風邪-Kaze- 憧編 episode of side-A

719 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 01:02:24.99 ID:D2siNZFOo

穏乃「やっぱり伊藤さんのお尻の方が引き締まってるよ! ゼロノスとか最高じゃん!」

京太郎「いーや、俺はなんと言っても富永さんを推すね! だって俺クウガだし!」

穏乃「京太郎はクウガじゃないでしょ!?」

京太郎「シュッ」シュッ


穏乃「誤魔化されないよ!?」

玄「二人ともなんの話してるの? おもちの話だったら私も混ぜてほしいなー」トテトテ

「「違いますよ」」

玄「そっかぁ……(´・ω・`)」トボトボ

 あからさまにガッカリして引き返す玄さん。

 そのまま宥さんに抱き付いて慰めてもらっていた。羨ましい。

 鷺森部長はボウリングの球を磨いている。

 土曜の朝、部活前の平和な一時だ。

穏乃「それにしても憧のやつ遅いなー」

京太郎「そーだなー」

 寝坊でもしてるんだろうか。

721 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 01:13:49.67 ID:D2siNZFOo

ガラッ

レジェンド「よーおはよー」

 ありゃ、レジェンドが先に来てしまった。

灼「おハルちゃん」

 なんだその挨拶。

京太郎「監督、おはようございます」

穏乃「おっはようございまーす!」

玄「おはようございます、赤土さんっ」

宥「おはようございまぁす」

レジェンド「はいおはよう。みんな揃ってる?」

穏乃「あ、実は憧がまだ……」

レジェンド「あー。憧なら今日は風邪で休みだよ」

穏乃「えっ!?」

京太郎「カゼェ!?」

724 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 01:38:12.39 ID:D2siNZFOo

玄「大丈夫なんですか?」

レジェンド「どうだろ。かなり熱が出てるんだって」

宥「それはあったか……心配ですねぇ」

 ちょっと宥さん今。

 いやそうじゃなくて。

 憧が、風邪。

穏乃「でもなんか急だよね、昨日の昼休みまではピンピンしてたのに」

レジェンド「うーん、雨に降られでもしたんかな。早く帰れって言ったんだけど」

 帰ってないんだな、それが。

 とは言えないのでここは黙って様子見に徹



灼「でも須賀くんも一緒に帰ってたよね」

 コポォ。

729 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 02:10:07.62 ID:D2siNZFOo

穏乃「あ、そうなんだ?」

玄「昨日は短い間にたくさん降ったよね。帰るタイミングと被っちゃった?」

京太郎「え、えーーーーーーーーーーっと……どうだったかなー、そういえばちょうど降っ」

灼「まだ降ってなかったよね。まっすぐ家に帰る余裕ぐらいあったと思」

 フォカヌポゥ。

レジェンド「確かに私のメールからすぐ帰ったなら間に合うはずだね」ウム

宥「じゃあ、どうして憧ちゃんは風邪を……?」

 まずい。

 このままでは昨日の出来事がバレてしまうかもしれない。

 俺が舵取りをしなくては。

京太郎「も、もしかしたら雨は関係ないんじゃないっすか? ほら、腹を出して寝てたとか」

穏乃「あ、それありえるかも! 意外とだらしないからなー憧って」

 脈アリか!

 よし、全力でこの話題に乗っかろう。

730 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 02:46:26.56 ID:D2siNZFOo

京太郎「えーマジでかー、冗談のつもりだったんだけどなー(棒)」

穏乃「寝相が悪いんだよ。子供の頃とかよく蹴っ飛ばされたっけなぁ」

京太郎「へー(棒)。まったくしょうがないなぁ憧は」

穏乃「ほんとほんと。ま、私の方がもっと寝相悪くて倍返しにしてたんだけどね!」

「「HAHAHAHAHA!」」



穏乃「……んっ?」

玄「んん?」

宥「ん……?」

灼「ん」

レジェンド「ん?」

京太郎「?」



「「「「「………………憧?」」」」」



 アッ。

733 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 03:17:19.85 ID:D2siNZFOo

  ざわ...
           ざわ...
     ざわ...

穏乃「京太郎、ひょっとして今……?」

玄「名前で呼んだよね……」

宥「あったか~い……」

灼「抜け目な……」

 どよめきが広がる。

 まずい。

 まずいまずいまずい。

 何がまずいって、



レジェンド「……へェ~~~~~」ニヤニヤ



 意地の悪いニヤケ面を隠そうともしないレジェンドがマズい。

 色んな意味で。

737 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 04:45:26.21 ID:D2siNZFOo

レジェンド「へェ~。須賀くんへェ~」

京太郎「な、なんすか監督」

勇気を出して自分から拾いに行く。

レジェンド「なーんでもないっ☆」

 イラッ☆☆☆

レジェンド「でも……うん……そっかぁ……ふんふむ……」ブツブツ

灼「ハルちゃん?」

 何か唱えるように呟くレジェンド。

 かと思えば、またいつもの無駄な自信に満ちあふれた表情に戻る。

 そして――





                 --……--
         r―‐⌒ヾ : : : : : : : : : : : : : : : \
         |∨: : : : : \ : : : : : : : : : : : : : : : \
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        || |/: :.:.:∧}リ≫┘o。v――'’xr示=ミト、:.:.\}、
        リ {: :.:.:.:.|!:‘, ィ芹≧ュ    ’|イi//| 》、:。:.:.:.ぃ、    「お見舞いに行こう!」
           |:.:.:.:.:.「`ヽ《乂_゚ツ        ゞ= '゚ :リ/リ゚。:.:.ト、i
           |:.:.:.:.小   , ,    '    , ,  : /:.:.:.∧:.} リ
           l.:.:.:.:.:| }ゝ-!            jハ:.:.:.:j/}:.|
          :。.:.:.:{ {:j:八    -==ァ     イ }/ j:ノ
            ゚:。.リ  \{≧ュ。.    ィ:jソ  ″ /
           ゞ    イニ}  ` ´  {ニヽ
              ィニ//      ゝ|ニ\_
        ┬==≦ニ/ニ7____    __,.|ニニムニニニニニlヽ
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740 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 06:08:00.50 ID:D2siNZFOo

 とか言い放った。

 って、

京太郎「お見舞いィ!?」

 思わず叫ぶ。

 それは何よりまずいパターンだ。

 風邪で弱った憧から根掘り葉掘り聴き出されてしまう。

穏乃「いいね! 行こうお見舞い!」ムンッ

玄「うんっ、みんなで励ましてあげよう!」フンス

宥「それはあったかそう」ホッコリ

灼「マスクしてこ……」スチャッ

京太郎「あわわあわわ」

 やばい、もう止められない流れっぽい。

 見ればレジェンドは、計算通りと言わんばかりの笑みを浮かべている。

 そして俺を挑発するような視線を投げて寄越して、



レジェンド「それじゃあ早速、みんなでお見舞いにしゅっぱーつ!」

「「「「おーっ!」」」」









ガラッ

担任「赤土先生! 探しましたよ!」

レジェンド「ひょ?」

742 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/06(火) 06:42:20.89 ID:D2siNZFOo

 あれ、うちの先生だ。

 麻雀部の部室で顔を拝むことになるとは。

レジェンド「どうかされました?」

担任「どうもこうも、これから職員会議ですよ!」

レジェンド「ヴぇ!?」

 レジェンドが豆鉄砲を食ったような顔をするレジェンド。

レジェンド「………………そうでしたっけ」

担任「やっぱり忘れてらしたんですね……さ、早く行きましょう」ガシッ

レジェンド「い、行かなきゃダメですか?」

担任「当たり前ですっ。ほら早く早く」グイグイ

レジェンド「で、でも、お見舞いが、面白イベントの予感がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」ズルズル

担任「お邪魔しましたー」

 ばたむ。

 閉まる扉。

 残された俺達。

 広がる沈黙。

京太郎「………………えーっと」

 最大の不穏分子は連行されたし、



京太郎「それじゃ、お見舞い、行くぞー」オー

「「「「おー」」」」

774 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 00:59:14.58 ID:rTCzdA7go

~校外~

テクテクテク...

穏乃「で、いつの間に京太郎は憧のこと名前で呼ぶようになったの?」

京太郎「え」ギクッ

 やはり追求は免れないか。

 それでも鼻の効くレジェンドがいない分マシだ。

 ここは無難に華麗に店仕舞いさせてもらおう。

京太郎「き、昨日からだよ。帰り道でな」

穏乃「へー、また急だね」

京太郎「そうでもないぜ? ほら、前に部員みんなと仲良くしたいっつったろ、その一環だよ」

穏乃「あ、なるほど。それなら納得かも」

京太郎「鷺森部長以外だと一人だけ苗字で呼んでたからさ、このままじゃイカンと名前呼びに踏み切った次第であります」

穏乃「うんうん、呼び方って大事だよね! いい考えだと思うよ!」

京太郎「ハハハハハハ」

 ……嘘は言ってないよな?

 それでも満面の笑顔の穏乃を見てると良心がチクチク痛む、小心者の俺である。

776 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 01:19:53.18 ID:rTCzdA7go

 ええい、もう別の話題に移行させてしまえ。

京太郎「そう言えばさ、憧から聞いたぜ」

穏乃「何を?」

京太郎「みんなが全国を目指す理由だよ。友達と会う為なんだってな」

穏乃「えっ!?」

京太郎「えっ?」

 「意外!」みたいなリアクションをされた。

 何故だろう。

穏乃「………………言ってなかったっけ?」

 お前もかい。

京太郎「いいけどさ、別にいいけどさ……」ドヨーン

穏乃「わーごめんごめん! すっかり話したつもりになってた!」

 慌てて弁明する穏乃だが、その言い方では気休めにもならない。

 俺って実は影が薄いのかとか、そんな不安を覚えてしまう。

780 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 01:55:11.51 ID:rTCzdA7go

穏乃「あ、でもね、和と遊ぶのも確かに大事な目標なんだけど」

京太郎「なんだけど?」

灼「それだけじゃないよ」

京太郎「鷺森部長?」

 後ろを歩いていた鷺森部長が会話に参加してくる。

 その目は静かに、しかし確かに燃えていた。

灼「少なくとも私は、ハルちゃんの為にインターハイを目指してるから」

京太郎「監督の為……?」

灼「ん」コクリ

 どういうこっちゃ。俺は首を傾げる。

穏乃「えっと、赤土先生が十年前のインハイ準決勝で負けたこと……は、知ってる?」

京太郎「ああ。憧から聞いた」

 同じようなやり取りを昨日もしたな。

 本当に地元では有名な話なんだろう。

783 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 02:24:41.45 ID:rTCzdA7go

灼「ハルちゃんはその時、その舞台に大切なものを置いてきてしまったんだって」

灼「それを取り戻さなくちゃ前に進めないんだって、そう言った」

灼「だから私が取り戻す。もう一度ハルちゃんをインターハイに連れて行く」

灼「以上」

京太郎「………………鷺森部長がそんなに喋ってるの、はじめて見ました」

灼「ハルちゃんについてなら今から正月元旦の朝までだって語れる」

京太郎「すげぇ!?」

 言うだけ言ってスッキリしたのか、いつもの無表情に戻った鷺森部長。

 歩を速めて前を行く松実姉妹に合流していった。

穏乃「とまあそんな訳で、私達も赤土先生にはお世話になってるし、一緒にインハイを目指そうって約束したんだ」

京太郎「お前かなり楽したな」

穏乃「うぇひひ」

 変な笑い方で誤魔化された。

京太郎「……けど、そういうのってなんかいいな」

穏乃「でしょ? 京太郎もそう思う?」

京太郎「ああ、思う」

 憧も、穏乃も。

 鷺森部長も。

 きっと松実姉妹も。

 みんながみんな大切なものの為に頑張っている。

 そういうのって、なんかいい。

 羨ましいと思った。

785 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 02:47:38.92 ID:rTCzdA7go

~神社~

穏乃「着いたー!」

玄「着いたねー」

 穏乃と玄さんが鳥居をくぐって境内に入る。

 それに宥さんと鷺森先輩が続き、最後に俺が足を踏み入れた。

 が、

京太郎「あのー、ちょっといいすか」

玄「はい?」

京太郎「ここ神社ですよね」

玄「ですのだ」

京太郎「………………見舞いの前に快復祈願?」

玄「えっ」

宥「えっ」

灼「えっ」

京太郎「えっ?」



穏乃「なに言ってんの京太郎、ここが憧んちだよ?」



京太郎「えっ!!?」

786 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 03:10:07.26 ID:rTCzdA7go

灼「何その反応」

京太郎「え、いやだって、ここ、憧んち、って、えっ……アイエエエエエエ!? ジンジャ!!? ジンジャナンデ!?」

玄「す、須賀くん落ち着いて!」

京太郎「これが落ち着いていられますか!」

穏乃「ていうか京太郎、なんで今まで知らなかったの? 帰り道一緒だよね?」

京太郎「むしろ俺んちの方がもう少し先にあるよ!」

宥「じゃ、じゃあどうして……?」

京太郎「だって、いつも憧は更に先まで行ってたから……」

穏乃「それって……」

玄「もしかして……」

宥「あぅぅ……」



灼「自宅を特定されるのを避けてたんじゃ」ズバァッ



京太郎「」

792 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 03:40:04.82 ID:rTCzdA7go [8/12]

 俺はその場にくずおれた。

 境内の砂利が足に食い込んで痛い。

 でも心はもっと痛い。

 ボロボロに引き裂かれたように。

 粉々に砕け散ったように。

 痛くて痛くて、

京太郎「泣いてしまいそうだ……」ドバァ

穏乃「わーっ!? 泣いてる、泣いてるよ京太郎!」

京太郎「は? 泣いてねーし、男の子は泣かねーし」ボロボロボロボロボロボロ

玄「ど、どう見ても泣いてるよぉ! お願いだから泣き止んで須賀くん!」

京太郎「だから泣いてませんってば……あ、誰かティッシュください。あと愛も」プルプル

宥「てぃ、ティッシュどうぞ」スッ

京太郎「ありがとうございます。じゃあ誰か愛を……」カタカタ

灼「うちのボウリング場のサービス券ならあるけど」ピラッ

京太郎「もうそれでいいよぉ!!」

 俺は泣いた。

795 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 04:02:48.68 ID:rTCzdA7go

 で、

 俺は泣き止んだ。

 たっぷり10分かかった。

玄「で、では! 改めて憧ちゃんのお見舞いに参りましょう!」

穏乃「おーっ!」

 並びは神社に入った時と同じく穏乃&玄さん、宥さん&鷺森部長、そして俺の順だ。

玄「さっき望さんにメールしたら、ちょっと留守にしてるけど鍵は開いてるから入っていいって」

京太郎「ノゾミ=サン?」

宥「憧ちゃんのお姉ちゃんだよ」

灼「ハルちゃんの昔のチームメイト」

京太郎「あー」

 言ってたな、いるって。

穏乃「それじゃあ憧の部屋まで出発進行ー!」

「「「「お邪魔しまーす」」」」

797 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 04:32:33.26 ID:rTCzdA7go


~憧の部屋~

憧「はぁ……はぁ……」

憧「あ゛ー……きっつぅ……」

憧「頭がボーっとする……」

憧「けど寝過ぎて眠れないし……」

憧「今何時なんだろ……時計見るのもダルい……」

コンコン

憧「ん……?」

穏乃「憧ー! 生きてるー?」

憧「しず……?」

玄「穏乃ちゃん、そこは「起きてる?」って訊くところだよ!」

憧「玄の声もする……」

798 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/07(水) 04:48:41.71 ID:rTCzdA7go [11/12]

憧「もしかしてお見舞いに来てくれたのかな……」

憧「……もう、感染っても知らないんだから」フニャ

穏乃「憧ー? あーこー?」コンコンコンコン

憧「はーい……入ってー……」

ガチャ

穏乃「おお、生きてた!」ゾロゾロ

憧「死んでたらどうするのよ……」

玄「お邪魔しまーす。憧ちゃん大丈夫?」ゾロゾロ

憧「大丈夫に見える……?」

宥「わ……あったかそうなお布団」ゾロゾロ

憧「暑いくらいよ……てか熱い……」

灼「完全に病人だね」ゾロゾロ

憧「完全に病人なんですー……」





京太郎「へそ丸出しで寝て風邪をひいた子がいると聞いて」ゾロゾロ

憧「そんな子いないわよ……」





憧「ゴッホゴッホゲホッゲホゲホゴホンゴフンゴヘッガッファア!!?」

穏乃「憧ー!?」

851 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 00:11:43.58 ID:5vEvKYwqo


 初めて訪れた憧の部屋は、まさしく「女の子の部屋」のお手本のようだった。

 俺が知る、時として足の踏み場もないほど本が散乱しているどこぞの誰かさんの部屋とは比べ物にならない女子力を感じる。

 そんな部屋の主は今、ベッドの上で盛大にむせているところだ。

京太郎「おいおい、思ってたより重症だな」

憧「ち、が……っゲホ! 誰のっ、ごほ、せいだと……っ!」

穏乃「無理して喋っちゃダメだよ憧!」サスサス

 本気で苦しそうなので大人しく待つ。

 背中を丸めて咳き込む姿が痛ましかった。

憧「ん……ありがとしず、もう平気」

 やがて落ち着きを取り戻した憧が、改めて俺に視線を向ける。

憧「………………なんで須賀くんがここにいるのよ?」

854 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 00:23:53.43 ID:5vEvKYwqo

京太郎「なんでって、そりゃ見舞いだよ」

憧「だったら事前に連絡してよ……男子が女子の部屋にアポなしで来る、普通……?」

京太郎「わっかんねー、普通がわかんねー」

 伊達にモテない訳じゃない。

 とは言え恐らく、この場でそういう感覚を持ち合わせているのは憧ぐらいだと思う。

 松実姉妹でギリギリ、穏乃は論外。

 鷺森部長は空を飛び、デビルビームは熱光線。

憧「っていうか! 今あたしパジャマじゃん、すっぴんじゃん!?」

京太郎「そりゃそうだ」

 一々めかしこんで臥せる病人はいない。

 ベッドに横たわる憧をじっと観察する。

 いつものツーサイドアップを解いてボサボサの髪。

 ほんのり紅潮した頬、しっとり汗ばんだ肌。

 寝乱れた薄ピンクのパジャマが非常に眼福です、はい。

855 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 00:34:36.04 ID:5vEvKYwqo

憧「ちょ、こっち見ないでよ!」

京太郎「え? 見てないよ」<○><○>

憧「いやバレバレだから!? ああもうっ……く、玄! ちょっと髪梳いて!」

玄「わわ、うんっ」

 指名を受けた玄さんが慌ててバッグから櫛を取り出す。

玄「じゃあ起こすよ? 大丈夫?」

憧「これくらいなら……ん、っしょ……」ムクッ

京太郎「無理しなくていいのに。俺は気にしないぞ?」

憧「あたしが気にするの! いいから出てってよエッチ!」

京太郎「えー」

憧「出・て・け!」ギロッ

玄「ごめんね須賀くん、すぐ終わるから」

 ぬぅ、先輩に言われちゃ仕方ない。

 渋々部屋の外で、床とか壁とか天井とかを見て過ごすことにした。

 木目の一部が女体に見えてちょっと興奮した。

859 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 00:55:33.00 ID:5vEvKYwqo

 5分ほど待って――

ガチャッ

玄「お待たせしました、どうぞお入りくださいっ」

 とのことなので、遠慮無く再入室する。

京太郎「お邪魔しまーす」

バタン

 5分ぶりに足を踏み入れた憧の部屋は、やはり女子力が充満したパワースポットだった。

 ていうか女子(物理)が充満してるんだけどな。

 そして部屋の主は今、布団を口元まで引き寄せて俺を恨めしげに睨んでいる。

京太郎「……なにか?」

憧「……なんでもない」プイッ

 そっぽ向かれた。

 わけがわからないよ。

 5分前よりサラサラになった憧の後頭部は何も教えてくれない。

862 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 01:27:29.26 ID:5vEvKYwqo

京太郎「まあ、意外と元気そうで良かったよ」

憧「……元気じゃないわよ。起きたばっかりの時なんて熱が39度あったんだから」

京太郎「マジでか。今は?」

憧「あー、そういえばそろそろ測んなきゃ……」

京太郎「マジでか! よーし俺が体温計をパジャマの中に」

憧「しずー目隠しー」

穏乃「はいよっ!」ガバッ

京太郎「オアアアーッ! み、見えないィーッ!!」

 なんてこった、穏乃に飛びつかれて視界を塞がれた!

 しかも背中になんら柔らかさを感じない! ダブルショック!!

憧「あ、ちょっと下がってる」

宥「良かったねぇ憧ちゃん」ヨシヨシ

 どうにか穏乃を引っぺがした時には、憧は熱を測り終えてしまっていた。

 その傍にはいつの間にか宥さんが腰掛けていた。

 ……傍っていうか、ほとんど密着している。

憧「宥姉、暑苦しい」

宥「ふぇぇ」

863 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 01:53:59.71 ID:5vEvKYwqo

灼「確かにあんまり熱くないね」ペトッ

憧「あー……名前の割に灼さんの手つめたーい……」

灼「ロボットだから、マシーンだから」

 ダダッダー。

 グレート鷺森部長が憧の額に手を当てて、今度は宥さんが玄さんに慰めてもらっている。

 俺と穏乃は二人でじゃれてる間にベッド周辺を占領された形になる。

 ので、

穏乃「家宅捜索しよう!」クワッ

 暇を持て余した穏乃が遊びに走るのも必然と言えよう。

憧「ちょっ、あんたお見舞いに来たんじゃないの!?」

穏乃「そうだけど、でも憧元気そうだし」

憧「だから元気じゃないっての!」

穏乃「じゃあ尚更じっとしてなきゃダメだろー?」フフン

憧「ぐっ、ああ言えばこう言う……!」

868 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 02:27:06.76 ID:5vEvKYwqo

 身動きが取れない憧が何を言っても効果はなく、意気揚々と戸棚に頭を突っ込む穏乃。

 ……尻! 危ない、尻!!

憧「言っとくけど、下着漁ったら殴るからね……!」

穏乃「はーいはい。クローゼット開けて右から二番目、上から三番目のボックスでしょ? 分かってるって」

憧「ちょ、声に出すなー!」

京太郎「……」メモメモ

憧「そっちも黙ってメモるなぁ!!」

 ジョークやがな(ゲス顔)。

穏乃「ふんふ~ん♪」フリフリ

 鼻歌交じりに尻を振り(アブナイ!)、何かを探している穏乃。

 その周りには化粧品やら化粧道具やらが放り出されている。

穏乃「んんん………………あった!」

 そして遂に目当ての物を見つけたらしい。

 それは、

穏乃「じゃんっ! アルバム~!」

871 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 02:49:52.53 ID:5vEvKYwqo

京太郎「おお」

憧「ぅげっ!」

玄「わぁー」

 三者三様にリアクション。

 ちなみに残りの二人は、

灼「ロボットだから、マシーンだから」ペタペタ

宥「灼ちゃんやめてぇぇぇ」ブルブル

 戯れていた。

憧「なんでそんなもん引っ張り出してくるのよ……」

穏乃「いやー、憧んちのアルバムが一番綺麗にまとまってるからさ。久しぶりに見たくなっちゃって」

玄「あ、それ分かるかも。憧ちゃんマメだもんねぇ」

憧「だからって……」チラッ

 視線。

 どうにも俺に見られたくなさげ。

憧「ね、ねぇしず? 暇ならもっと別の――」

穏乃「ほら京太郎も見て見て!」ペラッ

京太郎「どれどれ?」

 だがスルーした。

憧「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

873 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 03:19:20.43 ID:5vEvKYwqo

 ベッドから離れた位置に陣取ってアルバムを眺めている穏乃と玄さんに合流する。

穏乃「京太郎はいつ頃の写真が見たい?」

京太郎「そーだなー……やっぱ俺が知らない頃がいいな。小学生ぐらい?」

穏乃「おっけー! じゃあ……これ! 私の写真だよっ」

京太郎「ほほう」

 覗き込む。

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      .: : : : :/       'vヘニ>─ ┴く/ x─‐‐く |
|| i!   : : : : :′   ⌒ヽ V´ ,       Y /      v
リ |   : : : : :レ'        ∨ ({        i !     i!
l  |   : : : : :|       /   リ..... ____  iノ    _〕
l  |   : : : : :l        /   ヽr'´ ̄ ̄`YY─==ニニX′
.\ト、   : : : : |      /      ! ______.| {       | |ヽ
.    \ : :. :.:.|     ′     └─ッ マ¨:l `ー== ‐┘!(
.     \: : : 、   /        /vvヘ.::|       | }

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京太郎「………………これ最近の写真だろ?」

穏乃「小学生の時のだよ? 六年生」

京太郎「嘘ン」

玄「あはは……穏乃ちゃんは昔から変わらないよね。驚くのも無理ないかも」

京太郎「ええ、こりゃ驚きますよ。変わらないにも程がありますって」

穏乃「私的にはもっと身長が欲しいんだけどなー。そしたら体重も増えて山でバランスが取りやすく――」

京太郎「それ以上いけない」

穏乃「?」キョトン



           /´〉,、     | ̄|rヘ
     l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
憧「」   二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
     /__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
     '´               (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
                                   `ー-、__,|     ''

874 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 03:41:38.53 ID:5vEvKYwqo

京太郎「ほ、他にはないのか? 玄さんの写真とか」

穏乃「玄さんの? あったと思うよ。えっとね……」ペラペラ

玄「な、なんかちょっと緊張するね。恥ずかしい写真が残ってたらどうしよー」

京太郎「ハハハ」

 むしろそういうのを期待してるというのは秘密だ。

穏乃「あったー!」

京太郎「よっしゃ!」

 覗き込む。

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! r‐、} '^    | | {ニ=- ∨ _ノ┴ュ'′/ }   〈_/ \
  し        ー  |ニニニ{ニ}ニニニニ} / ,ノ、     rヘ,_〉
   }       /    ニニニィ¨ト=ニニ7 {   ‘,      ̄}::.
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京太郎「やっぱ最近の写真だろこれ!?」

穏乃「昔のだってば。私らの一コ上だから中一の時かな」

玄「わー懐かしー」

穏乃「ちなみにこの直後の写真がこっちね」

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    |/\| 二 ミ 、 ..:..:\ 八}  {   }  }  }::.:.:.:.:.:.::.::\
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     ノノ| ..:/′..:.:.:.::|   ノ'   /' }:.:.:/ノ}ノ ノ' ノ /}::. /イノ′
    //´ }.:/ |r‐ 、 .::|z==ミ、  /イ ノ,斗==ミ /:ノイヽ{
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 .. .:.//r‐ミ! 廴ノ 人 \ r .   n  ,      イ::厶イ)、_.厂}:ヽ
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..:.:.{   |爪    /     }.八__  イ厂ト . __}   /   }     { ∧:ハ
.:.::ノ ィ 7~入      ノ く   ./ ./|   》   /{        `{ ノ:.ト}

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京太郎「だから見覚えあるってこんな光景!!」

875 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 03:58:34.58 ID:5vEvKYwqo

穏乃「えー、なんか京太郎さっきから文句ばっかり」ブーブー

京太郎「いや文句って訳じゃ……ただちょっと二人が時間の概念から解き放たれ過ぎっつーかなんつーか」

玄「……あ! 穏乃ちゃん、だったら憧ちゃんの写真を見せてあげようよ!」

穏乃「そっか! それならきっと京太郎も!」ペラペラ

京太郎「えー? んなこと言ってまた全然変わってないっていう天丼ネタだろー?」

穏乃「ふっふっふ……甘いよ京太郎」

玄「この写真を見てもまだそんなことが……」

「「言えるかなっ!」」バサッ

京太郎「はいはい」

 覗き込む。





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.  \i  \! !\代i_)/ハi!|       レiト!//リ イハ/:ト、.:.:..:  |
         | |: : :l  V//ク        Vハ/ク r: : : i ,′   !
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880 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 04:17:22.29 ID:5vEvKYwqo



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881 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 04:17:53.45 ID:5vEvKYwqo



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882 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 04:18:43.97 ID:5vEvKYwqo



チラッ



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.           /: :/: /リ゙ Vン     ≫劣: :/:|: | : : : /: : : : : :│ ヽ: :ヽ
           ': :/:|: V、、 ,       r' ..:j必イ|: |:ー=/: : : : : : :│   : : i  「な、なによ……?」 ※寝てます
          i: :  |: :′        乂辷ンj:|: | : / : : : : : / : |  |: : |
          |: :| |八         、、、  厶|: |∨: : : : : :/ : : |   |: : |
          |: :| |: | \ ´ )        |: |/: : /: :/ : : : :  |: : |
          |: :| ヽl   _):、__ .. -:― :^=≦i: 厂 : : : :/: : : : : :.  |: : |
          |: :|   //⌒゙ニ=-、 : : : : : : /:/ : :/: / : : : : : : :. |: : :
          |: :|  /: :/     \.\: : : : :.厶イ: :/: : : : : : : : :∨: :,′
          |: :| . : :{       ∨ `7=- : __/: : : : : : : : : : :/ : /
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883 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 04:19:24.85 ID:5vEvKYwqo






























: : : : :/ : : : : : :| : : : :|.. : :. ゙、: . ゙、゙、. \
: : : : : |. : : : : :i |: : : :i:|. : : : ∧: :、.i. .i: : . ` 、
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: : : : : :| : : |: i 「! ヽート!、: : リ  !: |ハ: ト : | ̄ ̄
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: : / へ.゙、 :丶ヾヽ<´{::::i` ヽ! 1!|:/| :!ノ゙、リ
: :ヽ    \ : :!丶   ̄     Vイ:ハ |\:i
.: : 丶    \゙、        `> リ  `
ヽ: : :`┬ 、  ヾ          /
  i: ;ィノ    U     ,....-ィ /
,,:‐レリ    _       ̄ /<なんで……
゛=!_    \ `ー-、_  _/
::::::゛== 、 \   / ̄ヽ、
::::::::::::::::::::::゛===-、    >

886 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 04:35:20.28 ID:5vEvKYwqo

京太郎「……」プルプル

穏乃「京太郎?」

玄「須賀くん?」

京太郎「――





            _,...---、_,.、
           / : /: : / : : ヽー-、
            /. : :, !: iハ!/メ、.i | \
            イ : :{ ヽN  'i:!/!人iヽi   
         _1: : :i(    _ 丶:\
        /   `Yリヽ   '、_)'´!`ー`   何がどうなったああああああああああああああああああああ
      /:::..     |  ,. _/
.      /.::、::    ト、ィ'
      / ::::::|::    !;-!
    /  ::::|::     ! ヽ、        ,:-‐クヽ
    /    ::!::..   ⊥__!_      /  ..:ノ)
   /     |::::..         ̄`''''''' ′..::::::::::ノ
.  /:     |::::.....      ..............:::_,:::-‐'′
 /::      `ー‐┬---r―'''''''"" ̄__
./__       /!   i      / iu-゙、
/----、\   ::::/ |::  ⊥ __,...-‐'.i...:ヒノ
 ̄ ̄`ー`ー`ー-、/ |::.         _,.-‐'"





あああああ憧ォ!!!」ズイッッッ

憧「ひっ!?」

京太郎「お前憧だよな!? 新子憧で間違いないよな!!?」

憧「あ、当たり前でしょ!? てか近っ、近い!」ビクビク

京太郎「じゃああの写真の女の子は!?」

憧「………………あれもあたし……」

京太郎「何がどうなったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」オアアアーッ

憧「なんなのよこれぇ……」グスッ

887 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 05:09:48.23 ID:5vEvKYwqo

京太郎「それはこっちのセリフだ! なにこの突然変異!?」

憧「変異って何よ!? 真っ当な成長でしょ!」

京太郎「あんなチンチクリンがこんなギャルに成長することを真っ当とは言わせねえ!!」ウガー

憧「チンチクリン言うなギャル言うな!!」ムキー

 俺は吼えた。

 相手が病人だということも忘れて怒鳴り合った。

 そうでもしなければ、俺の心に走った衝撃は殺しきれなかった。

京太郎「……事実、なのか……憧って昔はこんなだったんだな……」シミジミ

憧「いちいち引っかかる言い方するわね……って! ちょっと須賀くん!?」

京太郎「なんだ?」

憧「なんだじゃないわよ! さっきから名前! あたしの!」

京太郎「名前がどうしたんだよ憧?」

憧「だからそれ! みんなの前で!」

京太郎「ああ、俺が憧のこと名前で呼んでる件ならみんなもう知ってるぞ」

憧「ふきゅっ!?」

889 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 06:23:32.04 ID:5vEvKYwqo

京太郎「な、知ってるよな?」

穏乃「うん!」

 元気よく頷く穏乃。玄さん達もそれぞれ首肯する。

憧「な、なんでそんなことに……」

京太郎「ハハハハハハハ」

 それは俺が口を滑らせたからに他ならない。

 が、また怒られるのも嫌なので黙っておこう。

穏乃「それにしてもよく憧も呼んでいいって認めたよね?」

憧「え」

京太郎「あ」

 実は認められてない。

 ただしそれがバレると、芋蔓式に昨日の真相までバレてしまう危険がある。

 ので、

京太郎「――! ――!」バチッバチバチッ

 打ち合わせナシのアイコンタクトによる意思の疎通を試みた。

891 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 07:15:12.70 ID:5vEvKYwqo

憧「………………そうねぇー。須賀くんが土下座して泣きながら頼み込むものだから、し・か・た・な・く・ねぇぇぇぇぇ」

穏乃「へー」

 クソッ、めっちゃ脚色されてる!!

 けどお互い背に腹は代えられない。

 「女子に泣き縋った男」という烙印を甘んじて受け入れるしか………………ない。

 ぐぬぬ。

憧「……はあ、騒いでまた熱上がってきたかも」

宥「えっ、あったかい? あったかい?」ソワソワ

憧「ちょっとね」

灼「しっかり布団被って寝た方がい……」

憧「はぁい」ボフッ

 ズレていた布団を手繰り寄せる憧。



 その拍子に、「あるもの」が足元から覗いた。



京太郎「……ん?」

玄「あれれ~?」

 俺がそれに気付いた時には、もう遅かった。

 同時に気付いた玄さんが、手を伸ばしていた。

玄「憧ちゃん、布団から何かはみ出してるよ?」

憧「え? なんだろ」

 「あるもの」を玄さんが掴む。引っ張る。

玄「これって……」

 「あるもの」とは――





玄「……Tシャツ?」





 ―― 俺 の な !

896 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 07:51:12.79 ID:5vEvKYwqo

憧「ふ」

憧「き」

憧「ゅ」

 ああ、「ふきゅ」すらまともに言えてない。

 それほど内心の動揺は計り知れないということか。

 まあ、いくら内心が計り知れなくても、外面があんだけ赤くなってれば動揺しているのは誰の目にも明らかだけどな。

憧「あ、ぁ、あぁぁ、ぁあぁ///」プルプル

 今にも泣き出しそうな目が俺を見ている。

 そんな目で見られてもな。

 助けたいのは山々だが、ここで俺がフォローを入れても変に思われるだろう。

 憧の家の憧の部屋の憧のベッドから出てきたTシャツについてなんて。

 ていうかなんで布団の中から出てくるんだよ(正論)。

 とにかく一人で切り抜けてもらうしかない。

 頑張れ、憧。

902 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 08:20:08.10 ID:5vEvKYwqo

穏乃「おっきいシャツだねー」

玄「うん、男物かな? でもなんで憧ちゃんの部屋に……?」

憧「…………………………お」

 お?



憧「お、お父さんのが紛れ込んでたのよ(震え声)」



 う、うまい!

宥「でも、憧ちゃんのお父さんが着るにはデザインが若いような……?」

灼「まるで男子高校生の私服」ズバァッ

 鷺森部長ェェ……どうする憧!?



憧「若作りに必死なのよ!(震え声)」



 き、厳しい!!

 だが理由として破綻まではしていない。

 ゴリ押しで乗り切れるんじゃないか……?

905 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 08:50:03.65 ID:5vEvKYwqo

穏乃「へー、憧のお父さんこんなの着るんだー」

灼「宮司さんって和服のイメージ強いけどね」

憧「ま、まあねー。無理があるっていつも言ってるんだけどねー」

玄「あれ? でも憧ちゃんのお父さんが着るにはサイズが大き」

憧「ドラァ!」バキィッ

玄「ぶべらっ!?」ドサッ

宥「くろちゃー!?」

 ゴリ押しで乗り切れた(物理)。

憧「とにかく! このTシャツはたまたま布団に挟まってただけだから! 他になんの理由もないから! 絶対に! ぜっっったいに!!///」チラッチラッ

 おいこっち見んな怪しまれる。

穏乃「ふーん、そうなんだ」

灼「ま、いいけどね」チラッ

 おいこっち見ないでくださいお願いします。

憧「」ハァァァァァ...

 ともあれ、肺の中の空気を1cc残らず絞り出すような溜め息をつく憧だった。

919 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 09:29:59.56 ID:5vEvKYwqo

……
…………
………………

 訪問から一時間が経過していた。

 ついでに玄さんは怪我していた。

 そんな病人一人、怪我人一人の部屋。

 俺と穏乃と鷺森部長は引き続きアルバムを紐解いていた。

 憧はベッドで、玄さんは宥さんの膝枕で寝ている。

 見舞いというか、最早友達の家に遊びに来ただけな雰囲気だ。

♪アノブタイヲコロゲマワッテー カナデチャッテヨマイセーレナーデー

穏乃「あ、メールだ」ピッ

♪ソーダアジノーアイスキャンディー ギラギラナオヒサマノシタハンブンコー

宥「私も……」ピ、ピ

♪クレナイダアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

灼「私は電話」ピ

 着信音!

922 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 10:05:10.36 ID:5vEvKYwqo

 それぞれ携帯を取り出し操作する。

 と、

穏乃「え!?」

宥「わっ」

灼「ヌゥ」

 三人が同時に声を上げ、また同時に俺を見た。

京太郎「……え、なに?」

穏乃「いや、うちのお母さんからだったんだけど……急用が出来たから店番しに戻ってこいって言われちゃった……」

宥「わ、私も家からで……人手が足りなくて玄ちゃんと帰ってきて欲しいって……」

灼「おばあちゃんが昼は外でラーメン食べようって」

京太郎「な、なんだってー!?」

 全員同時かよ!?

925 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 10:28:36.63 ID:5vEvKYwqo

京太郎「部活はどうするんだ?」

穏乃「んー……戻っても赤土先生は会議中だろうし、今日はナシかなぁ」

京太郎「なるほど。まあこの状況じゃあなぁ」ヨイショッ

穏乃「ねー」ヨイショッ

 とりあえず玄先輩を抱えて部屋を出る。

 俺が腕、穏乃が脚を持っている。

 ……俺が脚を持ちたかった!

 後ろに宥さんと鷺森部長が続く。

京太郎「えっさ、ほいさ」

穏乃「えっさ、ほいさ」

玄「ぁうぁうぁうぁう」

 ゆっさゆっさ、ぷるんぷるん。

 テンポよく玄さんを運搬する俺達。その振動で彼女のおもちが蠱惑的な震えを見せる。

 玄さんをジャイアントスイングしたら、その際に描かれる円はこの地球上で唯一の聖域になるんじゃないだろうか(?)。

930 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 10:57:28.05 ID:5vEvKYwqo

 そんな妄想をしている内に玄関に到着。

 先に靴を履いた穏乃が玄さんを背負う。

穏乃「よいっしょお!」

京太郎「うお、すげー馬鹿力」

 このミニマムな身体のどこにこんなパワーが。

穏乃「それじゃ行きましょっか宥さん!」

宥「う、うん。玄ちゃん背負ってもらってごめんね……?」

穏乃「へーきですって!」ムンッ

京太郎「ちょい待ち穏乃、俺もすぐ靴履くから」イソイソ

穏乃「え、なんで?」

京太郎「え? なんで?」

 訊き返すと、穏乃はさも当然という顔で、



穏乃「京太郎は残って憧を看ててよ」



 とか言う。

 鷺森部長はもう帰った。

934 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 11:32:00.92 ID:5vEvKYwqo

京太郎「オレェ!?」

穏乃「そりゃそうだよ、私ら帰らないといけないんだから。だめ?」

京太郎「駄目っつーか……憧の方が嫌がるんじゃね?」

穏乃「寝てるから平気だって。家の人が帰って来るまででいいからさ!」

京太郎「えー……」

 むしろ家の人に見られたらマズくね? と思うのは俺だけだろうか。

 いや、思わないのが穏乃だけなんだろう。

 現に宥さんも曖昧な表情をしているし。

 しかし、

宥「す、須賀くん……」

京太郎「はい?」

宥「あの……め、迷惑じゃなかったら、憧ちゃんといてあげて……」

 マフラーに埋めた口から、俺に宛てた言葉がもごもごと這い出てくる。

 隣では穏乃も同調するように首を縦に振っていた。

 こんな風に、頼まれたら。

京太郎「………………分かった、分かりました。残らせていただきますよ」

 頷くしかないよなぁ、男の子だもの。

938 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 12:53:38.60 ID:5vEvKYwqo

~憧の部屋~

キィ...バタン

 戻って参りました。

 独特の熱気が篭る空間。

 カーテン越しの日光が鈍く照らす室内。

 部屋の主は依然眠りについたまま――では、なかった。

憧「……すがくん……?」

 もそり、と起き上がる憧。

 寝起きなせいでまた髪とか服とか、うん、乱れていた。

 101%親切で直してやりたいが、クロスカウンターが怖いしなぁ。

京太郎「よう、起きて大丈夫か?」

憧「ん……あいおう……」ポケー

 大丈夫じゃなさげだ。

 ていうか半覚醒だ。

 おかげでパニくられずに済んでいるのかもしれないけど。

940 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 13:30:19.13 ID:5vEvKYwqo

京太郎「あのな、穏乃と玄さんと宥さんと鷺森部長は用事があって先に帰っちまったんだ」

憧「んぅ」

京太郎「俺が残るのは不服だろうけど、家族の人が誰か帰ってくるまで我慢してくれな」

憧「ぁい」

京太郎「そうだ、喉乾いてないか? 俺が行っていいんなら水か何か取ってくるけど――」

憧「……すがくん……」

京太郎「ん、どうした?」










憧「抱いて……」










京太郎「」

948 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 13:50:41.74 ID:5vEvKYwqo

 ウェイ。

 ウェイウェイウェイウェイノーウェイノーウェイ

 ウェーイOWO。

 待て。

 待とうよ。

 罠だから(確信)。

 俺の直感が告げている。

 いくらなんでも脈絡がなさすぎる。

 出来の悪いエロゲーじゃあないんだぞ。

 ここで勢い任せに軽率な行動を取ったが最後だ。

 観察。

 観察するんだ。

 罠だから(揺るぎない確信)。

京太郎「………………」



憧「ぎゅーってしてぇ……」



 あっぶねええええええええええええええええええええ!!

953 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 14:11:58.86 ID:5vEvKYwqo

 ほらね! やっぱりね! 早合点だったね!

 ただの「抱いて(物理)」だったね!

京太郎「って(物理)でもダメじゃねえか!?」

 それってつまりハグだろ!?

 ベッドに腰掛けて潤んだ瞳で両腕を俺に向けて伸ばす憧を抱き締めろと!?

 ダメです、死んでしまいます。

 物理的に死ぬ。精神的に死ぬ。社会的に死ぬ。

 どうあがいても絶望とはこのことだ。

憧「ねえ、寒いの……早くぅ……」

 ……………………………………………………ダメだろ!

 そんな宥さんのお株を奪うような発言もダメだし、やっぱり抱き締めるなんてダメだろ!

 とは言え汗が冷えて寒いというのは本当なんだろう、指先が小さく震えているのが分かる。

 こんな風に弱り切った憧を見るのは初めてのことで、手を差し伸べたものかどうか、迷う。

 迷う内に、気付けば俺の腕も持ち上がっていて、



憧「つかまえたー……♪」ガシッ



 病人のくせに、寝ぼけてるくせに、憧はそれを見逃さなかった。

958 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 14:26:33.09 ID:5vEvKYwqo

京太郎「あ、あ、憧っ!?」

憧「ぎゅー……」ギュー

京太郎「うううおおおおああああああああああああああああああああああっっっ!!?」

 パジャマ+汗のしっとり柔らかな感触と正面衝突した。

 なんだこれ。

 こんなん事故ですよ、交通事故。

 避けられない。

 抗えない。

 ちくしょう穏乃め、お前の方が憧より寝相が悪いっていうんなら、是非ともお前と一夜を共にしたくなっちまったじゃねーか。

 さておき憧だ。

 俺の胸板に、憧の胸が押し付けられている。

 むにゅうう、と。むにゅう、ではない。

 むにゅうう、だ。

 松実姉妹と比べてしまえば鼻で笑いたくなるような貧弱さだが、単体で見れば立派に胸だ。おもちでなくとも胸は胸。

 柔らかい。

 いい匂いがする。

 幸せだ。

 このまま何もかもを投げ打って、この快楽に身を委ねてしまいた





???「じー」<○><○>





 ぃ。

963 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 15:00:32.50 ID:5vEvKYwqo

京太郎「」

 見ていた。

 いつの間にか開いていたドアの陰から。

 女の人が、俺達を。

 その人はどことなく憧に似ていた。

 ということは、

京太郎「もしかして、憧のお姉さんの……?」

???「新子望でーす」

 やっぱり。

 妹の憧よりも温和な雰囲気を持つ大人の女性だ。

 その望さんが部屋の中に入ってくる。

 にこやかな表情でまた俺達に視線を集中させて、

望「で、熱で意識が朦朧としている私の妹と抱き合ってるキミはどちら様?」ニコッ

京太郎「も、申し遅れましたッ! 自分は須賀京太郎と言います!!」ペコペコ

964 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 15:27:55.59 ID:5vEvKYwqo

望「あははっ! 知ってるよ、憧からよーく聞いてる」

京太郎「は、はあ……そうでしたか」

 憧を抱き留めたままの俺を朗らかに笑い飛ばす望さん。

 頭から爪先まで値踏みするように見られる。

 で、

望「すっごいエッチなんだって?」ニヤリ

京太郎「風評被害です!!!」

 こいつ身内に何吹き込んでやがる。

望「えー? 一目見てイメージ通りの子だと思ったんだけどなー」

京太郎「いやいやいや、こんな髪ですけどマジ紳士ですから俺!」

望「いつまで憧のこと抱っこしてるの?」

京太郎「ぐう!」

 ぐうの音しか出なかった。

968 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 15:42:39.63 ID:5vEvKYwqo

望「なーんてね。ウソウソ、ちゃんと事情は宥ちゃんからメールで聞いてるよ」

京太郎「へ? そ、そうなんすか……」

望「うん。憧のこと看ててくれたんでしょ? ありがとね、はい交代」ヒョイッ

京太郎「あ」

 あっさり憧が望さんの腕の中に移る。

 ちょっと名残惜しい。

望「風邪ひくといっつもこうなんだよねー、この子」

京太郎「こうって……寝ぼけて抱き付くことですか?」

望「そそ。今までは家族か、玄ちゃんとか宥ちゃんにやってたんだけどね」

憧「うぅ……」

 唸る憧をベッドに寝かしつけ、その前髪をサラサラとかき分ける望さん。

望「まさか男の子に頼るようになるとはねぇ……」

 こぼした言葉は、どこか感慨深げに聞こえた。

969 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:00:51.06 ID:5vEvKYwqo

 一方で俺の胸には、今更ながらある心配事の種が芽吹いていた。

京太郎「あのーお姉さん」

望「望でいいわよ?」

京太郎「あ、はい。じゃあ望さん、ひとつお尋ねしたいんですけど……」

望「なに?」

京太郎「……」

 やや、間。

 そして、



京太郎「………………抱き合ってたこと、憧は覚えてるんですかね」ボソッ

望「覚えてないと思うわよ?」



京太郎「では何卒ご内密にィイイイイイイイイイイ!!!」ゲザァァァッ

 フローリングの床に額を擦り付ける勢いで土下座した。

 ひとえに明日の我が身が大事ゆえ。

 この須賀京太郎、ゲザることに躊躇なし!

970 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:10:25.65 ID:5vEvKYwqo

望「あー、その様子だとやっぱり普段から抱き合ったりしてる訳じゃないんだ」

京太郎「滅相もございません! 妹さんとは極めて健全な友人付き合いをさせていただいております!!」フカブカァー

 そりゃ抱き合えるんなら抱き合いたいけれども。

望「ふーん……憧が名前で呼ばせてる男の子だから、もしかしてと思ったんだけどねぇ」

 少し残念そうな望さん。

望「ま、詳しいことはハルエに聞けばいっか」

 なにそれこわい。

 そういえばこの人がレジェンドの昔のチームメイトなんだよな。

望「えっと、京太郎くんだっけ?」

京太郎「押忍!」

望「今日のこと、憧に黙っててあげてもいいけど……条件があります」

京太郎「じょ、条件ですか」

望「うん。キミ、また今度うちに遊びに来なさい」

京太郎「へ?」

971 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:19:39.72 ID:5vEvKYwqo

望「だから、日を改めてうちにおいで。なんならご飯ごちそうしたげる」

京太郎「そ、それが条件……?」

望「うん。どう? 守れる?」

京太郎「はあ……まあ、そんなことでよければ」

 一体どんな厳しい要求をされるのかと構えていたから、とんだ拍子抜けだ。

望「よし、決まりね♪ じゃメアド交換しよっか」スチャ

京太郎「あ、はい」スチャ

 携帯を突き合わせて赤外線通信。

 受信、そして受信。……え?

京太郎「あのー、こっちの番号とアドレスは?」

望「憧のよ。どうせ交換してないんでしょ?」

京太郎「お見通しっすか……」

 思わず苦笑する。

 穏乃達とは交換したんだけど、憧だけまだだったんだよなぁ。

972 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:28:37.84 ID:5vEvKYwqo

望「よしっ。都合がついたらこっちから連絡するから、楽しみに待っててね♪」

京太郎「分かりました。それじゃ俺はそろそろ失礼します」

 もうお役御免だろう。

 今日は部活も潰れたし、家でゆっくり休みたい気分だ。

望「あ、ちょっと待って」

京太郎「はい?」

 俺を呼び止めた望さんが、床に落ちていた「あるもの」を拾い上げる。

 言うまでもなく俺のTシャツだった。

 それを俺に差し出す。

望「これキミのでしょ? 返しとくね」

京太郎「あ、はい。……はい!?」

 何故バレたし。

 意外そうな俺の顔を見て、また望さんが笑う。

望「憧もキミも、まさかバレないと思ってた? 普通に考えたら分かっちゃうでしょ」クスクス

京太郎「わっかんねー……普通がわかんねー……」

975 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:37:53.82 ID:5vEvKYwqo

望「ま、どうしてTシャツを貸し借りするようなことになったのかまでは知らないし、追及するつもりもないから安心して」

京太郎「本気で安心しました」

 Tシャツを受け取る。

 こうして手に取るとシワが目立つな。

望「あーそれね、多分洗濯してないから。悪いけどキミの家でお願い出来る?」

京太郎「構いませんよ」

 元からそのつもりだったし。

~玄関~

 いよいよ本当に帰る運びとなり、望さんも見送りに来てくれた。

京太郎「じゃあ、どうもお邪魔しました」ペッコリン

望「いえいえ、こちらこそ妹がお世話になっちゃって」ペッコリン

 お辞儀し合う。

 顔を上げると、大人びた、でもどこか幼さを感じる望さんの笑顔があった。

 なんだろう、ちょっとレジェンドに似てる。

望「あの子のこと、これからも色々よろしくね」

京太郎「こちらこそ。憧には色々お世話になってますんで」

望「そっか」ニコッ

 そして何度目かの挨拶を交わし、今度こそ俺は新子家を後にした。

976 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:42:35.27 ID:5vEvKYwqo

~帰路~

京太郎「はあ……」

 疲れた。

 なんとなく身体も重い。

 今日は昨日に負けず劣らず色んなことがあったな。

 そして、憧のことを色々と知れた。

 家が神社とか。

 子供時代はまるで別人のようだったとか。

 寝惚けたら始末に負えないとか。

 お姉さんのこととか。

 ていうか、これまでどんだけ知らなかったんだっての。

 我ながら情けなくなる。

 だけど、こうして知れたなら結果オーライだ。

 大切なのは、知ったこれから何をするか。

 それを忘れずにいよう。

978 名前:4月27日(土)[saga] 投稿日:2013/08/09(金) 16:50:37.16 ID:5vEvKYwqo

京太郎「そういえば……」

 手に持ったTシャツを見る。

 望さんが丁寧に畳んでくれたそれを、歩きながら広げる。

京太郎「これ、もしかして俺もう着れないんじゃね?」

 このTシャツを着ているところを穏乃達に見つかったら、流石に言い訳出来ない。

京太郎「結構気に入ってたんだけど、お蔵入りかな……」

 惜しい気もするが仕方ない。

 これ以上憧に迷惑は掛けられないからな。

京太郎「ん?」

 その時、ふわりと風が吹いて。

 Tシャツから甘い香りが漂った。

京太郎「……憧の部屋の匂いかな?」スンスン

 お香とか焚いてたっけ。

 正体不明の、しかし芳しい桃のような香りを楽しみながら、神社から程近い我が家を目指す俺だった。










京太郎「けほっ」

【TO BE CONTINUED...】
最終更新:2013年12月05日 22:08