479 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/25(金) 22:18:20.56 ID:spysn6c1o
7月だ。知ってたけど。
暦の上では夏だし、気候も大概に夏である。
一学期も終わりが近付いていた。
我が阿知賀学院もとっくの先月には衣替えが完了している。
の、だが。
京太郎「……」
俺の歩く通学路に、それらしい格好の生徒は――女子生徒は著しく少ない。
誰も彼女もシャツの上に薄いピンクやイエローのカーディガンを着込んでいらっしゃってやがるのだ。
クソッなんて世の中だ。
夏服と言ったら透けブラだろうが。
パンチラよりも遥かに容易くお目に掛かれる、モテない男子の夏の風物詩だろうが。
なんだお前ら、なんで着込むんだ。
恥ずかしいのか? それとも寒いのか?
寒いなら寒いで宥さんぐらい着込んだらどうなんだ。
いや、やっぱり暑苦しいからやめてほしい。
486 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/25(金) 22:58:44.52 ID:spysn6c1o
宥さんと言えば。
麻雀部にもいたな、カーディガンズ。
憧と玄さんだ。
筋金入りの寒がりである宥さんはともかく、あの二人はダメだ。ダメダメだ。
よりにもよって部内のナンバートゥーとスリーがカーディガンなんて。
穏乃と鷺森部長を見習って欲しい。
でも流石にノーブラはまずいか。
つくづく世の中はままならないものだ。
京太郎「お」
灼「」トテトテ
噂をすればカーディガン非着用女子発見。
鷺森部長だ。
朝も早くから小さな歩幅で登校中のご様子。
駆け寄って話し掛けよう。
タタッ
487 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/25(金) 23:09:10.53 ID:spysn6c1o
京太郎「部長っ。おはようございます」
/:/:::::/::::::::::::/:::::/ /::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l::::::::::::::::::::::::::i
:/:::::/::::::::::::/:::::/ l:::/ |::::::::::::|:::|:::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::l
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.l| |::::::|::::::::l::|_|:/ |::::| |:|:::::::|l::||::::::::::: |:::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::|
. | l::::ハ:::::::|::| l:「 ̄` '::::| l:|l::::十:|‐l::::::: _|::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::|
. !::|::::l:::::|、レ卞弌ミ.ヽ| ヽ\:l:::{ ∨::::::::l:::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::|
|ヽ::::::\バ' ∨:::::| ‐〒==弌::::l::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::|
|::::::::::::::::::| 辷ソ 「 |:::::::::iヽ|::::::::::::::::::|:::::::::::::::: :::::::::|
|::::::::::::::::::| ∨ーC' |::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::| 「あっ……お、おはよう須賀くん///」
|::::::::::::::::::l /// ′ `¨¨¨´ l::::::::::::::::::|::::::::::::::::|::::::::::|
|:|:::|:::|:::::八 /// l::::::::::::::::::l::::::::::::|:::|:::::::イ|
l|ヽ|l::|::::::|:: \ n 」:::::::::::::::::l:::::::::::::|:::|:|::/ l|
`l」l:::::lー‐' \ _ イ|:::::: /::::::::|:::::::::::/|ィ/レ /
 ̄ ` ーァァl´ /|::::::/|::: くー― '
/ { | -‐ ' ´  ̄ \
498 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/25(金) 23:40:20.49 ID:spysn6c1o
~教室~
京太郎「大変だァァァァァッ!!」
穏乃「うぉーううぉううぉううぉう!」
京太郎「気力だァァァァァッじゃねーよ! ダイレンジャーじゃねーよ!!」
憧「あーもー朝っぱらからうっさい! なんなのよ一体?」
京太郎「だって鷺森部長が!!」
穏乃「灼さん?」
憧「灼さんがどうし……なんで手とか繋いでんの!?」
京太郎「え? あ、ああ」
言われて気付く。
無我夢中で引っ張ってきちまってた。
京太郎「すんません部長、痛かったですか?」
灼「ううん、平気。でも……」
京太郎「でも?」
/.:::::/::::::::::::/ |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:::::::ヽ
.:::.:::/::::::::::::::| |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::.
, :::;:::::::::::/::::| |::::|:|:::::::::::::: ハ:::::::::::::|::::::::::::::::::::::.
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..|::|::::||斗─┼ |:|::::|:::::::: |┼── 、 :::: | |
イ :::|::|::::|| | ::::|:|::::|:::::::: | \:::::::| |:::::::|:::::::::::
.:::::::: |::|::::|| ___::|:|:从:::::::::| __\ | |:::::;::::::::::::::
::::::::: |∧::| ,ィ示笊テト  ̄ ,イ示笊k、L/:::::::::::::::.
|:::::::::::::::ト{({ |i::::::::::::l |i::::::::::l| })/{:::::::::::::::::: 「少しドキドキしちゃった……///」
:::::::::::: :.ヽつトイソ つトイソ / |:::::::|:::::::::.
| ::|::::::::| :. , .: |:::::::|::|:::::|
| ::| ::::::ト.._} /// /// _ ノ|:::::::|::|:::::
| ::|::::::::|::::八 、 , 八:::::|:::::::|::|:::::
| | :|::::::::|::::::::::>. <::::::| :::|:::::::|::|/リ
.乂{\:::::Nr-───≧ .. .. イ─ ─└/j:::::/ノ
 ̄ 丿 |  ̄ |/\
/ \_ _/ \
イ /^ ヽ/ ^\ ト
´ | ∧ 7 ∧ | `
/ .| /\\ .//\ | \
512 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 00:08:25.42 ID:InfMAemMo
~部室~
「「「大変だァァァァァッ!!」」」
宥「ふぁっ!?」ビクッ
玄「ど、どうしたの三人とも……って灼ちゃんも一緒?」
レジェンド「『緊急事態』なんてメールが回ってきたと思ったら、珍しい組み合わせだね」
京太郎「そんな暢気してる場合じゃないっすよ!!」
憧「そうよ! 灼さんが――」
穏乃「風邪かもしれません! 顔が赤いんです!!」
「「そっち!?」」
穏乃「ぅ?」キョトン
レジェンド「え、風邪?」
宥「あったかいの……?」イソイソ
玄「おねーちゃん……」
妹の嘆きをその背中で受け(流し)ながら宥さんが鷺森部長に近付く。
そして、病人にはせずにいられないのか、その額に手を――
宥「熱っ」パッ
「「「「「!!?」」」」」
518 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 00:35:27.83 ID:InfMAemMo
玄「お、おねーちゃん大丈夫!?」
穏乃「あの宥さんが「熱い」って言った!?」
レジェンド「ああ、まるで熱燗に触った親父みたいなリアクションで「熱い」って言った!!」
宥「はぅ……///」カァー
(結婚して晩酌してもらお)
恥じらいながらも耳たぶを触って熱を逃がす宥さんが可愛かった。
憧「ていうかちょっと待って、灼さんマジで風邪!?」
京太郎「そ、そうか! しかも宥さんが熱がるレベルで……!」
手を握った時は何も感じなかったのに。
熱くなってるのは顔だけなのか。
そんなピンポイントな風邪があるのか。
穏乃「灼さん! 私のこと分かりますか!?」
灼「え、穏乃でしょ……?」
実際、普通に受け答えは出来てるっぽいし。
519 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 01:00:32.62 ID:InfMAemMo
憧「あ、あたしのことは!?」
灼「憧」
玄「私は!?」
灼「玄」
宥「じゃあ私は……?」
灼「宥さんですよね」
京太郎「鷺森部長。俺のことは分かりますか?」
灼「す、須賀くん……///」ポッ
京太郎「」
憧「」
穏乃「赤土先生も聞いてみてください!」
レジェンド「私?」
玄「そうですのだ!」
宥「念には念を……」プルプル
レジェンド「いやぁ私は大丈夫っしょ~。なっ灼!」
____
´:i:i:i:i:i:i:i:i:i〕iト.
./i:i:i:i:i:i/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
/:i:i:i:i:i:i:i/|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ
./:i:i:i:i:i:i:イ |i:i:i:i:i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:゚,
':i:i:i:i:i:i/ |l |i:i:i:i:i:i:i:||i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
|:i:i:i:i:i:|厂|l` |i:i:i:i:i:i:i廾ト:i:i:i:i:i|i:i:i|
|i:i:i:i:i: ≧=ォ Ⅵi:i:i:i:i{\i:i:|i:i:i:i|i:i:i|
|i:i:i:i:i:i| V)ソ ¨¨≧=ォヾ|i:i:i:i|i:i:i|
|i:i:i:i:i:i|' ' ' V)ソ /|i:i:i:i|i:i:i| 「赤土」
乂i:i:i:iト ' ' ' /メ|i:i:i:i|i:i:i|
\i|父ト ‘'___ イi:i:i:|i:i:i:i|i刈
.イ \ / \¨7i:i:i:i:/
-‐=彡 :| /Чト } 〕iド¨¨
/ ¨|:.| /∧ / \
527 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 01:20:27.56 ID:InfMAemMo
◆
玄「ただいま」ガチャッ
宥「おかえり……」
憧「しず、ハルエは?」
穏乃「保健室で寝てるよ」
京太郎「そっか。一安心ですね部長」
灼「……///」ポー
京太郎「鷺森部長?」
灼「えっ!? あ、ごめ、見惚れて……じゃなくて! 聞いてなかった……どうかした?」
京太郎「……いえ、なんでもないっす」
灼「そ、そ……///」モジモジ
「「「「「……」」」」」
どうしよう、これ。
考える間もなく、始業五分前のチャイムが鳴った。
564 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 22:23:09.11 ID:InfMAemMo
~教室~
京太郎「……」カリカリ
板書をノートに写しながら、今朝の事件を思い出していた。
鷺森部長が――
俺を「須賀くん///」と呼び、レジェンドを「赤土」と呼んだ。
――大事件である。
原因が判明しているのがせめてもの救いと言えるが……
ポトッ
京太郎「ん?」
机の上に何かが投げ込まれた。
小さく折り畳まれた紙だ。
投げ込まれた方向を見る。
憧「……」パチッ
ウインクされた。
京太郎「☆ミ」バチコーン
ウインクし返した。
憧「~~~っ!?///」ブンブン
そういうことじゃなかったらしい。
569 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 23:01:32.50 ID:InfMAemMo
憧「ッ!」ビシッ
ああ、紙を開けということか。
京太郎「」カサカサ
『どうする?』
と、丸っこい文字で書かれていた。
主語がないが、鷺森部長のことで間違いないだろう。
京太郎「……」カキカキ
『どうしたらいい?』
京太郎「」ポイッ
『アンタが考えなさいよ
好かれてるのはアンタでしょ』
『まずそこが分からん。なんでオレェ?』
『知らない、自分の胸に聞いてみれば』
『最近ブラがキツイって憧っぱいが』
『自分の胸に聞きなさいったら!
……ところでマジ? 実はあたしもそうじゃないかって思ってたんだけど!』
『嘘ですd(ゝc_,・*)』
『殺す絶対ゼッタイぜったい殺くぁwせdrftgyふじこlp』
担任「はーい須賀くん新子さん。手紙の交換でイチャつかないでくださいねー授業中ですよー」
「「イチャついてません!!」」
575 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/26(土) 23:36:35.16 ID:InfMAemMo
注意されてしまったので手紙での意見交換は出来なくなった。
ノートを取りながら、また一人で考える。
まず、鷺森部長の変化をまとめよう。
・高熱が出ている
・俺の好感度がストップ高
・レジェンドの好感度がストップ安
・それ以外は普段通り
京太郎「……ううむ」
さっぱり分からん。
本人に自覚症状はない。
部員の誰が止めても聞かず、授業を受けると言っていたし。
だが裏を返せば、問題らしい問題は俺とレジェンドの激しい好感度変動だけだ。
犠牲になったレジェンドには申し訳ないが、後は俺が普通に対応すればいいだけだ。
これでも鷺森部長とは普段から仲良くやっているつもりだし、更に好かれる分には何も困らない。
今日一日、レジェンドの代わりを務めるぐらいの心構えでいよう。
それで全てが丸く収まる筈だ。
そう思っていた時期が、俺にもありました。
579 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 00:11:26.60 ID:fSI/47RYo
……
…………
………………
灼「あ、須賀くん。次は移動教室?……あの……途中まで一緒に歩いても、い……?///」
……
…………
………………
灼「須賀くん、次の時間体育だよね。タオル持ってる? 良かったらこれ、使ってほし……///」
……
…………
………………
灼「須賀くん。あ、いや、用事とかじゃないんだけど、少しでも顔が見……は、話がしたいなって!///」
……
…………
………………
590 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 00:51:31.74 ID:fSI/47RYo
京太郎「……はぁ……」
憧「……」ギチギチギチ
京太郎「あだっ!? あだだ憧! 頬! いてぇ!」
憧「目は覚めた?」ニッコリ
京太郎「起きてるよ!?」
憧「あら失礼。だらしない顔してたから夢でも見てるのかと思って」シレッ
京太郎「それは……仕方ないだろ。夢見心地にもなるわ」
憧「……まーね。確かにあれはリアリティなさすぎるわね」
京太郎「まさか休み時間ごとに会ったり来たりするとは……」
舐めてた。
鷺森先輩の献身ぶりを。
レジェンドの愛されぶりを。
普段の二人から予測すべきだったのだ。
京太郎「しかも……」
憧「うん?」
京太郎「今日の鷺森部長、いつになく可愛いんだからタチが悪いよなぁ……」ウゥーン
憧「」ギヂギヂギヂギヂ
京太郎「いてーって!?」
608 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 14:27:18.87 ID:hdOBHyZIo
~食堂~
京太郎「……ま、そりゃいるわな……」
穏乃と合流してやって来た食堂の入り口でボソッと呟く。
視線の先には玄さんと宥さんと――鷺森部長。
長机の一角にいつものように陣取っていた。
しかし、一点。いつもとは決定的に違っていた。
席順だ。
いつもなら上級生三人が横並びになっているが、今日は二人と一人で別れている。
二人の方が松実姉妹で、一人の方が鷺森部長だ。
即ち、俺達一年生も一人と二人に別れて座らなければならない。
京太郎「……」
憧「……」
穏乃「二人ともどしたの? 早く行こ?」
知らぬは穏乃ばかりなり。
覚悟も決まらないまま、重い足取りで食堂に踏み入った。
614 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 15:10:14.36 ID:hdOBHyZIo
本日は学食である。
長野遠征で家事に目覚め、北大阪遠征で加減を覚え。
負担にならない程度に料理を勉強中な今日この頃。
作るのも勉強なら食べるのも勉強。カツカレーうどん定食から学べることは多い。筈。
料理を受け取って席に行くと、
京太郎「………………あるぇー」
席が、
灼□宥
□玄
憧□穏
こんな風に埋まっていた。
不自然ってレベルじゃねーぞ。
京太郎「……おい憧」ヒソッ
憧「……なによ」ヒソヒソッ
京太郎「なんで詰めて座らないんだよ」
憧「しょうがないじゃん……隣に座ろうとしたら灼さん、嫌そうっていうか、すっごく悲しそうな目で見てくるんだもん……」
京太郎「あー……」
618 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 16:01:30.64 ID:hdOBHyZIo
元々子供好き・動物好きな憧だ。
幼いナリっつーか見た目ロリっつーか、とにかく鷺森部長が相手では分が悪いんだろう。
別にロリコンではない俺でさえ今日の鷺森部長には庇護欲が刺激される程だからな。
京太郎「じゃ、俺が鷺森部長の隣か……はあ」
灼「……あの、須賀くん」
京太郎「はい?」
灼「私の隣、嫌かな……?」
京太郎「えっ!?」ギクッ
灼「ずっと困った顔してる……」
京太郎「い、いえっ! そんなことないですよ!?」
灼「ほんと……?」
京太郎「はい! 鷺森部長の隣で嬉しいです!」
灼「ぁ……わ、私もっ……須賀くんの隣、嬉し……///」カァー
京太郎「」キュンッ
憧「」ギロッ
京太郎「」ビクッ
621 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 16:42:31.27 ID:hdOBHyZIo
ともあれ、食事が始まった。
俺以外の五人は持参した弁当箱を広げて、宥さんだけが味噌汁追加。
ここはいつも通りの日常だ。
ここまでは。
灼「須賀くん、お昼それだけで足りる?」
京太郎「え? はあ、まあ」
灼「……そ」シュン
京太郎「あの……どうかしました?」
灼「う、ううん! なんでもな……」ササッ
京太郎「………………」
見えた。
見えてしまった。
鷺森部長が咄嗟に机の下に隠したもの。
見覚えがあった。
あれは弁当だ。
レジェの字の風呂敷に包まれた、いつもレジェンドが食べてる鷺森部長お手製の弁当だ。
632 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 17:22:32.15 ID:hdOBHyZIo
京太郎「……あ~、やっぱりこれじゃ物足りないかもな~」
灼「え?」
京太郎「でもなぁ、何か買って食べようにも今日は持ち合わせがないんだよなぁ」チラッチラッ
玄「あ、じゃあ私のお弁当分けて――」
宥「――玄ちゃん」ビュオッ
玄「ふえ゛っ!?」ビクッ
灼「……す、須賀くんっ」
京太郎「はい」
灼「よかったら……これ、食べてほし……」スッ
京太郎「弁当? いいんですか?」
灼「ん……須賀くんの為に作ってきたから……///」モジモジ
京太郎「……」
灼「須賀くん?」
京太郎「あ、いえ、なんでも。じゃあありがたくいただきますね」
灼「めしあがれ……」ニコ
京太郎「」キュンッ
クソッタレめ。
まるで笑顔のバーゲンセールだな。
そんなことを考えながら、憧の刺すような視線を受けながら。
食べかけの定食を急いで詰め込み、本当はレジェンドの為に作られた弁当に箸を付けた。
文句なく美味しいのに、どこか複雑な味がした。
635 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 18:02:04.78 ID:hdOBHyZIo
……
…………
………………
放課後。
あらかじめ全員で集まって部室に向かう。
その途中、隣を歩く鷺森部長を横目で窺う。
まだ赤い顔。熱が下がった様子はない。
部活を休んで帰るべきだと皆で諭したが、やはり「大丈夫」の一点張りだった。
そうまで頑なになる理由は……自惚れた言い方になるが、俺だろう。
熱に浮かされる鷺森部長の中で、レジェンドの位置に取って代わった俺の為。
そこは、どうにも居心地が悪かった。
やはり鷺森部長には一刻も早く風邪を治してもらわなくては。
一刻も早く、家で休んでもらわなくては……
玄「着いたっ」
穏乃「今日もたくさん打つぞー!」
と、先頭を歩いていた玄さん達の声。
考え込んでいる内に部室の前まで来ていたらしい。
636 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 18:13:42.32 ID:hdOBHyZIo
ガチャッ
憧「あれ、暗いわね」
玄「朝カーテンなんて閉めたっけ?」
宥「ううん……」
穏乃「見て! 部屋の真ん中に誰かいる!」
???「フフフ……」
京太郎「あ――貴女は!?」
--……--
r―‐⌒ヾ : : : : : : : : : : : : : : : \
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i{ | ′:.:.'{_|_:.:.:.:| リV:.:.:.:.:.:.:}:.>匕、: :\j--i
|| |/: :.:.:∧}リ≫┘o。v――'’xr示=ミト、:.:.\}、
リ {: :.:.:.:.|!:‘, ィ芹≧ュ ’|イi//| 》、:。:.:.:.ぃ、 「待たせたねっ!」
|:.:.:.:.:.「`ヽ《乂_゚ツ ゞ= '゚ :リ/リ゚。:.:.ト、i
|:.:.:.:.小 , , ' , , : /:.:.:.∧:.} リ
l.:.:.:.:.:| }ゝ-! jハ:.:.:.:j/}:.|
:。.:.:.:{ {:j:八 -==ァ イ }/ j:ノ
゚:。.リ \{≧ュ。. ィ:jソ ″ /
ゞ イニ} ` ´ {ニヽ
ィニ// ゝ|ニ\_
┬==≦ニ/ニ7____ __,.|ニニムニニニニニlヽ
/ニ|ニニニ/ニニニ|`-―――‐一´|ニニニムニニニニ|ニム
. /ニニ:|ニ7ニニニニニ| |ニニニニ}ニニニ=|ニム
京太郎「監督!」
憧「ハルエ!」
穏乃「先生!」
玄「赤土先生!」
宥「赤土さん……!」
/ \
.......... ............ ヽ
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|ヘ .:::::|:::Vィr=ミヽ|\::::| ィr≠ミト|::::::: |::::::::|
\ |::::::.《´|i::::::::ト ´|i::::::::|》 ::::::::|::::::::| 「赤土ォ!!」
|:::::::::ハ 弋)リ 弋)リ | :::::::|::::::::|
|:::::::::| ,,,, , ,,,,, :::::::::::|::::::::|
|:::::::::ト、} __ /|::: |::::|::::/リ
|V|::: |:::::\ ( _) /:::|::: |::: |:/
| \:|/ -r->、, _ イ |`ヽ |/ ̄´
/ / / \ / 7 ̄ ̄/\
. / / /| /~|/\ / / ヽ
639 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 18:20:46.09 ID:hdOBHyZIo
~校庭~
ざわ...
ざわ...
ざわ...
憧「……救急車、行っちゃったわね」
穏乃「うん……大丈夫かな、先生」
京太郎「付き添いの玄さんと宥さんに任せようぜ」
憧「そうね……」
穏乃「そうだね……」
「「「……」」」チラッ
灼「?」キョトン
「「「………………」」」
本日の部活動、中止。
661 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 21:19:18.13 ID:hdOBHyZIo
◆
で、
京太郎「……」テクテク
下校中だ。
灼「……///」トテトテ
鷺森部長と。
あいえぇ……なんで。
などとローテンションに自問したので自答しよう。
病人を一人で家に帰す訳にはいかないからだ。
そして鷺森部長が視線で俺を指名したからだ。
故に、こうして甘酸っぱい沈黙を携えて二人きりの下校中なのだ。
……ぁぃぇぇ。
これを災難と言ってはバチが当たるが、気苦労なのは間違いないよなぁ。
665 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 21:46:21.49 ID:hdOBHyZIo
◇
憧「」コソコソッ
穏乃「」コソコソッ
憧「ふぅ……灼さんが歩くの遅くて助かったわ」
穏乃「……ねー憧」
憧「まったく京太郎ってばいつも歩くの速いのよ少しは体格差とか考えてよねこっちは置いてかれないように必死なんだからほんとにもう……」ブツブツ
穏乃「ねーえー。憧ってばー」ユサユサ
憧「なによ?」
穏乃「なんで京太郎と灼さんと一緒に帰らないの?」
憧「それじゃ意味ないでしょ!」
穏乃「なにが……?」
憧「いいからちゃんと隠れて。ほら、昔やった探偵ごっこみたいに」
穏乃「あっ、あれ楽しかったよねー。望さんの後を尾けたりしたっけ」
憧「う゛、身内だからってあたしばっか怒られた記憶が……ええい、行くわよっ!」タッ
穏乃「遊ぶなら京太郎も一緒が良かったな~……」タッ
666 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 22:18:18.62 ID:hdOBHyZIo
◆
京太郎「鷺森部長、大丈夫ですか?」
灼「な、なにがっ?」
京太郎「風邪ですよ、歩くの辛かったりしませんか?」
灼「あ……うん、だいじょぶ。でも顔だけちょっと熱……///」ポー
京太郎「辛くなったら言ってくださいね。おんぶでもなんでもしますから」
灼「えっ!? い、いいっ!///」ブンブン
京太郎「全力で拒否しなくても……そんなに嫌でした?」
灼「や、ちが……その……」モジッ
京太郎「?」
灼「熱いの、もっとひどくなりそうだから……///」プシュー
京太郎「」キュンッ
やだもー。
誰これもー。
俺の知ってる鷺森部長じゃない。
鷺森部長はこんなこと言わない。
在りし日の部長、カムバック。切実に。
669 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 22:55:18.02 ID:hdOBHyZIo
灼「あ、須賀くん」
京太郎「どうしました部長?」
灼「……」ムッ
京太郎「鷺森部長?」
灼「なまえ」
京太郎「え」
灼「名前……苗字や役職じゃなくて、下の名前で呼んで欲し……///」モジモジ
京太郎「え゛っ!?」
灼「……だめ?」ジッ
京太郎「いや、だめってわけじゃ……」
ていうか自分が呼べって言ったんじゃん。
京太郎「……あ、灼さん……でいいですか?」
灼「呼び捨てで」
京太郎「なんで!?」
灼「なんとなく……その方がしっくり来る気が……」
京太郎「ッ……だ、ダメです。流石に無理です。さん付けで我慢してください」
灼「むぅ……でも、まぁ、それだけでも嬉し……///」
京太郎「……」
675 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 23:15:57.26 ID:hdOBHyZIo
◇
憧「くぅぅ……! 京太郎の奴さっきからデレデレデレデレ……っ!」ギリッ
穏乃「でも今はなんか寂しそうな顔してるよ?」
憧「ふんっ! どうせ「あーあ、これで胸があったら言うことナシなんでゲスけどなぁ~。ゲースゲスゲス」みたいなこと考えてるだけよ!」
穏乃「……本当にそう思ってる?」
憧「へっ? そ、それは、その……」モニョモニョ
穏乃「……」ジー
憧「……っべ、別に本気じゃないわよ! 冗談よ、冗談っ」
穏乃「だよね!」ニコッ
憧「はあ……しずには敵わないなぁ」ナデナデ
穏乃「ぅ?」
憧「なーんでもない。それより向こうが立ち止まってるからあたし達も動かず待機ね」
穏乃「りょーかい! でもなんで立ち止まってるんだろ?」
憧「さあ?」
穏乃「立ち食いそばでも食べてるのかな……」ジュルリ
憧「そばはどっから出てきたのよ……よだれよだれ」フキフキ
679 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/27(日) 23:44:29.14 ID:hdOBHyZIo
◆
京太郎「ところで鷺も」
灼「」ジトー
京太郎「……り灼さん。俺を呼び止めたのは何か用があったからじゃ?」
灼「あ、そうだった……靴紐ほどけてるよ」
京太郎「マジすか。あっマジだ」
灼「結んだげよっか……?」
京太郎「これぐらい自分で出来ますって。ちょっと待っててくださいね」スッ
言って、しゃがんで、靴紐を結び直す。
灼「……」ジー
京太郎「……」
つむじに視線を感じる。
正面から見下されているのだ。
悪気はないのだろうけど、なんかプレッシャーだ。禿げそう。
せっかく親父も祖父もハゲてないんだから、無闇に脅かさないでほしい。
京太郎「……あの、灼さ――」
やめてもらうべく顔を上げた。
その時。
\サイクロン!/ \ジョーカー!/
風が。
687 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/28(月) 00:16:19.06 ID:vXgOs8mXo
吹いた。
格好良く言うなら、一陣の風が。
格好悪く言うなら、えっちな風が。
灼さんの足元を大胆に、男子小学生のように。
スカートをめくって吹き抜けた。
京太郎「」
灼「?」キョトン
それは一瞬の出来事。
しかし確かに起きた事象。
だから呆けていた灼さんが、
灼「………………、」
/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ:i:i:i:i:i:i:i:i\
/:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i \:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\:i:i:i:i:i:i:∧
./:i:i:i:i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|\:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i V:i:i:i:i:i:∧
′:i:i:i:i/ハ:i:i:i:i:i:i:i:i厶斗く:i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i゚,
|i:|i:i:i:i:i:| |i|i:i:i:i:i:i:| \ \i:|i:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:.
|i:|i:i:i:i:i:|/|ハ:i:i:i:i:i:| -===ミ:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
|i:|i:i:i:i:i:| ヽ:i:i∧,〃 忤ハ :i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|i| 「~~~~~~~~~~ッ!?///」バッ
|i:|i:i:i:i:∧ x==ミ 弋)刈i:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|i|
乂V从iハ { 忤,ハ //// :i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i:i:i:ilリ
|i:i:i:i:i:i:ヽ 弋)ソ |i:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i|i:i:八___
|i:i:i:i:i:i://// ’ |i:i:i:i:i:i:ム:i:i:i:i:|彡'::::::::::::::\
|i:i:i:i:i:i:i:i:iハ r '⌒ |i:i:i:i:i:i:| l/}/:::::::::::::::::::::::::::゚,
|i:|i:i:i:i:i:i:i:i:i::ゝ.. _ ¨ ̄ |i:i:i:i:i:i:|/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
|∧:i:i:i:i:i:i/ x≧=- 彡i:i:i:/}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
V¨¨¨` .′::::::/::::| 厂「∨:::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::;
i:::::::::/::::: |ハ l// }:::::/::::::::::::::::::::::::ハ
気付いた時には、もう遅い。
692 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/28(月) 00:53:05.28 ID:vXgOs8mXo
灼「す、す、す、すっ///」プルプル
京太郎「あー……」
灼「しゅがきゅん!///」
京太郎「……はい」
灼「みミみ、見……!?///」
京太郎「………………はい」
灼「ッ――――――――――!///」プシューッ
ああ、俺の馬鹿野郎。馬鹿正直野郎。
見え透いた嘘でも、言うと言わないとでは大違いなのに。
もう後の祭りだ。ヤケクソだ。余計なことも言ってしまえ。
京太郎「灼さん」
灼「な、なにっ///」
__ /⌒ヽ
⌒\ ∨ ヽ___
_, ----` ∨ `ヽ、
/´ | \
/ ____ / l| | :. \
/// / | |l | : ヽ
/ / // ,∧ / ,イ l| :. . .
/ イ / // : l | ' / ! 从 | : :.
.'/ ' ' /-|-{ { | /}/ | / } } | .
}' / |Ⅵ { 从 ' , }/ /イ } .
/ イ | l{ { ∨/ ' } ∧ : :.
´ | {|从三三 / 三三三 / /--、| ∧{ 「高二にもなってアニマルプリントはどうかと……」
{从 | , ムイ r 、 }} /} \
| ノ ' }/イ/
{ _,ノ
人 _,..::ァ r }/
` ゝ - ' イ |/
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憧の1/100ぐらいの力で叩かれた。
721 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/28(月) 22:15:25.34 ID:vXgOs8mXo
◇
憧「なッ……! 何をやってんのよアイツはァァァ!!」ゴッ
穏乃「灼さん今日はアルパカ柄かー」
憧「暢気に観察すな! てか相変わらず目ぇいいわねアンタ!」
穏乃「そんなに怒ることなの?」
憧「当たり前でしょ!? 見てよ京太郎のあの顔!」
穏乃「あ、なんか嬉しそうだね。灼さんに叩かれてるのに」
憧「興奮してるのよ!!」クワッ
穏乃「憧が?」
憧「京・太・郎! なによ、あんな子供パンツにデレデレしちゃって……あ、あたしなんて今日すごいわよ!?」
穏乃「なんで張り合ってんの?」
憧「別に張り合ってなんて……ないわよ、うん、ないない」
穏乃「ふーん」
憧「とにかく! やっぱり京太郎一人に灼さんを任せたのは失敗だったわね」
穏乃「そうかなー」
憧「ここからじゃ話し声は聞こえないけど、次に何か起きたら現行犯逮捕よ!」
726 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/28(月) 22:59:53.20 ID:vXgOs8mXo
◆
灼「もうっ、もうっ///」ペチペチ
京太郎「いてて、すんませんってば。でも親切心からの注意で」
灼「余計なお世話! 好きで穿いてるんだから放っといてほし……///」
京太郎「でもやっぱり子供っぽくないですか?」
灼「しつこ……似合ってるって言ってくれたからいいの」プイッ
京太郎「え」
灼「え?」
京太郎「似合ってるって……誰が言ったんですか?」
灼「誰って、それはもちろん……あれ?」
京太郎「……」
灼「あれ、あれっ……? なんでだろ、思い出せな……確かに言われたはずなのに……須賀くん?」
京太郎「もちろん俺じゃありません」
灼「じゃあ誰……」
京太郎「……監督なんじゃないですか?」
731 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/28(月) 23:36:19.13 ID:vXgOs8mXo
灼「え、赤土?」
京太郎「はい」
灼「なんでそこで赤土……?」
京太郎「いやほら、顧問ですし。部員と裸の付き合いもあったんじゃないかなーって」
灼「ありえな」ズバァッ
京太郎「ありえませんか」
灼「赤土に似合うなんて言われたらもう二度と穿かな……むしろその場で脱ぎ捨てると思」
京太郎「なんでそんなに嫌ってるんですか……」
灼「分からな……けど無性に腹が立つ。特にあの前髪がいけ好かな……」
京太郎「お、俺は好きですけどね、監督の前髪! なんつーかこう、拘りを感じますよ!」
灼「……」ムッ
京太郎「背が高くてスマートなのも凛々しいですし、ちょっと子供っぽいのも生徒と同じ目線に立ってくれてるみたいだし、あと、それと、えーっと……」ウゴゴゴ
灼「……須賀くん」
京太郎「あ、はい?」
灼「……あんまり、他の女の人の話はしてほしくな……」
736 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/29(火) 00:16:23.94 ID:Sf4vN21Ro
京太郎「……ッ」
灼「私、こんな体型だから……目移りされたら、困るし……」ゴニョゴニョ
京太郎「……」
灼「……須賀くん?」
京太郎「やっぱりダメだ」
灼「え?」
京太郎「すみません。今日一日の辛抱と思ってたけど、もう我慢出来ません」
灼「我慢……? あの、なんの話……?」
京太郎「貴女の話ですよ!」
灼「!?」ビクッ
京太郎「灼さん、監督を悪く言う貴女なんて見たくありません!」
灼「す、須賀くん……?」オロオロ
京太郎「監督にとっての灼さんは、冷たくされると病院送りになるぐらい大切な存在なんです!」
京太郎「もしも逆の立場だったら、今頃病院のベッドで寝てるのは灼さんだった筈です!」
京太郎「大袈裟に聞こえるかもしれませんが、それが本当の二人なんです!」
灼「ちょ……本当に何の話――」
京太郎「――そして」
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740 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/29(火) 00:32:34.34 ID:Sf4vN21Ro
◇
憧「……」
穏乃「……」
憧「……あのバカ。なに道端で叫んでんのよ」
穏乃「ここまで届いたよね、灼さんが好きだーって」
憧「ちょ、曲解しないっ!」
穏乃「ぅ?」
憧「安定のキョトン顔だし……ねぇしず、今からあたしんち来ない?」
穏乃「え、憧んち? 今から?」
憧「そ。また漫画とか貸したげる」
穏乃「でもいいの? 二人は……」
憧「いーの。多分もう、京太郎に任せとけば大丈夫だから」
穏乃「……そっか! じゃあ行こーっ!」ダッ
憧「あ、コラ! あたしより先に着いても仕方ないでしょ! しずー!」ダッ
741 名前:7月4日(木)[saga] 投稿日:2014/04/29(火) 01:05:43.70 ID:Sf4vN21Ro
◆
灼「……え、と」
京太郎「……」
灼「今の須賀くんの話、悪いけどよくわからな……」
京太郎「……そう、ですか」
灼「……でも……」
京太郎「!」
灼「なんだかすごく、不思議な気持ちになった。懐かしいような、物悲しいような……」
京太郎「部長……!」
灼「なんだろ、この感じ……ごめん、うまく説明出来な……」
京太郎「ええ。でも、いいんです」
灼「いいの?」
京太郎「はい。今日はもう、ゆっくり休んでください。それできっと、全部元通りですから」
灼「……ん。須賀くんがそう言うなら、その通りなんだと思……」ニコ
――この後。
鷺森部長を家まで送り届けて、阿知賀学院麻雀部に起きた奇妙な事件は幕を下ろした。
742 名前:7月5日(金)[saga] 投稿日:2014/04/29(火) 01:26:45.71 ID:Sf4vN21Ro
……
…………
………………
さて翌日。
レジェンド「灼ぁー!!」ダキッ
灼「は、ハルちゃん!/// みんな見てるよっ……///」
鷺森部長、レジェンド、共に復活。
レジェンド「見せつけてやればいい! 私と灼のラブラブっぷりを見せつけてやればいいよ!!」ムギュー
灼「やだ、今日のハルちゃん大胆……でもそんなハルちゃんも素敵///」ギュッ
玄「灼ちゃんと赤土さん、すっかり元の仲良しさんだねっ!」
宥「あったかそう……私もくっつきたいなぁ」
憧「いや流石に野暮でしょ……」
穏乃「京太郎、昨日はお疲れ!」
京太郎「いや、大したことはしてねーよ。普通に送っただけだしな」
憧「ふーん? じゃあ帰り道に灼さんと何かあったりしてないんだ?」
京太郎「何かって何だよ?」
憧「風でスカートがめくれたのを目撃したり?」
京太郎「ぶっ!? ああああるわけないだろ!? 笑えない冗談はやめろよハハハ」
まるで実際に見たような鋭い推量だった。
憧、侮りがたし。
746 名前:7月5日(金)[saga] 投稿日:2014/04/29(火) 01:49:36.35 ID:Sf4vN21Ro
灼「あ……そだ」
と、レジェンドに頬ずりされながら鷺森部長。
灼「昨日は皆にも迷惑かけた……らし?」コテン
首を傾げる。
昨日のことは綺麗さっぱり覚えていないらしかった。
穏乃「気にしないでください灼さん!」
憧「そーそー。灼さんが元気で何よりだって」
灼「穏乃、憧……ありがと」
玄「灼ちゃん、困った時はお互い様なのです!」
宥「今度抱っこさせてね、灼ちゃん」
灼「ありがと玄、宥さんも。抱っこはさておき」
京太郎「同じ麻雀部の仲間じゃないですか。水臭いことは言いっこなしですよ、灼さん!」
灼「須賀くん……」
____
´:i:i:i:i:i:i:i:i:i〕iト.
./i:i:i:i:i:i/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
/:i:i:i:i:i:i:i/|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ
./:i:i:i:i:i:i:イ |i:i:i:i:i:i:i:|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:゚,
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|i:i:i:i:i: ≧=ォ Ⅵi:i:i:i:i{\i:i:|i:i:i:i|i:i:i|
|i:i:i:i:i:i| V)ソ ¨¨≧=ォヾ|i:i:i:i|i:i:i|
|i:i:i:i:i:i|' ' ' V)ソ /|i:i:i:i|i:i:i| 「鷺森部長とお呼び」
乂i:i:i:iト ' ' ' /メ|i:i:i:i|i:i:i|
\i|父ト ‘'___ イi:i:i:|i:i:i:i|i刈
.イ \ / \¨7i:i:i:i:/
-‐=彡 :| /Чト } 〕iド¨¨
/ ¨|:.| /∧ / \
/ / | | | | | : l :l | | :| | |
/ / | |__ | | | | | : l :l: /| | :| | |
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/ _,/:.:..| ::| \ ! j/ ′/:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:. 「――押忍!!」
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【TO BE CONTINUED...】
最終更新:2014年05月01日 21:21