デート三昧な二人の一日 Bパート

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305 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/22(金) 22:55:48.47 ID:Ui4kQtBso ◆  握った憧の手は、びっくりする程ユートピ……熱かった。  もしかして風邪でもひいてんのか。  顔も赤いし、なんか頭から湯気出てるし。  さっきまでの百面相は影を潜め、一転して大人しくなっていた。  まあ天下の往来でぎゃあぎゃあ騒がれるよりマシだけど。 京太郎「じゃ、改めてぶらついてみるか」 憧「」コクコク  喋らんのかい。  このまま迷子みたいに俺に引かれて歩くつもりじゃないだろうな。  そうならないことを祈りつつ、動き出す。 京太郎「しかし、流石に吉野とは密度がちげーな……」  視界を埋め尽くす人工物。  駅前でも全然天然な我が第二の故郷とは、物理的に天と地ぐらい差がある。 308 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/22(金) 23:47:21.08 ID:Ui4kQtBso テクテクテク... 京太郎「ふんふむ……ふむふん……」  コケたりぶつかったりしないよう最低限の注意をしつつ、キョロキョロと街並みを見回す。  目につくのはファーストフード系の店が多い。  けど、まだ昼飯時には早い。  せめて一軒、せめて一時間は先に消化したいよな。 京太郎「お」  そんな中、服屋の前で足を止めた。  ただ最初に視界に入っただけの、ごく普通の服屋。  メンズ中心というのがやや気に掛かるが…… 京太郎「憧、ここに寄っていいか?」 憧「ここ……って、服屋?」 京太郎「おう。そういえば前から買おうと思ってたんだよな」 憧「そうなの?」 京太郎「ああ。Tシャツが一枚、えーっと……ほら、着れなくなったからさ」 憧「………………。あっ」  そう。  憧に貸して、憧の部屋で発見されて、お陰で人前に出せなくなった分の補充だ。 309 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 00:44:27.85 ID:5TOx7ODXo 憧「……ゴメンナサイ」 京太郎「いえいえ」  別に根に持っちゃいない。 京太郎「あんなん不慮の事故だろ、気にすんなよ」 憧「うぅ……だ、だったらお金出すから!」 京太郎「いらねって。外で着れないだけで、部屋着には使えるし」 憧「アンタは良くてもあたしが良くないのよ! 責任感じるじゃない!」 京太郎「んなこと言われてもなぁ」  クリーニングまでしてもらってるし、むしろ礼を言いたいレベルだ。  それでも借りがあると、それを返したいと言うなら…… 京太郎「なら、さ。憧が俺の服を見立ててくれよ」 憧「へ?」 京太郎「俺に似合いそうな服を憧が選んでくれ」 憧「そ、そんなことでいいの……?」 京太郎「俺、いまいちセンスなくってさ。憧のチョイスなら安心して着られると思うし……頼めるか?」  顔色を窺いながら提案する。  これで納得してくれればいいんだが。 憧「……わ、分かった」 京太郎「お、本当か?」 憧「この流れじゃ断れないってば……まあ、微力を尽くすわよ」 京太郎「サンキュー。よろしくな」 310 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:14:18.68 ID:5TOx7ODXo ~服屋~  入ってみれば、店内は広く明るく清潔な雰囲気だった。  隅の方では雑貨というか、小物類も併せて扱っているらしい。  これなら憧も萎縮せずに済みそうだ。一安心である。 憧「……」ポカーン 京太郎「ん? どうかしたか?」 憧「男物の服屋、はじめて入った……」 京太郎「あー」  だろうなぁ。縁がないよなぁ。 憧「」ソワソワ 京太郎「……とりあえず一周するか」 憧「そ、そうねっ」  明らかに浮足立ってる。  男物でも服は服。勝手にテンションが上がってしまうようだ。  手、離さないようにしとこう。 314 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:44:16.55 ID:5TOx7ODXo トテトテトテ... 憧「ふーん……男物ってパターン少ないのね」 京太郎「女物に比べりゃな」  基本的に、拘らなければ上下一枚ずつ着ていれば済む季節だ。  そこにシャツを一枚引っ掛けたり、アクセサリを付けたりは個人の自由だが。 憧「Tシャツかぁ……合わせるのは今のジーンズでいいの?」 京太郎「おお。つか、これしか持ってないし」 憧「は!?」クワッ 京太郎「えっ!?」ビクッ  驚いたのは声だけにではない。  振り向いた憧の表情に。  そして、握り返す手の力に。 憧「アンタ、今、なんて言った……!?」ズモモ 京太郎「じ、ジーンズこれ一本しか持ってません」 憧「ありえない!!」  お店の迷惑にならない範囲で絶叫されてしまった。 315 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:56:26.36 ID:5TOx7ODXo 憧「本気? それ本気で言ってるの?」 京太郎「本気っつーか、事実っつーか……」 憧「ありえない……! いくらジーンズは着回しが利くからって、最低でも二本は持ってなさいよ!」 京太郎「じ、実家にはあるぞ!? ただ、引っ越す時に持ってこなかっただけで……」 憧「なら洗濯はどうしてるのよ?」 京太郎「してない。色落ちしそうだし」 憧「くたばんなさいな」 京太郎「死を勧められた!?」 憧「アンタねぇ、ジーンズは色落ちしてなんぼでしょうが!」 京太郎「それは分かるけど、でも穿いてたら自然と色落ちするんじゃねえの?」 憧「甘い! まったく洗濯しないジーンズは色落ち以前に傷みやすくなるのよ。つまり逆効果」 京太郎「マジで?」 憧「マジよ。だから通は自分なりのタイミングや方法で、計算して色落ちさせるの」 京太郎「へー……」 憧「素人に同じことをしろとは言わないけど、色違いやデザイン違いで二本は持ってなさい。衛生的な観点も含めて」 京太郎「……はい」  完敗ですぞ。 318 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:14:23.67 ID:5TOx7ODXo 憧「よろしい。じゃあ早速ジーンズを選ぶわよ!」イソイソ 京太郎「待てい」ガシッ 憧「ふきゃ!?」ガクッ  ジーンズ売り場に向かおうとした憧を、今度は俺から手に力を込めて引き止める。 憧「何すんのよ、危ないじゃない!」 京太郎「危ないじゃないじゃないじゃない! 当初の目的忘れてねーか!?」 憧「はあ?……あっ」 京太郎「お分かりいただけただろうか」 憧「そうよね……Tシャツよね、うん」カァー 京太郎「楽しんでくれてるなら何よりだけどさ」 憧「た、楽しんでなんかない!」 京太郎「へいへい、Tシャツ売り場はあちらでございまーす」グイグイ 憧「引っ張るなぁー!」  聞こえない聞こえない。  誰かの手を引く構図に懐かしさを覚えながら歩いた。 323 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:39:17.29 ID:5TOx7ODXo 京太郎「ほい、到着っと」パッ  ここでようやく手を離す。  篭っていた熱が外気に溶ける感触が心地良い。 憧「っ……ぅー……」ジトッ  見えない見えない。  恨めしげな憧のジト目とか見えない。  それより今はTシャツ選びだ。 京太郎「さ、阿知賀のファッションリーダー様に期待させてもらうぜ」 憧「ちょ、変に持ち上げないでよ!」  言い返しながらも、そそくさと服の並ぶ棚に向き合う憧。  一枚ずつ広げて眺めて、 憧「んー……」クルッ  振り返り、俺に重ねるようにかざして唸る。 憧「……違うな」クルッ  違うのか。 324 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:58:11.29 ID:5TOx7ODXo 憧「あ、このデザインいい……けど色が……」ブツブツ  スイッチ入ってんなー。  こうなると俺は若干手持ち無沙汰だ。  “憧係”として、モデルとして、憧から離れる訳にはいかないし。  さっきまでそこにあった柔らかさを思い出してニギニギする。  すごく……すべすべでした……  途端に倦怠感が吹き飛ぶ。  こうして突っ立っているのも、デートの醍醐味だと考えよう。  仮の相手でも、憧みたいな子と休日に出掛けられる役得を忘れてはいけない(戒め)。 憧「――う太郎、京太郎!」 京太郎「、ぉお? なんだ、呼んだか?」 憧「さっきから呼んでるわよ! とりあえず何着か選んだから、試着してみて」 京太郎「ああ、了解」 憧「じゃ、はいこれ!」ズシッ 京太郎「って多いわ!!」  十枚以上あるぞ!? 憧「これでも厳選したのよ?」 京太郎「つーか普通試着って枚数制限あるんじゃ……」 憧「このお店はないみたい。そこに書いてあるわ」ピッ 京太郎「うわぁ都合いい!」 326 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 03:44:41.18 ID:5TOx7ODXo ~試着室~  で、入ってみた訳だが。 憧「……ねえ」 京太郎「ん?」 憧「まだ?」 京太郎「まだだよ。つか入ったばっかりだろ」 憧「そ、そうよね」 京太郎「」ヌギヌギ 憧「……ねえ」 京太郎「ん?」 憧「もう着た?」 京太郎「まだだよ。上脱いだところだから覗くなよ」 憧「の、覗かないわよ!」 京太郎「」モゾモゾ 憧「……ね」 京太郎「夜中トイレに付いてきてもらってる子供か!!」シャッ 憧「ふきゃあ!?」ビクゥッ  それにしては立ち位置が逆だし! 327 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 04:03:16.13 ID:5TOx7ODXo  カーテンを開けて怒鳴ると、すぐ傍に立っていた憧が飛び上がって驚いた。 憧「び、び、び、ビックリしたぁ! 露出狂かと思ったじゃない!」 京太郎「着とるわちゃんと! ほうら見てごらん!」バッ  しまった、セリフが露出狂っぽい。  本当に着てるよ? 本当だよ? 憧「ぅあっ。……へえ、こうなるんだ……」ジロジロ  一瞬たじろいだ憧も、俺の着衣状態を認めると観察の姿勢に入った。 憧「後ろ向いてみて?」 京太郎「あいよ」クルリ 憧「あ、違うな」  違うんかい。 憧「次お願い」 京太郎「へいへい……」  やっぱり全部試すのだろうか。 …… ………… ……………… 345 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 21:45:52.15 ID:5TOx7ODXo 京太郎「どうじゃーい!」シャッ  最後の一枚を試着する頃には最早ランナーズハイのような状態になっていた。  興奮気味にカーテンを開け放ち、仁王立ちになって俺自身を憧に見せつける。  しまった、描写が露出狂っぽい。 憧「ふむ」ジー  そして判定待ち。  これで駄目ならどうなるんだろう。 憧「うん……今までで一番いいんじゃない?」 京太郎「ホンマか新子!」 憧「なんで関西弁よ。そしてなんで苗字で呼ぶのよ」 京太郎「いやなんとなく」 憧「どっちも似合わないからやめなさい」 京太郎「せやかて新子」 憧「やめなさいったら!」 351 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 22:06:58.97 ID:5TOx7ODXo  戯れもそこそこに、試着室の鏡に向き直って自分を見る。 京太郎「これが一番か……んじゃ会計してくるか」 憧「ちょ、即決? もうちょっと考えたりしないの?」 京太郎「憧に任せるって言ったろ。後からケチ付けたくないしな」 憧「っ……そこまで信頼されると逆に不安になって来ちゃうんだけど……」 京太郎「なんでや」 憧「あ、ちょ、ちょっと待って! 閃いた!」 京太郎「は?」 憧「すぐ戻るからー!」ドヒューン 京太郎「って憧!?」  行ってもうた。  一緒じゃなくて大丈夫かな。  つーか、まだ試着するのか……  女の買い物は長いってのが定説だが、男物でも例外じゃないんだな。 353 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 22:37:34.43 ID:5TOx7ODXo 京太郎「さて」  次の服が届くまでに、今着ている分を脱いで畳んでおこう。  そうすれば憧が交換で片付けてくれるだろうし。 京太郎「よっこいしょういち」ヌギッ  そそくさと半ヌードになる。  と、 シャッ 憧「おまたせ! ね、その上からこのシャツ羽織ってみぎゅっ!?」 京太郎「あ」  無遠慮にカーテンを開けたのは、手に明るい色のシャツを握り締めた憧だった。 憧「きょ、きょっ……た、ろ、はだ、っか」 京太郎「あー……あーあー」サッ  どうしよ。  とりあえず乳首は隠したけど。  この距離で男の裸を見てしまった憧がどう出るか、だ。  そう考え、沈黙して待った結果―― 憧「ぁ、たし、ごめっ、その、や、ちが、ちがうっ、そんなつもりじゃ、なく、て…………………………お手洗い行ってくるーーーーーーーーーー!!!」ドヒューン  ――逃げた。 京太郎「……」  (会計しよ) 358 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 23:09:20.03 ID:5TOx7ODXo …… ………… ……………… ~ファミレス~ 京太郎「お待ちどーさん」トテトテ  場所が変わって、今度は俺がトイレから帰ってくる番だった。  Tシャツは無事に購入。一段落してランチの時間だ。 憧「お帰り。言われた通り注文しといたわよ」 京太郎「サンキュー」  席に着く。  ちょうど昼時というのもあって、店内は割と混雑している。  禁煙席が空いていたのはラッキーだったな。 京太郎「って、そういやドリンクバー取ってきてなかったな」 憧「うん、京太郎が戻ったら行くつもりだったけどね」 京太郎「いや俺が行くよ。何がいい?」 憧「いや、あたしが行く」パッ  そう言って憧は腰を浮かせかけた俺の手からコップを引ったくる。 憧「アンタに任せたら変なブレンドジュース作りそうだもん」ジトー 京太郎「失敬な!」  考えはしても、実行に移すつもりはなかったぞ。  意外と女子ウケが悪いというのは実証済みだからな。 363 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 23:32:34.64 ID:5TOx7ODXo  今でも耳に残る、モーキョーチャンメロンソーダニウーロンチャマゼルノヤメテヨーとかいう呪文。  一口飲んで即座に突っ返されたけど、確かにアレは酷かったもんなぁ。  でも不思議とまた飲みたくなる味っつーかよォー……すまん嘘だ。責任を持って飲み干したけど、二度とゴメンだ。 憧「はい、お待たせ」コトッ 京太郎「ひょ?」  いつの間にか目の前にコップが。  そして対面には憧が。  どうもトリップしてたっぽい。 京太郎「ああ悪いな……って俺希望言ったっけ?」 憧「聞いてないけどコーラにしたわ。アンタ好きそうな顔してるもんね」 京太郎「褒めてる?」 憧「褒めてる褒めてる」チュー 京太郎「そっかー」  カルピスをストローで飲む憧に、軽く礼をしてコップに口を付ける。  好きです、コーラ。 460 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:20:22.18 ID:lx/Oelh1o 「お待たせいたしましたー。日替わり和膳とシーザーサラダでございます」 京太郎「お、来た来た」 憧「ありがとうございまーす」  俺の前に和膳が、憧の前にサラダが置かれる。  ウエイトレスさんの尻を見送って、 京太郎「うし、いただきます!」 憧「いただきます」  昼食の時間だ。 京太郎「」モグモグ  うん、ファミレスファミレス。  無難におろしハンバーグを選んだが正解だったようだ。  肉と米が俺にパワーを与えてくれる。 憧「」シャクシャク  一方で憧は野菜を食んでいた。  なんとも味気ない有様だ。 461 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:32:31.17 ID:lx/Oelh1o 京太郎「憧は他に何頼んだんだ?」 憧「え? これで全部だけど」 京太郎「はぁ!?」  全部?  全部って言った今? 京太郎「……サラダじゃねーか」 憧「サラダだけど」  聞き間違いではないらしい。  サラダが憧の昼飯らしい。  なんなの。  一にして全なの? 全にして一なの?  なんなのなの。 京太郎「それだけで足りるのか? 足りないだろ? 足りるのか? ん?」 憧「えっなにウザっ!? 別にいいでしょ、ダイエット中なのよ」プイッ  その一言に、 京太郎「なん……だと……」ゴッ  俺のスイッチが、入った。 462 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:57:48.26 ID:lx/Oelh1o 京太郎「ヘーイ憧ォ!」ビシッ  身を乗り出して憧を指さす。 憧「な、なによ」タジッ 京太郎「ダイエットもいいけどサー、時間と場所はわきまえなヨ!」 憧「きもっ!!」  酷い言われようだ。  しかし俺は本気だ。 京太郎「お父さんはダイエットなど認めん! 肉を食え肉を!」 憧「誰がお父さんよ!」 京太郎「オレェ」 憧「自信満々に言うな!」 京太郎「オレェ?」 憧「あたしに質問すんな!」 京太郎「ああ言えばこう言う……どうしてこんな子に育っちゃったのかしら」ハァ 憧「なーやーむーなー! しかもそのキャラはお母さん!」ウガー 466 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:28:31.70 ID:lx/Oelh1o 京太郎「シャラップ! これでも喰らえ!」ズイッ 憧「っきゅ!?」  俺が鼻先に突き出したモノに、憧がたじろいだ。  ――湯気を立て、断面に肉汁を滲ませたひと切れのハンバーグ。 京太郎「ほい、あーん」 憧「なななななななッ! ナニ考えてんのよアンタは!?///」 京太郎「お前にハンバーグを食わせようと考えてる」 憧「それは見れば分かる!」 京太郎「なら話は早いな。ほれほれ」ズイズイ 憧「ちょ、やめっ」 京太郎「やめねー。食べるまでやめねー」 憧「そんな強引な……!」 京太郎「あ、肉汁こぼれそう」 憧「うそっ!?」パクッ  やったぜ。 479 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:59:58.55 ID:lx/Oelh1o 憧「むぐむぐむぐ……んくっ。……ハッ!?」 京太郎「へへっ、またまたやらせていただきましたァン」ニヤリ  実際には肉汁なんて垂れてはいなかった。  お行儀の良い憧を反射的に動かすハッタリだったのだ。 憧「あ、あんた、なんてこと――」  わなわなと打ち震える憧に先んじて、 京太郎「うまいだろ?」ニカッ  笑みを投げ掛ける。 憧「っ………………、うん」 京太郎「そか、口に合ったんなら良かった」  速攻が効いたのか、反論される気配もないし。 京太郎「もう一口どうだ?」 憧「い、いいわよ。京太郎の分がなくなっちゃう」 京太郎「それもそうか。じゃあなんか追加で頼もうぜ。ポテトとかどうだ?」 憧「ん……それと、後でパフェでも頼もっかな」 京太郎「いいーーーねェーーー」 485 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 23:20:41.69 ID:lx/Oelh1o …… ………… ……………… 憧「大体ねぇ、アンタは何かと心臓に悪いのよ!」 京太郎「へいへいさーせんっしたー」グデーン 憧「ちゃんと聞く!」ビシッ  聞き飽きたわ。  テーブルに突っ伏し、ラスト一本のポテトを口に放り込む。  対面の憧は俺を叱る時とパフェを食べる時で表情をクルクル入れ替えて忙しない。 憧「人前であーん強要とか、常識を疑うわ」ムグムグ 京太郎「それを言うならなぁ」 憧「なによ?」 京太郎「ダイエットしてるからってデート中にサラダしか食わないのもどうかと思うよ俺は」 憧「ぅぐ」ムグッ  よしんば「あーん」がやり過ぎだとしてもだ。  少なからず気になるし、気を遣わせる振る舞いではないだろうか。  責める訳じゃないけど。 486 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 23:49:29.40 ID:lx/Oelh1o 京太郎「せめてデートの時ぐらい忘れられないもんかね」ヤレヤレ 憧「……逆よ」 京太郎「逆?」 憧「で、デートだから、バクバク食べられないなって……本当は、もうちょっと食べるわよ」  もちろんカロリー計算はするけど、と付け足して。  またパフェを一口、そしてそっぽを向いた。 京太郎「……。美味いものは一緒に食べた方が楽しいと思うぞ?」 憧「それはそっちの理屈。まったく、女心が分かってないんだから……」 京太郎「はあ、すみません」  色んな考え方があるんだな。  それをぶつけ合ったり、擦り合わせたりするのが人付き合いで、恋人付き合いなのだろう。  大人でも振り回されるのだから、俺達みたいな子供は尚更の筈だ。  いつか俺にも本気で好きな相手が出来たら、そういうことに四苦八苦するのかな。  こうして友達とデートごっこに興じている内は、想像もつかないことだけど。 497 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 00:41:52.46 ID:R5SS8CL2o 憧「ところで、次はどこに行くの?」  パフェ攻略も最終局面、スプーンでさくらんぼを弄びながら憧が。 京太郎「そうだなぁ。いくつか考えてるけど」  考えてるけど、決めかねている。  たった今さくらんぼを口に放った憧に意見を仰ぐとしよう。 京太郎「憧は希望とかあるか?」 憧「あたひ?」モゴモゴ 京太郎「おう、聞ける範囲で聞くけど」 憧「そうねぇ……あんまり人が多いところは避けたいかな」 京太郎「ふんふむ」  なら候補は絞られたな。 京太郎「オーケー、じゃあ出るか」 憧「ん。……ぺ」  席を立つ寸前、憧が掌に落としたのはさくらんぼのヘタだった。  見事に結ばれた、さくらんぼのヘタ。  本人は無邪気に「できたー♪」とか言ってるが、 京太郎「……憧」 憧「なに?」 京太郎「………………誘ってる?」 憧「は? なに言っ、て………………。――~~~~~っ!!?///」カァァァッ  言うだけ言って逃げるに如かず。  瞬間湯沸器のような赤面芸を披露する憧に背を向け、伝票を引ったくってレジに走る俺であった。 520 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 21:54:08.03 ID:R5SS8CL2o …… ………… ………………  そんなこんなで、 京太郎「真っ赤な誓いいいいいいいいいいっ!!!」  絶唱轟く地獄変、やって来ました ~カラオケボックス~ 。  まず歌ったのは俺が得意とする内の一曲。  スタートから全力を出すことで、喉を全開させる作戦だ。 京太郎「ふぃー……」 憧「」ポカーン 京太郎「ん? おいおい、ノーリアクションは辛いんですけど」 憧「あ、う、うん」  ぱちぱちぱち、と乾いた音。  これだけでも、あるとないとでは大違いだ。  終始ケータイいじったりされてると本当に虚しいからな。本当に。 523 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 22:22:37.55 ID:R5SS8CL2o 憧「いきなり飛ばし過ぎじゃない?」 京太郎「二時間しかないからな、テンポ良く行かないと。ほいマイク」スッ 憧「え、まだ曲選んでるんだけど」 京太郎「なんやて! そんなん歌ってる間に決めとけよ!」 憧「そんなこと言われても……」  困ったようにデンモクに目を落とし、タッチペンでつつく憧。  しかし明確な目的意識があるようには見えなかった。 京太郎「いつも歌う曲とかないのか?」 憧「あるけど……、……くて」ボソッ 京太郎「え? なんだって?」 憧「だ、だから! 恥ずかしくて歌えないって言ってんの!」 京太郎「ああん?」  何を生娘みたいなこと言ってんだこいつ。  いや生娘なんだっけ(ゲス顔)。 525 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 22:50:07.75 ID:R5SS8CL2o 京太郎「こういうことするって、分かってて付いてきたんだろ?」  しまった、セリフが変質者っぽい。 憧「そうだけど……お、男の人とは初めてだし、やっぱり緊張しちゃって……」 京太郎「カラオケに男も女も関係なくないか?」 憧「あるの!」 京太郎「あるのか……」 憧「あるのよ……」  沈黙。  こうなったら、憧の決心がつくまで俺の十八番メドレーで繋ぐしかないのか。  と、 憧「……ねぇ」 京太郎「ん?」 憧「あたしがどんな歌を歌っても……笑ったりしない?」 京太郎「当たり前だろ。俺なんていないものと思って好きに歌えよ」 憧「そっか……じゃあ、歌う」  ひとつ頷いて、憧は手早くデンモクを操作し始めた。 530 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 23:32:24.67 ID:R5SS8CL2o  そして、曲が流れ始める。 ♪~ 京太郎「お」  知ってる曲だった。  だから、憧が歌うのを渋っていた理由がなんとなく分かった。 憧「♪ねえ 愛したら――」  ややぎこちない歌い出しは、緊張の表れか。 憧「♪――君を君を愛してる 心で見つめている――」  そして俺を横目でチラチラ見るのは、羞恥の表れだろう。 憧「♪――ねえ 恋しても――」  特定のフレーズを口にする度、マイクを持つ手に力が入るのが見て取れる。 憧「♪――瞳で今 手をのばす 寒い夜も」  それでも最後まで歌い切った。歌い終えた憧は、 憧「………………はぁぁぁ……」  深く長く息を吐いた。 京太郎「……」  一方で俺は確信した。  こいつ――男の前で「愛」とか「恋」とか歌うのが照れ臭かったんだな。  乙女か。 539 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/26(火) 00:00:17.35 ID:pAIL6PKHo 憧「っ……ど、どうだった……?」 京太郎「」ハッ  我に返る。  憧は赤面、潤んだ目で俺を見ている。  まさに『瞳で今 手をのばす』ってやつか。違うか。 憧「……? ねえ、何か言ってよ……」オソルオソル 京太郎「」ハッ  再び我に返る。  そうだ、ノーリアクションはNGだ。  且つ、この場合の最善策は―― 京太郎「悪い悪い。うん、普通に上手いじゃんか」  褒める。  からかわず、過剰におだてたりせず、当たり障りなく。 540 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/26(火) 00:40:56.65 ID:pAIL6PKHo 憧「ほ、ほんとに?」 京太郎「おー。渋るもんだから実は音痴なんじゃねって心配してたけどな」ワハハ 憧「な、失礼な! これでもカラオケは好きで、中学の頃はよく行ってたんだから」フンッ 京太郎「おやおや、長野では『喉自慢の京』で通ってるこの俺の前で挑戦的な」 憧「へえ、アンタこそ生意気じゃない。あたしと張り合うつもり?」 京太郎「やるか?」 憧「やったろうじゃないの!」  という訳で―― 京太郎「ブロウクウウウウウン、ハンマーーーーーーーーーーッ!!!」 憧「♪――天使が鳴らしてる “大好き”の合図だよね――」 京太郎「メェタルフウウウウウウウウウウウウウウウルッコーーート!!!!!」 憧「♪空白だらけのサンデーモーニング 君は何をしているの?――」 京太郎「ライディーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」 憧「♪――みんなを 撃っちゃうぞ ラブカノンで BANG BANG――」 京太郎「ガオ! 叫べ! ガオ! 倒せ! ガオ! ガオ! ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」 憧「♪――大好き 大好き ツキがある世界――」  体力と時間の限り歌い合った。  デス声を(一時的に)会得した。  店を出てすぐ、のど飴を買いにコンビニへ走った。 614 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/28(木) 22:27:27.02 ID:Kx5FiVhZo …… ………… ……………… ◇ ~吉野~  改札を抜けた先の慣れ親しんだ景色に安堵する。  夕焼けが稜線を朱く輝かせながら、その向こうに沈んでいく。  あたしにとって、一日の終わりを象徴する光景。 京太郎「帰ってきたなー」 憧「、……うん」  そして今日に限れば、デートの終わりを告げる風景。 憧「ぁ……」 京太郎「ん?」 憧「え、えっと……もう、手……」 京太郎「おお」  ぱ、と。  繋いでいた手が離れる。  いとも簡単に、なんの躊躇もなく。  それ自体に不満なんてないけれど。  密着していた掌に触れた外気が、やけに冷たかった。 615 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/28(木) 23:22:22.88 ID:Kx5FiVhZo  じっと手を見る。  帰りの電車は行きよりも混んでいて、最初から立つ羽目になった。  吉野に近付くに連れて人は減ったけど、その頃には敢えて座る必要もなくて。  結果、離す機会を逃したままになっていた、手。  そこから失われつつある温度に、物悲しさを覚えた。……何故か。 京太郎「憧」 憧「ッ……な、なに?」  呼ぶ声の方へ身体を回す。  変にざわついた心を落ち着かせながら、京太郎と向かい合った。 京太郎「今日はお疲れ」 憧「う、うん。お疲れ様」 京太郎「これでデートも終わりだな」 憧「そう、ね」  終わり。  口の中で、その言葉を転がした。 619 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 00:17:58.60 ID:JPEwOVlio 京太郎「色々と至らない点もあったかと思いますが、ご満足いただけましたでしょうか?」 憧「ん……」  満足したかどうか、か。  尋ねられて、顧みる。  と、まずは、 憧「………………………………ハダカ見られた」 京太郎「ぐへぇー」 憧「はあぁ……」ドヨーン 京太郎「し、下着だったろ! 裸じゃないない!」 憧「フォローのつもり!? あんなことされたら裸より酷いわよ!!」 京太郎「分かった分かった悪かった! 反省してます! それよりデートについてだろ!」 憧「……忘れないからね」ジロリ  ひと睨みして、また回顧。 620 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 00:56:37.93 ID:JPEwOVlio 憧「服……褒めてくれたのは、嬉しかった」 京太郎「おう。似合ってるぞ」 憧「あ、改めて言わなくていいから!」  キャスケットを目深に被る。  京太郎が褒めてくれたキャスケット。  ふきゅ。 憧「後、電車で庇ってくれた。それは、素直にありがと」 京太郎「大したことじゃねーよ」 憧「アンタにはね。そういうの、女の子的にはポイント高いわよ」 京太郎「憧的にも?」 憧「……もくひけん」 京太郎「なんじゃそりゃ」 621 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 01:23:12.59 ID:JPEwOVlio  なんじゃももんじゃもないわよ。  あたし個人として肯定なんてしたら、まるで京太郎のこと意識してるみたいじゃない。  あくまで一人の男としてしか意識してないんだから。  ……あれ? 憧「あれぇ……?」 京太郎「憧?」 憧「ぁ、な、なんでもない!」  やばいやばい。  変な方に考えちゃダメだ。 憧「そうだ、手!」 京太郎「手?」 憧「手! アンタ、強く握り過ぎだったから」 京太郎「え、マジか」 憧「マジよ。男のゴツゴツした太くて硬いので力任せにされたら痛いに決まってるでしょ」 京太郎「………………わざと?」 憧「何が?」キョトン 625 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 01:50:59.17 ID:JPEwOVlio  話題に上った手を、また見た。  さっきは大袈裟に言った部分もあるけど、敏感なマメを擦られて変な声が出そうな場面も何度かあった。  でも本当に痛くされたら血が出るし、そうならなかったなら許容範囲内よね。 憧「あ、男物の服屋に入ったのは新鮮だったわね。楽しかった」 京太郎「そうなのか。私用に付き合わせて悪いなって思ってたんだけど」 憧「気にしてないわよ。貴重な体験だし、意外と有意義だったわ」 京太郎「なら良かった」 憧「………………………………ハダカ見せられたけど」 京太郎「ぐへぇー」 憧「はあぁ……」ドヨーン 京太郎「って待てや! オ・レ・が! 見られたんだよ! 露出狂みたいに言うな!!」 憧「う、うるさい細マッチョ! 身体付きがセクハラなのよ!」 京太郎「やだ斬新な罵倒!!」 628 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 02:22:56.49 ID:JPEwOVlio  罵倒もしたくなるわよ。  あんな強烈なの、ばっちり目に焼きついちゃったんだから。  すごく近かったし、そうそう上書きされそうにないくらい。  まったく。まったくもう。 京太郎「次はなんだっけ。ファミレス?」 憧「ファミレスね。あそこは……うん、あたしの方に非があったわ」  ダイエットは時間と場所を弁えて、なんて。  言われなくても分かってた筈なのに。 京太郎「ま、ポテトにパフェで挽回したし、気にすんなよ」 憧「……今夜はごはん抜かなきゃ」 京太郎「おい」 憧「わ、分かってるわよ。冗談だってば」 京太郎「ったく……あ、そういえばダイエットって胸から痩せるとか聞くよな」 憧「黙れ」 京太郎「はい」 645 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 21:33:34.67 ID:JPEwOVlio 憧「もー、ほんっとうにデリカシーがないんだから……」 京太郎「か、カラオケはどうだった?」 憧「カラオケ? ああ、カラオケは良かったわね」 京太郎「ぶっ通しで歌いまくったもんなぁ」 憧「あんなにたくさん歌ったの久しぶり」 京太郎「憧、最後は声ガラガラだったよな」 憧「それは京太郎もでしょー」  からかうように笑い合う。  なんか、いいな。  こういう清々しい感じ、嫌いじゃない。  不満がないと言えば嘘になるかもしれないけど、  振り返れば案外―― 憧「……!!?」ハッ  ――待て待て待て。  待って。  あたし、今、何を考えてた?  「案外いいデートだった」、なんて考えてなかった? 646 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 22:03:02.49 ID:JPEwOVlio  とんでもない。  そんなの、なんか、すごく………………嫌……だ?  嫌っていうのはちょっと違うな……  癪? うん、癪かな。  すごく癪だ。  だって、あたしには理想のデートがある。  GWの合宿で、しず達を相手に語った理想。  小さなオシャレを頑張ったり、  ファミレスでだべったり、  カラオケでハシャいだり、  そういう、質より量の学生らしいデート。  その相手が京太郎みたいな駆逐艦マニアに務まる訳―― 憧「……」 憧「…………」 憧「………………」 憧「あれ?」 652 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 22:37:30.02 ID:JPEwOVlio 京太郎「ん?」  あ――れ?  待って。  おかしい。  そんな筈ない。  違う。違う。違う。  どうしよう。  否定しなくちゃ。  なんとかして。  粗を見つけて。  否定しなくちゃ。  絶対に。  このままじゃダメ。  認めちゃったら、おしまいだ。 憧「――」 京太郎「憧ー? 急に黙り込んでどうし」 憧「あ、甘いわねッ!!」ズビシィッ 京太郎「本当にどうした!?」 654 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:16:57.08 ID:JPEwOVlio 憧「京太郎は甘いのよ!」 京太郎「だからどうしたんだよ……」 憧「う、うるさい! あたしにも負けられない理由があるのよ!」 京太郎「デートで勝ち負けってどうやって決めるんだ?」 憧「あたしが決めます」キッパリ 京太郎「暴君がいるぞおおおおおおおおおお!!?」 憧「だからうるさいそこ! いいから聞きなさい!」 京太郎「アッハイ」 憧「……こほんっ」 憧「確かに、今日のデートは中々だったわ。なかなかのなかなかよ」 憧「でも甘いわ! 詰めが甘いのよ京太郎は!」 憧「少女漫――物の本によるとね、こういう時は内緒で買ってたプレゼントを渡してくれたりするものなのよ」 京太郎「プレゼント?」 憧「そ。まあ京太郎には無理よね~。そんな甲斐性なさそうだもん。元から期待なんてしてなかったけどね。でもやっぱり残ね」 662 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:27:01.13 ID:JPEwOVlio 京太郎「ほれ」 憧「へ」 京太郎「プレゼント」 憧「ふきゅっ」 671 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:51:33.95 ID:JPEwOVlio ◆  憧に差し出したのは、ストラップ。  服屋で一人の時に買っておいたものだ。  小さな桜の花の意匠が、憧のイメージと重なった。 京太郎「えーと、その、なんだ」  流石に照れるな。  面と向かってプレゼントを贈る機会なんてそうそうない。  けど、ここが正念場だ。 京太郎「今日一日さ、色々あって」 京太郎「憧的にはしんどい部分もあったと思うけどさ」 京太郎「それでも頑張って、弱音を吐かずに付き合ってくれたじゃんか」 京太郎「だからこれは、そのご褒美っつーか、お礼っつーか」 京太郎「……ま、気持ちだ」 京太郎「受け取ってくれるか?」 憧「は、はひ……///」ポーッ 681 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 00:08:51.67 ID:hYkl1xMEo  憧は、呂律も挙動も怪しい様子だった。  しかし伸ばした両手は確かにストラップを受け止める。  そのままゆるゆると引き寄せ、胸元にきゅっと抱くと―― #size(15){#aa{{{          , r '´ ̄ ̄)`ヽ      ./´     .|     1    \         /   , r ',´`ゝイ      /       i|     .|     ヽ        ./  ,r'彳 /   .|     ./ ./    , /|     |   ヽ.  ヽ       /// /  ./   ト、 ヽ   ./ /    / /|    i .ハ    1  ヽ      ./  / ./  ./    |ヾ  ヽ / /i-、,_  /j ./ |    .ル.j |   .|1.   1      ./  ./ ./  ./    .| ヾ  ヽj /.i  .>ト,/ j    /i j .|.ハ  | |.   |     /  / j  i     |  ヾ /j j | / ./ '、` j   /ノ/ .|.j |  .j .|   .i |     ./  / .|  .|    | |  >'´i |rt== ミ、 、 ./ / /' r t/'ー-/ |   .| |    ./  .| .j  .|    | | V´  | .| .ク心:::::ミヾ ' '´   '  - ' j /j |   ルj    j   .| .j  .|    .| |    | .| 毛:::::::ゝ       r==ミ,tノ/j j i  .从'    /   .| /  .|    | |   | .| ヾ:::::リ'       .ク:::C }./イ .|.j //' 1  「……うれしい。ありがと」    |  | .| /   .|     i. |   | .| ,,,,,         .レ:::リ './ iイ i/ノ |'  ,1    |  1 .|./   |     ヽ.ト   | .|           ''ヾ / |'j j´  |  |1   .|  1 |'    .1ヽ    ヽ》、  | .|         '  ,,,,, /  |j /   .|  |.|   .|   、|    ヽ、ト    ヽ \| .|    ヽ、       /  .j ./    1 |.|   .|   ,V     ゝ 、、    \ i .|、      ´    ノ   /./    .| | |   .|   1、     .》、\ヽ    ゝ | ヽ、      , r ' ´   ././     | j |   .|   .1ヽ    / `ー-ヽ、、_   ゝi、./ `ヽ- j ' ´  .i   ./.イ      |.j .|   .|   1.ヽ  ./       ` ゝ 、 ` \'  ./ i   1  // 1|     .|.j  | }}}}  ――まるで花のように、優しく微笑んだ。 694 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 00:37:22.32 ID:hYkl1xMEo  ――のも束の間。 憧「……!!?///」ハッ  我に返ったらしい憧。  まず手にしたストラップに驚き、右に左に首を振り、  最後に正面に俺を認めて、 憧「ッ……サプライズプレゼントとか流行らないのよーーーーーっ!!!///」 京太郎「いや言い出しっぺはお前だろ」ズバァッ 憧「っふぎゅ」 京太郎「やれやれだぜ。珍しく素直になったかと思ったら……」 憧「う、うっさいうっさい! これで勝ったつもり!?」 京太郎「だから勝ち負けとかねーだろ。ゆとり世代らしく手を繋いでゴールインしようぜ?」 憧「ご、ゴールイン!? 話が飛躍し過ぎよ馬鹿ぁ!」 京太郎「何が?」 憧「なんでもないっ!!///」 698 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:04:24.62 ID:hYkl1xMEo 京太郎「なに怒ってんだよ……」 憧「うるさいうるさいうるさい!……ンタなんて」ボソッ 京太郎「おう?」 憧「ッ――アンタなんて、ハルエの言いなりのくせにっ!」 京太郎「……は?」 憧「そうよ、そうだわ、そうだったもんね! あれもこれも、全部ハルエの差し金だもんね!」 京太郎「ちょ、憧、落ち着」 憧「なにもかも人に指図されて渋々やったことだもんね……そんなのに振り回されて、あたしってば馬鹿みたい!」 京太郎「だから落ち着けって!!」ガシッ 憧「ッひぅ!?」ビクッ 京太郎「あ、わ、悪い……」パッ 憧「……っ」プイッ 京太郎「……あのさ憧。とりあえず訊きたいんだけど、いいか?」 憧「……なによ……」 京太郎「ああ、えっとな」 京太郎「なんで監督の名前が出てくるんだ?」 憧「………………へ?」 703 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:26:58.80 ID:hYkl1xMEo 京太郎「まずそこがわっかんねーんだよなぁ」ポリポリ 憧「いや、わっかんねーって……なに言ってんの?」 京太郎「いや、だから、監督は関係ないだろ? なのに急に」 憧「ちょっと待って!!」  目と鼻の先に手が。  指の間から、難しい表情をした憧が見える。 憧「……今日のデートって、指令の一環よね?」 京太郎「え、違うだろ」 憧「違うの!? 予行演習って言ったじゃない!!」 京太郎「それとこれとは話が別だろ? しかも俺が言ったのは『予行演習みたいなもん』な」 憧「同じでしょ!?」 京太郎「違うよ、全然違うよ」  あくまで本命はデート=テスト勉強の礼だ。  そのついでに、男嫌い克服の一助にもなればいいとは考えたが。  憧も勉強会の時に似たようなことを言っていたから、納得済みだと思ってたのに。 704 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:32:33.90 ID:hYkl1xMEo 憧「だっ……だとしても、ハルエからメールが来てたでしょ!? それに従って動いてたんでしょ!?」 京太郎「え、そういう段取りだったのか?」 憧「は!?」  だったらレジェンドに悪いことしちゃったな。 京太郎「いやー、実は俺さぁ」 #size(20){#aa{{{                __  /⌒ヽ                  ⌒\ ∨   ヽ___               _, ----`      ∨   `ヽ、            /´               |     \           / ____    /  l|     | :.     \             ///    /   |     |l |  :       ヽ               /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .           / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.          .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .          }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .            / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.           ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{                 {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \                |                ノ ' }/イ/                 {               _,ノ        「今日ケータイ家に忘れてきちゃって」                    人       _,..::ァ       r }/                      `     ゝ - '   イ   |/                         `  ーr  ´  ___|_                      ___|     |//////|                    {|___ノ  __|[_]//∧_                  /// |____|///////////> 、                      ///// |   /////////////////> 、                /////// { //////////////////////}              //////////∨///////////////////////| }}}} 710 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:26:02.94 ID:hYkl1xMEo ◇ 憧「――」 京太郎「別に困ることはないと思ってたけど……そうか、そりゃマズかったなぁ」 京太郎「帰って確認したら監督からのメールが溜まってたりすんのかな……」 京太郎「……ま、邪魔されずに済んだと考えれば結果オーライだよな、うん」 憧「――」  今。  京太郎。  なんて言った?  ケータイを、忘れた?  そう言ったの?  じゃあ、ハルエの指令は京太郎に届いていなかった?  うそ。  じゃあ、今日の行動は全部、京太郎自身の意思?  やだ。  じゃあ、あたしは京太郎がしてくれたことで、あんなに嬉しくなってたの?  だめ。  そんなの、まるで、本物の―― 京太郎「憧」 憧「は、はひっ!?」 711 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:31:23.38 ID:hYkl1xMEo #size(15){#aa{{{      , ´   /  .' / .'  '        | l  | l |  |    /    / '   |  | | l|  |    l | ,  } l |  |  _/    イ /   l|  |_,∧_{  :.   ,-|-}-/、 ,  |  {   _   ___,-、 __   ̄ ´   / /    {  |、{ l∧  {、   | }/イ/},イ /  l_、  { Y´ /  '   }- 、       {〃   r∧ |ィ斧ミ从 、Ⅵ , イ斧ミ、 } /l|  l、r  ̄ {   {  |  / _ }、       /    /{ 从{、 Vzリ  \Ⅵ/ Vzり /イ } / |   乂_人_/、_/   / \        /   //从 l∧\       ,\        | /イ/   }==   ̄ ̄ ̄ ー く      /  イ'  {/l∧ ∧      、        ,イ/j'  /             \     ̄ ̄        ー∧         _,     从    ,                 \                ヽ 、    ` ¨  ̄   ィ }/    /     / '                  ∧ \       / |/>  ,      /                   {(从_|     --  ´ 「/// |  {                   |/ ̄}}          |////|_ |             _,.:<|///||          l/////` |      _,.. -=<///// \//}         ,r-/////// |   <//////////////////∧-- 、    {///////l{               「楽しかったな、デート!」 }}}} 713 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:33:01.80 ID:hYkl1xMEo #size(15){#aa{{{                 -‐…‐-             /: ∪: : : : : : : : : : :`丶、            /.: : :/: : : :|: : : : : : \: : :ヽ-            ,:': //: / :|:|: : : |'、: : : :\: :∨ Y\\            i|: //: /  |:|: : : |: \: ノ :||: :|/ |: |:|\\            i| i∧:{`ー\: : |  ̄\: ||: :| : |:.:|:|  ヽ:ヽ          八|l: : l 〃ヽ \l 〃ヽ ヽ|: :|: :′|:|   ',: :          |:| |l\| {{ }}     {{ }}  |: :|/: : :|:|   i: i          |:| || .′ー' ///// ー'   |: :l: : : :l|   |: |          |:| |l {   __,/⌒\ u |: :|: : :||   |: |          |:| || 人 レ        \ |: :|: : : |: :   |: |          |:| |l / : `|/        \:!: : :.|: ∧   |: |          |:| ||'/ : |/ , <       \:ノ: : ∧ ,: :′          |:|/{: : : :/ゝイ ∨\      \\: :∨:/           |/: : : /  イ {,∠‘,         \',:|:|        //: : /  {⌒YY´   人        \|:| .     /  ′:/   /l_/Т\_i: : :\         ̄ヽ      /    |: : |{/   \/|/|_ | : : : ∧          | .    /   八: :|′    o    八: : : { \        |   _/_彡   ヽ{           \: :\ |:\       /  /       人                ̄ |: : :l>―┬ ./       /  }     o         |: : :l : : : : |     「~~~~~~~~~~っっッ///」 }}}} 718 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:57:40.59 ID:hYkl1xMEo 京太郎「憧?」 憧「……ぃ」 憧「っ……きゅ」 憧「ぅ……ぁ……、」 京太郎「すげー顔赤いぞ、大丈夫か?」スッ 憧「!!!!!」 #size(15){#aa{{{ .             xァ′ /       |                ヽ {__j__            '   /   ′       / |     |      .         :, `丶 \       /  / /    i |    i  | |     |     i |  i     :,    \ \       /  /         | |  ‐-L_ | |     | j |i  | |  |         \ \    .         |    |:八  人j ト八      i |斗匕|「 | |  |   l: .,        ヽ       /     |    |  Ⅳj]xぅ妝斥 \    i/≫ぅ妝ミxV|  |   |: .′       , .      ′     八  :{  |  |坏´_)「:::ハ   \ ∨  _)「:::ハⅥ  |   |: .        ′   ;           \乂_|  |八 rヘしi::::}     \   rヘしi::::} オ |  . .|: . i           ;   「気合! 入れて!! 行ッきまーーーーーーーーーーーーーーーっす!!!」ドヒューン   |   i        l .⌒|  |   乂__/ソ          乂__/ソ |  |  . .|: . |       i   |   |   |          | . . .|  |           ,          |  |  . .|: . |       |   |   |   |         /:| . . .|  |\i ///          ///  |  |  . .|: . |       |   |   |   |          | . . .|  |:::八     r'ア ̄`ヽ       /::|  |  . .|: . |       |   |   |   |       i | . . :|  {::::::个:...   ∨     ノ    イ:::::}  |  . .|: . |       |   |   |   |       | | . .八  V斗ri:i:i:〕ト       ィ:〔:i:i:iTV  八   .|: . |       |   |   |   |       | | . . . :\ Vi:i:i:i:i:i:i:|. : j>--<. : .{: |:i:i:i:iV //   廴_|       |   |   |   |     r七i| . . . . : |\i:i:i:i:i:i:i:|: . : . : . : . : . : . :|:i:i:i:/i:i/    // /i:\       |   |   |   |     ∧ Ⅵ. . . . . :|:i:i:\i:i:i:i:|─-. : . : . : .-─|:/i:i:i:/    // /:i:i:i:i∧    |   | }}}} 京太郎「どこへ!? いやマジでどこ行くんだ!? 憧、憧ーーーーーーーーーーッ!!?」 722 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:08:08.02 ID:hYkl1xMEo …… ………… ……………… ダダダダダダダ...バタン!! ~憧の部屋~ 憧「――!」 ボフンッ 憧「~~~~~~~~~~っ!!///」ゴロゴロゴロゴロ ガバッ 憧「………………走ったから!」  そう、走ったから。  ロープウェイにも乗らずに。  山道を、坂道を、全力疾走したから。  だから、そのせいだ。  そのせいに決まってるんだ。  胸が、こんなにドキドキしてるのは。 724 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:33:48.88 ID:hYkl1xMEo  そうよ。  他に理由なんてないし。ないもん。  断じて、決して、神に誓って。  京太郎にときめいてなんて、ない。  京太郎にドキッとするとか、それこそ理由がない。  ちょっとデートしたくらいで好きになったりとか、ない。  ないないないないないないない。  そりゃ、別に、友達ではあるけど。  友情って意味の好意はあるけど。  でも、それ以上なんてありえない。 憧「――」チャリッ  こんな、ストラップくらいで好きになったりとか――  ないのに。 憧「……」ギュッ  もう、息は整ったのに。 725 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:35:51.27 ID:hYkl1xMEo #size(17){#aa{{{                 /. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : .\                /. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : .ヽ             / : . / : . : . : . ,. : . : . : .i. : . : . : . : .ヽ . : ',           , 'ニ/. : .:,'. : . : . : . :i . : . : . : |. : . : . : . :、. :! : ._{_}ミ ヽ          // /. : . :i: .,' . : . ,':/! . : . : . : |. : . : . : . :.:i .|: イ:|  \: \ .      //  .,' /: . :| :| ./: . |/ | |:ノ: .ヽ、 |: . : . : . : .:.|: |r:{: .|   \: \ .    /:, '    /:/! : .:.| .|/| :|: | ,|イ : . : . : ト:、{ :i:.:| : i: |: |/| : |     \: `. 、     /:/     !:| | :i . :!:.∧.斗匕 圦 : . ト : | ヽ`{:十t}: } :|: !: i |        ヽ: . :i .   /:/     |:!|:| . |.:|:{x示㍉xミヽ\:{ ヽ{xテヤ示xV!: :!,'.: .| |        ヽ:.|   ,' :i      {! .|∧: :! 圦 {トイ_刈`    ´{トイ_刈 灯:.:| : . :| |         |.::|   | :|       |:i :ヾ|: :{ 乂こソ      乂こソ |: :!|. : . :l |          !: |   | :|        |.| . : |:从 :xx //////xx  | :|ノ . : . |:.|        |.::|   | :|       |l.|: . : |:.{ム "゙    '     ""゙  | :|: . : . : |: |      |:|   |: |      i| i!: :. :.|: |:.:ヽ.      __       イ:.|: |. : . : . :|: |        |.|   | :|      l|:.:| : . : | :|: .|: > .  ´ `   イ:.:..!.:|: | . : . : . |: |         |.::|   |: |     l|: . !.: . :..|: :i:.:|: . : r‐|`  -‐ ´ |入.:.|:.| :|. : . : . : l: |         !: |   | :|       l|: : |: : . : !_ l:_| _/ \    /   \j :!: . : . : . :|: |       |:|   |: |     |: : ,:|. : . : |ヽ{ |     /`Yバ      ノ/|. : . : . : . l: :|        ! :|   | :|    |:, イl: . : . .|   ヽr──ミ、__彡──y'  |. : . : . : :/ヽ:!     |:|   |: |   /  /. : . : .j    {    { }     } |: . : . :./   \      ! :|        「なんで……まだこんなにドキドキしてるのよ……」 }}}} 【TO BE CONTINUED...】 ---- #bold(){ 【須賀京太郎のステータスが更新されました!】  称号:ゲス時々イケメン&font(red){(new!)}  憧への印象:...→M(まったく)C(中学生は)S(最高だな!)   →楽しかったな、デート&font(red){(new!)} 【新子憧のステータスが更新されました!】  称号:アコスACT2&font(red){(new!)}  京太郎への印象...→黙れ   →……ストラップ、大事にする&font(red){(new!)} }
305 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/22(金) 22:55:48.47 ID:Ui4kQtBso ◆  握った憧の手は、びっくりする程ユートピ……熱かった。  もしかして風邪でもひいてんのか。  顔も赤いし、なんか頭から湯気出てるし。  さっきまでの百面相は影を潜め、一転して大人しくなっていた。  まあ天下の往来でぎゃあぎゃあ騒がれるよりマシだけど。 京太郎「じゃ、改めてぶらついてみるか」 憧「」コクコク  喋らんのかい。  このまま迷子みたいに俺に引かれて歩くつもりじゃないだろうな。  そうならないことを祈りつつ、動き出す。 京太郎「しかし、流石に吉野とは密度がちげーな……」  視界を埋め尽くす人工物。  駅前でも全然天然な我が第二の故郷とは、物理的に天と地ぐらい差がある。 308 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/22(金) 23:47:21.08 ID:Ui4kQtBso テクテクテク... 京太郎「ふんふむ……ふむふん……」  コケたりぶつかったりしないよう最低限の注意をしつつ、キョロキョロと街並みを見回す。  目につくのはファーストフード系の店が多い。  けど、まだ昼飯時には早い。  せめて一軒、せめて一時間は先に消化したいよな。 京太郎「お」  そんな中、服屋の前で足を止めた。  ただ最初に視界に入っただけの、ごく普通の服屋。  メンズ中心というのがやや気に掛かるが…… 京太郎「憧、ここに寄っていいか?」 憧「ここ……って、服屋?」 京太郎「おう。そういえば前から買おうと思ってたんだよな」 憧「そうなの?」 京太郎「ああ。Tシャツが一枚、えーっと……ほら、着れなくなったからさ」 憧「………………。あっ」  そう。  憧に貸して、憧の部屋で発見されて、お陰で人前に出せなくなった分の補充だ。 309 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 00:44:27.85 ID:5TOx7ODXo 憧「……ゴメンナサイ」 京太郎「いえいえ」  別に根に持っちゃいない。 京太郎「あんなん不慮の事故だろ、気にすんなよ」 憧「うぅ……だ、だったらお金出すから!」 京太郎「いらねって。外で着れないだけで、部屋着には使えるし」 憧「アンタは良くてもあたしが良くないのよ! 責任感じるじゃない!」 京太郎「んなこと言われてもなぁ」  クリーニングまでしてもらってるし、むしろ礼を言いたいレベルだ。  それでも借りがあると、それを返したいと言うなら…… 京太郎「なら、さ。憧が俺の服を見立ててくれよ」 憧「へ?」 京太郎「俺に似合いそうな服を憧が選んでくれ」 憧「そ、そんなことでいいの……?」 京太郎「俺、いまいちセンスなくってさ。憧のチョイスなら安心して着られると思うし……頼めるか?」  顔色を窺いながら提案する。  これで納得してくれればいいんだが。 憧「……わ、分かった」 京太郎「お、本当か?」 憧「この流れじゃ断れないってば……まあ、微力を尽くすわよ」 京太郎「サンキュー。よろしくな」 310 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:14:18.68 ID:5TOx7ODXo ~服屋~  入ってみれば、店内は広く明るく清潔な雰囲気だった。  隅の方では雑貨というか、小物類も併せて扱っているらしい。  これなら憧も萎縮せずに済みそうだ。一安心である。 憧「……」ポカーン 京太郎「ん? どうかしたか?」 憧「男物の服屋、はじめて入った……」 京太郎「あー」  だろうなぁ。縁がないよなぁ。 憧「」ソワソワ 京太郎「……とりあえず一周するか」 憧「そ、そうねっ」  明らかに浮足立ってる。  男物でも服は服。勝手にテンションが上がってしまうようだ。  手、離さないようにしとこう。 314 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:44:16.55 ID:5TOx7ODXo トテトテトテ... 憧「ふーん……男物ってパターン少ないのね」 京太郎「女物に比べりゃな」  基本的に、拘らなければ上下一枚ずつ着ていれば済む季節だ。  そこにシャツを一枚引っ掛けたり、アクセサリを付けたりは個人の自由だが。 憧「Tシャツかぁ……合わせるのは今のジーンズでいいの?」 京太郎「おお。つか、これしか持ってないし」 憧「は!?」クワッ 京太郎「えっ!?」ビクッ  驚いたのは声だけにではない。  振り向いた憧の表情に。  そして、握り返す手の力に。 憧「アンタ、今、なんて言った……!?」ズモモ 京太郎「じ、ジーンズこれ一本しか持ってません」 憧「ありえない!!」  お店の迷惑にならない範囲で絶叫されてしまった。 315 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 01:56:26.36 ID:5TOx7ODXo 憧「本気? それ本気で言ってるの?」 京太郎「本気っつーか、事実っつーか……」 憧「ありえない……! いくらジーンズは着回しが利くからって、最低でも二本は持ってなさいよ!」 京太郎「じ、実家にはあるぞ!? ただ、引っ越す時に持ってこなかっただけで……」 憧「なら洗濯はどうしてるのよ?」 京太郎「してない。色落ちしそうだし」 憧「くたばんなさいな」 京太郎「死を勧められた!?」 憧「アンタねぇ、ジーンズは色落ちしてなんぼでしょうが!」 京太郎「それは分かるけど、でも穿いてたら自然と色落ちするんじゃねえの?」 憧「甘い! まったく洗濯しないジーンズは色落ち以前に傷みやすくなるのよ。つまり逆効果」 京太郎「マジで?」 憧「マジよ。だから通は自分なりのタイミングや方法で、計算して色落ちさせるの」 京太郎「へー……」 憧「素人に同じことをしろとは言わないけど、色違いやデザイン違いで二本は持ってなさい。衛生的な観点も含めて」 京太郎「……はい」  完敗ですぞ。 318 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:14:23.67 ID:5TOx7ODXo 憧「よろしい。じゃあ早速ジーンズを選ぶわよ!」イソイソ 京太郎「待てい」ガシッ 憧「ふきゃ!?」ガクッ  ジーンズ売り場に向かおうとした憧を、今度は俺から手に力を込めて引き止める。 憧「何すんのよ、危ないじゃない!」 京太郎「危ないじゃないじゃないじゃない! 当初の目的忘れてねーか!?」 憧「はあ?……あっ」 京太郎「お分かりいただけただろうか」 憧「そうよね……Tシャツよね、うん」カァー 京太郎「楽しんでくれてるなら何よりだけどさ」 憧「た、楽しんでなんかない!」 京太郎「へいへい、Tシャツ売り場はあちらでございまーす」グイグイ 憧「引っ張るなぁー!」  聞こえない聞こえない。  誰かの手を引く構図に懐かしさを覚えながら歩いた。 323 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:39:17.29 ID:5TOx7ODXo 京太郎「ほい、到着っと」パッ  ここでようやく手を離す。  篭っていた熱が外気に溶ける感触が心地良い。 憧「っ……ぅー……」ジトッ  見えない見えない。  恨めしげな憧のジト目とか見えない。  それより今はTシャツ選びだ。 京太郎「さ、阿知賀のファッションリーダー様に期待させてもらうぜ」 憧「ちょ、変に持ち上げないでよ!」  言い返しながらも、そそくさと服の並ぶ棚に向き合う憧。  一枚ずつ広げて眺めて、 憧「んー……」クルッ  振り返り、俺に重ねるようにかざして唸る。 憧「……違うな」クルッ  違うのか。 324 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 02:58:11.29 ID:5TOx7ODXo 憧「あ、このデザインいい……けど色が……」ブツブツ  スイッチ入ってんなー。  こうなると俺は若干手持ち無沙汰だ。  “憧係”として、モデルとして、憧から離れる訳にはいかないし。  さっきまでそこにあった柔らかさを思い出してニギニギする。  すごく……すべすべでした……  途端に倦怠感が吹き飛ぶ。  こうして突っ立っているのも、デートの醍醐味だと考えよう。  仮の相手でも、憧みたいな子と休日に出掛けられる役得を忘れてはいけない(戒め)。 憧「――う太郎、京太郎!」 京太郎「、ぉお? なんだ、呼んだか?」 憧「さっきから呼んでるわよ! とりあえず何着か選んだから、試着してみて」 京太郎「ああ、了解」 憧「じゃ、はいこれ!」ズシッ 京太郎「って多いわ!!」  十枚以上あるぞ!? 憧「これでも厳選したのよ?」 京太郎「つーか普通試着って枚数制限あるんじゃ……」 憧「このお店はないみたい。そこに書いてあるわ」ピッ 京太郎「うわぁ都合いい!」 326 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 03:44:41.18 ID:5TOx7ODXo ~試着室~  で、入ってみた訳だが。 憧「……ねえ」 京太郎「ん?」 憧「まだ?」 京太郎「まだだよ。つか入ったばっかりだろ」 憧「そ、そうよね」 京太郎「」ヌギヌギ 憧「……ねえ」 京太郎「ん?」 憧「もう着た?」 京太郎「まだだよ。上脱いだところだから覗くなよ」 憧「の、覗かないわよ!」 京太郎「」モゾモゾ 憧「……ね」 京太郎「夜中トイレに付いてきてもらってる子供か!!」シャッ 憧「ふきゃあ!?」ビクゥッ  それにしては立ち位置が逆だし! 327 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 04:03:16.13 ID:5TOx7ODXo  カーテンを開けて怒鳴ると、すぐ傍に立っていた憧が飛び上がって驚いた。 憧「び、び、び、ビックリしたぁ! 露出狂かと思ったじゃない!」 京太郎「着とるわちゃんと! ほうら見てごらん!」バッ  しまった、セリフが露出狂っぽい。  本当に着てるよ? 本当だよ? 憧「ぅあっ。……へえ、こうなるんだ……」ジロジロ  一瞬たじろいだ憧も、俺の着衣状態を認めると観察の姿勢に入った。 憧「後ろ向いてみて?」 京太郎「あいよ」クルリ 憧「あ、違うな」  違うんかい。 憧「次お願い」 京太郎「へいへい……」  やっぱり全部試すのだろうか。 …… ………… ……………… 345 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 21:45:52.15 ID:5TOx7ODXo 京太郎「どうじゃーい!」シャッ  最後の一枚を試着する頃には最早ランナーズハイのような状態になっていた。  興奮気味にカーテンを開け放ち、仁王立ちになって俺自身を憧に見せつける。  しまった、描写が露出狂っぽい。 憧「ふむ」ジー  そして判定待ち。  これで駄目ならどうなるんだろう。 憧「うん……今までで一番いいんじゃない?」 京太郎「ホンマか新子!」 憧「なんで関西弁よ。そしてなんで苗字で呼ぶのよ」 京太郎「いやなんとなく」 憧「どっちも似合わないからやめなさい」 京太郎「せやかて新子」 憧「やめなさいったら!」 351 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 22:06:58.97 ID:5TOx7ODXo  戯れもそこそこに、試着室の鏡に向き直って自分を見る。 京太郎「これが一番か……んじゃ会計してくるか」 憧「ちょ、即決? もうちょっと考えたりしないの?」 京太郎「憧に任せるって言ったろ。後からケチ付けたくないしな」 憧「っ……そこまで信頼されると逆に不安になって来ちゃうんだけど……」 京太郎「なんでや」 憧「あ、ちょ、ちょっと待って! 閃いた!」 京太郎「は?」 憧「すぐ戻るからー!」ドヒューン 京太郎「って憧!?」  行ってもうた。  一緒じゃなくて大丈夫かな。  つーか、まだ試着するのか……  女の買い物は長いってのが定説だが、男物でも例外じゃないんだな。 353 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 22:37:34.43 ID:5TOx7ODXo 京太郎「さて」  次の服が届くまでに、今着ている分を脱いで畳んでおこう。  そうすれば憧が交換で片付けてくれるだろうし。 京太郎「よっこいしょういち」ヌギッ  そそくさと半ヌードになる。  と、 シャッ 憧「おまたせ! ね、その上からこのシャツ羽織ってみぎゅっ!?」 京太郎「あ」  無遠慮にカーテンを開けたのは、手に明るい色のシャツを握り締めた憧だった。 憧「きょ、きょっ……た、ろ、はだ、っか」 京太郎「あー……あーあー」サッ  どうしよ。  とりあえず乳首は隠したけど。  この距離で男の裸を見てしまった憧がどう出るか、だ。  そう考え、沈黙して待った結果―― 憧「ぁ、たし、ごめっ、その、や、ちが、ちがうっ、そんなつもりじゃ、なく、て…………………………お手洗い行ってくるーーーーーーーーーー!!!」ドヒューン  ――逃げた。 京太郎「……」  (会計しよ) 358 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 23:09:20.03 ID:5TOx7ODXo …… ………… ……………… ~ファミレス~ 京太郎「お待ちどーさん」トテトテ  場所が変わって、今度は俺がトイレから帰ってくる番だった。  Tシャツは無事に購入。一段落してランチの時間だ。 憧「お帰り。言われた通り注文しといたわよ」 京太郎「サンキュー」  席に着く。  ちょうど昼時というのもあって、店内は割と混雑している。  禁煙席が空いていたのはラッキーだったな。 京太郎「って、そういやドリンクバー取ってきてなかったな」 憧「うん、京太郎が戻ったら行くつもりだったけどね」 京太郎「いや俺が行くよ。何がいい?」 憧「いや、あたしが行く」パッ  そう言って憧は腰を浮かせかけた俺の手からコップを引ったくる。 憧「アンタに任せたら変なブレンドジュース作りそうだもん」ジトー 京太郎「失敬な!」  考えはしても、実行に移すつもりはなかったぞ。  意外と女子ウケが悪いというのは実証済みだからな。 363 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/23(土) 23:32:34.64 ID:5TOx7ODXo  今でも耳に残る、モーキョーチャンメロンソーダニウーロンチャマゼルノヤメテヨーとかいう呪文。  一口飲んで即座に突っ返されたけど、確かにアレは酷かったもんなぁ。  でも不思議とまた飲みたくなる味っつーかよォー……すまん嘘だ。責任を持って飲み干したけど、二度とゴメンだ。 憧「はい、お待たせ」コトッ 京太郎「ひょ?」  いつの間にか目の前にコップが。  そして対面には憧が。  どうもトリップしてたっぽい。 京太郎「ああ悪いな……って俺希望言ったっけ?」 憧「聞いてないけどコーラにしたわ。アンタ好きそうな顔してるもんね」 京太郎「褒めてる?」 憧「褒めてる褒めてる」チュー 京太郎「そっかー」  カルピスをストローで飲む憧に、軽く礼をしてコップに口を付ける。  好きです、コーラ。 460 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:20:22.18 ID:lx/Oelh1o 「お待たせいたしましたー。日替わり和膳とシーザーサラダでございます」 京太郎「お、来た来た」 憧「ありがとうございまーす」  俺の前に和膳が、憧の前にサラダが置かれる。  ウエイトレスさんの尻を見送って、 京太郎「うし、いただきます!」 憧「いただきます」  昼食の時間だ。 京太郎「」モグモグ  うん、ファミレスファミレス。  無難におろしハンバーグを選んだが正解だったようだ。  肉と米が俺にパワーを与えてくれる。 憧「」シャクシャク  一方で憧は野菜を食んでいた。  なんとも味気ない有様だ。 461 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:32:31.17 ID:lx/Oelh1o 京太郎「憧は他に何頼んだんだ?」 憧「え? これで全部だけど」 京太郎「はぁ!?」  全部?  全部って言った今? 京太郎「……サラダじゃねーか」 憧「サラダだけど」  聞き間違いではないらしい。  サラダが憧の昼飯らしい。  なんなの。  一にして全なの? 全にして一なの?  なんなのなの。 京太郎「それだけで足りるのか? 足りないだろ? 足りるのか? ん?」 憧「えっなにウザっ!? 別にいいでしょ、ダイエット中なのよ」プイッ  その一言に、 京太郎「なん……だと……」ゴッ  俺のスイッチが、入った。 462 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 21:57:48.26 ID:lx/Oelh1o 京太郎「ヘーイ憧ォ!」ビシッ  身を乗り出して憧を指さす。 憧「な、なによ」タジッ 京太郎「ダイエットもいいけどサー、時間と場所はわきまえなヨ!」 憧「きもっ!!」  酷い言われようだ。  しかし俺は本気だ。 京太郎「お父さんはダイエットなど認めん! 肉を食え肉を!」 憧「誰がお父さんよ!」 京太郎「オレェ」 憧「自信満々に言うな!」 京太郎「オレェ?」 憧「あたしに質問すんな!」 京太郎「ああ言えばこう言う……どうしてこんな子に育っちゃったのかしら」ハァ 憧「なーやーむーなー! しかもそのキャラはお母さん!」ウガー 466 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:28:31.70 ID:lx/Oelh1o 京太郎「シャラップ! これでも喰らえ!」ズイッ 憧「っきゅ!?」  俺が鼻先に突き出したモノに、憧がたじろいだ。  ――湯気を立て、断面に肉汁を滲ませたひと切れのハンバーグ。 京太郎「ほい、あーん」 憧「なななななななッ! ナニ考えてんのよアンタは!?///」 京太郎「お前にハンバーグを食わせようと考えてる」 憧「それは見れば分かる!」 京太郎「なら話は早いな。ほれほれ」ズイズイ 憧「ちょ、やめっ」 京太郎「やめねー。食べるまでやめねー」 憧「そんな強引な……!」 京太郎「あ、肉汁こぼれそう」 憧「うそっ!?」パクッ  やったぜ。 479 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 22:59:58.55 ID:lx/Oelh1o 憧「むぐむぐむぐ……んくっ。……ハッ!?」 京太郎「へへっ、またまたやらせていただきましたァン」ニヤリ  実際には肉汁なんて垂れてはいなかった。  お行儀の良い憧を反射的に動かすハッタリだったのだ。 憧「あ、あんた、なんてこと――」  わなわなと打ち震える憧に先んじて、 京太郎「うまいだろ?」ニカッ  笑みを投げ掛ける。 憧「っ………………、うん」 京太郎「そか、口に合ったんなら良かった」  速攻が効いたのか、反論される気配もないし。 京太郎「もう一口どうだ?」 憧「い、いいわよ。京太郎の分がなくなっちゃう」 京太郎「それもそうか。じゃあなんか追加で頼もうぜ。ポテトとかどうだ?」 憧「ん……それと、後でパフェでも頼もっかな」 京太郎「いいーーーねェーーー」 485 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 23:20:41.69 ID:lx/Oelh1o …… ………… ……………… 憧「大体ねぇ、アンタは何かと心臓に悪いのよ!」 京太郎「へいへいさーせんっしたー」グデーン 憧「ちゃんと聞く!」ビシッ  聞き飽きたわ。  テーブルに突っ伏し、ラスト一本のポテトを口に放り込む。  対面の憧は俺を叱る時とパフェを食べる時で表情をクルクル入れ替えて忙しない。 憧「人前であーん強要とか、常識を疑うわ」ムグムグ 京太郎「それを言うならなぁ」 憧「なによ?」 京太郎「ダイエットしてるからってデート中にサラダしか食わないのもどうかと思うよ俺は」 憧「ぅぐ」ムグッ  よしんば「あーん」がやり過ぎだとしてもだ。  少なからず気になるし、気を遣わせる振る舞いではないだろうか。  責める訳じゃないけど。 486 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/24(日) 23:49:29.40 ID:lx/Oelh1o 京太郎「せめてデートの時ぐらい忘れられないもんかね」ヤレヤレ 憧「……逆よ」 京太郎「逆?」 憧「で、デートだから、バクバク食べられないなって……本当は、もうちょっと食べるわよ」  もちろんカロリー計算はするけど、と付け足して。  またパフェを一口、そしてそっぽを向いた。 京太郎「……。美味いものは一緒に食べた方が楽しいと思うぞ?」 憧「それはそっちの理屈。まったく、女心が分かってないんだから……」 京太郎「はあ、すみません」  色んな考え方があるんだな。  それをぶつけ合ったり、擦り合わせたりするのが人付き合いで、恋人付き合いなのだろう。  大人でも振り回されるのだから、俺達みたいな子供は尚更の筈だ。  いつか俺にも本気で好きな相手が出来たら、そういうことに四苦八苦するのかな。  こうして友達とデートごっこに興じている内は、想像もつかないことだけど。 497 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 00:41:52.46 ID:R5SS8CL2o 憧「ところで、次はどこに行くの?」  パフェ攻略も最終局面、スプーンでさくらんぼを弄びながら憧が。 京太郎「そうだなぁ。いくつか考えてるけど」  考えてるけど、決めかねている。  たった今さくらんぼを口に放った憧に意見を仰ぐとしよう。 京太郎「憧は希望とかあるか?」 憧「あたひ?」モゴモゴ 京太郎「おう、聞ける範囲で聞くけど」 憧「そうねぇ……あんまり人が多いところは避けたいかな」 京太郎「ふんふむ」  なら候補は絞られたな。 京太郎「オーケー、じゃあ出るか」 憧「ん。……ぺ」  席を立つ寸前、憧が掌に落としたのはさくらんぼのヘタだった。  見事に結ばれた、さくらんぼのヘタ。  本人は無邪気に「できたー♪」とか言ってるが、 京太郎「……憧」 憧「なに?」 京太郎「………………誘ってる?」 憧「は? なに言っ、て………………。――~~~~~っ!!?///」カァァァッ  言うだけ言って逃げるに如かず。  瞬間湯沸器のような赤面芸を披露する憧に背を向け、伝票を引ったくってレジに走る俺であった。 520 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 21:54:08.03 ID:R5SS8CL2o …… ………… ………………  そんなこんなで、 京太郎「真っ赤な誓いいいいいいいいいいっ!!!」  絶唱轟く地獄変、やって来ました ~カラオケボックス~ 。  まず歌ったのは俺が得意とする内の一曲。  スタートから全力を出すことで、喉を全開させる作戦だ。 京太郎「ふぃー……」 憧「」ポカーン 京太郎「ん? おいおい、ノーリアクションは辛いんですけど」 憧「あ、う、うん」  ぱちぱちぱち、と乾いた音。  これだけでも、あるとないとでは大違いだ。  終始ケータイいじったりされてると本当に虚しいからな。本当に。 523 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 22:22:37.55 ID:R5SS8CL2o 憧「いきなり飛ばし過ぎじゃない?」 京太郎「二時間しかないからな、テンポ良く行かないと。ほいマイク」スッ 憧「え、まだ曲選んでるんだけど」 京太郎「なんやて! そんなん歌ってる間に決めとけよ!」 憧「そんなこと言われても……」  困ったようにデンモクに目を落とし、タッチペンでつつく憧。  しかし明確な目的意識があるようには見えなかった。 京太郎「いつも歌う曲とかないのか?」 憧「あるけど……、……くて」ボソッ 京太郎「え? なんだって?」 憧「だ、だから! 恥ずかしくて歌えないって言ってんの!」 京太郎「ああん?」  何を生娘みたいなこと言ってんだこいつ。  いや生娘なんだっけ(ゲス顔)。 525 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 22:50:07.75 ID:R5SS8CL2o 京太郎「こういうことするって、分かってて付いてきたんだろ?」  しまった、セリフが変質者っぽい。 憧「そうだけど……お、男の人とは初めてだし、やっぱり緊張しちゃって……」 京太郎「カラオケに男も女も関係なくないか?」 憧「あるの!」 京太郎「あるのか……」 憧「あるのよ……」  沈黙。  こうなったら、憧の決心がつくまで俺の十八番メドレーで繋ぐしかないのか。  と、 憧「……ねぇ」 京太郎「ん?」 憧「あたしがどんな歌を歌っても……笑ったりしない?」 京太郎「当たり前だろ。俺なんていないものと思って好きに歌えよ」 憧「そっか……じゃあ、歌う」  ひとつ頷いて、憧は手早くデンモクを操作し始めた。 530 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/25(月) 23:32:24.67 ID:R5SS8CL2o  そして、曲が流れ始める。 ♪~ 京太郎「お」  知ってる曲だった。  だから、憧が歌うのを渋っていた理由がなんとなく分かった。 憧「♪ねえ 愛したら――」  ややぎこちない歌い出しは、緊張の表れか。 憧「♪――君を君を愛してる 心で見つめている――」  そして俺を横目でチラチラ見るのは、羞恥の表れだろう。 憧「♪――ねえ 恋しても――」  特定のフレーズを口にする度、マイクを持つ手に力が入るのが見て取れる。 憧「♪――瞳で今 手をのばす 寒い夜も」  それでも最後まで歌い切った。歌い終えた憧は、 憧「………………はぁぁぁ……」  深く長く息を吐いた。 京太郎「……」  一方で俺は確信した。  こいつ――男の前で「愛」とか「恋」とか歌うのが照れ臭かったんだな。  乙女か。 539 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/26(火) 00:00:17.35 ID:pAIL6PKHo 憧「っ……ど、どうだった……?」 京太郎「」ハッ  我に返る。  憧は赤面、潤んだ目で俺を見ている。  まさに『瞳で今 手をのばす』ってやつか。違うか。 憧「……? ねえ、何か言ってよ……」オソルオソル 京太郎「」ハッ  再び我に返る。  そうだ、ノーリアクションはNGだ。  且つ、この場合の最善策は―― 京太郎「悪い悪い。うん、普通に上手いじゃんか」  褒める。  からかわず、過剰におだてたりせず、当たり障りなく。 540 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/26(火) 00:40:56.65 ID:pAIL6PKHo 憧「ほ、ほんとに?」 京太郎「おー。渋るもんだから実は音痴なんじゃねって心配してたけどな」ワハハ 憧「な、失礼な! これでもカラオケは好きで、中学の頃はよく行ってたんだから」フンッ 京太郎「おやおや、長野では『喉自慢の京』で通ってるこの俺の前で挑戦的な」 憧「へえ、アンタこそ生意気じゃない。あたしと張り合うつもり?」 京太郎「やるか?」 憧「やったろうじゃないの!」  という訳で―― 京太郎「ブロウクウウウウウン、ハンマーーーーーーーーーーッ!!!」 憧「♪――天使が鳴らしてる “大好き”の合図だよね――」 京太郎「メェタルフウウウウウウウウウウウウウウウルッコーーート!!!!!」 憧「♪空白だらけのサンデーモーニング 君は何をしているの?――」 京太郎「ライディーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」 憧「♪――みんなを 撃っちゃうぞ ラブカノンで BANG BANG――」 京太郎「ガオ! 叫べ! ガオ! 倒せ! ガオ! ガオ! ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」 憧「♪――大好き 大好き ツキがある世界――」  体力と時間の限り歌い合った。  デス声を(一時的に)会得した。  店を出てすぐ、のど飴を買いにコンビニへ走った。 614 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/28(木) 22:27:27.02 ID:Kx5FiVhZo …… ………… ……………… ◇ ~吉野~  改札を抜けた先の慣れ親しんだ景色に安堵する。  夕焼けが稜線を朱く輝かせながら、その向こうに沈んでいく。  あたしにとって、一日の終わりを象徴する光景。 京太郎「帰ってきたなー」 憧「、……うん」  そして今日に限れば、デートの終わりを告げる風景。 憧「ぁ……」 京太郎「ん?」 憧「え、えっと……もう、手……」 京太郎「おお」  ぱ、と。  繋いでいた手が離れる。  いとも簡単に、なんの躊躇もなく。  それ自体に不満なんてないけれど。  密着していた掌に触れた外気が、やけに冷たかった。 615 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/28(木) 23:22:22.88 ID:Kx5FiVhZo  じっと手を見る。  帰りの電車は行きよりも混んでいて、最初から立つ羽目になった。  吉野に近付くに連れて人は減ったけど、その頃には敢えて座る必要もなくて。  結果、離す機会を逃したままになっていた、手。  そこから失われつつある温度に、物悲しさを覚えた。……何故か。 京太郎「憧」 憧「ッ……な、なに?」  呼ぶ声の方へ身体を回す。  変にざわついた心を落ち着かせながら、京太郎と向かい合った。 京太郎「今日はお疲れ」 憧「う、うん。お疲れ様」 京太郎「これでデートも終わりだな」 憧「そう、ね」  終わり。  口の中で、その言葉を転がした。 619 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 00:17:58.60 ID:JPEwOVlio 京太郎「色々と至らない点もあったかと思いますが、ご満足いただけましたでしょうか?」 憧「ん……」  満足したかどうか、か。  尋ねられて、顧みる。  と、まずは、 憧「………………………………ハダカ見られた」 京太郎「ぐへぇー」 憧「はあぁ……」ドヨーン 京太郎「し、下着だったろ! 裸じゃないない!」 憧「フォローのつもり!? あんなことされたら裸より酷いわよ!!」 京太郎「分かった分かった悪かった! 反省してます! それよりデートについてだろ!」 憧「……忘れないからね」ジロリ  ひと睨みして、また回顧。 620 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 00:56:37.93 ID:JPEwOVlio 憧「服……褒めてくれたのは、嬉しかった」 京太郎「おう。似合ってるぞ」 憧「あ、改めて言わなくていいから!」  キャスケットを目深に被る。  京太郎が褒めてくれたキャスケット。  ふきゅ。 憧「後、電車で庇ってくれた。それは、素直にありがと」 京太郎「大したことじゃねーよ」 憧「アンタにはね。そういうの、女の子的にはポイント高いわよ」 京太郎「憧的にも?」 憧「……もくひけん」 京太郎「なんじゃそりゃ」 621 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 01:23:12.59 ID:JPEwOVlio  なんじゃももんじゃもないわよ。  あたし個人として肯定なんてしたら、まるで京太郎のこと意識してるみたいじゃない。  あくまで一人の男としてしか意識してないんだから。  ……あれ? 憧「あれぇ……?」 京太郎「憧?」 憧「ぁ、な、なんでもない!」  やばいやばい。  変な方に考えちゃダメだ。 憧「そうだ、手!」 京太郎「手?」 憧「手! アンタ、強く握り過ぎだったから」 京太郎「え、マジか」 憧「マジよ。男のゴツゴツした太くて硬いので力任せにされたら痛いに決まってるでしょ」 京太郎「………………わざと?」 憧「何が?」キョトン 625 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 01:50:59.17 ID:JPEwOVlio  話題に上った手を、また見た。  さっきは大袈裟に言った部分もあるけど、敏感なマメを擦られて変な声が出そうな場面も何度かあった。  でも本当に痛くされたら血が出るし、そうならなかったなら許容範囲内よね。 憧「あ、男物の服屋に入ったのは新鮮だったわね。楽しかった」 京太郎「そうなのか。私用に付き合わせて悪いなって思ってたんだけど」 憧「気にしてないわよ。貴重な体験だし、意外と有意義だったわ」 京太郎「なら良かった」 憧「………………………………ハダカ見せられたけど」 京太郎「ぐへぇー」 憧「はあぁ……」ドヨーン 京太郎「って待てや! オ・レ・が! 見られたんだよ! 露出狂みたいに言うな!!」 憧「う、うるさい細マッチョ! 身体付きがセクハラなのよ!」 京太郎「やだ斬新な罵倒!!」 628 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 02:22:56.49 ID:JPEwOVlio  罵倒もしたくなるわよ。  あんな強烈なの、ばっちり目に焼きついちゃったんだから。  すごく近かったし、そうそう上書きされそうにないくらい。  まったく。まったくもう。 京太郎「次はなんだっけ。ファミレス?」 憧「ファミレスね。あそこは……うん、あたしの方に非があったわ」  ダイエットは時間と場所を弁えて、なんて。  言われなくても分かってた筈なのに。 京太郎「ま、ポテトにパフェで挽回したし、気にすんなよ」 憧「……今夜はごはん抜かなきゃ」 京太郎「おい」 憧「わ、分かってるわよ。冗談だってば」 京太郎「ったく……あ、そういえばダイエットって胸から痩せるとか聞くよな」 憧「黙れ」 京太郎「はい」 645 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 21:33:34.67 ID:JPEwOVlio 憧「もー、ほんっとうにデリカシーがないんだから……」 京太郎「か、カラオケはどうだった?」 憧「カラオケ? ああ、カラオケは良かったわね」 京太郎「ぶっ通しで歌いまくったもんなぁ」 憧「あんなにたくさん歌ったの久しぶり」 京太郎「憧、最後は声ガラガラだったよな」 憧「それは京太郎もでしょー」  からかうように笑い合う。  なんか、いいな。  こういう清々しい感じ、嫌いじゃない。  不満がないと言えば嘘になるかもしれないけど、  振り返れば案外―― 憧「……!!?」ハッ  ――待て待て待て。  待って。  あたし、今、何を考えてた?  「案外いいデートだった」、なんて考えてなかった? 646 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 22:03:02.49 ID:JPEwOVlio  とんでもない。  そんなの、なんか、すごく………………嫌……だ?  嫌っていうのはちょっと違うな……  癪? うん、癪かな。  すごく癪だ。  だって、あたしには理想のデートがある。  GWの合宿で、しず達を相手に語った理想。  小さなオシャレを頑張ったり、  ファミレスでだべったり、  カラオケでハシャいだり、  そういう、質より量の学生らしいデート。  その相手が京太郎みたいな駆逐艦マニアに務まる訳―― 憧「……」 憧「…………」 憧「………………」 憧「あれ?」 652 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 22:37:30.02 ID:JPEwOVlio 京太郎「ん?」  あ――れ?  待って。  おかしい。  そんな筈ない。  違う。違う。違う。  どうしよう。  否定しなくちゃ。  なんとかして。  粗を見つけて。  否定しなくちゃ。  絶対に。  このままじゃダメ。  認めちゃったら、おしまいだ。 憧「――」 京太郎「憧ー? 急に黙り込んでどうし」 憧「あ、甘いわねッ!!」ズビシィッ 京太郎「本当にどうした!?」 654 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:16:57.08 ID:JPEwOVlio 憧「京太郎は甘いのよ!」 京太郎「だからどうしたんだよ……」 憧「う、うるさい! あたしにも負けられない理由があるのよ!」 京太郎「デートで勝ち負けってどうやって決めるんだ?」 憧「あたしが決めます」キッパリ 京太郎「暴君がいるぞおおおおおおおおおお!!?」 憧「だからうるさいそこ! いいから聞きなさい!」 京太郎「アッハイ」 憧「……こほんっ」 憧「確かに、今日のデートは中々だったわ。なかなかのなかなかよ」 憧「でも甘いわ! 詰めが甘いのよ京太郎は!」 憧「少女漫――物の本によるとね、こういう時は内緒で買ってたプレゼントを渡してくれたりするものなのよ」 京太郎「プレゼント?」 憧「そ。まあ京太郎には無理よね~。そんな甲斐性なさそうだもん。元から期待なんてしてなかったけどね。でもやっぱり残ね」 662 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:27:01.13 ID:JPEwOVlio 京太郎「ほれ」 憧「へ」 京太郎「プレゼント」 憧「ふきゅっ」 671 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/29(金) 23:51:33.95 ID:JPEwOVlio ◆  憧に差し出したのは、ストラップ。  服屋で一人の時に買っておいたものだ。  小さな桜の花の意匠が、憧のイメージと重なった。 京太郎「えーと、その、なんだ」  流石に照れるな。  面と向かってプレゼントを贈る機会なんてそうそうない。  けど、ここが正念場だ。 京太郎「今日一日さ、色々あって」 京太郎「憧的にはしんどい部分もあったと思うけどさ」 京太郎「それでも頑張って、弱音を吐かずに付き合ってくれたじゃんか」 京太郎「だからこれは、そのご褒美っつーか、お礼っつーか」 京太郎「……ま、気持ちだ」 京太郎「受け取ってくれるか?」 憧「は、はひ……///」ポーッ 681 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 00:08:51.67 ID:hYkl1xMEo  憧は、呂律も挙動も怪しい様子だった。  しかし伸ばした両手は確かにストラップを受け止める。  そのままゆるゆると引き寄せ、胸元にきゅっと抱くと―― #size(15){#aa{{{          , r '´ ̄ ̄)`ヽ      ./´     .|     1    \         /   , r ',´`ゝイ      /       i|     .|     ヽ        ./  ,r'彳 /   .|     ./ ./    , /|     |   ヽ.  ヽ       /// /  ./   ト、 ヽ   ./ /    / /|    i .ハ    1  ヽ      ./  / ./  ./    |ヾ  ヽ / /i-、,_  /j ./ |    .ル.j |   .|1.   1      ./  ./ ./  ./    .| ヾ  ヽj /.i  .>ト,/ j    /i j .|.ハ  | |.   |     /  / j  i     |  ヾ /j j | / ./ '、` j   /ノ/ .|.j |  .j .|   .i |     ./  / .|  .|    | |  >'´i |rt== ミ、 、 ./ / /' r t/'ー-/ |   .| |    ./  .| .j  .|    | | V´  | .| .ク心:::::ミヾ ' '´   '  - ' j /j |   ルj    j   .| .j  .|    .| |    | .| 毛:::::::ゝ       r==ミ,tノ/j j i  .从'    /   .| /  .|    | |   | .| ヾ:::::リ'       .ク:::C }./イ .|.j //' 1  「……うれしい。ありがと」    |  | .| /   .|     i. |   | .| ,,,,,         .レ:::リ './ iイ i/ノ |'  ,1    |  1 .|./   |     ヽ.ト   | .|           ''ヾ / |'j j´  |  |1   .|  1 |'    .1ヽ    ヽ》、  | .|         '  ,,,,, /  |j /   .|  |.|   .|   、|    ヽ、ト    ヽ \| .|    ヽ、       /  .j ./    1 |.|   .|   ,V     ゝ 、、    \ i .|、      ´    ノ   /./    .| | |   .|   1、     .》、\ヽ    ゝ | ヽ、      , r ' ´   ././     | j |   .|   .1ヽ    / `ー-ヽ、、_   ゝi、./ `ヽ- j ' ´  .i   ./.イ      |.j .|   .|   1.ヽ  ./       ` ゝ 、 ` \'  ./ i   1  // 1|     .|.j  | }}}}  ――まるで花のように、優しく微笑んだ。 694 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 00:37:22.32 ID:hYkl1xMEo  ――のも束の間。 憧「……!!?///」ハッ  我に返ったらしい憧。  まず手にしたストラップに驚き、右に左に首を振り、  最後に正面に俺を認めて、 憧「ッ……サプライズプレゼントとか流行らないのよーーーーーっ!!!///」 京太郎「いや言い出しっぺはお前だろ」ズバァッ 憧「っふぎゅ」 京太郎「やれやれだぜ。珍しく素直になったかと思ったら……」 憧「う、うっさいうっさい! これで勝ったつもり!?」 京太郎「だから勝ち負けとかねーだろ。ゆとり世代らしく手を繋いでゴールインしようぜ?」 憧「ご、ゴールイン!? 話が飛躍し過ぎよ馬鹿ぁ!」 京太郎「何が?」 憧「なんでもないっ!!///」 698 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:04:24.62 ID:hYkl1xMEo 京太郎「なに怒ってんだよ……」 憧「うるさいうるさいうるさい!……アンタなんて」ボソッ 京太郎「おう?」 憧「ッ――アンタなんて、ハルエの言いなりのくせにっ!」 京太郎「……は?」 憧「そうよ、そうだわ、そうだったもんね! あれもこれも、全部ハルエの差し金だもんね!」 京太郎「ちょ、憧、落ち着」 憧「なにもかも人に指図されて渋々やったことだもんね……そんなのに振り回されて、あたしってば馬鹿みたい!」 京太郎「だから落ち着けって!!」ガシッ 憧「ッひぅ!?」ビクッ 京太郎「あ、悪い」パッ 憧「……っ」プイッ 京太郎「……あのさ憧。とりあえず訊きたいんだけど、いいか?」 憧「……なによ……」 京太郎「ああ、えっとな」 京太郎「なんで監督の名前が出てくるんだ?」 憧「………………へ?」 703 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:26:58.80 ID:hYkl1xMEo 京太郎「まずそこがわっかんねーんだよなぁ」ポリポリ 憧「いや、わっかんねーって……なに言ってんの?」 京太郎「いや、だから、監督は関係ないだろ? なのに急に」 憧「ちょっと待って!!」  目と鼻の先に手が。  指の間から、難しい表情をした憧が見える。 憧「……今日のデートって、指令の一環よね?」 京太郎「え、違うだろ」 憧「違うの!? 予行演習って言ったじゃない!!」 京太郎「それとこれとは話が別だろ? しかも俺が言ったのは『予行演習みたいなもん』な」 憧「同じでしょ!?」 京太郎「違うよ、全然違うよ」  あくまで本命はデート=テスト勉強の礼だ。  そのついでに、男嫌い克服の一助にもなればいいとは考えたが。  憧も勉強会の時に似たようなことを言っていたから、納得済みだと思ってたのに。 704 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 01:32:33.90 ID:hYkl1xMEo 憧「だっ……だとしても、ハルエからメールが来てたでしょ!? それに従って動いてたんでしょ!?」 京太郎「え、そういう段取りだったのか?」 憧「は!?」  だったらレジェンドに悪いことしちゃったな。 京太郎「いやー、実は俺さぁ」 #size(20){#aa{{{                __  /⌒ヽ                  ⌒\ ∨   ヽ___               _, ----`      ∨   `ヽ、            /´               |     \           / ____    /  l|     | :.     \             ///    /   |     |l |  :       ヽ               /  /   //  ,∧    / ,イ  l| :.  .  .           / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.          .'/  ' ' /-|-{ {  |  /}/  | / } }  |    .          }'  / |Ⅵ { 从  '  ,     }/ /イ   }     .            / イ | l{   { ∨/      '    }   ∧ :   :.           ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{                 {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \                |                ノ ' }/イ/                 {               _,ノ        「今日ケータイ家に忘れてきちゃって」                    人       _,..::ァ       r }/                      `     ゝ - '   イ   |/                         `  ーr  ´  ___|_                      ___|     |//////|                    {|___ノ  __|[_]//∧_                  /// |____|///////////> 、                      ///// |   /////////////////> 、                /////// { //////////////////////}              //////////∨///////////////////////| }}}} 710 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:26:02.94 ID:hYkl1xMEo ◇ 憧「――」 京太郎「別に困ることはないと思ってたけど……そうか、そりゃマズかったなぁ」 京太郎「帰って確認したら監督からのメールが溜まってたりすんのかな……」 京太郎「……ま、邪魔されずに済んだと考えれば結果オーライだよな、うん」 憧「――」  今。  京太郎。  なんて言った?  ケータイを、忘れた?  そう言ったの?  じゃあ、ハルエの指令は京太郎に届いていなかった?  うそ。  じゃあ、今日の行動は全部、京太郎自身の意思?  やだ。  じゃあ、あたしは京太郎がしてくれたことで、あんなに嬉しくなってたの?  だめ。  そんなの、まるで、本物の―― 京太郎「憧」 憧「は、はひっ!?」 711 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:31:23.38 ID:hYkl1xMEo #size(15){#aa{{{      , ´   /  .' / .'  '        | l  | l |  |    /    / '   |  | | l|  |    l | ,  } l |  |  _/    イ /   l|  |_,∧_{  :.   ,-|-}-/、 ,  |  {   _   ___,-、 __   ̄ ´   / /    {  |、{ l∧  {、   | }/イ/},イ /  l_、  { Y´ /  '   }- 、       {〃   r∧ |ィ斧ミ从 、Ⅵ , イ斧ミ、 } /l|  l、r  ̄ {   {  |  / _ }、       /    /{ 从{、 Vzリ  \Ⅵ/ Vzり /イ } / |   乂_人_/、_/   / \        /   //从 l∧\       ,\        | /イ/   }==   ̄ ̄ ̄ ー く      /  イ'  {/l∧ ∧      、        ,イ/j'  /             \     ̄ ̄        ー∧         _,     从    ,                 \                ヽ 、    ` ¨  ̄   ィ }/    /     / '                  ∧ \       / |/>  ,      /                   {(从_|     --  ´ 「/// |  {                   |/ ̄}}          |////|_ |             _,.:<|///||          l/////` |      _,.. -=<///// \//}         ,r-/////// |   <//////////////////∧-- 、    {///////l{               「楽しかったな、デート!」 }}}} 713 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:33:01.80 ID:hYkl1xMEo #size(15){#aa{{{                 -‐…‐-             /: ∪: : : : : : : : : : :`丶、            /.: : :/: : : :|: : : : : : \: : :ヽ-            ,:': //: / :|:|: : : |'、: : : :\: :∨ Y\\            i|: //: /  |:|: : : |: \: ノ :||: :|/ |: |:|\\            i| i∧:{`ー\: : |  ̄\: ||: :| : |:.:|:|  ヽ:ヽ          八|l: : l 〃ヽ \l 〃ヽ ヽ|: :|: :′|:|   ',: :          |:| |l\| {{ }}     {{ }}  |: :|/: : :|:|   i: i          |:| || .′ー' ///// ー'   |: :l: : : :l|   |: |          |:| |l {   __,/⌒\ u |: :|: : :||   |: |          |:| || 人 レ        \ |: :|: : : |: :   |: |          |:| |l / : `|/        \:!: : :.|: ∧   |: |          |:| ||'/ : |/ , <       \:ノ: : ∧ ,: :′          |:|/{: : : :/ゝイ ∨\      \\: :∨:/           |/: : : /  イ {,∠‘,         \',:|:|        //: : /  {⌒YY´   人        \|:| .     /  ′:/   /l_/Т\_i: : :\         ̄ヽ      /    |: : |{/   \/|/|_ | : : : ∧          | .    /   八: :|′    o    八: : : { \        |   _/_彡   ヽ{           \: :\ |:\       /  /       人                ̄ |: : :l>―┬ ./       /  }     o         |: : :l : : : : |     「~~~~~~~~~~っっッ///」 }}}} 718 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 02:57:40.59 ID:hYkl1xMEo 京太郎「憧?」 憧「……ぃ」 憧「っ……きゅ」 憧「ぅ……ぁ……、」 京太郎「すげー顔赤いぞ、大丈夫か?」スッ 憧「!!!!!」 #size(15){#aa{{{ .             xァ′ /       |                ヽ {__j__            '   /   ′       / |     |      .         :, `丶 \       /  / /    i |    i  | |     |     i |  i     :,    \ \       /  /         | |  ‐-L_ | |     | j |i  | |  |         \ \    .         |    |:八  人j ト八      i |斗匕|「 | |  |   l: .,        ヽ       /     |    |  Ⅳj]xぅ妝斥 \    i/≫ぅ妝ミxV|  |   |: .′       , .      ′     八  :{  |  |坏´_)「:::ハ   \ ∨  _)「:::ハⅥ  |   |: .        ′   ;           \乂_|  |八 rヘしi::::}     \   rヘしi::::} オ |  . .|: . i           ;   「気合! 入れて!! 行ッきまーーーーーーーーーーーーーーーっす!!!」ドヒューン   |   i        l .⌒|  |   乂__/ソ          乂__/ソ |  |  . .|: . |       i   |   |   |          | . . .|  |           ,          |  |  . .|: . |       |   |   |   |         /:| . . .|  |\i ///          ///  |  |  . .|: . |       |   |   |   |          | . . .|  |:::八     r'ア ̄`ヽ       /::|  |  . .|: . |       |   |   |   |       i | . . :|  {::::::个:...   ∨     ノ    イ:::::}  |  . .|: . |       |   |   |   |       | | . .八  V斗ri:i:i:〕ト       ィ:〔:i:i:iTV  八   .|: . |       |   |   |   |       | | . . . :\ Vi:i:i:i:i:i:i:|. : j>--<. : .{: |:i:i:i:iV //   廴_|       |   |   |   |     r七i| . . . . : |\i:i:i:i:i:i:i:|: . : . : . : . : . : . :|:i:i:i:/i:i/    // /i:\       |   |   |   |     ∧ Ⅵ. . . . . :|:i:i:\i:i:i:i:|─-. : . : . : .-─|:/i:i:i:/    // /:i:i:i:i∧    |   | }}}} 京太郎「どこへ!? いやマジでどこ行くんだ!? 憧、憧ーーーーーーーーーーッ!!?」 722 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:08:08.02 ID:hYkl1xMEo …… ………… ……………… ダダダダダダダ...バタン!! ~憧の部屋~ 憧「――!」 ボフンッ 憧「~~~~~~~~~~っ!!///」ゴロゴロゴロゴロ ガバッ 憧「………………走ったから!」  そう、走ったから。  ロープウェイにも乗らずに。  山道を、坂道を、全力疾走したから。  だから、そのせいだ。  そのせいに決まってるんだ。  胸が、こんなにドキドキしてるのは。 724 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:33:48.88 ID:hYkl1xMEo  そうよ。  他に理由なんてないし。ないもん。  断じて、決して、神に誓って。  京太郎にときめいてなんて、ない。  京太郎にドキッとするとか、それこそ理由がない。  ちょっとデートしたくらいで好きになったりとか、ない。  ないないないないないないない。  そりゃ、別に、友達ではあるけど。  友情って意味の好意はあるけど。  でも、それ以上なんてありえない。 憧「――」チャリッ  こんな、ストラップくらいで好きになったりとか――  ないのに。 憧「……」ギュッ  もう、息は整ったのに。 725 名前:5月26日(日)[saga] 投稿日:2013/11/30(土) 03:35:51.27 ID:hYkl1xMEo #size(17){#aa{{{                 /. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : .\                /. : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : .ヽ             / : . / : . : . : . ,. : . : . : .i. : . : . : . : .ヽ . : ',           , 'ニ/. : .:,'. : . : . : . :i . : . : . : |. : . : . : . :、. :! : ._{_}ミ ヽ          // /. : . :i: .,' . : . ,':/! . : . : . : |. : . : . : . :.:i .|: イ:|  \: \ .      //  .,' /: . :| :| ./: . |/ | |:ノ: .ヽ、 |: . : . : . : .:.|: |r:{: .|   \: \ .    /:, '    /:/! : .:.| .|/| :|: | ,|イ : . : . : ト:、{ :i:.:| : i: |: |/| : |     \: `. 、     /:/     !:| | :i . :!:.∧.斗匕 圦 : . ト : | ヽ`{:十t}: } :|: !: i |        ヽ: . :i .   /:/     |:!|:| . |.:|:{x示㍉xミヽ\:{ ヽ{xテヤ示xV!: :!,'.: .| |        ヽ:.|   ,' :i      {! .|∧: :! 圦 {トイ_刈`    ´{トイ_刈 灯:.:| : . :| |         |.::|   | :|       |:i :ヾ|: :{ 乂こソ      乂こソ |: :!|. : . :l |          !: |   | :|        |.| . : |:从 :xx //////xx  | :|ノ . : . |:.|        |.::|   | :|       |l.|: . : |:.{ム "゙    '     ""゙  | :|: . : . : |: |      |:|   |: |      i| i!: :. :.|: |:.:ヽ.      __       イ:.|: |. : . : . :|: |        |.|   | :|      l|:.:| : . : | :|: .|: > .  ´ `   イ:.:..!.:|: | . : . : . |: |         |.::|   |: |     l|: . !.: . :..|: :i:.:|: . : r‐|`  -‐ ´ |入.:.|:.| :|. : . : . : l: |         !: |   | :|       l|: : |: : . : !_ l:_| _/ \    /   \j :!: . : . : . :|: |       |:|   |: |     |: : ,:|. : . : |ヽ{ |     /`Yバ      ノ/|. : . : . : . l: :|        ! :|   | :|    |:, イl: . : . .|   ヽr──ミ、__彡──y'  |. : . : . : :/ヽ:!     |:|   |: |   /  /. : . : .j    {    { }     } |: . : . :./   \      ! :|        「なんで……まだこんなにドキドキしてるのよ……」 }}}} 【TO BE CONTINUED...】 ---- #bold(){ 【須賀京太郎のステータスが更新されました!】  称号:ゲス時々イケメン&font(red){(new!)}  憧への印象:...→M(まったく)C(中学生は)S(最高だな!)   →楽しかったな、デート&font(red){(new!)} 【新子憧のステータスが更新されました!】  称号:アコスACT2&font(red){(new!)}  京太郎への印象...→黙れ   →……ストラップ、大事にする&font(red){(new!)} }

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