先生を探そう!

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540 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 00:39:46.20 ID:lIIsfHRno レジェンド「須賀くーん、ちょっとー」  部活中……というか牌磨き中、レジェンドに呼ばれた。  なんだなんだ。 京太郎「どうかしました?」 レジェンド「いやー、須賀くんもそろそろ牌を磨くのに飽きてきたんじゃないかと思ってさ。そこで――」 京太郎「え、別に飽きてませんよ? 小さな牌のひとつひとつをピカピカにしていく作業はえも言われぬ達成感が」 レジェンド「――飽・き・た・よ・ね?」ゴッ 京太郎「飽っきましたぁー!」ヒャッホーイ  そういうことにしておきたいらしかった。 レジェンド「オホン。そこでだ、今日から須賀くんにも本格的に麻雀を覚えてもらおうと思う!」 京太郎「マジすか!」  それは素直に嬉しい。 543 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:02:45.79 ID:lIIsfHRno レジェンド「マジマジ。ていうか遅くなっちゃってゴメンね、つい女子の世話ばかり焼いちゃって」 京太郎「気にしてませんよ」  ド素人が一人と経験者が五人。  どちらを優先して指導すべきかなんて明白だ。  なんせ目標は全国優勝らしいし。 レジェンド「ところで、こないだ渡した初心者用の教本は読んだ?」 京太郎「あ……じ、実は途中までしか……専門用語とかがサッパリで」 レジェンド「あはは、まあ最初はそうだよね。やっぱり人に教わるのが一番か」ウンウン 京太郎「じゃあ監督が教えてくれるんですか?」 レジェンド「んー、それでもいいけど……」  言葉が途切レジェンド、視線が雀卓へ動く。  そこで麻雀を打っているのが四人。  あぶれて、こちらの会話に聞き耳を立てながら冷や汗を流しているのが、一人。 レジェンド「憧ー」  その一人――新子さんは呼ばれた瞬間に身を強張らせ、そして油の切れた機械のような動きで振り返る。 憧「………………まさか?」 レジェンド「須賀くんに麻雀教えてあげて☆」 憧「いやぁあああああああああっ!!?」  悲鳴とか…… 547 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:22:31.69 ID:lIIsfHRno 憧「な、なんでよりにもよりにもよりにもよってあたしなのよ!?」  よりすぎではなかろうか。 レジェンド「だって暇そうだったし」 憧「暇じゃないわよ! みんなの打ち筋を見てるのも練習の一貫!」 レジェンド「そんな堅いこと言うなってー」 憧「ハルエがテキトー過ぎるのよっ!」  がるる、と唸る新子さん。  相変わらずの拒絶っぷりである。 京太郎「あのー監督、どうしても新子さんじゃないといけない理由ってあるんですか?」 レジェンド「理由? あるよ。だって――」 穏乃「ロン! 8000!」 玄「ずがーん!?」 レジェンド「――、っと」  ちょうど対局が終わったらしい。  穏乃の力強い発声がレジェンドの言葉を遮った。 553 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:38:29.82 ID:lIIsfHRno レジェンド「ちょうどいい。実際に見てみれば分かるよ」 京太郎「?」 レジェンド「おーい、みんな集合ー」  その一声に即座に反応したのが鷺森部長。  続いて穏乃、玄さん、宥さんと、俺達の周りに集まる。 玄「赤土さん、どうしたんですか?」 レジェンド「うん、実は今日から須賀くんにちゃんと麻雀を教えようと思うんだけどさ」 穏乃「おおっ、ついに京太郎も麻雀やるんだね!」 京太郎「まーな」 レジェンド「で、総合的な指導は私がやるんだけど、もっと細かいマンツーマンの指導をアンタらの誰かにお願いしようかなって」 宥「私達に……?」 灼「出来るかな」 レジェンド「それを確かめる為にも、今から交代で須賀くんに教えてみてよ。まずは玄から!」 玄「はいっ、おまかせあれ!」ムンッ 556 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:54:17.28 ID:lIIsfHRno 《松実玄の場合》 玄「ではでは、不詳この松実玄めが須賀くんの先生第一号を務めさせていただきます!」 京太郎「よろしくお願いします」ペッコリン 玄「よろしくね! とりあえず自動卓の方に行こっか」  とてとて移動。  卓につく。 京太郎「おお……これが雀卓」 玄「ふふ、はじめてだとワクワクするよね。じゃあ始めるよ」  牌がガーッて上がってサイコロがワーッて回って玄さんが諸々やってくれてありがとうございました(初心者特有のよく分かってなさ)。 玄「じゃあ、まず手元の牌を見ます」 京太郎「はい」  牌だけに。 玄「するとドラが来てくれてますね?」 京太郎「へ? いや来てませんけど」 玄「えっ」 京太郎「えっ」 564 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:06:27.85 ID:lIIsfHRno 玄「……」 京太郎「……?」  なにこの沈黙。  ドラってあれだろ。赤い5の牌と、山?で一枚だけめくれてるヤツの次の牌のことだろ。  手牌を確かめる……うん、ない。  隣に立つ玄さんを見上げる。 玄「………………」  なにその沈黙。  ていうか小刻みに震えてないか、よく見ると。 京太郎「あの、玄さん……?」 玄「………………ぉ」 京太郎「お?」 玄「おねーちゃああぁんどおしよおぉお!?」ブワッ 京太郎「ォオーイッ!!」 573 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:25:06.04 ID:lIIsfHRno  姉に泣きついたぞこの人!?  それを見た周りのみんなも「あーあ」とでも言いたげな顔してるし! レジェンド「やっぱ玄には荷が重かったかー」 穏乃「元気出してください玄さん! 生きてたらその内いいことありますよ!」 灼「ドンマイ」 憧「なにそのアバウトな励まし方……」  一方で宥さんは、しがみついて泣きじゃくる玄さんを優しく抱きしめていた。 玄「おねーちゃ……ぅうぅ~……」エグエグ 宥「大丈夫だよ玄ちゃん……玄ちゃんは一生懸命やったんだから、誰も玄ちゃんを責めたりしないよ」ポムポム  あ、甘やかし過ぎでは。 宥「それに、今からおねーちゃんが仇を取ってきてあげるからね」ギュッ 玄「ううっ……おねーちゃぁぁぁぁぁぁぁ」ギュウー  え? 仇? オレェ? 574 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:40:03.31 ID:lIIsfHRno 《松実宥の場合》 宥「す、須賀くんっ」キッ 京太郎「は、はい」 宥「く、玄ちゃんを泣かせちゃ……めっ」メッ  (結婚しなきゃ)  なにこの可愛い生き物。  俺が泣かせたわけじゃないとか釈明する気も起きない。  本人は妹の為に割と真面目に怒ってるのかもしれないけど、迫力がなさすぎて可愛い。 「ゴゴゴ」でなく「コ」に「゜」、即ち「コ゜コ゜コ゜」って感じだ。 宥「だから須賀くんには、玄ちゃんの分まで厳しく教えます……!」 京太郎「わーこわいよー」  ちょーかわいいよー。 583 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 03:33:26.38 ID:lIIsfHRno 宥「えと、まずさっきみたいな状態にします」 京太郎「します」  した。 宥「そ、そしたら手牌を見て?」 京太郎「はい」 宥「あったか~い牌が一杯あるよね?」 京太郎「あったか……え、なんですかそれ」 宥「えっ……?」  心底不思議そうな顔をされたので、もう一度自分の手牌を見る。  宥さんも覗き込む。 京太郎「こんな感じですけど……宥さんの言うあったかい牌って……?」 宥「………………ぁ」 京太郎「あ?」 宥「あったかくないの、ぃゃぁぁぁ……」プルプルプルプル 京太郎「ヲーーーーーウィ!!」 636 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 00:51:28.70 ID:sjkxy+xTo  一体どうしたことか。  俺の手牌を見た宥さんが突如として震え出した。  寒がりなのは知ってるけど、何故このタイミングで? 玄「おねーちゃあん!」バッ 宥「く、くろちゃー……」ブルブルブルブル  そこに飛び込んで来た玄さんが、宥さんをしっかと抱き締め温める。 玄「おねーちゃんありがとう! 私はもう平気だから無理しないで!」ギューッ 宥「ぁ……あったか~い」ポワーン  なんだこの姉妹。  今まで顔と胸ばかりに注目していたが(ゲス特有の観点)、結構な変わり者だったんだな…… 穏乃「宥さんもダメかー」 憧「なんとなく予想はしてたけどね。はぁ……」 レジェンド「んじゃ次は灼かな。頑張れ部長!」 灼「アラホラサッサー」ギチチッ  え、なにそのグローブ。 640 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 01:08:36.16 ID:sjkxy+xTo 《鷺森灼の場合》  抱き合う松実姉妹を部屋の隅の、火の点いていないストーブの前まで追いやって。  改めて鷺森部長が俺の横に立つ。 灼「よろしく」 京太郎「よろしくお願いします」ペッコリン  手順は省略。 灼「まず手元の牌を」 京太郎「見ます」 灼「主にピンズが」 京太郎「来てません」 灼「須賀くん」 京太郎「はい」 灼「これあげる」ピラッ 京太郎「はい?」  なにこれ。  なんかのチケットだ。 灼「うちのボウリング場のサービス券」 京太郎「も、物で誤魔化そうとしているッ!!!」  でも貰う。 651 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 01:34:39.77 ID:sjkxy+xTo 灼「ごめんハルちゃん、私の手に負える案件じゃなかった」 レジェンド「ぶっちゃけ分かってたけどね!」 憧「ぅう……これだからオカモチは……」 レジェンド「さて残りは」チラッ 穏乃「」ワクワク レジェンド「憧だけだね!」クルッ 穏乃「!?」ガーン 憧「……はあ、分かったわよ。あたししかいないならあたしがやるわよ」 穏乃「!!?」ガガーン レジェンド「お、やけに素直だね。どういう心境の変化?」 憧「ハルエのことだもん、どーしてもやらせるつもりなんでしょ?」 レジェンド「もち!」ニッ 玄「おもち!?」ガタッ レジェンド「座ってな」 玄「」ストン 654 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:08:06.92 ID:sjkxy+xTo 《新子憧の場合》 …… ………… ……………… 憧「――っていうわけで! 初心者のうちはあまり無闇に鳴かないように!」 京太郎「はいせんせー! 鳴くってなんだっけー!?」 憧「ポンとかチーのこと!」 京太郎「あー!」 憧「役はやりながら覚えればいいから! まずは! 面前で4面子1雀頭を作るのを意識して!」 京太郎「面前ってー!?」 憧「鳴かないこと! 面子と雀頭は分かるー!?」 京太郎「えーっと……面子が順番通りか同じの三つ! 雀頭が同じの二つだっけ!?」 憧「正解ー!」 京太郎「よっしゃー!」 京太郎「って遠いわ!!! なんで部室の端から指示出してんだよ!!!」ガーッ 憧「うぐぅ……」 656 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:35:50.77 ID:sjkxy+xTo  メガホンを持った新子さんが渋々とこちらにやって来る。  それを待つ間、俺は普通のテーブルに敷いた麻雀マットの上で牌を混ぜていた。 京太郎「あのなぁ新子さん。教えてもらう立場でこういうこと言うのもナンだけどさ。やり辛い」 憧「だ、だって……」 京太郎「だって?」 憧「……だって、麻雀の指導って割と体とか近付いちゃうし……」ゴニョ 京太郎「乙女か!」 憧「乙女よっ!」  そうでした。 京太郎「とにかく、大声で話し続けるのは疲れるだろ? お互い」 憧「ま、まあね……あの距離だと牌も見えづらかったし……」  だが近寄らない。  それが新子さんクオリティ。 657 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:59:32.46 ID:sjkxy+xTo 京太郎「ま、教え方自体はすげー分かりやすくて助かってるんだけどな」 憧「え、そ、そう?」 京太郎「おう! お陰で基礎は一通り覚えられたような気がする!」キリッ 憧「気がするって……」 レジェンド「ほほー、言ったね須賀くん?」 京太郎「え?」  声のした方を見る。  自動卓の傍らに立つレジェンドが怪しい笑みを浮かべていた。 レジェンド「それなら早速腕試しと行こうか?」  そう言って後ろへ目配せすると、対局が終わったばかりの卓から宥さんが立ち上がった。 憧「ちょ、ハルエまさか!?」 レジェンド「そのまさか。やっぱり最後は実戦でテストしてみなくっちゃね!」 658 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 03:36:13.32 ID:sjkxy+xTo 京太郎「は!? 今からですか!?」 レジェンド「鉄は熱い内に打てって言うでしょ?」  それ教師の間で流行ってるのか。  入学式当日に担任の先生にも言われたぞ。 憧「でも流石に早すぎるんじゃない? 須賀くん、まだ対局の流れとか覚えてないよ?」 レジェンド「そこは憧がサポートしてあげてよ。やってみて覚えるのが一番効率的なんだからさ」 憧「そうだけど……」  レジェンドと新子さんの会話を聞きながら、俺は俺で考える。  実戦、か。 京太郎「新子さん。俺やってみるよ」スッ 憧「す、須賀くん?」  目を丸くする新子さんの横を通り過ぎ、雀卓に向かう。 京太郎「どうせ俺はド素人。負けて失うものなんてないんだから、挑まなきゃ損だ!」 レジェンド「へぇ、いいこと言うじゃない!」ニッ 穏乃「よーっし、勝負だ京太郎!」 玄「全力でお相手します!」 灼「遺書の用意を忘れずに」 宥「が、がんばれ~」 京太郎「ウオオオいくぞオオオ!」  俺の勇気が世界を救うと信じて……! 661 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 03:51:08.82 ID:sjkxy+xTo …… ………… ………………  で、 玄「それロンです! ドララララララ18000!」ギャオーン 京太郎「」チーン  ボロッカスに負けた。 穏乃「うーん、なんか気持ち良くない感じだったね!」ズバァッ 玄「ちょっと縮こまっちゃってるかな?」ズバァッ 灼「皮が剥けてない」ズバァッ 宥「なまぬるい」ズバァッ 京太郎「」  男として大事なものがズタボロになった。  失うものなんてないなんて幻想だった。  せめてフォローが欲しくて新子さんを見た。 憧「………………///」カァァ  ……おや? 【TO BE CONTINUED...】
540 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 00:39:46.20 ID:lIIsfHRno レジェンド「須賀くーん、ちょっとー」  部活中……というか牌磨き中、レジェンドに呼ばれた。  なんだなんだ。 京太郎「どうかしました?」 レジェンド「いやー、須賀くんもそろそろ牌を磨くのに飽きてきたんじゃないかと思ってさ。そこで――」 京太郎「え、別に飽きてませんよ? 小さな牌のひとつひとつをピカピカにしていく作業はえも言われぬ達成感が」 レジェンド「――飽・き・た・よ・ね?」ゴッ 京太郎「飽っきましたぁー!」ヒャッホーイ  そういうことにしておきたいらしかった。 レジェンド「オホン。そこでだ、今日から須賀くんにも本格的に麻雀を覚えてもらおうと思う!」 京太郎「マジすか!」  それは素直に嬉しい。 543 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:02:45.79 ID:lIIsfHRno レジェンド「マジマジ。ていうか遅くなっちゃってゴメンね、つい女子の世話ばかり焼いちゃって」 京太郎「気にしてませんよ」  ド素人が一人と経験者が五人。  どちらを優先して指導すべきかなんて明白だ。  なんせ目標は全国優勝らしいし。 レジェンド「ところで、こないだ渡した初心者用の教本は読んだ?」 京太郎「あ……じ、実は途中までしか……専門用語とかがサッパリで」 レジェンド「あはは、まあ最初はそうだよね。やっぱり人に教わるのが一番か」ウンウン 京太郎「じゃあ監督が教えてくれるんですか?」 レジェンド「んー、それでもいいけど……」  言葉が途切レジェンド、視線が雀卓へ動く。  そこで麻雀を打っているのが四人。  あぶれて、こちらの会話に聞き耳を立てながら冷や汗を流しているのが、一人。 レジェンド「憧ー」  その一人――新子さんは呼ばれた瞬間に身を強張らせ、そして油の切れた機械のような動きで振り返る。 憧「………………まさか?」 レジェンド「須賀くんに麻雀教えてあげて☆」 憧「いやぁあああああああああっ!!?」  悲鳴とか…… 547 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:22:31.69 ID:lIIsfHRno 憧「な、なんでよりにもよりにもよりにもよってあたしなのよ!?」  よりすぎではなかろうか。 レジェンド「だって暇そうだったし」 憧「暇じゃないわよ! みんなの打ち筋を見てるのも練習の一貫!」 レジェンド「そんな堅いこと言うなってー」 憧「ハルエがテキトー過ぎるのよっ!」  がるる、と唸る新子さん。  相変わらずの拒絶っぷりである。 京太郎「あのー監督、どうしても新子さんじゃないといけない理由ってあるんですか?」 レジェンド「理由? あるよ。だって――」 穏乃「ロン! 8000!」 玄「ずがーん!?」 レジェンド「――、っと」  ちょうど対局が終わったらしい。  穏乃の力強い発声がレジェンドの言葉を遮った。 553 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:38:29.82 ID:lIIsfHRno レジェンド「ちょうどいい。実際に見てみれば分かるよ」 京太郎「?」 レジェンド「おーい、みんな集合ー」  その一声に即座に反応したのが鷺森部長。  続いて穏乃、玄さん、宥さんと、俺達の周りに集まる。 玄「赤土さん、どうしたんですか?」 レジェンド「うん、実は今日から須賀くんにちゃんと麻雀を教えようと思うんだけどさ」 穏乃「おおっ、ついに京太郎も麻雀やるんだね!」 京太郎「まーな」 レジェンド「で、総合的な指導は私がやるんだけど、もっと細かいマンツーマンの指導をアンタらの誰かにお願いしようかなって」 宥「私達に……?」 灼「出来るかな」 レジェンド「それを確かめる為にも、今から交代で須賀くんに教えてみてよ。まずは玄から!」 玄「はいっ、おまかせあれ!」ムンッ 556 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 01:54:17.28 ID:lIIsfHRno 《松実玄の場合》 玄「ではでは、不詳この松実玄めが須賀くんの先生第一号を務めさせていただきます!」 京太郎「よろしくお願いします」ペッコリン 玄「よろしくね! とりあえず自動卓の方に行こっか」  とてとて移動。  卓につく。 京太郎「おお……これが雀卓」 玄「ふふ、はじめてだとワクワクするよね。じゃあ始めるよ」  牌がガーッて上がってサイコロがワーッて回って玄さんが諸々やってくれてありがとうございました(初心者特有のよく分かってなさ)。 玄「じゃあ、まず手元の牌を見ます」 京太郎「はい」  牌だけに。 玄「するとドラが来てくれてますね?」 京太郎「へ? いや来てませんけど」 玄「えっ」 京太郎「えっ」 564 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:06:27.85 ID:lIIsfHRno 玄「……」 京太郎「……?」  なにこの沈黙。  ドラってあれだろ。赤い5の牌と、山?で一枚だけめくれてるヤツの次の牌のことだろ。  手牌を確かめる……うん、ない。  隣に立つ玄さんを見上げる。 玄「………………」  なにその沈黙。  ていうか小刻みに震えてないか、よく見ると。 京太郎「あの、玄さん……?」 玄「………………ぉ」 京太郎「お?」 玄「おねーちゃああぁんどおしよおぉお!?」ブワッ 京太郎「ォオーイッ!!」 573 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:25:06.04 ID:lIIsfHRno  姉に泣きついたぞこの人!?  それを見た周りのみんなも「あーあ」とでも言いたげな顔してるし! レジェンド「やっぱ玄には荷が重かったかー」 穏乃「元気出してください玄さん! 生きてたらその内いいことありますよ!」 灼「ドンマイ」 憧「なにそのアバウトな励まし方……」  一方で宥さんは、しがみついて泣きじゃくる玄さんを優しく抱きしめていた。 玄「おねーちゃ……ぅうぅ~……」エグエグ 宥「大丈夫だよ玄ちゃん……玄ちゃんは一生懸命やったんだから、誰も玄ちゃんを責めたりしないよ」ポムポム  あ、甘やかし過ぎでは。 宥「それに、今からおねーちゃんが仇を取ってきてあげるからね」ギュッ 玄「ううっ……おねーちゃぁぁぁぁぁぁぁ」ギュウー  え? 仇? オレェ? 574 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 02:40:03.31 ID:lIIsfHRno 《松実宥の場合》 宥「す、須賀くんっ」キッ 京太郎「は、はい」 宥「く、玄ちゃんを泣かせちゃ……めっ」メッ  (結婚しなきゃ)  なにこの可愛い生き物。  俺が泣かせた訳じゃないとか釈明する気も起きない。  本人は妹の為に割と真面目に怒ってるのかもしれないけど、迫力がなさすぎて可愛い。 「ゴゴゴ」でなく「コ」に「゜」、即ち「コ゜コ゜コ゜」って感じだ。 宥「だから須賀くんには、玄ちゃんの分まで厳しく教えます……!」 京太郎「わーこわいよー」  ちょーかわいいよー。 583 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/13(土) 03:33:26.38 ID:lIIsfHRno 宥「えと、まずさっきみたいな状態にします」 京太郎「します」  した。 宥「そ、そしたら手牌を見て?」 京太郎「はい」 宥「あったか~い牌が一杯あるよね?」 京太郎「あったか……え、なんですかそれ」 宥「えっ……?」  心底不思議そうな顔をされたので、もう一度自分の手牌を見る。  宥さんも覗き込む。 京太郎「こんな感じですけど……宥さんの言うあったかい牌って……?」 宥「………………ぁ」 京太郎「あ?」 宥「あったかくないの、ぃゃぁぁぁ……」プルプルプルプル 京太郎「ヲーーーーーウィ!!」 636 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 00:51:28.70 ID:sjkxy+xTo  一体どうしたことか。  俺の手牌を見た宥さんが突如として震え出した。  寒がりなのは知ってるけど、何故このタイミングで? 玄「おねーちゃあん!」バッ 宥「く、くろちゃー……」ブルブルブルブル  そこに飛び込んで来た玄さんが、宥さんをしっかと抱き締め温める。 玄「おねーちゃんありがとう! 私はもう平気だから無理しないで!」ギューッ 宥「ぁ……あったか~い」ポワーン  なんだこの姉妹。  今まで顔と胸ばかりに注目していたが(ゲス特有の観点)、結構な変わり者だったんだな…… 穏乃「宥さんもダメかー」 憧「なんとなく予想はしてたけどね。はぁ……」 レジェンド「んじゃ次は灼かな。頑張れ部長!」 灼「アラホラサッサー」ギチチッ  え、なにそのグローブ。 640 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 01:08:36.16 ID:sjkxy+xTo 《鷺森灼の場合》  抱き合う松実姉妹を部屋の隅の、火の点いていないストーブの前まで追いやって。  改めて鷺森部長が俺の横に立つ。 灼「よろしく」 京太郎「よろしくお願いします」ペッコリン  手順は省略。 灼「まず手元の牌を」 京太郎「見ます」 灼「主にピンズが」 京太郎「来てません」 灼「須賀くん」 京太郎「はい」 灼「これあげる」ピラッ 京太郎「はい?」  なにこれ。  なんかのチケットだ。 灼「うちのボウリング場のサービス券」 京太郎「も、物で誤魔化そうとしているッ!!!」  でも貰う。 651 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 01:34:39.77 ID:sjkxy+xTo 灼「ごめんハルちゃん、私の手に負える案件じゃなかった」 レジェンド「ぶっちゃけ分かってたけどね!」 憧「ぅう……これだからオカモチは……」 レジェンド「さて残りは」チラッ 穏乃「」ワクワク レジェンド「憧だけだね!」クルッ 穏乃「!?」ガーン 憧「……はあ、分かったわよ。あたししかいないならあたしがやるわよ」 穏乃「!!?」ガガーン レジェンド「お、やけに素直だね。どういう心境の変化?」 憧「ハルエのことだもん、どーしてもやらせるつもりなんでしょ?」 レジェンド「もち!」ニッ 玄「おもち!?」ガタッ レジェンド「座ってな」 玄「」ストン 654 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:08:06.92 ID:sjkxy+xTo 《新子憧の場合》 …… ………… ……………… 憧「――っていう訳で! 初心者のうちはあまり無闇に鳴かないように!」 京太郎「はいせんせー! 鳴くってなんだっけー!?」 憧「ポンとかチーのこと!」 京太郎「あー!」 憧「役はやりながら覚えればいいから! まずは! 面前で4面子1雀頭を作るのを意識して!」 京太郎「面前ってー!?」 憧「鳴かないこと! 面子と雀頭は分かるー!?」 京太郎「えーっと……面子が順番通りか同じの三つ! 雀頭が同じの二つだっけ!?」 憧「正解ー!」 京太郎「よっしゃー!」 京太郎「って遠いわ!!! なんで部室の端から指示出してんだよ!!!」ガーッ 憧「うぐぅ……」 656 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:35:50.77 ID:sjkxy+xTo  メガホンを持った新子さんが渋々とこちらにやって来る。  それを待つ間、俺は普通のテーブルに敷いた麻雀マットの上で牌を混ぜていた。 京太郎「あのなぁ新子さん。教えてもらう立場でこういうこと言うのもナンだけどさ。やり辛い」 憧「だ、だって……」 京太郎「だって?」 憧「……だって、麻雀の指導って割と体とか近付いちゃうし……」ゴニョ 京太郎「乙女か!」 憧「乙女よっ!」  そうでした。 京太郎「とにかく、大声で話し続けるのは疲れるだろ? お互い」 憧「ま、まあね……あの距離だと牌も見えづらかったし……」  だが近寄らない。  それが新子さんクオリティ。 657 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 02:59:32.46 ID:sjkxy+xTo 京太郎「ま、教え方自体はすげー分かりやすくて助かってるんだけどな」 憧「え、そ、そう?」 京太郎「おう! お陰で基礎は一通り覚えられたような気がする!」キリッ 憧「気がするって……」 レジェンド「ほほー、言ったね須賀くん?」 京太郎「え?」  声のした方を見る。  自動卓の傍らに立つレジェンドが怪しい笑みを浮かべていた。 レジェンド「それなら早速腕試しと行こうか?」  そう言って後ろへ目配せすると、対局が終わったばかりの卓から宥さんが立ち上がった。 憧「ちょ、ハルエまさか!?」 レジェンド「そのまさか。やっぱり最後は実戦でテストしてみなくっちゃね!」 658 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 03:36:13.32 ID:sjkxy+xTo 京太郎「は!? 今からですか!?」 レジェンド「鉄は熱い内に打てって言うでしょ?」  それ教師の間で流行ってるのか。  入学式当日に担任の先生にも言われたぞ。 憧「でも流石に早すぎるんじゃない? 須賀くん、まだ対局の流れとか覚えてないよ?」 レジェンド「そこは憧がサポートしてあげてよ。やってみて覚えるのが一番効率的なんだからさ」 憧「そうだけど……」  レジェンドと新子さんの会話を聞きながら、俺は俺で考える。  実戦、か。 京太郎「新子さん。俺やってみるよ」スッ 憧「す、須賀くん?」  目を丸くする新子さんの横を通り過ぎ、雀卓に向かう。 京太郎「どうせ俺はド素人。負けて失うものなんてないんだから、挑まなきゃ損だ!」 レジェンド「へぇ、いいこと言うじゃない!」ニッ 穏乃「よーっし、勝負だ京太郎!」 玄「全力でお相手します!」 灼「遺書の用意を忘れずに」 宥「が、がんばれ~」 京太郎「ウオオオいくぞオオオ!」  俺の勇気が世界を救うと信じて……! 661 名前:4月19日(金)[saga] 投稿日:2013/07/14(日) 03:51:08.82 ID:sjkxy+xTo …… ………… ………………  で、 玄「それロンです! ドララララララ18000!」ギャオーン 京太郎「」チーン  ボロッカスに負けた。 穏乃「うーん、なんか気持ち良くない感じだったね!」ズバァッ 玄「ちょっと縮こまっちゃってるかな?」ズバァッ 灼「皮が剥けてない」ズバァッ 宥「なまぬるい」ズバァッ 京太郎「」  男として大事なものがズタボロになった。  失うものなんてないなんて幻想だった。  せめてフォローが欲しくて新子さんを見た。 憧「………………///」カァァ  ……おや? 【TO BE CONTINUED...】

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