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No.25


そこは何もない空間。
巨大なステンドグラスと人形の他は何もない、ガラスで囲われた深海の様な空間。

そこで我妻由乃は死にかけていた。

止めを刺そうと、人形は仰向けに倒れた由乃に近づく。

天野雪輝を追い扉を潜った先で人形に襲われ、朦朧とする意識の中で由乃が考えていたのは、自分の心配ではなく、雪輝の安否だけだった。

「大丈夫かな、ユッキーもこいつに襲われてないかな……。
 私、絶対ユッキーを守るよ。何を犠牲にしても……」

混濁した意識は、これから自分の命が失われることにも気付けない。
傍から見れば滑稽極まる姿だ。その呟きは狂人の様な、だが聖人の様な矛盾する声色だった。

『それは自分も含めてか?』

「うん……。私はユッキーが生き残ればそれでいい」

『誰を殺そうともか?』

「そうよ……。ユッキーは私を利用してくれればいいの」

唐突に聞こえた声を疑問に思わず、否、疑問に思う思考力も無いまま由乃は返答する。

『本当に、それでいいのか』

続いて語られる質問は穏やかな口調ではあったが、決して嘘を許さぬ響きがあった。

「……………………………………………………………………………………………………………………い……や……」

長い沈黙の果てに、言葉は由乃の涙と共に搾り出された。

「私だけが死ぬのは嫌、生き残るのも嫌よ!
 “また”失敗するのは嫌! 私は絶対ユッキーと結ばれるわ!
 私とユッキーだけが幸せになるのよっ!!」

『もっとだ。もっと……お前の本心を聞かせろ』

「でも分かってるのよ! 最後まで二人だけ生き残っても、ユッキーはきっと“前”みたいに私を殺せないわ!
 そして最後には聖杯に裏切られる! 聖杯もどうせ■■■みたいに不完全な力しか持ってないんでしょ!?
 それでもユッキーに褒めてもらえるなら、誰だって何人だって、■■だって殺せるし殺したけど、本当は、本当は――――――!!」

「何もかも無かったことにしたい!
 ■■■を手に入れてもユッキーを■■■■■ない、■■に移動しても世界の滅亡まで■■■するだけの、私の運命を壊したい! 
 未来日記のサバイバルゲームを壊したい! この殺し合いだって壊したい!
 パパとママを殺した私を消して、分かり合って仲良くなって、殺し合いなんか無くなって、私とユッキーが必ず結ばれる。
 そんな“機械仕掛けの神”が創ったような明るい未来が欲しいのよっ!!」

それは身勝手で矛盾する、だが純粋な心の叫び。

そして今、魂の慟哭は運命を歪め、一つの奇跡を生む。


由乃の叫びを無視し、人形が手を振り上げた瞬間、何かが人形に向かって射出される。

高速で撃ち出されたそれは、人形を四つ身に斬り裂いた。

「そうだ……それでいい」

いつの間にか部屋の中央には、黄色い肌、赤い短髪に茶色くうるんだ左目を持つ男がいた。
身体には喉元から臍下まで縦に、胸を横に十字を切る大きな腑分け跡がある。
掌からは先ほど何かを発射したためか、血が滴り落ちていた。

「綺麗事しか言わないお人形さんに用はねえ。
 醜い本音でも全てさらけ出してこそ、オレのマスターとなるに相応しい」

サーヴァントはマスターの精神、魂に導かれ、召喚される。
我妻由乃の魂の慟哭に呼応したのは、同じ願望を持つ男。
記憶も精神も変貌し、別人と成り果ててもなお求める望み。

『自分と同じ存在の伴侶を得る。新しい未来を掴む』

それがこのサーヴァントの望みだった。

「殺し合いを無くすために、殺し合いに身を投じる。世界の滅亡を防ぐために、世界を壊す。
 自分のために自分を消す、か。お前も中々狂ってるな。
 いいだろう、壊すのはオレの生業だ。このオマケの様な人生も、また随分と楽しめそうだ」

地に倒れたままの由乃に、サーヴァントが話しながら近づく。
由乃は身を起こそうとしたが、右手の令呪が痛みだし、限界に近づいた身体が思考をシャットダウンさせようとする。

「オレはサーヴァント・アーチャー。真名はオレも知らねえ。
 ジョン=ドゥとでも呼んでくれ」

その言葉を聞き取るのを最後に、由乃は意識を手放した。


【No25 マスター:我妻由乃@未来日記】
【サーヴァント:アーチャー(ジョン=ドゥ)@エンバーミング】




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