー、麻雀部のみんなって今一番つるんでるし、身内感あるだろ?」

玄「うんっ! あるね、あるある!!」グッ

京太郎「ど、どうも」

 すっごい肯定された。

京太郎「……で、だからさ、ふと寂しくなっちまうんだよ。いつかは離れ離れになると思うとさ」

穏乃「あ……」

憧「んー……そりゃ、いつかはそうなるだろうし、そうなったら寂しいけどさ、今から考えても仕方なくない?」

京太郎「そうは言うがな大佐」

憧「誰が大佐よ」

 遣り取り自体は軽快ながら、憧の表情はやや沈んで見えた。

 穏乃も、あからさまに悲しそうに眉尻を下げている。

 いかん、考えなしの発言で場の雰囲気を重くしてしまった。

 と、うろたえていると、

玄「そうだ!」ピコーン

 玄さんが、



                      -――-
                . . : : : : : : : : : : : : `丶、
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            ,'::/::.::.: i:.::.:: / │::.::.::.::|\| .:: |::.| ::.i
             |::i::.::.:|::.|::`ト|  | :|::.::.::.L イ::.::|::.| ::.|
             |::i::.::.:|::从≫=ミ|八 .::. 抖=ミ从::| ::.|   「京太郎くんがおねーちゃんのお婿さんになったらどうかな!?」
             |::i::.::.:|::.:|{ rJハ  \_{.rJハ }|::.:| ::.|
            V|::.::.|::.:| 弋ツ    弋ツ ::. | ::.|
            /Ⅵ:|::.:|'. ::、::、  '   ::、::、 /|: | ::.|
             ,::/゚|::.l :.仏     __     厶|: | ::.|
            .:/::.:|::.| :.|:个: . .  ‘ ’   . :介/::/::八
          /::{/{∧::.::.i.::|〈  {≧ ‐≦}  |/::.::.: /ヽ::..
            / ::.::/ _V^>、|∧ ∨ーヘ. /iレく∨ ∧.::.、
.           / ::.::.」 // \く>、∨|  /∨rく_ン⌒∨ |::.::.\
          /::.::. 〔/ //⌒7┴ヘ_,//ー| ̄\\.\ 〕 .::.::.:\
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 まーたやらかした。

473 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/13(日) 00:59:37.06 ID:tSoEU7gLo

宥「ふ――ぇええええええっ……!?」

 宥さんが目をまんまるに見開いて驚いている。

 鏡を見ればきっと俺も同じ顔をしていただろう。

 憧も穏乃も、キョトンというかポカンというか、な表情だ。

玄「」ムフーッ

憧「……玄、あのさ……どうしてそうなるわけ?」

玄「え? だって、いつか誰かと結婚しなくちゃいけないなら、知らない人よりも知ってる人の方がいいよね?」

憧「まあ……そうかもね。お見合いでいきなりーってよりは、やっぱり恋愛結婚のが理想よね」

玄「だよねっ。だから、おねーちゃんと京太郎くんが結婚すれば松実館は安泰だし、二人を中心にみんなで集まれるかなーって!」ニパッ

 そのりくつはおかしい。

穏乃「なるほどー!」パァァッ

 ぇぇぇ。

穏乃「確かにそれならずっと一緒に居られそう! 京太郎、宥さんと結婚しちゃいなよ!」

京太郎「軽ぅ!? そんなホイホイ出来たら苦労しねーよ!」

 したいけどな! したいけどな!

484 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/13(日) 01:21:35.58 ID:tSoEU7gLo

玄「えー、ダメかなぁ」

憧「かなぁってアンタね……当人の気持ち無視してたら意味ないでしょーが」ペシ

玄「ぁぅ」

 例によって物理的に窘められる玄さん。

 ほとんど力は入っていないようだが、はたかれた額を抑えながら頬を膨らませている可愛い。

玄「いい考えだと思ったんだけど……そんなにダメだったかな、おねーちゃん?」

宥「ふあっ!?」ビクッ

 さっきから言葉未満の音しか発していない宥さん。

 大袈裟に肩をすくめ、小動物チックに玄さんと俺を交互に見る可愛い。

宥「ゎ、私は、あの、その、ダメ、だよ、ダメ、ゼッタイ」

京太郎「!!!!!!!!!!」ガーン

 はっきりダメって言われた……

 あの気弱ながらも優しい宥さんの口からキッパリと。

 元々突拍子もない話だったとは言え、メゲる。

502 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/13(日) 01:47:30.67 ID:tSoEU7gLo

京太郎「」メゲタァ

穏乃「あっ京太郎がメゲてる!」

憧「ホントだわ、目に見えてメゲてる!」

玄「おねーちゃんが京太郎くんを拒絶したから!」

宥「え、ぇえっ!? 私、拒絶なんかしてないよっ?」

 ん?

憧「え、したでしょ。京太郎と結婚なんて死んでもお断りって」

宥「そんなこと言ってないよ!?」プルプル

 それは本当に言ってない。

宥「あの……もしかして誤解してる?」

 誤解?

 言葉なく宥さんを見る。

 宥さんはマフラーの端を両手で弄りながら、

宥「えっと、私がダメって言ったのは、京太郎くんのことじゃなくて……私のこと、なの」

宥「だって、ほら、私って寒がりだし、暗いし」

宥「ぐーたらで、いっつも玄ちゃんにお世話してもらってて」

宥「それで最近、ふくらはぎの辺りがぷよぷよしてきちゃって……///」

宥「だから、そんなダメダメな私と結婚なんて京太郎くんに悪いなぁ、って」

宥「……ね?」モジッ





 Q:女神を見たことがある?

いいえ─┐   ┌───わからない 9%
 11%  │ _..-ー''''''l'''''― ..、
     ./   .l,  |     `''-、
   ./     .l  .|       \
   /ゝ、     l. |         ヽ
  ./   .`'-、    l. |           l
 │      ゙''-、 .l,|             l
  |         `'″           |
 │                   ,!
  l        部室で見た   ./
  .ヽ                  /
   .\        80%   /
     `'-、              /
       `''ー .......... -‐'″

510 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/13(日) 02:10:37.70 ID:tSoEU7gLo

京太郎「宥さん」

宥「は、はい?」

京太郎「幸せになりましょう」

宥「ふえっ!?」

憧「ふきゅっ!?」

京太郎「俺の人生すべて、貴女に捧げます……」スッ

 床に跪き、恭しく宥さんの手を取った。

 最初は冷たかったその手に、俺の体温が移っていく。

宥「ぁ……あったか~い」ポワワー

 その満面の笑顔を見れば答えなんていらない。

 した。これは結婚した。

 愛を求め流れ着いたこの奈良の地で、俺は運命の女性に巡り逢えたんだ。

穏乃「京太郎、宥さん、おめでとっ!」パチパチ

玄「おめでとー!」パチパチ

灼「おめでた……」パチパチ

レジェンド「教え子に先を越された……」パチパチ

ウォーズマン「コーホー」パチパチ

憧「」

京太郎「ありがとう! みんなありがとう!」

 5月の空はどこまでも晴れ渡り――

 ――俺達の歩む未来を、あたたかく照らしてくれているようだった。





                                            憧「阿知賀が共学化!?」シリーズ~カンッ!~

519 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/13(日) 02:37:00.20 ID:tSoEU7gLo

宥「京太郎くんもありがとうね」ニコ

京太郎「お礼を言われることなんて何も。俺と宥さんの仲じゃあないですか」

宥「ふふっ。冗談でも嬉しいよ」

京太郎「はっはっは。……は?」

宥「え?」ニコニコ

京太郎「……あの、今、なんと?」

宥「冗談でも結婚しようなんて言ってくれてありがとう、って」

京太郎「……………………………………………………本気デスヨ?」

宥「もう、そんなこと言って。私おねーちゃんだもん、本気かどうかくらい分かるよ?」クスッ

 アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!

 ナンデ!? ユウ=サンナンデ!?

 なんで今日……いや今に限ってそんなおねーちゃん風ビュウンビュウン吹かすんですか!?

 いつもはもっとポンコツ側の人じゃないですかあなた!

 いつもみたいに「あったか~い」と「あったかくない……」と「ゎゎゎゎゎ」だけでコミュニケーション取りましょうよ!!

宥「でも、本当に京太郎くんがお婿さんになってくれたら毎日楽しそうだよねぇ」ポワーン

京太郎「んまっ、つぁ、ちょぎっ――」



宥「そしたら、玄ちゃんは京太郎くんの義理の妹になるね」



              /:..:..:..:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ |:.:.:.ハ:.:.:.:j:.:.:.:.} ゚。:|\ :.:.:.:.:.|:..:。:..:..:..:.\
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570 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 00:41:44.56 ID:OiIXOBbao

玄「お! おおうぉうぉうおおをおををおおおおねーちゃん!? なに言ってるの!?」アセアセ

宥「あれ、間違ってた……?」キョトン

憧「えーっと……間違ってはないわね、うん。二人が結婚したら玄は京太郎の義妹になるわ」

宥「ほらね」フフッ

玄「で、でもでも! 私の方が京太郎くんより年上だよ? お姉さんだよ!?」

灼「いや、そういうものだから」ズバァッ

玄「はうぅ……」

穏乃「年上の妹かぁ~。なんかこう、不思議な感じですね!」

 年上の妹かぁ……

 なんかこう、興奮するな。

穏乃「ねーねー玄さん、なんか妹っぽいこと言ってみてください!」

玄「い、妹っぽいこと!? そんなの、急に言われても思いつかないよぉ……」

憧「いや、アンタ普段から宥姉の妹でしょうに」

灼「くろは こんらんしている」

573 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 01:11:06.99 ID:OiIXOBbao

穏乃「ダメですか……?」ジィー

玄「ううっ、穏乃ちゃんの純粋な眼差し! でも……!」

京太郎「ダメですか……?」ジィー

玄「京太郎くんまで!?」ズガーン

 当然だ。

 だって、年上の玄さんが妹キャラを演じてくれるチャンスなんだ。

 乗るしかない、このビッグウェーブに。

 ……たとえ隣で憧に汚物を見るような目で睨まれていても。

玄「う、ぅう~………………じゃあ……恥ずかしいけど、ちょっとだけ、なら///」モジモジ

京太郎「ありがとうございます!!」ペッコリーン

穏乃「やったー! お願いしまーす!」バンザーイ

 深々と頭を下げる俺。

 高々と手を上げる穏乃。

 二人の声に引っ張られるように、玄さんは席を立つ。

玄「すー……はー……すー……はー……。……うん、いくよっ――」

 そして、





      ,.': :/:/: : /!|: : ;' |: :__: : :.|: : : :|: :l: . . .ヽ
.     /:, :,': :!:,': ! ||i: : | !l_、:ヽ ̄:ト: : : |.: :l: . : . .゙、
    /:,1:,'.: :|:レ|´l|ヽ: ゙、 ヽ_\l\!: : : :!.: :|: : : . |. l
   ,':/ !:l: : :!:| リニ、 \!イ斥"寸、!: : : :!:ヽ!: : : . !. .!   「きょ、京太郎お兄ちゃんはもう大人だから、玄の裸を見ていやらしい気持ちになったりはしないんだよね……?///」
   {:| |:l: : :|:i:斥寸    弋しソノ|: : : :|:ヽ|: : : : |:. .|
   ヾ !:|: : :抖乂ソ    `""  !: : : :!=、l.: : : :.|. . !
     | !: : :l:! ,, ",         ""|: : : :| |!: : : : .!: . l
     |λ: :l:l            |: : : :| ,ィ.: : : : :|: . .!
      jt |: : |l   _ っ        !: : : j´:|: : : : : |: . .!
    / :| ゙: : |:ヽ/ノ      .ィ.: : :,': :,'.:/: : : :|: . .|
    ,'/l | ゙: :y' ,ィl>... _ ..  ´ l: : /: :/:/: : : : :!: : ハ
    lj ヾ、 ∨/>!: : |: : :}   //|: /´: : : : : ノ: : : .ヽ
         ,'  ´-ヽ:.:|: : :|    "  У: :_ - "´ `ヽ: . .゙、
          l   -テ!:,': _ノ     /: /        \ ハ
       /|   l´/ニ__   /: : ,'          ヽ∧
     ,'  !   !'   `  ,.': : : : :|           ,'. . ヘ
     l.  ノ   ∧ァ__r‐-/: : : : ;ィ             /: . . . \




京太郎「なるに決まってるでしょうがああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」ガッタァァァァァ

玄「ふ、ふぇえええええっ!!?///」ビクーッ

587 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 01:48:41.73 ID:OiIXOBbao

京太郎「玄さん! いや!! 玄!!!」ズイッ

玄「ひゃあっ!?/// ぃ、今、名前で……///」カァァッ

京太郎「なる。なります。なった。なったぞお兄ちゃんはいやらしい気持ちになアアアアアアアアアアン!!!」

玄「う、うそ!? ダメだよお兄ちゃん、私達兄妹なのにっ……」

京太郎「そう かんけいないね」

玄「あるよ!?」

京太郎「どうせ義理だから! ねっ! 義理だから!」ズイズイ

玄「そ、そっか……義理、だもんね……?」グルグル

京太郎「そう、義理なんだ。だからお兄ちゃんが玄の裸を見ていやらしい気持ちになるのも仕方ないことなんだ」

玄「そうだよね、義理だったらいやらしい気持ちにもなっちゃうよ、ね……///」モジモジ

京太郎「そう、なっちゃうんだ。ていうか、なりたいんだ。だから玄の裸、お兄ちゃんに見せてくれないか……?」キリッ

玄「ふえっ!? は、裸はダメだよお兄ちゃんっ、みんなが見てるもん、凄い形相で見てるもん!」

京太郎「だったらロッカーに入ろう! ちょうどそこにあるから! GO! ロッカーGO!」グイグイ

玄「ゃ、引っ張らないでっ! お兄ちゃ、やめ、あっ、お、おねーちゃああああんっ! 京太郎お兄ちゃんに大人にされちゃうううううっ!///」










憧「もっとだ! もっと!! もっとSHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」ゴォッッッ










……
…………
………………

憧「さ、勉強再開するわよー」

穏乃「はーい」

京太郎「うーん……なんか頭が痛え。今の休憩も途中から寝落ちしてたっぽいし、勉強のしすぎかな……」ウゴゴゴ

憧「言うほどしてないから。真面目にやんなさい」

京太郎「へーい。先輩方も頑張りましょうね」ニコッ

玄「ぁぅぅ……///」プシュー

宥「あったか~い」ポワワー

灼「暑苦し……」

京太郎「?」

599 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 02:09:01.95 ID:OiIXOBbao

 なんだろう。

 悪い夢を見ていた気がする。

 いや、きっと見ている最中は凄く楽しい夢だったに違いない。

 それをまったく覚えていないから、その事実が辛いんだ。

 歯痒い。今度から夢日記を書く習慣でもつけようか。

京太郎「っと、勉強勉強」

 このままだと赤点→追試→補習のリアル悪夢不可避だ。

 マネージャーとして部活に参加し続ける為にも、ここが踏ん張りどころだろう。

 が、

京太郎「………………」ウゴゴゴ

 分からねぇ。

 憧の予告通り、休憩後に指定された範囲は難易度が上がっていた。

 だから、分からねぇ。

 どうしよう、憧に訊こうかな。

 けど、週末のこともあるし、そうでなくても何故か休憩前より機嫌悪そうだし。

 どうしよう。

602 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 02:25:07.43 ID:OiIXOBbao

京太郎「あ」

 そうだ、上級生に訊こう。

 この面子で一番教え上手なのは憧だろうけど、先輩達だって負けちゃいない。

 去年ないし一昨年に勉強したところなんて楽勝で教えてくれる筈だ。

 となると、

京太郎「」チラリ

玄「ひぅっ///」ビクッ

 ウゥーン。

 理由は皆目見当もつかないが、さっきから玄さんの様子がおかしい。

 俺のことをチラチラ気にしているようで、こちらが視線を向けると顔を真っ赤にして逸らしてしまう。

 これでは勉強を教わるのは難しいだろう。

 となると、

京太郎「宥さん、ちょっといいですか?」

宥「なぁに?」

 こうなる。

 鷺森部長? レジェンドとヨロシクやってるよ。

605 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 02:45:29.08 ID:OiIXOBbao

京太郎「ちょっと分からない問題があって……」

憧「」ムッ

宥「ん……どこ?」

京太郎「ここです」チョンチョン

 問題集を持ち上げて、指差す。

 と、

宥「……えっと、ちょっと待ってね……」ゴソゴソ

京太郎「?」

宥「ん、しょ」スチャッ

京太郎「可愛い!!!!!」

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        ′     : : : : :〃: : ,' |: |: : : :: :: :: ::|V:::: :::::|: : : : : ::|: : : : ::       |
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      |j l:::::::| : |: : : --|l--‐ヘ7  V 八: : : : 乂!  \:!`ー─+: : : :: |ミ′  ′
      |i' !::::::|: : V、: : : |V /⌒l    \: : ヘ   /⌒li   Y: : : :: :: | ″
      |l V:::|: : ::ゞ入: |  {!  }!     `ー''   {i  }l   |: : : : :: 〃: : :
      ´  ∨: : : : : :レ   |!  |!  、    r     !l  |!  、j: : : : :  j/: : ::    「ふあっ!?」
         |: : : : : コ!    !  j'   }==(    |!   j'  )コ:: : : :: /: : :  7
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635 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/14(月) 17:14:15.56 ID:OiIXOBbao

京太郎「宥さん眼鏡なんて持ってたんですか!」

宥「う、うん。授業中とかだけ使ってるの」

京太郎「なるほど、道理で見覚えがないわけですね!」

宥「登下校の時にも掛けてるよ……? 違うのだけど」

京太郎「違うのですから。こっちの方がよくお似合いですよ!」ニコ

宥「ぁ……ありがとう、ございます///」ポワワ

 なんで敬語?

京太郎「それでこの問題なんですけど」

宥「うん……あ、そこなら教えられるよ。そっちに行くね」

京太郎「わざわざすんません」

 とてとてと仮面ライダー宥さん眼鏡アームズが回り込んで来てくれる。

 で、

宥「ここはね、教科書のこのページに――」

 むにゅっ。

京太郎「!!!!!」

651 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 00:36:41.07 ID:sU+gI2Ivo

 こ、これはッ!

 この感触はッ!!

 背中に吸い付くようなこの優しい重みはッ!!!

_人人人_
> おもち <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

 宥さんのあの厚着越しでも触れればハッキリと伝わる柔らかさ。

 以前にも正面から抱き付かれたことはあったが、背後からのアプローチはまた趣が異なる。

 例えるなら、そう、歯医者。

 あの筆舌に尽くし難い興奮と背徳を今、神聖なる学び舎で体験している。

 グレートですよ、こいつァ……

宥「――で、この問題は解けるはずだよ。分かった?」

京太郎「あ、はい?」

宥「良かったぁ。また分からないところがあったら訊いてね」ニコ

京太郎「えっ」

 俺が顔を上げた時には、もう宥さんは来た時と同じとことこ歩きで自分の席に戻っていた。

 何も聞いていなかった……何も……

652 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 00:48:51.01 ID:sU+gI2Ivo

 どうしよう。

 また宥さんを呼びつける訳にもいくまい。

 となれば、

京太郎「あのー、玄さん」

玄「は、はひっ!?」ビクッ

 こうなる。

 しかし、未だに様子がおかしい……

京太郎「えっと、大丈夫ですか? 具合でも悪いとか」

玄「う、ううん! 平気だよ、京太郎お兄ちゃん!」

京太郎「オニイチャン!?」

玄「はわぁっ!? ゎわ、忘れて! なんでもないから!///」アセアセッ

京太郎「いやいやいや……」

 無理だろ。

 突然のお兄ちゃん呼ばわりをスルーとか無理だろ。

 しかし、「京太郎お兄ちゃん」という言葉には何故か聞き覚えが……うっ頭が。

653 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 01:08:18.40 ID:sU+gI2Ivo

 仕方ない、今日のところは追求せずにいよう。

 優先すべきは勉強だ、勉強。

京太郎「実はまだ分からないところが……も、もちろんさっきの問題とは別ですよっ?」

宥「?」キョトン

憧「」ムムッ

玄「教えて欲しいの? いいよー。お、お姉さんにおまかせあれ!」

 気を取り直して、という表現がピッタリな様子の玄さん。

 席を立ち、ぱたぱたと俺の背後に。

 で、

玄「それで、どこが分からないのかな?」

 ふにゅっ。

京太郎「!!!!!」

 こ、これはッ!

 (中略)

玄「じゃあね。他にも遠慮なく訊いてくれて構いませんので!」パタパタ

京太郎「ぁぁー」

 何も……何も……

658 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 01:13:53.72 ID:sU+gI2Ivo

 どうしよう。

 どうすれば。

 宥さんはダメ。

 玄さんもダメ。

 としたら、

京太郎「……」

 煩悶。

 負い目がある。

 引け目もある。

 それでも、

京太郎「………………憧ー?」ボソッ

憧「!」ピクッ

 生きねば。

664 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 01:35:29.31 ID:sU+gI2Ivo

憧「……なによ、なんか用?」ツーン

 見るからに不機嫌そうな憧。

 それは俺のせいだ。

 だけど、頼らなくちゃいけない。

 不甲斐なさを噛み締め、また口を開く。

京太郎「ああ。勉強を教えてくれないか?」

憧「なんであたしが……また宥姉とか玄に訊けば?」

京太郎「憧がいいんだ」

憧「っ」

京太郎「……頼む」ペコ

 頭を下げる。

 気付けばペンを動かす音もない、沈黙。

 その中で、

憧「……仕方ないわね」

京太郎「!」

 憧が立ち上がる。

 近付く足音。

 そして、

憧「ほら、顔上げなさいよ。問題集貸して」





スカッ(カッ(カッッ(カッッッ...(エコー)





京太郎「!!!!!!!!!!」

674 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 01:50:53.07 ID:sU+gI2Ivo

憧「あー、ここかぁ……確かに少し難しいかもね。けどね――」

 (中略)

憧「――ってわけ。どう? 分かった?」

京太郎「分かったああああああああああッ!!!」ガターッ

憧「ひえっ!?」ビクッ

 咆哮が静寂の空間を粉砕する。

 雲散霧消。

 俺の心の中の闇は今、影も形も残さず消え去った。

憧「きゅ、急に大声出さないでよ! ビックリするでしょ!?」

京太郎「憧ー!!」ガシッ

憧「手ー!?///」カァッ

 この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから。

 (適当)。

677 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 02:21:57.97 ID:sU+gI2Ivo

京太郎「憧! 俺、やっぱり憧じゃないとダメだ!」

憧「ふきゅっ!?」

京太郎「この前はごめんな、俺が悪かった。許してくれ」

憧「ぁ、あの、その、えっと!?」アワワアワワ

京太郎「俺には憧しかいないんだ! 憧だけが頼りなんだ!!」

憧「な、なによ……さっきからやたら特別扱いしてくれちゃって……こ、姑息だわっ///」

京太郎「……ダメか?」ジッ

憧「っふぎゅ……/// し、し、仕方ないわねっ! 一度は引き受けた以上、ちゃんと最後まで面倒見るわよ!」

京太郎「サンキュー! さっすが憧様は話が分かるッ!」ニッ

憧「~~~っ……もう、ばか」プイッ

宥「あったか~い」

玄「やっぱりみんな仲良しが一番だねー」

穏乃「うんうん! これはもう勉強なんてしてる場合じゃないね!」

灼「場合だよ」ズバァッ

レジェンド「場合だね」ズバァッ

穏乃「二人して酷いっ!?」

681 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 02:39:43.06 ID:sU+gI2Ivo

……
…………
………………

憧「――はーい、それじゃ今日はここまでね」

レジェンド「みんなお疲れ!」

灼「お疲レジェンド」

            /   . . . . . . . : : : : : : : : . . .   \
             ,  . . . . : : .:. .:..:.:.:.:.:.:. .:. .:.:.:.:.:..ヽ:. . :. ヽ
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        ././ ′:!.:.|.......:小:.:.ハ__ .:.:.:.:iハ 斗:十:.ト:. .|:.:... i:. :
        i:.′} . :|. :! :.:.:斗{:.:「 丁i .:.:.:.ト:.V ヘ:.{\:.:.`!:.:.:. |: :|
        |′.′::l .:|.ト:. .::| ヽ 气{\:.:{ \  ヽ. \} :. : |: :{
            i . .:.|:八.:.|ヽ{  _    \   ,z≦ミ、| :.: :.!:. |!  「お疲れ様ですっ!」
            | : /|.::.:.:.::! ,ァ= =ミ     ´   `'^| :. : |:.小
            |.:/ :! .:.:.:.ハ ′             /i/, | :. : |:.|i
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         ○: :′.:.:.ト. .           ,      八:.:..:}:. l:.‘
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       / . . {⌒ヽ       八  z__{ }___,  {.':.:.:./      /   |
      .′. .:|    \      《    ハ下  . /.:.:.:.′   ,    小
      / . . .:.{     ヽ   }  ∧__/ }ハ ≧7.:.:.:./     /     {:∧
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    / . ./..:.:.:.i      ∨ }    `≧-ヘ ∧ノ}:.:.:.:.{ . { .′     }:. . ‘.
  / . :/′:.:.:.}  ‘.     V|         ∨   |:ノ}:.:}  j /    /  {:.:. . ‘.
宥「おつかれさまでしたぁ」

 労いの声が夕暮れの部室を飛び交う。

穏乃「づがれだああああああああああ」

京゛太゛郎゛「゛も゛う゛指゛先゛び゛ど゛づ゛も゛ダ゛ヴ゛ン゛ざ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」゛

 主に労われる側である俺と穏乃の耳には届いていないのだが。

686 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 03:02:58.68 ID:sU+gI2Ivo

憧「だらしないなぁ……シャキッとしなさいよシャキッと」

京太郎「無理。頭重くて持ち上がらねえ」

穏乃「同じくー……」

 受験以来の脳味噌フル回転は堪えた。

 だが、せめて視線だけでも憧へ。

京太郎「丁寧に教えてくれてありがとな、憧。すっげー分かりやすかった」

憧「な、なによ藪から棒に」

穏乃「あ、私も私も。ありがとー憧ー」

憧「しずまで……」

 二人して額を机にへばりつけたまま、憧に感謝の言葉を贈る。

 過酷な勉強会だったが、間違いなく有意義だった。

 憧のお陰だ。

憧「も、もうっ! ありがとうなんてまだ早いでしょ。ちゃんと赤点回避出来てから言いなさいよね」フン

 はいはい照れてる照れてる。

 顔が見えず幸いとばかりにニヤニヤしておく。

689 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 03:22:18.15 ID:sU+gI2Ivo

憧「あ、そうだ。赤点回避出来たら見返りとかもらっちゃおうかな~?」ニヤリ

 打って変わって意地悪げな声。

 そろそろ回復してきたし、起き上がるとするかな。

穏乃「いいよー。その時はラーメン奢ったげる!」

 隣では先に穏乃が椅子から立ち上がっていた。流石の回復力。

憧「え、いいの? 冗談のつもりで言ったんだけど」

穏乃「これだけ助けてもらってるんだもん、それくらいお安い御用だよ!」

憧「ほほーぅ、言ったね穏乃クン? 財布の中身確認しなくて大丈夫?」

穏乃「うぇ。だ、大丈夫……でしょ? だよね? ラーメンだもんね?」

憧「さてどうかな~」ニヤニヤ

穏乃「い、一番安いのでお願いしますっ!」

 熱い手のひら返し。

京太郎「つか食い物取られたな……俺どうしよ」

穏乃「別に被ってもよくない? ていうか割り勘にしない!?」

京太郎「オイコラ」デコピンッ

憧「感謝の念はどこ行ったのよアンタ」デコピンッ

穏乃「うぁいたー!?」><

696 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 07:03:35.71 ID:sU+gI2Ivo

 俺と憧からデコピンを喰らって、うっすら赤くなった額を押さえる穏乃。

 は放っておいて、お礼を考えないと。

京太郎「何がいいかなぁ……」

憧「アンタも別に真面目に考えなくていいわよ?」

京太郎「いやーそういう訳にもいかんだろ。穏乃と同じでかなり助かってるし、ちゃんとお礼したい」

憧「……あ、そ。変に律儀よね、京太郎って」

京太郎「そうだ、一週間カバン持ちなんてどうだ!? 持つぜぇ~登下校の時とか超持つぜぇ~?」

憧「却下」

京太郎「じゃあどうすればいいんですかぁ!?」

憧「逆ギレ!? 自分で考えなさいよ!」

 にべもない。

 だが、ごもっともだ。

 そうして悩んでいると、声が。

 玄さんと共に部内やらかしランキング上位を総ナメするあの人の――声が。





レジェンド「デートでもしてあげたら?」





京太郎「ファッ!?」

713 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 15:25:34.41 ID:sU+gI2Ivo

憧「」

 ああっ憧がフリーズしてる!

 無理もないが、じゃあ俺だけで対応しなくちゃいけないのか……うごごご。

京太郎「……監督。説明を要求します」

レジェンド「えー? 言葉のまんまだけど」

京太郎「いやいや。いやいやいや。なんでデートっすか」

レジェンド「いいじゃんデート。年頃の女の子は喜ぶよ?」ニヤリ

京太郎「年頃の女の子っつっても憧ですよ……? それに、そんな時間ないでしょ」

レジェンド「あるんだな、それが」

京太郎「ひょ?」

レジェンド「今月の26日……日曜ね。私が用事で空けるから部活は休みにする予定だったんだ」

京太郎「バン……ザド……?」

レジェンド「だからその日、もしテストで赤点回避出来たら須賀くんは憧をデートに誘うこと! 決定!」

京太郎「決定された!?」

718 名前:5月13日(月)[saga] 投稿日:2013/10/15(火) 15:53:45.10 ID:sU+gI2Ivo

レジェンド「顧問命令です」シレッ

京太郎「部員同士のデートを強制する権利なんて顧問にはねーよ!!」

レジェンド「さえずるなぁ……何? 須賀くんはデートしたくないの?」

京太郎「したいです」

 くずおれる。

京太郎「赤土先生……! デートが、したいです……」

レジェンド「うむ、その為にも中間テストを頑張りたまえ!」

京太郎「はい!!」

 問☆題☆解☆決!

 俺はな。

 肝心なのは……

レジェンド「憧ー。憧もそれでいいよね?」

憧「」ハッ

憧「いいわけないでしょなんであたしがデートなんてデートなんてデートなん」

レジェンド「あて身」ドスッ

憧「ふぎゅ」ガクッ

レジェンド「けって~い☆」

 問☆題☆解☆決(物理)!!

 こうして俺は、テストの結果次第で憧とデートすることになった。

 ちなみに気絶した憧はレジェンドが責任を持って家まで送り届けた。

 ついでに夕飯も御馳走になったらしい。

 なにやってだ。

【TO BE CONTINUED...】



【松実玄のステータスが更新されました!】
 京太郎への印象:...→\(・ω・\)おもち!(/・ω・)/身内!\(・ω・\)おもち!(/・ω・)/身内!
  →京太郎お兄ちゃんは大人なのに玄の裸を見たらいやらしい気持ちになるんだ……(new!)

【松実宥のステータスが更新されました!】
 京太郎への印象:...→あったかい男の子
  →おねーちゃんをからかっちゃいけません(new!)
最終更新:2013年10月17日 01:03