「……う~~ん…う~~ん……」

目の前の少年は先程からただ頭を抱えて呻り続けている。

『……ふむ』

それを眺めながらアーチャーのサーヴァントは考える。
彼は召喚された時点でマスターについての知識を
ある程度聖杯から提供されている。
つまり、少年が悩む理由も彼には既に分かっているのである。

「……う~~ん…う~~ん……」

だが、それでも彼が少年に手を差し伸べる事はしない。
少年が悩むのなら、それは少年が自分で答えを導き出そうとしているという事。
ならば彼はそれを黙って見守るだけである。

「……う~~ん…う~~ん…ハッ!?
 こ、ここは何処?
 僕は何でここに居るの!?」

周囲の変化にすら気づかないほどに少年は思考に埋没していたようだ。
そこまで来て初めて彼は少年に手を差し伸べる。
それは答えとは無縁の現状の把握を求めたから。
現界し、少年の前へと姿を現す。

「おや? 気がついたようだね」

「あ、あなたは誰!?」

唐突に声をかけてきた彼に少年は驚き、身構える。
その警戒を解くように彼は温和な微笑を浮かべ、
少年に自己紹介する。

「私かい? 私の名はウッドロウ。
 アーチャーのサーヴァントに属する只の弓使いに過ぎないよ」

恭しく頭を下げるウッドロウにつられて少年も思わず会釈する。
そして、頭を上げた少年はウッドロウの言葉に首を傾げる。

「で、そのウッドロウは何でここに居るの?
 というか、ここは何処なの?」

「ハハハッ、本当に深く考えていたようだね。
 ここは聖杯が作り出した一時的な仮想空間。
 君や私がここに居る理由は私が説明するよりも、
 むしろ君の方が分かっているんじゃないかい?」

少年は困惑した様子を浮かべつつ、
思い当たる事があったのかハッとした様子でウッドロウを見つめる。

「僕が僕を知りたかったから?」

「それが君の願いなのだろう?」

ウッドロウの言葉に少年は黙って頷く。
だが、その表情は暗く沈んでいる。

「段々思い出してきた。
 僕は結局一人ぼっちであそこに帰ったんだ」

ウッドロウは答えない。
少年は独白を続ける。

「ずっと考えてたんだ。
 『僕は何なんだろう?』って。
 でも結局、何も分からなかった。
 僕は最初から誰でもなかったんじゃないかって」

「だから、願ってしまったんだね」

「……うん」

少年は項垂れる。
自分が何なのか?
そういう根本的な疑問に対しての葛藤は
ウッドロウも深く理解している。
だからこそ、自分がこの少年のサーヴァントに選ばれたのだろう。

「答えを求める為に聖杯が欲しいかい?」

少年はブンブンと首を横に振る。

「本当は分かんない。
 でも前にナナちゃんが言ってたんだ。
 『悪い事しちゃ駄目だよ』って。
 僕は自分が何なのか知りたいけど、
 その為に悪い事するのは違うと思う…」

「ならば、君は如何するんだい?」

その言葉にも少年は首を横に振る。

「……分かんない。
 ねぇ、僕はどうしたらいいの?」

少年が縋る様な目でウッドロウに訴えかける。

「考える」

「え?」

ウッドロウの言葉に少年は目を丸くする。

「そう考えて、考えて、ひたすら考えぬく」

「それでも答えが出なかったら?」

「もっと考える、答えが出るまでね」

ウッドロウの答えに少年は感じるものがあったのだろう、
目を輝かせてウッドロウの手を握る。

「それでもいいの!」

「あぁ、君の答えが何であれ、
 私は君の答えを祝福する。
 だから最善の答えが見つかるまで
 私も協力させて貰うよ」

ウッドロウの微笑みに少年は抱きついて、
感情を露わにする。

「お師様と呼ばせて欲しいクマ~!!」

「フフッ、随分と変わった弟子が出来てしまったね」

ウッドロウは考える。
彼はこの少年の“真実”を知っている。
何者なのだろうかと悩む何者でもない存在。
空虚、空洞、虚無。
本来ならば在る筈の無いモノ。
だが、そこに確かに魂はある。
産まれいでし者を否定する権利は誰にもない。
願う事ならば、
この純真な魂の持ち主に
確かな答えが得られますよう。

自分の願いは、

『答えに迷う者の導きに』

【参加者No.8 クマ@P4】
【サーヴァント:アーチャー(ウッドロウ・ケルヴィン)@Tales of Destiny】

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