須賀京太郎は友達が少ない

516 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/25(水) 00:13:36.99 ID:Q/0D/8pMo

ガラッ

京太郎「……」

 朝の俺は静かだ。

 教室に入る時も言葉はない。

 何故かと言えば、クラスに友達が少ないからだ。

 少ないっていうか憧しかいない。

 泣きたい。

 入学から一ヶ月が過ぎて、未だに同性の友達がいない。

 結構きつい。

 そりゃあ女子にモテたいが為に遥々奈良まで来た俺だけど、だけども。

 同性特有の気安さが恋しくなる時だってあるのだ。

 とは言え現状、憧の存在は非常に大きい。

 クラスで唯一の友達なのだから、性別への不満なんて贅沢だろう。

 そんなことを考えながら、窓側――憧の隣に位置する自分の席を目指す。

517 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/25(水) 00:38:35.27 ID:Q/0D/8pMo

「でさーくさくってさー」ウフフ

憧「えーそれホントー?」アハハ

 俺とは正反対に、憧はクラスの人気者だ。

 女子にも男子にも。

 まあ、本人が積極的にコミュニケーションを取るのは女子だけで、男子はその様子を見て溜め息をつくだけだが。

 そのどちらにも属さない俺は、GW何してたトークに花を咲かせる憧と、

京太郎「よ、おはよー憧」

憧「あ、京太郎おはよ」

 簡単な挨拶を済ませて、席に着いた。

 ら、

「……」ジー

「……」ジー

「……」ジー

 憧ごと、近くに集まっていた女子数名から凝視された。

 なにゆえ。

523 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/25(水) 01:25:01.28 ID:Q/0D/8pMo

憧「ど、どうかした?」

「今」

「名前で」

「呼んだよね?」

憧「………………あっ!?」

京太郎「あー」

 そういえば。

 俺が憧を名前で呼ぶようになり、憧が俺を名前で呼ぶようになったのは連休中のことだ。

 つまり今日は、名前で呼び合う仲になってから初めての学校。初めての教室。

 油断してました☆

「えーなにどういう関係!?」

憧「ちょ、待っ、」

「いつの間にそんなに仲良くなったの!?」

憧「べ、別に仲良くなんて」

「もうヤった?(直球)」

憧「ふきゅっ!?」

 元お嬢様学校とは一体……うごごご……

524 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/25(水) 02:06:38.30 ID:Q/0D/8pMo

「んでカレシの方……須賀くん、だっけ?」クルッ

京太郎「お、おう?」

 こっちにも火の粉が。ていうか名前うろ覚え……

憧「か、カレシじゃないわよっ!」

「はいはい。で、須賀くん。憧とはどこまで行ったの?」

京太郎「どこまでって……」

 1.俺のアパート

 2.旅館

 3.風呂

京太郎「………………」

「須賀くーん?」

京太郎「憧トハ同ジ部活ノ仲間ダヨ」ニッコリ

「部活~?」

憧「そ、そうそう! ハルエ……顧問の方針でね、部員同士は名前で呼び合うことになってるの! ねっ!?」

京太郎「憧トハ同ジ部活ノ仲間ダヨ」ニッコリ

「ふぅん……せっかくストロベリぃ話が聞けると思ったのになー。ちぇっ」

「「」」ホッ

 かつてなく賑やかで、そしてスリリングな朝だった。

550 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/26(木) 00:58:03.47 ID:DjUHtDoDo

……
…………
………………

 休み時間は寝て過ごす。

 眠くなくても寝て過ごす。

 何故かと言えば、クラスに友達が少ないからだ。

 少ないっていうか憧しかいない。

 その憧も教室では大抵誰かと一緒にいる。

 それが穏乃だったりすれば、俺も輪に加えてもらえるのだが。

 他の、クラスの女子だった場合は俺が入り込む余地などない。

 だから寝て過ごす。

 起きてたり、顔を上げてたりすると、辛い現実が見えてしまうから。

 今日もそんな風に過ごす筈だった。

 が、

「な、なあ。ちょっといいか?」

京太郎「んぁ……?」

580 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 00:46:48.22 ID:ucIo/EZ1o

 恐らく俺宛と思われる声に顔を上げる。

 声は男のもので、目の前に立っている奴も男で。

 じゃあつまり俺は今、男から話しかけられたのか。

 明日は雨かな?

「須賀、くん……だよな?」

京太郎「あ、ああ」

「今朝さ、新子さんと挨拶してた?」

京太郎「え? まあ、してたけど」

「名前で呼んでたよな……?」

京太郎「おう」

「……仲良いのか?」

京太郎「まあまあかな」

「……」

京太郎「……」



「つ、付き合ってるのか!?」

京太郎「いいえ(即答)」



「おーいみんなー! 違うってよー!!」

「「「「「マジかーーーっ!!!」」」」」ドドドドドッ

京太郎「!?」ビクッ

583 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 01:13:31.52 ID:ucIo/EZ1o

 何事だ!?

 俺と話していた男子が呼びかけた途端、教室のあちこちに散らばっていた野郎共が駆け寄ってきた。

 そして俺を包囲する。

「それは本当か須賀! くん!」

「新子さんとはなんでもないんだな須賀! くん!」

「もしかして女子より男子の方が好きなのかい須賀くん! くん!」

京太郎「と、とりあえず呼び捨てでいいから」

「え、でも須賀くんってヤンキーじゃ」

京太郎「ねーよ!!」ガーッ

「ヒィィ! 須賀くん様がお怒りだ!」

「酒と生肉持ってこいアパーム!!」

京太郎「ああもうなんなのお前ら!?」

 ていうか未だにヤンキー疑惑晴れてなかったの!?



憧@隣の席「なに騒いでるんだろ……」ビクビク

586 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 01:44:47.30 ID:ucIo/EZ1o

~廊下~

 とりあえず全員で教室を出た。

 なんか憧絡みの話っぽかったし、本人隣で怯えてたし。

京太郎「で、なんなのお前ら」

 ツッコミではなく通常トーンでもう一度。

「何って、クラスメイトに決まってるじゃないか」

京太郎「そういうのいいから」

「元お嬢様学校に迷い込んだ憐れな少数派の子羊だよ」

京太郎「本音は?」

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」

京太郎「ゲスじゃねーか!」

「ゲスじゃないやい! 仮にゲスだとしても、ゲスという名の紳士だい!」

「普通は共学化一年目の学校なんて選ばねーよ!」

「そういう須賀だって女子目当てで入学したクチなんだろ!」

京太郎「うん!」

 ハイタッチを交わした。

 父さん母さんカピ&咲。

 俺、友達が出来たよ。

590 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 02:10:32.99 ID:ucIo/EZ1o

 元お嬢様学校に迷い込んだ憐れな少数派の子羊(ゲス)こと俺。

 そんな俺が、ようやく友情という光に辿り着くことが出来た。

 もっと早く、それこそ入学初日に叶っていれば、あるいはゲスリング部の創設だって夢ではなかったかもしれない。

 しかし所詮は可能性――たらればの話だ。

 現実として、俺は麻雀部のマネージャーになった。

 友と恋。どちらが大事かなんて俺には決められ恋。

「でよー須賀よー」

京太郎「おうなんだよ」

 すっかり馴れ馴れしい。

「お前マジに新子さんとは何もねーの?」

京太郎「ねーなー」

「嘘つけ! 何もねーのに高校生男女が名前で呼び合ったりするかよ!」

「そうだそうだ! なんか弱みでも握ってるんだろ!」

「でも俺は苗字呼びも青春っぽくて興奮するぜ」

 俺もだぜ。

592 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 03:04:26.26 ID:ucIo/EZ1o

京太郎「いやマジだって、ただ部活が同じってだけで」

「「「「「「ぶ、部活!?」」」」」」

京太郎「おうっ!?」ビクッ

「須賀……お前……部活、入ってたのか?」

京太郎「ああ、麻雀部にな」

「ま、麻雀部……」

「部員は何人だ? 須賀の他に男子は!?」

京太郎「部員は俺まで入れて六人で、他に男子はいねえ」

「なんやそれハーレムやんけ!」

「女の園の更に奥に突入とかどんだけブレイブだよ!!」

「誰とも群れない一匹狼は格が違った」

 群れないんじゃなくて群れ損ねただけだよ。

「ち、ちなみに他の部員って可愛い?」

京太郎「クッソ可愛い」

「俺も入部させてくれ!!!」

京太郎「……………………………………………………ゴッメェ~ン、今年はもう新入部員募集してないんだぁ~~~~~」テヘペロォ

「チクショオオオオオオオオオオ!!!」

 許せ。

594 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 03:31:18.40 ID:ucIo/EZ1o

「そうかぁ~部活かぁ~……盲点だったわぁぁぁ……」

「仮に気付いてもやっぱり入部する度胸がないわぁ……」

「須賀はそのへんどうだったの? 不安とかなかったの?」

京太郎「オレェ?」

 どうだったかな。

 再入部の時は腹を括ったが、最初の時は、

京太郎「憧を追い掛け回してたらいつの間にか入部してたからなぁ……」

「なにそれこわい」

「寺生まれってすごい」

京太郎「寺生まれじゃねーよ」

「そういえば須賀ってどこ出身? この辺じゃねーよな」

京太郎「ああ、県外だよ」

「やっぱなー。訛りとか違うもんな」

「俺らはだいたい県内だよな」

「そうそう、俺は地元だけど」

京太郎「俺長野」

「俺は隣町」

「俺も俺も」

「へへ、俺なんて山向こうから来たんだぜ」










「「「「「「長野!!?」」」」」」

598 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 03:47:56.13 ID:ucIo/EZ1o

「な、長野って……長野?」

京太郎「長野」

「中部地方のあの長野?」

京太郎「長野」

「八つもの県と隣接しているあの長野?」

京太郎「長野」

「あずにゃん!?」

京太郎「中野」

「軽井沢とか日本アルプスとか浅間山とか白樺湖とかがあるあの長野?」

京太郎「長野」

「県木は白樺で県花はリンドウで県鳥は雷鳥で県獣はニホンカモシカのあの長野ォ!?」

京太郎「長野マニアァ!?」

  俺だって知らんわそんなん。

600 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 04:09:12.40 ID:ucIo/EZ1o

「マジかよ須賀ァ……マジで長野から来たのかよここ奈良によォ……」

京太郎「極めてマジだ」

「女子にモテる為、だけに……?」

京太郎「他には何もいらない」

「こいつやべぇ! 本物だ!」

「ああ、本物の漢だ!!」

「俺達のアニキだ!」

「須賀ニキだ!」

「野郎共! 須賀ニキを称えるぞ!」

「みなぎってきたぜええええええええええ!!!」

「「「須賀ニキ! 須賀ニキ! 須賀ニキ!」」」

「「「須賀ニキ! 須賀ニキ! 須賀ニキ!」」」

京太郎「ハッハッハッハッハッハッやめろ」



憧@トイレ帰り「まだ何かやってる……」ビクビク

602 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 04:31:16.63 ID:ucIo/EZ1o

……
…………
………………

~食堂~

京太郎「ふぅ、やっと撒いたか……」

 昼休み。

 一緒にメシを食おうとする須賀ニキ須賀ニキやかましい連中から逃げて食堂にやってきた。

 やっと出来た友達から逃げなくてはならないとは……

京太郎「ま、モノを食べる時ってのは誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメだからな」

 ただし美少女に囲まれている場合を除く。

京太郎「さーて何を食おうか……」

 券売機や、既に席について食事をしている人を見ながら悩む。

 と、

京太郎「あ、あれは――!?」

604 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 04:57:25.92 ID:ucIo/EZ1o


憧「だーかーらー。きょ……須賀くんとはなんでもないんだってば」

「え~? それはナシでしょ新子さーん」ニヤニヤ

憧「ナシって言われても……本当のことだし」

「でもさ、憧ちゃんって男子苦手なんでしょ? どうして須賀くんは平気なの?」

憧「へ、平気じゃないわよ。けど、同じ麻雀部員だから少しは慣れてるってだけで」

「それ! そこがアヤシイんだよねぇ」

憧「……どういう意味?」

「麻雀部って男子は須賀くん一人なんでしょ? しかもマネージャーなんだっけ?」

憧「そうだけど……」

「アっヤシイね~~~。下心ぷんぷんするじゃん」

憧「……」

「分かる! 露骨だよねー。見た目通りチャラいんだねーって感じ」

憧「……違う……」ボソッ

「アコ?」

605 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 05:27:13.77 ID:ucIo/EZ1o

憧「た、確かにありえないぐらいスケベだけど、見た目ほどチャラくはないし……」

憧「それに! 須賀くん……京太郎は、もう下心で部活してなんかないから!」

憧「あんな奴でも、真面目に、あたし達の為にってマネージャーを頑張ってくれてるから!」

「へ、へー……」

「そうなんだ……」

「憧ちゃん……」

「……新子さーん?」

憧「」ハッ

憧「ま、ままままあ!? どーでもいいけどね!? 関係ないけどね!?///」アセアセッ

「へ~……?」ニヤニヤ

憧「なんでニヤニヤしてんの!? あたしはあくまで一人の人間として正しい評価をしただけであってあのそのえっと……えっ、とぉ……///」カァー

「「「「」」」」ニヤニヤ

憧「~~~っ……もー! 別に京太郎のことなんてなんとも――」

ガラッ!!





京太郎「憧ー!! 俺と付き合ってくれええええええええええ!!!」





憧「ふきゅっ!!?」

608 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 05:47:51.87 ID:ucIo/EZ1o

  ざわ...!
            ざわ...!
     ざわ...!

京太郎「」キリッ

憧「な、なななななななな///」カァァァ

ズカズカズカ...ピタッ

京太郎「憧」

憧「ひうッ」ビクッ

グイッ

憧「あっ///」

京太郎「一緒に……来てくれるな?」

憧「あ、あの、京太郎……?」ドキドキ

京太郎「お前が必要なんだ」キリッッッ

憧「」ズキューン

京太郎「行こう!」ダッ

憧「は、はひっ///」ダッ

タッタッタッタッ...

「キャーーーーーーーーーー! なに、なに今の!?」

「公開告白からの駆け落ち……? すご、初めて見た……」

「やったッ!! さすが須賀ニキ! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!」

「そこにシビれる! あこがれるゥ!」

キャーキャー

スガニキ! スガニキ!





~食堂~

憧「はい、レディースランチっ!!」バンッ

京太郎「おおう、サンキュー!」

614 名前:5月7日(火)[saga] 投稿日:2013/09/27(金) 06:04:22.70 ID:ucIo/EZ1o


京太郎「いっただっきまーす!」パンッ

憧「ったく、これを注文させる為だけに食堂まで連れてくるとか……」ブツブツ

京太郎「いやー悪い悪い。今日のレディースランチがすっげー美味そうだったからさぁ」パクパク

憧「だからってあんな……少女漫画みたいに強引で大胆で……その気になっちゃうところだったじゃない……///」ブツブツ

京太郎「あ、一口食う?」

憧「い・り・ま・せ・ん!」

京太郎「うまいのに……」モキュモキュ

憧「言っとくけど、二度とこんなことしないんだから!」

京太郎「愛してるぜ憧」キリッ

憧「うっさい!///」

 そんなこんなで楽しいランチだった。

 教室に戻ったら地獄が待っているとは知らずに。

【TO BE CONTINUED...】
最終更新:2013年09月28日 00:10