No.12


「ここが聖杯戦争の世界か」

 と、その男は呟いた。
 首から古めかしいカメラを吊り下げた細身の男だ。精悍な顔立ちからは落着きと自信が窺える。

「で、お前が俺のマスターか」

 こちらを見やる。
 マスターを値踏みするその眼光は、彼が歳若いとはいえ幾多の修羅場鉄火場を潜り抜けている貫録を伝えてくる。
 今度はどんなサーヴァントが来るかと内心憂慮していたものの、『前の』サーヴァントよりは幾分使いやすそうだ。
 少なくとも、言葉を交わす事が無価値だと断ずるほどではない。今はまだ、だが。

「そうだ。さて、まずは自己紹介といこうか」

 お互いの来歴、戦力、思考を理解することが勝利への第一歩。
 重々承知してはいるが、かつてのサーヴァントとはそれをする気にはならなかった。
 今回それを自分から言うのは――『前の』ほど抵抗がないというのと、それをせざるを得ない状況であるからに他ならない。
 ここにいるのは自分一人だ。サポートは何一つ誰一人望めない。
 つまり、たった一つの戦力であるサーヴァントと意思疎通ができなければまともな戦闘すら覚束ないということだ。
 故に、彼がどういったサーヴァントか詳しくわからずともまずこちらから歩み寄る必要がある。
 彼は『前の』とは違って世界的に有名な英霊という訳でもない。実際、クラスしか定かではないのだ。
 それ以上の情報は接触して自分で聞き出すしかない。

「……以上だ。何か質問は?」
「ない。大体分かった」

 気負いもなく。
 自分の素性、目的を簡潔に話し終え、返ってきたのはそんな言葉だ。
 サーヴァントとして呼ばれたからには彼にも何かしら願いがあるのだろう。
 それを果たすためにマスターが必要だから組む、そこにそれ以上の思惑は読み取れない。
 腹の底を見せないという意味では、『前の』よりよほどやり辛い。が、性に合っているのはこちらの方だ。

「では、今度はそちらの情報を聞かせてもらいたいな」

 問うと、男はやや面倒くさげに溜息をつく。
 まるで幾度も問われたように。またか、と全身で訴えている。
 それでも、男はこちらへと向き直り、

「通りすがりの――ライダーだ」

 そう、言った。


     ◆




 世界を巡り、旅は続く。
 辿り着いた場所はやはり、戦いの渦の中。
 求められている役割、果たさなければならない使命。
 やることは変わらない。いつものように通りすがり、すべてを破壊し尽くすだけだ。

 それこそが使命。
 世界の破壊者、その存在するただ一つの理由。

 もう仲間と言える者はいない。
 それらはすべて打ち捨ててきた。ただ一人の最強であるために、余計なものは背負わない。

 しかし今回はやや事情が違うらしい。
 自分はサーヴァントで、サーヴァントはマスターなる相棒を守り、共に戦わなければならない。
 面倒だが、直接の戦闘は任せるとマスターは言った。だからまあ、自分は好きにやればいい。
 要は勝てばいいのだ。手段など選ばないし、そこはマスターも同意見だという。
 決して好きな人種ではないが、組む相手としてはリアリストかつプロフェッショナルな気質の方がありがたい。
 考えてみれば、マスターは今までの旅の中にはいなかったタイプではある。冷静で、狡猾で――そして悪辣だ。
 底抜けのお人好しだったり甘ちゃんだったり熱血バカだったりただのバカだったり。思い出すのはそんなやつらばかり。
 感傷というほどでもない。すでに彼らは破壊し終えている。他ならぬ自らの手で。
 だから、今やるべきことにも迷いはない。破壊すべき対象が変わっただけだ。

 すべてのマスターとサーヴァントを破壊する。

 そして聖杯に捧げる願いで、残った『奴ら』を――未だ破壊できていない宿敵たちを破壊する。
 自分以外、ライダーが誰もいなくなったとき。そのときこそようやく、旅は終わるのだ。

 マスターが煙草を吸っている。
 揺らめく紫煙、一瞬後には解けて消える儚い軌跡。まるで己の旅のよう。
 なんてことはない――そう、煙草を吸うように。



 破壊するだけだ。



【参加者No.12 衛宮切嗣@Fate/zero】
【サーヴァント:ライダー(門矢士)@仮面ライダーディケイド】




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