ランチタイム

362 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 00:43:31.33 ID:zTTzBOcMo

 キーンコーン カーンコーン
   キーンコーン カーンコーン

京太郎「新子さーん、一緒にメシ食べ」

憧「ない」

京太郎「よな」

 轟沈。

 ちくしょう、今日も購買のパンで一人メシか……

 そろそろクラスに男子の友達が欲しいなぁ……

 麻雀部に入ってなかったら即死だったぞ。孤独で。

 とにかく今は腹が減った。

 人気のパンが売り切れる前に購買へ急がねば。

 そう思って立ち上がった――その時である。

ガラッ

穏乃「憧ー京太郎ーいるー?」

368 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 00:55:17.14 ID:zTTzBOcMo

憧「しず?」

京太郎「の?」

穏乃「あ、いたいた。やほー」トテトテ

 制服姿の穏乃が手を振り振りこちらへ近付いてくる。

 ……ここは学校で、今は昼休みなのにわざわざ「制服姿の」とか書かなくちゃいけないのってどうなん?

憧「どうしたの? 今からそっち行こうと思ってたのに」

穏乃「んーちょっとね」

 と言って穏乃が俺の方を向く。

穏乃「ね、京太郎はごはん食べた?」

京太郎「いやまだだけど。つか昼休み始まったばっかじゃねーか」

穏乃「だよね! 良かった~」

 ホッと胸を撫で下ろす。

 俺が餓えてるのがそんなに喜ばしいかこの美少女め。

371 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 01:12:54.92 ID:zTTzBOcMo

穏乃「ねぇねぇ、良かったら一緒にごはん食べない?」

京太郎「ひょ?」

憧「は!?」

 なんて? 今なんて?

京太郎「……一緒に?」

穏乃「うん!」

京太郎「……穏乃と?」

穏乃「そう! それに麻雀部のみんなで!」

憧「え゛、ちょっと待ってしず。みんなって、まさか……?」

穏乃「もちろん憧も一緒だよ? 決まってるじゃん」

憧「決まってなーい! いつ誰が決めたのよ!?」

穏乃「えと、昨日の内に私と玄さんと、宥さんと灼さんで」

憧「つまりあたし以外全員じゃない!? なんであたしにだけ教えないのよ!」

穏乃「言ったら絶対に嫌がるから黙っとこうって灼さんが」

憧「ぐぬぬ……」

 図星だった。

376 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 01:34:36.30 ID:zTTzBOcMo

京太郎「えっと、つまり、俺も皆さんの食事にご一緒してよろしいということなのでしょうか?」

穏乃「なんで敬語?」

京太郎「だ、だって……」

 「だって今日までずっと一人で食べてたから」。

 なんて言えない。言おうとして既に泣きそうだ。

穏乃「京太郎だって麻雀部の仲間なんだから全然オッケーだよ!」ニコッ

京太郎「(´;ω;`)」ブワッ

 泣いた。

 人目も憚らず泣いた。

穏乃「わわ、どうしたの京太郎!?」ビクッ

憧「なんで急に泣いてんの!?」ビクッ

京太郎「あったけぇ……最後の最後……あったけぇ……」ボロボロボロ

 穏乃に心配されながら、新子さんにドン引きされながら、

 俺は涙を流し続けた。

383 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 01:54:06.99 ID:zTTzBOcMo

~食堂~

 数分後。

 ようやっと泣き止んだ俺は穏乃に連れられ食堂に足を踏み入れていた。

京太郎「ていうか俺食堂来たの初めてだ」

憧「そうだったの?」

京太郎「ああ、普段はパンばっかり食ってるからな」

 ぼっちだし。

穏乃「私も高校に上がってからは初めて来るかも」

 物珍しさから見渡す食堂は広くて清潔で、なんつーか、お上品だった。

京太郎「けど思ったほど混んでないのな」

穏乃「生徒数の割に大きいからねーうちの施設って」

憧「ま、座れなくて困るよりマシだけどね。ところで玄達は?」

穏乃「先に来てるはずだよ。えーっと……いた! おーい、玄さーんっ!」ブンブン

玄「あ、穏乃ちゃーん!」フリフリ

385 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 02:20:23.97 ID:zTTzBOcMo

 六人掛けのテーブルの片側に玄先輩・宥先輩・灼先輩がついていた。

 駆け寄る穏乃に俺達も続く。

穏乃「お待たせしました!」タタッ

玄「ううん、私達も今集まったところだから」

憧「玄、宥姉、灼さん、こんちわー」ヒラヒラ

宥「いらっしゃ~い」

京太郎「ど、どうも先輩方、この度はお招きに与りまして光栄の至りに存じます……」フカブカ

灼「堅苦し……」

 挨拶が済むと、空いている片側の席の端に新子さんが座った。

憧「あれ、しずはお弁当じゃないの?」

穏乃「いやーそれが今朝お母さんが寝坊しちゃってさ……」タハハ

玄「じゃあ学食?」

穏乃「の、つもりです。京太郎も学食だよね?」

京太郎「おう、折角だからな」

穏乃「んじゃ一緒に行こ!」

 という訳で四人に背を向け、入り口近くの券売機に引き返す。

386 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 02:46:11.22 ID:zTTzBOcMo

穏乃「何にしよっかな~♪」

京太郎「結構メニュー豊富だなぁ」

 学食の定番から誰得のイロモノまで、思わず目移りしてしまう品数だ。

穏乃「京太郎はもう決めた?」

京太郎「まだだよ。けど食べるならご飯ものか麺類かな」

穏乃「麺!? いいね麺、私もラーメンにしよっかな!」

京太郎「ラーメンとまでは言ってないんだけどオレェ」

 しかし悩むな。

 悩めば悩むだけ空腹感が増す悪循環。

 ええい焦るんじゃない、俺は腹が減っているだけなんだ。

 今の俺は何腹なのか、それを考えろ。

 米か。麺か。米か。麺か。

 いつまでも迷っている訳にはいかない。

 何か、この状況を打開する何かはないのか――

京太郎「……、ん?」

387 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 03:01:32.13 ID:zTTzBOcMo

 ふ、と。

 目に留まる。

 ともすれば見逃してしまいそうな――いや、現に今まで見落としていた一品。

 数多くのメニューの中、異彩を放つその名前。

京太郎「……」

穏乃「? どったの京太郎、もう決めた?」

 隣の穏乃が不思議そうに俺を見上げる。

京太郎「……穏乃」

穏乃「なに?」

京太郎「阿知賀って、去年までは女子校だったんだよな」

穏乃「そだよ?」

 ますます不思議そうに首を傾げる穏乃。

 俺はゆっくりと腕を手を指を動かし、券売機に向ける。

京太郎「じゃあ、どうしてこんなメニューがあるんだ。この――」

 そして人差し指を突き出して、叫ぶ。



京太郎「 カ ツ カ レ ー う ど ん 定 食 ! ! ! 」

穏乃「 カ ツ カ レ ー う ど ん 定 食 ! ! ? 」



389 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 03:25:58.15 ID:zTTzBOcMo

京太郎「食うの? 女子、こういうの食うの? 実は人気メニューなの?」

穏乃「いや、こんなの私も知らな――あ、そういえば!」

京太郎「どうした?」

穏乃「聞いたことある……共学化に伴って食堂に男子向けメニューを追加するって!」

京太郎「じゃあこれがそうなのか?」

穏乃「たぶん」

 そうか、男子向けの新メニューだったのか。

 しかし男子=大飯喰らいってイメージで見てるのが丸分かりチョイスだな。

 カツカレーうどん定食って……ん?

京太郎「なあ穏乃、これって『カツカレー』と『うどん』の定食なのか?」

穏乃「え?」

京太郎「それとも……『カツ』と『カレーうどん』の定食なのか?」

穏乃「!!」

京太郎「やべぇよ……もう気になって仕方ねぇ……俺これにする!」ピッ

穏乃「わ、私も!」ピッ

 出てきた食券を引っ掴み、俺達は我先にとカウンター目指して走り出した。

397 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 03:38:57.87 ID:zTTzBOcMo

 で。

京太郎「お待たせしましたー」

穏乃「しましたー」

 料理の載った盆を手に戻って来た俺達学食野郎Aチーム。

 並んだ順のまま、俺が先に席に着く。

 と、

憧「ちょっ! どうして須賀くんがあたしの隣なのよ!?」

京太郎「いや流れで」

憧「どんな流……ちょっと待って。それなに」

京太郎「カツカレーうどん定食」

憧「は?」

穏乃「カツカレーうどん定食」

憧「しずまで!? 何よそのイロモノ!」

京太郎「イロモノ言うな!」

穏乃「そうだそうだ! ただうどんの上にカツが乗ってカレーがかかって、別のお茶碗にごはんが山盛りになってるだけだよ!」

憧「じゅうぶんイロモノよ!!」

401 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/10(水) 03:51:21.94 ID:zTTzBOcMo

玄「うわぁ、すごいボリュームだね」

宥「でもあったかそう……」

灼「何故選んだ」

京太郎「いやぁ、名前だけ見てどんな料理なのか気になっちゃって。な?」

穏乃「うんうん。それにカツとカレーとうどんならどうやってもまずくはならないはずだし!」

 こうして実物を見てみると、意外と男子高校生のニーズにしっかり応えてるのかもしれない。

憧「ていうか、どうやって食べるのそれ……?」

京太郎「それについては俺がカツカレーうどんを食べた後で残った汁をご飯にかけるやり方で、」

穏乃「私がカレーうどんを食べながらごはんをカツで食べるやり方で試してみることにしてみた!」

 どっちが美味かったか後で検討する予定だ。

憧「あ、そ……どうでもいいけど、絶対こっちに汁飛ばしたりしないでよね」ジロッ

京太郎「はーい善処しまーす」

憧「ぜ・っ・た・い!!」ギロッ

京太郎「肝に銘じます!!」

灼「……じゃ、みんな合わせて、手」

 なにその倒置法。

灼「せーの」



「「「「「「いただきまーす!」」」」」」



438 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/11(木) 01:19:07.75 ID:sJFSRgobo

 仲良く合唱して、各々昼食に箸をつける。

 隣では穏乃が早速カツカレーうどんからカツを掬い、ご飯の上を経由させて口に運んでいた。

穏乃「んぐんぐ……こ、これは! カレーうどんの汁でふやけたカツの衣がなんとも言えず……うまい!」ズゾゾー!

京太郎「うまいって言ってんじゃねーか。ていうかお前も俺に汁とか飛ばすなよな……っと」ズルズル

 細心の注意を払いながら俺も一口。

京太郎「ん! 確かにこれは中々……」

 カレーうどんの汁でふやけたカツの衣がなんとも言えず美味い。……ハッ!?



 さておき。

 美少女に囲まれての食事という千載一遇のチャンスだ、コミュニケーションを取らずしてどうする。

 手始めに新子さんの方を見る。

 って、

京太郎「新子さん、昼飯ってそんだけ?」

440 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/11(木) 01:41:26.51 ID:sJFSRgobo

憧「? そうだけど」ヒョイパク

 と、キョトン顔で新子さんが口に放るのはプチトマト。

 それが収まっていた弁当箱はおやおやシルバニアファミリー用ですかってほどに小さかった(当社比)。

京太郎「たったそれだけで腹一杯になるのか……?」

憧「放っといて」モグモグ

 にべもない。

穏乃「憧はいつもそうなんだよー。もっと食べないと元気出ないよって言ってるのに」

憧「だから放っといてったら。っていうかしずは逆に食べ過ぎなのよ。太っても知らないんだから」

穏乃「えー大丈夫だよ、私食べても太らない体質っぽいし!」

憧「」ビキッビキッ

玄「」ギシッ

宥「……」ピクッ

京太郎「!?」

 場が。

 場が凍りました。

穏乃「むしろもう少し太りたいんだよねー。ほら、山登りの時とか重心が安定するし、他にも――」

京太郎「わ、分かった! 分かったから即刻この話は止めにしよう! な!?」

 新子さんが手にしたフォークを振り上げない内に!

穏乃「?」

447 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/11(木) 02:11:18.46 ID:sJFSRgobo

京太郎「とッ、ところで玄先輩と宥先輩も弁当なんデスネ!」

 声を裏返らせながらも必死の話題転換を図る。

 ターゲットは揃いの和風な弁当箱を並べる松実姉妹だ。

玄「っへぁ、そ、そうだよー」コクコク

宥「私はそれに学食のお味噌汁……」

 天使に似つかわしくないドス黒いオーラが霧散して、あわあわと首肯する玄先輩。

 ほかほかと湯気を立てるお椀を手に取り、ずず、と小さく音を立てて啜る宥先輩。

宥「あったか~い」ポワワーン

 (結婚しよ)(毎朝あなたの味噌汁が飲みたい)

京太郎「にしても豪華な弁当ですよね。もしかして先輩方の手作りだったり?」

玄「あはは、残念ながらハズレ。これはうちの板前さんのお手製なのです!」

京太郎「い、板前?」

 板前って一般家庭の台所に生息してるもんだっけ?

 そうでなければ……どことなく上品な雰囲気もあるし、松実姉妹ってひょっとしてお嬢様?

476 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:09:26.71 ID:4GjCKFqTo

穏乃「そっか、京太郎は知らないよね」

京太郎「え、何が?」

穏乃「フフフ……玄さん達の家はね、なんと旅館を経営してるんだよ!」バァーン

京太郎「な、なんだってー!?」

 旅館とか。

 ある意味お嬢で間違いないじゃないか。

京太郎「マジすか先輩方」

玄「うん、松実館って言うの」

宥「あったか~いお風呂と美味しい山の幸があなたをお待ちしています」ペコリ

京太郎「宣伝!?」

穏乃「ちなみに私んちが和菓子屋で、灼さんちはボウリング場だよ!」

灼「おばあちゃんちだけどね」

京太郎「へぇー」

 知られざる一面というやつだ。

477 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:10:09.36 ID:4GjCKFqTo

穏乃「ちなみにちなみに憧んちは神j」

憧「しず、あーん!」バッ

穏乃「へ? あームゴォ!?」

京太郎「!?」ビクッ

穏乃「むぐむぐむぐ……憧んちの卵焼きおいひぃ~」ポワーン

憧「」ホッ

 なんだ今の。

 新子さんが身を乗り出して穏乃の口に卵焼きを突っ込んだ。

 えらく不自然なタイミングだったが……

玄「そうだ穏乃ちゃん、私のお弁当も食べない? 少し多めに作ってもらったんだ」

穏乃「いいんですか!? いただきます!!」

玄「じゃあはい、あーん」

穏乃「あー……んっ! んー! おいひーです!」キラキラ

 目を輝かせて喜ぶ穏乃。

 羨ましい……

玄「みんなも良ければ召し上がれ!」

京太郎「いいんですか!?」ガタッ

 玄先輩マジ天使!

452 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/11(木) 03:28:43.23 ID:sJFSRgobo

玄「もちろん! 灼ちゃんも食べる?」

灼「じゃあ煮物ちょうだい。しいたけ」

玄「おっけー。はいあーん」

灼「あむ。……ん、ダシが染みてるね」

宥「憧ちゃんは?」

憧「う゛……あ、あたしは自分のがあるから……」プルプル

宥「いらないの? アスパラのベーコン巻き、好きだったよね?」

憧「うぅう……っもう! そんなの見せられて我慢出来る訳ないじゃない! ちょーだい!」

宥「ふふ、よかったぁ。はい、あ~ん」

憧「あー、んっ。ん~……♪」モグモグ

 なんか俺の目の前で百合の花が咲き乱れてる気がする。

玄「須賀くんはどれにする?」

京太郎「そっすね……じゃあ、良かったらその唐揚げなんか」

玄「唐揚げだね。りょうかーい」

 そう言うと玄先輩は箸で唐揚げをつまんで――つまんで?



玄「はい、あーん」



京太郎「なっ!?」ギョッ

憧「ちょっ!?」ガタッ

玄「えっ?」エッ?

483 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:29:46.83 ID:4GjCKFqTo

京太郎「せ、先輩……あの、それって、」

玄「?」

 やばい。

 めっちゃドキドキする。

 こんな美少女に無防備な笑顔で「あーん」してもらえるなんて。

 リアル経験値の足りてない俺には刺激が強すぎて咄嗟の反応が出来ない。

憧「く、玄……あんた、自分が何してるか分かってるの……!?」

玄「へ? 何って、この唐揚げを須賀くんにあー……」



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憧「……」ジー

京太郎「……」ジー

玄「ちっ、違うの! 違うからね!? これはその……そう、穏乃ちゃんと灼ちゃんにはあーんしたからその流れで、流れでつい!!」ワタワタ

京太郎「わ、分かってますから」ドウドウ

玄「決して男の子に「あーん」だなんて新婚さんみたいで素敵かもなんて思ってませんので!!」

 願望があるのか……?

487 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:35:24.78 ID:4GjCKFqTo

京太郎「ときに鷺森先輩は何を食べてるんですか?」

灼「おにぎり」モキュモキュ

京太郎「なるほど」

 どっこいおむすび君。

492 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:48:11.63 ID:4GjCKFqTo

京太郎「あ、先輩」

玄「はい?」

宥「なぁに?」

灼「どうかした?」

京太郎「あーっと……すみません、宥先輩です。醤油取ってもらえますか?」

宥「うん。どうぞ」スッ

京太郎「ありがとうございます」

穏乃「そーか、その呼び方だと玄さんと宥さんと灼さんでカブっちゃうんだ」

京太郎「だな。今気付いた」

憧「もう名前だけで呼んだら? 他は誰も先輩なんて呼んでないんだし」

京太郎「俺にはそっちの方がどうかと思うんだが……」

 フランク過ぎるぞ麻雀部。

494 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 00:57:49.27 ID:4GjCKFqTo

玄「私は別に気にしないよ? 先輩って呼ばれるのも新鮮で面白かったけど」エヘヘ

宥「わ、私も……好きに、呼んで……?」プルプル

灼「私も先輩じゃなくていい」

京太郎「先輩方がそう言うなら……」

 だが呼び捨ては流石に無理だ。

 なので、

京太郎「じゃあ……玄さん」

玄「はいっ!」

京太郎「宥さん」

宥「はぁい」

京太郎「あらt」

灼「鷺森部長とお呼び」

京太郎「ウィッス」

504 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 01:13:44.57 ID:4GjCKFqTo

灼「部長と監督……特別な立場同士……」ウットリ

 なんか悦に入ってらっしゃる鷺森先輩――改め、鷺森部長閣下。

 一方、俺の隣では穏乃がカツカレーうどんの丼を持ち上げて汁を飲み干すところだった。

穏乃「っぷはー! ごちそうさまっ!!」

京太郎「早っ! 俺まだ残ってるぞ」

憧「それは須賀くんがお喋りしすぎなだけでしょ」ボソッ

京太郎「ひぎぃ」

穏乃「はーおいしかった! こういうのが食べられるなんて、共学化して良かったー!」

憧「そしてしずは単純すぎ……」ハァ

穏乃「これで部活も乗り切れるね!」

憧「こらこら、その前に午後の授業でしょーが」

穏乃「そうだった」テヘッ

 この二人は仲良いよな。

 気兼ねない言葉の応酬が聞いていて楽しい。

505 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 01:48:41.04 ID:4GjCKFqTo

京太郎「あ、そういえば部活で思い出したんだけどさ」

穏乃「なに?」

京太郎「うちってかなり練習厳しいよな?」

 俺はまだ見てるだけだけど。

穏乃「えー? そうかな?」

京太郎「いや俺もヨソを知ってる訳じゃないけどさ。すげー熱気じゃんか」

憧「ま、部員数少ないからね。密度は相当だと思うわよ」

京太郎「やっぱり?」

 入学式当日から集まるような部活なんて、

 その翌日から活動を始めるような部活なんて中々ない。

京太郎「それって、なにか目標があるからなのか?」

506 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 02:08:37.17 ID:4GjCKFqTo

 と、訊いた。

 返事はすぐに来た。





穏乃「え? 全国!」





京太郎「……………………………………………………は?」

穏乃「ん?」

 すげー意外そうな顔をされた。

 穏乃にだけではない。

 穏乃と目を合わせた新子さんも、更に視線を交わした玄さんも、宥さんも。鷺森部長はおにぎりを食べた。

 なんというか、

 「今更なに言ってんだコイツ」……的な。

 そんな雰囲気だ。

510 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 02:35:49.38 ID:4GjCKFqTo

玄「……もしかして、須賀くんに言ってなかったっけ? 私達の目標」

京太郎「……初耳です、多分」

憧「ぅーゎー……」

 ぅーゎー言わないで。なんか傷付く。

京太郎「えーっと……全国って、つまり、インターハイ?」

宥「そ、そう」コクリ

灼「目指すは優勝」

京太郎「へ~」

 THE・生返事。

 驚くタイミングを完全に逸した。

穏乃「その為にまずは県予選突破!!」ガタッ

 そんな不完全燃焼な俺とは対照的な奴が一人。

 そうだね、穏乃だね。

512 名前:4月15日(月)[saga] 投稿日:2013/07/12(金) 03:10:17.61 ID:4GjCKFqTo

穏乃「そして更にその為には練習あるのみっ!!!」ズドドドドドドドド!

 立ち上がった穏乃がその場で駆け足を始める。

 駆け足というか、あまりの勢いに工事現場みたいになっちゃってるが。

穏乃「~~~ぅむぁーーーっ! 我慢できない、今から部室行って打とう!!」

京太郎「今から!?」

玄「いいねぇ、やろっか!」ガタッ

憧「この時間からだと東風一回って感じかな。あたしもやろーっと」ガタッ

宥「ゎわ、私も」ガタッ

灼「私はハルちゃんにエサやる時間だから」ガタッ

京太郎「あ、ちょ、俺まだ食べ終わってないんだけど!?」

穏乃「ゆっくり食べてていいよ! 先に部室行ってるからーっ!」ドヒューン

 一目散に食堂を飛び出す穏乃。

 それに新子さんと松実姉妹が続き、別件で鷺森部長も立ち去る。

京太郎「お、俺も急がねーと……!」

 残り僅かとなったカツカレーうどんを焦ってかき込む。

 早く、早く――



ピチャッ



京太郎「あ゛」

【TO BE CONTINUED...】
最終更新:2013年10月16日 00:38