No.14


「くそっ、一体どうなってんだ?
 俺、さっきまでミス研の部室でパソコンいじってたはずだよな……」

少年、金田一一は「柳洞寺」と書かれた山門の前で頭を掻きながら
この殺し合い、聖杯戦争とやらに呼ばれる直前の記憶を必死に手繰ろうとしていた。

「確か、ネットやってる最中にいきなり変なサイトに飛ばされて、
 そしたら急に画面が光って……んで、あの教会にいたんだよな」

金田一は名探偵として知られた彼の祖父と同じように
これまで多くの殺人事件を持ち前の推理力によって解決してきた。
その中で、殺人の罪を着せられそうになったり、背後から鈍器で殴られ雪山に
放り出されたり、猟銃で腹部を撃たれる等、多くの危機にも直面してきた。
しかし、今回は、どこか今までの事件とは性質が異なるように思える。

「とにかく、情報を集めない、と……?」

ふと、自分の右手の甲を見ると、妙な紋様が刻まれていた。
そういえばあの神父は、これをサーヴァントを従える令呪だと
言っていなかったか………?

「ふむ、どうやらおぬしがわしのマスターのようだのう」
「えっ!?」

突然、声を掛けられ、慌てて金田一は周囲を見渡した。
しかし、ぐるりと周りを見てみても、声の主は見当たらない。

「どこを見ておる?わしはここだ、ここにおる」
「いや、どこだよ……ってそこかよ!?」

再度声を掛けられ、金田一はようやく声の主を見つけた。
彼が上を見上げると、そこには木の枝に腰掛ける少年がいた。
少年は「よっ」という声とともに地面に飛び降りると、
無造作に金田一に歩み寄ってきた。
金田一から見て、少年の出で立ちはとても奇妙なものだった。
背丈は金田一よりも幾分低く、頭には触角のようなものがついた白い頭巾を被り、
無駄に長い陣羽織に無駄に大きな手袋に有り得ないほど長い靴など、何というか、
全体的に着膨れした服装である。

「自己紹介が必要だのう。わしはライダーのサーヴァント。真名を太公望という」

見かけのわりにどうも年寄りじみた喋り方だなと思いつつ、金田一もとりあえず自己紹介をすることにした。

「あ、ああ。俺は金田一一。不動高校の二年生なんだ、よろしく」

「うむ、おぬしの事も聖杯から与えられた知識で知っておる。おぬしがここに来る直前にいかがわしい画像をダウンロードしようとしていたこともな」

「んぐっ……!ほ、放っとけよ!大体、そんなんでいきなりこんなとこに呼ばれるなんて思わないだろフツー!?しょうがないだろ、俺だって男なんだから!」

「そりゃまあそうだが……。だったらおぬし、何故教会の扉を潜ったのだ?」

「い、いや、あの時は夢心地だったっていうか、夢なら扉を抜ければ醒めると思ってたっていうか……」

マスターのあまりに情けない参戦の経緯に、ライダーは露骨に大きなため息を吐いた。

その態度に、思わず金田一はむっとした表情になったが、同時に、いつの間にか身体の緊張が解れている事に気づいた。
どうやら気づかない内にガチガチに緊張していたらしい。

「それで?おぬしはもう聖杯戦争に参加してしまった訳だが、これから先どうするつもりなのだ?」

気を取り直したのか、ライダーがこの先の方針について尋ねてきた。
しかし金田一としては、未だ現実感が持てない、というのが偽らざる本音だった。

「その……夢とかじゃないんだよな?本当に、今から殺し合いが始まるんだよな?」

「そうだ。厳密にはもう始まっていると言うべきだがのう」

夢なら醒めてほしい、という一縷の希望はすげなく否定された。
金田一自身、この一連の超常的な現象の数々についていけない部分はあるものの、一方で今のこの状況が紛れもない現実であることを多くの難事件を解決してきた探偵としてのある種の直感から受け入れ始めていた。
何より、自分が今見ている光景が、木々の匂いが、風の感触が全て夢の産物だとは流石に思えなくなってきていたことも大きい。
認めよう、この聖杯戦争という名の殺人ゲームが、今、現実に起こっていることなのだと。
だからこそ、決断する。

「なあ、ライダー。こうして呼ばれて来たって事はさ、お前にも聖杯っていうので叶えたい願いがあるんだよな?」

「まあ、聖杯戦争に召喚される英霊というのは大体そういう者が多いのう」

「でも、ごめん!俺は、自分の願いのために人を殺すことなんてできない!そんな事したら、二度とジッチャンに顔向けできねえ!
勝手だとは思うけど、頼む!この殺し合いを止めるために、俺に力を貸してくれ!」

深々と頭を下げながら、一気に捲し立てる。
目の前のサーヴァントに罵倒されることを覚悟しながら。

「よいぞ」

「……へ?」

返ってきた答えは、何と快諾であった。

「ええ!?いや、だってお前今、叶えたい願いがあるって言ったとこだろ!?」

「それは他の英霊の話であって、わしがそうだとは一言も言っておらんぞ。
むしろこれで得心がいった。何故わしがおぬしに召喚されたのか、その理由がな。
知識としてマスターの事を知ってはいても、こういう事は直接話さなければ分からんもんだからのう」

呆気にとられる金田一を尻目に、満足そうに頷くライダー。
しかし、願いが無いというなら一体何故召喚に応じたのか。
それが金田一にはわからなかった。

「……その、ライダーはそれで良いのか?」

「うむ。自分で言うのも何だが、わしは物欲に乏しい男だからのう。
 もし、わしに願いがあるとするならば、それはおぬしと同じであろう。
 何せ、サーヴァントはマスターの性質に見合った者が召喚されるのだからな。
 そういう訳で、よろしく頼むぞ、金田一」

そう言って、ライダーは右手を差し出した。
まだわからない事だらけだが、自分の中に湧き上がる彼の気持ちに報いたい、という心は本物だろうと思えた。
そして、金田一もまた右手を差し出し、握手を交わした。

「……ああ!俺の方こそよろしく頼む、ライダー!」

ここに、数々の難事件を解決した少年探偵と、歴史に名を馳せた名軍師の戦いの幕が開いた。
そんな主従を祝福するかのように、柳洞寺の山門に一陣の風が吹いた。


【参加者No.14 金田一一@金田一少年の事件簿】
【サーヴァント:ライダー(太公望)@藤崎竜版封神演義】



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