No.16



あ……ありのまま、今起こった事を話すぜ!!

私は「いつものようにネトゲをしている途中で寝落ちしてしまい
目が覚めたと思ったらバトルロワイアルに参加させられていた」!!

何を言ってるのか分からないと思うけど、私にも何を言ってるのかわからねー……
頭がどうにかなりそうだった……

明晰夢だとかドッキリカメラだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ……


まるで吸血鬼に時間停止を仕掛けられたフランス人のような台詞を漏らしながら、
少女――――泉こなたは自分の身に起きた状況を整理していた。

先の独白の通りPCを前にして眠りに落ちてしまい、気が付いてみればこの有様。
はっきり言って普通ではありえない状況である。
自他ともに認める生粋のオタクであるこなたにとってもこのようなシチュエーションはアニメや
漫画などで見慣れたものではあったが、流石に自身が巻き込まれるのは想定外だった。

さらに困惑しているうちに正式に参加者扱いにされてしまい、とりあえず言われるがままに扉を
潜ってみたものの、目の前に広がった光景は“どこかの森の中”としか言いようがない物だった。


気を落ち着かせるために木陰に座り込み、改めてこなたは思考を巡らせていた。
彼女には先ほどから妙に気になっていた事があったのである。

「令呪にサーヴァントに聖杯戦争、か……。な~んかどっかで聞いた事あるんだよねぇ……」
目覚めた際にこのバトルロワイアルについて説明を行った神父(何故か麻婆豆腐が好きそうな人物
だなぁと思ったが、それは一端置いておく)が発言した単語のいくつかを思い出したこなたは、
初めて聞いたはずだというのにどういう訳かその単語に心当たりがあるのを感じていた。
加えて言うならその単語の意味もなんとなくだが理解できていた。

だが『どこで知ったのか』を思い出そうとすると何故か必ず頭の中に霞がかかったかのようになって
しまう為、それ以上は情報を引き出すことはできなかった。
「(ま、まさかこのトシで既にボケ始めたなんて事は……いやないない! 私まだ若手の現役大学生だよ?)」
ふと浮かんだ嫌な考えを振り払いつつ、これ以上は埒が明かないと判断してこなたは一端その
疑問を片隅に置く事にした。

「それにしても、どんな願いも叶える聖杯か……」
この戦いの参加者の最終目的ともいえる願望機の名を口にするこなた。
どんな願いも叶える。
その言葉を聞き、己が欲望を成就しようと戦いに赴く決意を固める者達は少なくない。
誰しも叶えたい望みというのは少なからず存在するからである。
そして御多分に漏れず彼女も本格的に参加する決意を―――――――


「はっきり言って胡散臭すぎるよね、正直」
固めずに疑いにかかってきた。


「だいたいこういうタイプのロワ系作品で大抵は『参加者をその気にさせる為の釣りアイテム』的な
ポジションで出てくるよね、何でも願いが叶う○○って。しかもいざ勝ち抜いてみたら実はそんな物
なかったり、あってもラスボスが野望を叶える為の道具だったりするのがオチだもんねぇ」

繰り返し書くが彼女は自他ともに認める生粋のオタクである。
普段からこのようなストーリーの作品も当然見慣れている事もあり、普通なら飛びつくであろう景品を
鵜呑みにするという選択肢を取る事はなかったのであった。

「それにきっと願いを叶えられても多分ロクな事ないよね。
『大金が欲しい』とか願ったら家族が死んで保険金が下りるとか、
『誰かを生き返らせてくれ』とか願ったらゾンビになって復活してくるとか、
願いを叶えたら道具に穢れが溜まって邪悪なモンスターが蘇るとか、
そんな感じの事が起きる可能性の方が高いよきっと」

そしてダメ押しともいえる一言をついでに言い放った。
「ぶっちゃけあっさり騙されて欲しがる人の気が知れないよね、やっぱり」


この場に聖杯を求めて闘う決意を持った者達がいれば、果たして彼女はどうなっていた事だろうか。


そこまで口にして『やる気を出してこの戦いに参加しても意味はない』とオタ的な考察で
結論付けたこなたは、続けて今後の身の振り方を思案し始めた。
「ロワには乗らない事にしたものの……このまま黙ってても意味ないからなぁ。
やっぱここは反抗派のお約束として『戦いを止めつつ協力者を集めて脱出する』
のが一番いいんだろうけど……」

とはいえ自分一人の力ではたかが知れているのは十分理解している。
普通の人よりは腕っぷしに多少の自信はあるものの、この場にどのような人間が呼ばれたのか
分からない以上油断は禁物である。
もし仮に参加者に出会ったとしても、相手が乗っていた場合自分だけではなすすべがない。

“頼むからこなたはオレより先に死なないでおくれ―――”
どこからか父の声が聞こえてきたような気がしたが、それは一端避けておく事にした。

とにかくまずは自分を助けてくれる者が必要だ。
そこまで考え、こなたはふと自分の右手の甲に視線を向けた。
その手に刻まれた令呪が、まるで何かに反応するかのように熱を帯びているのに気付いたのだ。
令呪は自身のサーヴァントを従わせるための物、すなわち―――――
それに気付くとほぼ同時に背後に人の気配を感じたこなたが視線を戻してみると。

「―――初めまして。ええと、君が俺のマスターかい?」
目の前には一人の青年が姿を現し、自分へと問いかけていた。


ほどなくして二人は互いに素性を明かしあい、情報交換を兼ねて会話を始めた。
現れた青年は火野映司と名乗り、自身をライダーのクラスを持つこなたのサーヴァント
だと明かした。
見た目はエスニック調の服装をしたごく普通の日本人男性だったため、こなたも当初は
半信半疑にならざるを得なかったが、話によれば映司は自身の宝具を使う事で
『仮面ライダーオーズ』と呼ばれる姿に変身する事が可能なのだという。

また、こなたと同様に映司もまたこの戦いには否定的だった。
とはいえ彼もこなたのようにオタ的視点による疑りがあった訳ではもちろんない。
「……火野さんは、何か聖杯で叶えたい願いとかないの?」
「俺、今まで世界中を旅して回ってきたけど、何も欲しがってない人なんていなかった。
そう思うことが生きるのに必要な国もあったし、だから欲しいって思うことは悪いことじゃない。
それはいいんじゃないかなって思う。
でも、その欲望を叶えようとしたせいで関係ない人達が傷つくのは間違ってると思うんだ。
俺が今叶えたい願いがあるとすれば、そんな人達を助けるために手を伸ばしてあげること。
だから俺はこの戦いを止めたいと思ってる」

それは映司の本心からの言葉だという事を、こなたはしかと感じていた。
恐らく彼は自分には想像もつかない人生を歩んできたのであろうと。
「だからこなたちゃん―――俺に、力を貸してくれるかい?」
「火野さん……」
「ん?」
「……それ、どっちかっていうとマスターの私が先に言う台詞なんだけどなぁ?」
どちらからともなく笑いがこぼれていた。

「さてと、こうしてても仕方ないしね。早速行動開始しますか」
二人で話し合った結果、まずは情報収集が第一という事で周囲の散策を行う事となった。
「だったら任せて。いい物があるから」
それを聞いた映司はこなたを呼び止め、おもむろにその場に手をかざした。
シュゥゥゥゥン……
すると二人の目の前の空間が歪み、大型の物体が姿を現した。
何かそれっぽい魔法道具が現れるのかと期待するこなただったが―――

「って、ただの自販機じゃん!! こんなので一体どうすんのさ?」
それはどう見ても変わった装飾が施された黒色の自動販売機だった。
「確かにそうなんだけど……まあ見てて」
至極当然のツッコミを入れるこなたをなだめつつ、映司は懐から銀色のメダルのようなものを
1枚取り出し、自販機に投入する。
だが映司が押したのは缶飲料を購入するような上部のボタンではなく中央部の別のボタン。
ガシャン、ガシャン!!
すると自販機は即座にその姿を変形させはじめ、次の瞬間には自販機ではなく一台のバイクが
目の前に鎮座していたのだった。
「おおおっ! 変形した! 何これなんかカッコイイ!!」
「『疾走する騎馬の自販機(ライドベンダー)』、これも俺の宝具の一つなんだ」
まさかの変形に目を輝かせるこなたを見ながら映司は車両に収納されていたヘルメットの一つを
彼女に手渡し、乗り込むように促した。
「よーし、それじゃ我がサーヴァント・ライダー! 行こうか!!」
「了解、マスター!」
こなたの声を受けると同時に鋼の騎馬は動き出し、深き森を抜けるべく音を上げ駆けだした。

かくして、一人の平凡な少女と欲望の力を秘めたメダルの王たるサーヴァント。
奇妙な組み合わせの二人の物語が始まるので―――――

「ああそうだ、大事な事忘れてた!」
「えっ、何々!?」
「……もし街とかがあったら、明日のパンツだけでも手に入れないとな……」
「……それ今心配する事なの?」

―――――始まるのはもう少し先であろうか。

【参加者No.16 泉こなた@らき☆すた】
【サーヴァント:ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】




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